2006年07月16日

クラッシュ(DVD)2

364d0046.jpg

タイトルの「クラッシュ」とは、「ぶつかり合う」こと。肉体的、物理的なクラッシュから、心と心の触れ合いまでが含まれる。

『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本家であるポール・ハギスが監督・脚本の本作は、ロサンゼルスでの2日間の人間ドラマを、心に突き刺さるほどの「クラッシュ」とともに描いていく。

登場人物は、地方検事とその妻、黒人刑事と同僚でスペイン系の恋人、TVディレクター夫妻、雑貨店を営む家族、鍵の修理屋など、さまざまな階層・人種、職業です。

 無関係のようにみえた人々が、人種間の偏見、そこから生まれる憎悪が引き起こす事件によって結びつけられる。

急展開ながら、登場人物の交通整理のうまさに引き込まれるのであった。

警官からセクハラまがいの仕打ちを受けた女性が、その後、彼と思わぬかたちで再会するシーンなど、何カ所か、本当に背筋の奥までゾクッとさせるショッキングな描写もあります。

俳優たちも、ほかの出演作とは明らかに違う迫真の演技を披露し、最後まで観る者の目を釘付けさせる。全編に漂うのは、いまだに差別に満ちたアメリカの現実だが、ラストシーンでわずかに残される希望が、静かな余韻を残します。

                 
車にピストル発砲<感想> クリスマスを間近に控えたLAのハイウェイで起こった1件の自動車事故。それが、思いもよらない「衝突」の連鎖反応を生み出し、さまざまな階層と人種の、さまざまな人びとの運命を狂わせていく。

黒人刑事グラハムとその同僚でヒスパニックの恋人リア。
銃砲店で不当な差別に憤慨するペルシャ人の雑貨店経営者ファハド。白人に敵意を抱く黒人青年アンソニーとピーター。地方検事のリックとその妻ジーン。

差別主義者の白人警官ライアンと同僚のハンセン。裕福な黒人夫婦キャメロンとクリスティン。
彼や彼女の間で、愛がすれ違い、哀しみが砕け散る。憎しみが交叉し、孤独が長い影を落とします。

そして、さらに激しい「衝突」が果てしなく、くり返されていく。それでも、人は人を愛していくものなのだと思い知らされます。

                  
子供を守る偶然のきっかけでぶつかり合って感情を交わし、人生を交差させていく10人以上の登場者。

目を背けたくなるような醜さや憎しみを容赦なく描き、皮肉な運命も示されます。そうかと思えば、奇跡のような美しさに勝る瞬間もあります。

 

断片的なエピソードを積み重ねながらすべてをさらけ出し、それでいて人間心の奥までを描ききっています。

皮肉な事にロス警のマット・ディロン最初は黒人の女性に職務質問 をするため、車の外で彼女の体を触りまくり!、・・・彼女がセクハラで訴えてやると言う・・・ところがハイウエーでの車の事故で不思議な巡り会わせと言うべきか?・・・その黒人の女性は、危ない所をマットに助けられる!。

 エピソードでは、娘の透明マントの話!、・・・これには一番泣かされてしまいました。

ブレンダンその「奇跡」の真相は意外と簡単なものなのだけど、そんな簡単で単純なことで憎しみが消えてしまうということは、きっとあるのだと思います。

「ミリオンダラー・ベイビー」の製作・脚本で一躍注目を集めたポール・ハギスは、これが初監督作品とは思えないほど、リアリズムに徹した切れ味鋭い演出をみせています。

サンドラ・ブロックがブレンダン・フレイザーの奥さん役で出演、その他にドン・チードル、マット・ディロン、ライアン・フィリップス、サンディ・ニュートンなど、いずれもハギスらが書き上げたオリジナル脚本に魅了されたという芸達者な俳優達の演技は見事です。

 

フィリップだが、この映画の真の主人公は、人種間の摩擦と緊張が極限にまで高まり、そこに住む人間の人生そのもの、LAという街自体ではないだろうか。

これはリアルな人生についての群像劇であると同時に、どこかおとぎ話のような希望をたたえた人間ドラマです。2006年アカデミー賞、作品賞、脚本賞、編集賞の受賞は当然と思える作品だと思います。



papikosachimama at 10:44│ 2006年レンタルビデオ、DVD | か行・が行の映画

この記事へのトラックバック

19. 映画 クラッシュ  [ VAIOちゃんのよもやまブログ ]   2012年03月29日 12:39
以前紹介記事か何かを読んで気になっていた映画「クラッシュ」。DVDを借りる機会があった(旧作がただ同然になっていた)ので、鑑賞してみました。映画そのものは2005年のアメリカ映 ...
18. 「クラッシュ」(2004)  [ シネマ・ワンダーランド ]   2009年12月22日 00:40
クリント・イーストウッド監督作品「ミリオンダラー・ベイビー」で脚本を執筆したポール・ハギスが同じく脚本や初監督を務めたサスペンス風のヒューマンドラマ「クラッシュ」(2004年、米、112分)。この映画はクリスマスを間近に控えた米国ロサンゼルスを舞台に、一...
17. クラッシュ  [ むーびーふぁんたすてぃっく ]   2009年10月28日 13:48
「クラッシュ」 感想 どれほど他人を理解できているのだろうか? 他人を理解できないという恐怖 恐怖からくる自己防衛 自己防衛のための..
16. クラッシュ  [ Addict allcinema 映画レビュー ]   2009年05月29日 00:49
人はぶつかりあう。人は人を傷つける。怒り、哀しみ、憎しみ、孤独。それでも、人は、人を愛していく。
15. クラッシュ  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年11月11日 20:23
 『人はぶつかりあう。人は人を傷つける。怒り、哀しみ、憎しみ、孤独。それでも、人は、人を愛していく。』  2/11に公開されて現在も全国で順次公開されていっているコチラの映画。もうすぐ発表のアカデミー賞でも主要6部門にノミネートされている話題作ですね。  満...
14. 映画『クラッシュ』  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2007年03月01日 01:11
原題:Crash 前回の第78回アカデミー賞で作品賞に輝いた作品、ありとあらゆる人種が登場、目を背けたくなるような人種差別が痛々しいが基本的には暖かみがある・・ クリスマス前のロサンゼルスが舞台、群像劇だが、特に印象的・・というよりも衝撃的でさえあった...
13. クラッシュ  [ Aのムビりまっ!!!(映画って最高☆) ]   2006年08月01日 12:30
評価:★8点(満点10点)   監督:ポール・ハギス 主演:サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン    ジェニファー・エスポジート 2004年 112min 人はぶつかりあう。 人は人を傷つける。 それでも、人は、人を愛していく。 ...
12. 『クラッシュ』・試写会  [ しましまシネマライフ! ]   2006年07月30日 10:35
今日は某雑誌で当選した『クラッシュ』の試写会に行ってきた。 会場は珍しく40代、50代の人が多いよう
11. クラッシュ  [ 小部屋日記 ]   2006年07月28日 23:15
Crash (2005/アメリカ) 今年のアカデミー賞作品賞に輝いた映画。 「ブロークバック・マウンテン」と争いました。 偏見と人種差別を扱うヒューマン作品。 群像劇で、それぞれの出来事がつながりをもっているので、注意深く観てないと、わからなくなる恐れも・・・{/face_...
10. 『クラッシュ』・試写会  [ しましまシネマライフ! ]   2006年07月27日 00:19
今日は某雑誌で当選した『クラッシュ』の試写会に行ってきた。 会場は珍しく40代、50代の人が多いよう
9. 映画『クラッシュ』を観た  [ 名盤! ]   2006年07月26日 22:48
本屋さんでパソコンに関する書のコーナーに行くとやたら目に付く、ブログで稼ぐだ、アィリエイトで月100万だ、ネット起業だのといった、甘い儲け話のHow to 本。 そんな簡単に儲かるわけないだろ! そら儲けてる人もいるだろうけど。 とはいいつつも、パラパラとそんな本...
8. クラッシュ  [ 映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜 ]   2006年07月21日 22:05
原題:『CRASH』 監督:ポール・ハギス 脚本:ポール・ハギス 撮影:J・マイケル・ミューロー 音楽:マーク・アイシャム 出演:ドン・チードル/マット・ディロン/ブレンダン・フレイザー/サンドラ・ブロック/ジェニファー・エスポジート/ライアン・フィリップ ----------...
7. クラッシュ  [ 映画とはずがたり ]   2006年07月20日 16:55
4 本年度アカデミー賞作品賞、脚本賞など 3部門で受賞した衝撃のヒューマン・ドラマ! 豪華キャストも大きな見どころ! STORY:クリスマスを間近に控えたロサンゼルス。 黒人刑事グラハム(ドン・チードル )と その同僚でヒスパニックの恋人リア(ジェニファー・エス....
6. クラッシュ  [ いつか深夜特急に乗って ]   2006年07月20日 06:06
「クラッシュ」★★★★★ (名劇2)2004年アメリカ 監督
5. クラッシュ  [ 色即是空日記+α ]   2006年07月20日 00:26
『クラッシュ』 CRASH 監督:ポール・ハギス 脚本:ポール・ハギ...
4. クラッシュ  [ ルナのシネマ缶 ]   2006年07月20日 00:22
う〜〜ん!なんかすごい!! ちょっと説明するのは 難しいのですが、 人間の日常に潜むどうしょうもない 怒りや悲しみ、愛を描いた ヒューマン・ドラマです。 舞台は、ロサンゼルス。ハイウェイで起こった自動車事故をきっかけに 色々な人種、階層、職業の人々が1つ...
3. クラッシュ  [ しまねこ日記 ]   2006年07月19日 10:20
人間の愛、憎しみ、怒り、悲しみ・・・さまざまな感情がクラッシュする人間ドラマ。 クラッシュ=ぶつかり合うというよりも、関わっている、繋がっているといったものだと思う。 登場人物が多い。誰が主人公ということもなく、誰もが主人公でありそれぞれにドラマが...
2. クラッシュ  [ 何曜ロードショー ]   2006年07月19日 03:31
今日のイラストはサンドラ・ブロックさん彼女がクレジットの最初にあるので先に描いていましたが、彼女が主人公ってワケではありませんね、この映画。コメディとかが多いので、笑っている顔の方が、印象深いのですが、この映画は、コメディじゃないので、シリアス路線で ..
1. クラッシュ (Crash)  [ Subterranean サブタレイニアン ]   2006年07月17日 09:49
監督 ポール・ハギス 主演 ドン・チードル 2004年 アメリカ映画 112分 ドラマ 採点★★★ 「差別は恐怖からくる」とマリリン・マンソンが言っていた。その恐怖は、無理解から来るもの。理解出来なければ出来ないほど恐怖を感じ、差別し排斥することで身の安全を図ろうとする...

この記事へのコメント

2. Posted by ルナさんへ   2006年07月20日 01:42
5 こんばんは!早速のTB・コメントお返し有難うございます。
この作品のクラッシュと言うタイトルは、アメリカで実際現実に起きていることばかりで、いつもTVのニュースなどで報道されています。
黒人の人達は皆悪者と見よ!、アジア系民族は不当入国者ばかり、そんなレッテルを貼られている現実社会、このような映画が出来ても、誰も明日から仲良くやっていこうなんて気は起きないのかもね。
1. Posted by ルナ   2006年07月20日 00:21
こんばんわ〜!!
透明マントの話!ホントに良かったですよね〜。
なんか救われた気がしました。
いろんな意味で、ちょっと考えさせられる映画でしたね〜。