
Kan-wa

左手が持ち替えたもの
どこかに紛れ込んで
処分したものだと思っていたカバンが出てきた。
あの中に何を入れて
歩いていたのだろう。
あの中に何を入れようと
歩いていたのだろう。
今や手前の四点杖のグリップが左手のすべてだが
あのカバンもその中の空洞もしっかり存在している。
もはや持って歩けないとしても
夢を入れようとした箱はまだあるじゃないか。
新旧対峙して
引き継ぎをしているような
この写真を見て
趣味の良さを褒めてくれた
新しい友人は、
今旅の空の下だが
その無事を祈りたい。
歌う俺を励ましてくれたように
まだ大丈夫ですと、
まだ使えますと、
このカバンを修繕してほしいものだ。
元気に帰ってくることを願って
ー詩集、「行灯の明かり」よりー
普段NHKしかつけないテレビから、
なんか懐かしいキムタクの声が
聞こえたような気がしたので、
注視してみると知らん俳優がペタペタと歩いていた。
北川さんの脚本だからだろうか、
セリフ回しが似ていたからなのか、
妙な導入で再放送を観た。
ショートカットのイメージが強い
原田知世に気づくのに数分。
岡本信人や奥田英二の脇の俳優さんの
演技に先に目が行ってしまった。
ステージ演出の仕事を
かじったことはあったが
演技演劇の方は、と思った瞬間
暗い過去が脳裏をよぎった。
高校時代の初め
演劇部に属していた時期があり、
コンテストにあろうことか主演させられ、
オチを先に客席から言われる
赤面ものの過去を思い出した。
しかも男子校の…
「to be, or not to be」の世界を
想定していた自分にとって
現代劇はきつく、
元来の記憶力のなさも手伝って
セリフというものが全く覚えられず、
演出をされていたOBに本気でシバかれそうになった。
無論後はお決まりの逃走を企て、
某S台予備校で進級する遠因となった
高三冬までのBAND活動に埋没するのである。
テレビは片手間に聞き流すものじゃありませんな。
矢尾板拓也






