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リニア静岡工区オクシズを訪ねて

昨年の夏、南アルプスの蝙蝠岳から大井川の源流の東俣に下り、田代ダム、二軒小屋を見て西俣に入り、リニア西俣坑口予定地から西俣を遡上して三伏沢、三伏峠へと登り詰めました。機会があれば、二軒小屋から下流部のオクシズと呼ばれる地区にも行ってみたいと、その時以来考えておりました。飯田から見る赤石山脈の裏側になり、直線距離では40㎞と近くですが、車で行くとなると、とんでもない距離です。どう行けばいいのか?とナビ検索すると、新東名の新静岡ICから行くのが一番近いと分かり、6/27の午後12:30に家を出て、予約しておいた赤石温泉「白樺荘」を目指しました。中央道で双葉JTから中部縦断道路で新静岡ICで降り、葵区井川まではぐねぐね道を2時間半です。白樺荘まで自宅から5時間、280㎞の道のりでした。
オクシズ1
井川ダムで堰き止められたダム湖の井川大橋の吊り橋を渡る軽ワゴン車 2022.6.27  17:17

オクシズ2
沼平ゲート 許可車以外は通行禁止   2022.6.28  7:30
 リニアの拠点となる二軒小屋まで27㎞。大井川に沿って東俣林道が延び、南アルプスの静岡県側の登山口となっている。途中の中間程に椹島ロッジがあるが、リニア工事のため、二軒小屋ロッジと同様にJRが借りている。そのため、登山者の利用は、リニア完成後まで出来ない。

オクシズ3
畑薙大吊橋  茶臼岳に登り、易老岳、光岳方面  7:46

オクシズ4
赤石ダム 奥に赤石岳、左は大沢岳か?  9:14

オクシズ15
この谷が赤石沢、奥は赤石岳 源流釣り師憧れの渓谷。遡上すると百間洞に出る。 10:00

オクシズ6
燕沢(つばくろさわ)の崩落    11:01
 ここの本流出合にリニアトンネルの残土を盛土工法で60~70m積み上げるという計画があり、昨年の熱海の土石流災害以来、新たな問題として急浮上した。水問題と併せて、長期化しそうな問題だ。

オクシズ7
燕沢の対岸の崩落 上流部(右側)も崩落が見られる。  11:01


オクシズ8
浩宮殿下御登山記念碑 二軒小屋ロッジ  11:35

オクシズ9
千枚大吊橋にてセルフ撮影、ヘルメットに麦藁日除けひさしを取付 12:40
千枚岳から悪沢、荒川、赤石岳への登山口

オクシズ16
 林道から椹島に下って初めてここの様子を見て来た。リニア工事作業員用の宿舎が数棟建っていた。ここには700人ほど常駐するらしい。今まで人が棲んでいなかった所に10年以上人が棲み付く訳だが、環境の変化はどうなることか?生活排水はどうするのか?
 山岳写真家の巨匠、白旗史朗氏の写真が展示してある記念館も、東海フォレストが管理しており、今は閉まっているようだった。 12:57


オクシズ12
 帰路にロードローラが上がって来てすれ違う。上ではコンクリート舗装工事が数ヶ所で行なわれていた。コンクリート舗装の上に落石があり、鋭利なためパンクが多いということだ。   13:34

オクシズ19
 崩落が多いため土砂が溜まり、橋のすぐ下が河床で、左奥の林道も河原との高低差は1mあるかどうか?大雨が降れば完全に水没で通行不能になる。この写真の中にも崩落危険個所が見られる。          14:24

オクシズ13
大井川を挟んで、どちら側も崩落跡が至る所で見られる。
 大井川一帯の岩石は、四万十累帯という付加体から構成され、北部ほど古い地層が分布していて、褶曲や節理(規則性のある割れ目)などの構造が発達し、風化も深部にまで及んでいます。そのため、豪雨や雪解けで急峻な地形が災いして斜面崩壊が起こり、多量の土砂が発生して下流に溜まるようです。  13:56

オクシズ17
高いところからの大規模の崩落  14:18

オクシズ18
上の写真の上部を望遠で撮影 地層の色が違う 14:18

オクシズ14
無事にゲートに戻り、畑薙第一ダムより上流部を振り返る。
奥左より仁田岳、茶臼岳、聖岳       14:57

 沼平ゲートから二軒小屋までの往復54㎞を、MTBで往路4時間、復路3時間ということで、7時間で行って来れました。林道は既に舗装されているものと思っておりましたが、まだ半分ほどで、コンクリート舗装を数ヶ所で行なっている状況です。道中、登りあり下りありで、帰路は漕がずに楽に下って来られると思っていたところ、誤算でした。尻と膝が痛くなり、何度も引いて歩きました。
 自宅までの帰路は新東名の渋滞というナビの判断で、下道を川根本町、天竜区、秋葉ダム、兵越峠と200㎞と行きの距離より80㎞も短いのですが、1時間余計に掛かり、6時間山道を走って来ました。
  JRがリニア工事のため二軒小屋と椹島に宿舎を建て、施設を東海フォレストから借りているため、登山者は利用できません。昨年はコロナもあって、登山者送迎のバス運行が無かったのが、今シーズンは椹島まであるようです。
 
 仮に静岡県がリニア工事着工を許可したとしても、この東俣林道は大雨で崩落や、川床が低い所は河原となってしまい通行が出来なくなります。2019年の台風19号で被災し、復旧出来た矢先に翌年の7月豪雨で再び流され、また昨年の大雨でも被害に遭い、その間、まともに通れたのは数ヶ月だけです。
 今回行って驚いたのは、工事予定地の一番近い集落の井川地区は、最も近い新静岡ICから2時間30分の距離でした。長野県内で最寄りのインターまで2時間30分という地区は、私の知っている限りでは、冬の栄村秋山郷でしょうか?最奥の西俣ヤードまでだと、静岡中心部からは120㎞も離れており、4時間は掛かりそうな場所です。自然災害に弱いオクシズの地質を考えると、リニア工事に支障が生じることは誰にでも分かる筈です。


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