今年も離岸流が原因の悲惨な水難事故が起きています。
離岸流はダイバーも無縁のものではなく、海でのレジャーの際には誰しもが気をつけなければならない危険な自然現象です。
流れのことを「カレント」と呼びますが、離岸流のことも「カレント」と呼ぶケースもあります。特にサーフィン業界では「離岸流=カレント」という呼び方が一般的なようです。
今回は危険な離岸流とその対策について、具体的に考えてみたいと思います。

離岸流って何?
海岸付近の浅い場所から、沖の深い場所に向かって戻る強い潮の流れのことです。
離岸流の幅は狭く、大体10メートルから30メートル程度しかありません。その分勢いはとても強く、海に慣れたベテランサーファーや水泳選手などでも逃れられないほどの速さです。

離岸流が起きる原因
海中の地形や風向きなどで波が1箇所に集まると、波が引くときに強い流れが発生し、離岸流となります。
また、最近では人工構造物(防波堤や離岸堤など)が原因となって起こる場合もあります。

離岸流のスピード
離岸流の沖へと戻るスピードは非常に強い上に早く、1秒で1メートルから2メートルと言われています。このスピードは水泳選手の泳ぐスピードよりも速い場合もあり、一度巻き込まれてしまうと非常に危険です。
うっかり離岸流に巻き込まれてしまうと、沖に一気に数10メートル~100メートルほど流されてしまうこともあります。
普通の体力の人が、離岸流に逆らって全力で泳いでも、まず抜け出すことは不可能でしょう。無理して流れに逆らって泳いでも、体力を消耗する一方で、かえって沖へ沖へと流されてしまいます。

離岸流が起きやすい場所
岸辺に海藻や流木などの漂着物が沢山集まっている場所の沖では離岸流が発生していることが多いそうです。わかりやすく言うと、浜辺の凹んでいる地形などがその典型です。長い砂浜でも一箇所にゴミや海藻が溜まっている場所は、波打ち際や水深が浅い場所でも要注意です。
また、周囲の海面に比べると波が高かったり、波の形が違っていたり、海が濁っていたりする場所も気をつけなければなりません。
防波堤や離岸堤などの近くでも、定期的・永久的に離岸流が発生している場合があります。人工構造物の近くで遊泳する場合は十分な注意が必要です。
ダイバーならご存知かもしれませんが、外洋に面した海も流れが早く、離岸流が発生しやすいポイントが多いことが知られています。

もし離岸流に巻き込まれてしまったら
離岸流に巻き込まれてしまうと、泳ぎに慣れている水泳選手でも流れに逆らって泳ぐことは非常に難しいと言われています。
上記の「離岸流のスピード」でも解説した通り、離岸流のスピードは非常に早いため、流れに逆らってぬけ出すことは考えないほうが良いでしょう。
離岸流に巻き込まれてしまった場合は、まずはパニックを起こさず、落ち着くことが大切です。なかなか難しいかもしれませんが、パニックを起こしてしまうと正常な判断もできませんし、無駄に体力も消耗してしまいます。
そして離岸流の流れに対して真横に泳ぐことが大切です。離岸流の幅はせいぜい10メートル~30メートル程度ですから、流れに逆らわずに真横に泳げば、比較的楽に脱出することができるでしょう。
大抵、離岸流は、岸辺に対して90度の直角に近い流れを形成しますので、岸辺と平行に泳ぐように心がければ大丈夫です。
離岸流が起きやすい場所は、他の場所と比べると水深が深いことが多いので、流れから出てしまえば浅場だったりすることも少なくありません。

どうしても離岸流から抜け出せなかったら
まずは手遅れにならないうちに大きな声を出して、近くに居る誰かに気づいてもらうのが一番です。ですが開けた海岸の場合は、大声を出しても、案外、他人には聞こえにくいものです。
もし浮き輪やビート板などの目立つ大きなものを持っていたら、それを他の人に向かって大きく振ると、気がついてもらいやすくなります。
海に入る際には、浮き輪やビート板などの遊泳を補助するものを持って行くと安心です。

沖まで流されてしまった時の対処法
疲れている場合は体力の消耗を避けるために、無理をして泳がないことです。
そして身体を冷やさないために風を浴びすぎないように身体の向きを調整し、周囲に岸辺がないかどうか・船が通らないかなど、常に周囲の状況に気を配ります。
周囲に岸辺がないかどうか、船が通らないか

離岸流に巻き込まれないために
まず、何と言っても離岸流のリスクのある場所に近づかないことが大切です。
海水浴の場合は、遊泳禁止の看板が出ている場所では絶対に泳がないことが大切です。離岸流による水難事故は、遊泳禁止の場所での遊泳で離岸流に巻き込まれてしまうものが非常に多いことが知られています。
要するに「遊泳禁止」に指定されているのは「この場所は危険だから遊んではいけない」ということなのです。
一見穏やかな海に見えても、狭い場所で離岸流が発生しやすかったり、定期的に離岸流が起こる地形だったりする可能性があります。ライフセーバーの居る、遊泳可能な海水浴場で遊ぶようにしましょう。
また、泳ぎが苦手な人は、無理をして深い場所に行かないようにし、岸辺のパラソルや木などを目標にして、自分が流されていないかどうかを常に気をつけましょう。
なるべく一人ぼっちで海に入ることは避け、誰かと一緒に泳ぐようにし、お互いに気を配っていると良いでしょう。
海に入る際にライフジャケットを着ていれば更に安全です。