2008年04月29日

夜顔4

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偶然の再会、過去の秘密__あなたに出逢い、私の心はあの日に戻る。

パリのコンサート会場で、アンリはかつての友人の妻で今は未亡人となったセヴリーヌと偶然に再会するが、彼女は逃げるように立ち去る。

セヴリーヌのあとを追うアンリだが、過去を忘れたいセヴリーヌは彼から逃げまとう。

かつての友人の妻で今は未亡人のセヴリーヌ。彼女を追って入ったバーで、バーテンダー(リカルド・トレパ)から滞在中のホテルを突き止めるが、またしても逃げられてしまう。

38年前、夫を愛しながらも密かに裏切り、昼間だけの娼婦「昼顔」として別の顔を持っていた人妻。

彼女の秘密を知るのはアンリだけだった。

やっとのことで彼女をつかまえたアンリは胸に秘めていた、過去の衝撃的な出来事の真実を打ち明けたいという口実で、無理やりディナーの約束をとりつける。

 オリベイラ監督38 年前、セヴリーヌ、夫、アンリの間に何が起こったのか?アンリだけが知る、彼女の「欲望」にまつわる秘密とは?そして、アンリが彼女をディナーに誘った本当の理由は?

時を経てふくらむ「秘密」への想い  2 人の人生が再び交差し、そしてその秘密は永遠となる・・・。

67年のルイス・ブニュエル監督作『昼顔』は、貞淑な人妻の倒錯した愛と欲望がもたらす悲劇をミステリアスに描いた傑作。

1908年生まれの現役最長老の巨匠マノエル・ド・オリヴェイラが、ブニュエルと脚本家ジャン・クロード・カリエールにオマージュを捧げ、その38年後を描いたのが本作。

 

<感想>パリを舞台に繰り広げられる映像美と、豪華な衣装の数々。

一筋縄ではいかない男アンリ・ユッソン氏を演じるのは、お馴染みミシェル・ピコリ。

未亡人セヴリーヌ役には、数々のヌーヴェルバーク作品に出演してきたフランスが誇る女優ビュル・オジエ(ブニュエル監督「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」)が演じている。この2人が秘密を共有する男と女の緊張感溢れる駆け引きを見せてくれる。

衣装は、「マリー・アントワネット」で本年度アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した、ミレーナ・カノネロが担当。

エルメス、プラダ、シャネル、セリーヌなどの上品で美しいファッションの数々も見逃せない。

ホテルまた、オペラ・コミック座での冒頭のコンサートシーン、ドヴォルザーク「交響曲 8 番の演奏で始まる。

ヴァンドーム広場周辺のヒロインが宿泊するホテルの様式美や、キャンドルが灯る中、優雅にそしてスリリングに繰り広げられるディナーシーンなど、99歳の巨匠オリヴェイラのこだわりを感じる作品。

歳を重ねた監督の、映画というものに対する切ない追憶と、彼の長い人生の日常の喜びを語っている。

監督の年齢もさることながら、1967年のブニュエルの『昼顔』で中年男を演じていたミッシェル・ピコリ(1925年生まれ)を引き出し、「38年後」のアンリ・ユッソンを演じさせているのも嬉しい。

昼顔のカトリーヌさすがのオリヴィエラ監督も、カトリーヌ・ドヌーヴは引き出せなかったらしく、彼女が演じたセブリーヌ役には、ビュル・オジェを起用し、ドヌーヴと似ていなくもない風貌だが、やはりファンとしてはセヴリーヌをカトリーヌ・ドヌーヴで観てみたかった。

ブニュエル監督の「続編」は、どこまでがセブリーヌの幻想で、どこまでが「現実」なのかがわからないようなシームレスな仕上げがほどこされている。

基本には、「昼顔」のブルジョワの有閑階級の婦人が、退屈な日常のなかで夢みる幻想と見ることのできる仕掛けがあった。

レストランで食事だから、セブリーヌが、夫の友人のアンリ(ミッシェル・ピコリ)にそそのかされて昼間だけの高級娼婦になるというシーンは、必ずしも「現実」ではないと思う。だが、この「夜顔」では、それが「現実」で、アンリのためにセブリーヌが、必ずしも本意ではなかったことをしてしまったというような解釈を前提している。

そういう道に誘った男と38年後に再会するわけだが、コンサート会場でセブリーヌを見つけて、追って来るのはアンリの方だった。

彼女は逃げるが、別の日に、ばったり骨董店のまえで会ってしまう。

映画の大詰めは、その二人が黙々と食事をするシーンであり、そのあとには表面上、何も起こらない。


バーでアンリが、彼女を見失って入ったバーで、シングル・モルトのウィスキーをストレートで注文するが、ダブルで3杯も4杯も飲むので、よく飲むなと思ったら、アル中になっているという設定なのですね。

そこでのバーテンとのやりとりも面白い。

彼に彼女が宿泊しているホテルを聞き出し、ホテルで部屋番号をフロントで聞き出すさりげないやりとりもうまく描かれていると思う。

個室のあるレストランに、彼女を招いたアンリが用意したのは、シャンパンと少し飲んだところで前菜が運ばれて来るが、ワインをつごうとするウエイターをセブリーヌは、おさえ、「このままシャンペンをいただくわ」と言う。

食事は、老齢の2人らしく軽めで、その次にメインが運ばれ、そのあとはデザートとなる。

2人のナイフとフォークの使い方が、それぞれにちがっていて微妙に面白い。
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年まえに愛し会った者同士が再会して、食事をするというのとは、いささか違った前提がある二人。

hoteruレストランでの食事のあと、セブリーヌが機嫌をそこねて立ち去ったドアにいきなり鶏が現われる。

つまり、この映画自体が、アンリの「幻想」であったかもしれないことが示唆されているのである。

その「幻想」をつむぐ場所は、コンサート会場でもいいし、バーで酒を飲み、近くの席にいた二人の娼婦とおしゃべりしているときでもいいのだから。
監督ブニュエルにおいて「幻想」は、ブルジョワジーの特権であり、それによって民衆支配をうながす元凶でもあった。

では、オリヴィエラは、この点に関しては、どうブニュエルを継承しているのだろうか? セヴリーヌそれは、セブリーヌが、夫の死後のいまでもリッチで、ブルジョア生活を享受しているらしいこと、他方のアンリは、生活には困ってはいないが、孤独な「アルコール依存症」の老人であること、のなかで示唆されているかもしれない。

しかし、その意味では、彼は、老いた人間のみが享受できる空想を楽しんだとも言えるのではないだろうか。
ブルジョワも自由ではなく、とりわけ女性はその生活のなかで空想によって仮の自由を得る。
それが、『昼顔』のテーマでもあった。

 

しかし、その「空想」は、最後まで空想にとどまり、ブルジョワジーの「幻想」のなかに取り込まれていく。ユッソンの空想も、年老いて行き場がないことにおいては同じように見える。


「昼顔」を鑑賞後に観ると大分違うが、相変わらず難解な部分と観客に委ねる居心地の悪さが残ってしまうので評価が分かれると思われます。

もし、あなたがまだ、「昼顔」を見ていないとすると、この映画は、全編が70分ということもあり、これから何かが起こるのかという期待を抱かせたまま終わってしまうかもしれませんが、「昼顔」を見ている者にとっては、この終わり方はなかなか意味深なのである。



papikosachimama at 17:18│ 2008年劇場公開作品、鑑賞 | や行の映画

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