2008年12月09日
僕らのミライへ逆回転
寂れたレンタルビデオ店が人気ショップに!?奇抜な展開に人情味をからめた下町コメディ。
おもいっきり笑って泣いて、あたたかなものが心に残る、宝物のような映画
物語:いまだにVHSしか置いてない、けれど、みんなの憩いの場になっている街角のおんぼろレンタルビデオ店――フレッチャー店長(ダニー・クローヴァー)の話によると、実はこの店は30年代に活躍した伝説のジャズ・ピアニスト、ファッツ・ウォーラーの生家……なのだけど、都市再開発を進める役所から取り壊し勧告が下り、今のままだと閉店に追いこまれるのは時間の問題。
近所の少年たちがアイスを買ったり、常連さんが集まり、店員のマイク(モス・デフ)や、近所のトレーラーハウスに住む親友ジェリー(ジャック・ブラック)と無駄話を楽しむこの店にも密かに危機が迫っていた。
あるとき、フレッチャーは「“ファッツ・ウォーラー没後60周年”を祝うイヴェントに参加する」と言い残し、店の番をマイクに任せて旅に出る。店長の期待に応えるべく、やる気満々のマイク。だが、そんなときに限って、続々と客からのクレームが……前日の夜に発電所に忍び込んだジェリーが強力な電磁波を浴び、その磁気のせいで、店内の全ビデオの中身が消去されてしまったのだ!
パニック状態のふたりに追い討ちをかけるように、常連女性客のファレヴィチさん(ミア・ファロー)が『ゴーストバスターズ』のビデオを借りにやってきた。夜まで待ってもらうことにしたマイクは、困ったあげくに、とんでもないアイディアを思いつく――「ファレヴィチさんは『ゴーストバスターズ』を観たことがないはず……だったら適当に映画を撮って、それを渡せば、きっと本物だと信じこむに違いない!!」
ジェリーを説得して図書館に向かったマイクは、店の奥で埃をかぶっていた旧型ビデオカメラ片手に、ゲリラ撮影を開始。最初は乗り気じゃなかったジェリーも、撮影が進むにつれて、だんだんとノリノリになり、彼らの“手作り版”『ゴーストバスターズ』は、無事に完成!
だが、ちょうど店を閉めかけたときに別の客が現われ、今度は『ラッシュアワー2』をリメイクしなければいけないはめに……女優が足りないことに気づいたふたりは、クリーニング店で働くアルマ(メロニー・ディアス)を緊急スカウトし、再びこの危機を乗り切った。
意外なことに、3人の“手作り映画”は、お決まりのハリウッド大作には飽き飽きだった町の人々の間で、大ブームを巻き起こしていく。『ライオン・キング』『ロボコップ』『2001年宇宙の旅』……客のリクエストに応えて、3人はヒット作・名作を次から次へと勝手にリメイク!
しまいには町の人々もこぞって出演を希望しはじめ、主演のジェリーは今やスーパースター並みの人気ぶりだ。
そのころ、町を留守にしていたフレッチャーが戻ってきた。彼の旅の目的は、実はファッツのイヴェントではなく“売れ筋DVDレンタル店の隠密リサーチ”だったのだ。
フレッチャーは役所を訪ね、「DVDレンタルを始めれば売り上げは増える」と力説するが、鼻であしらわれ、逆に「6週間以内に屋根を改装しなければ、店を取り壊します」と最終通告を突きつけられてしまう。
帰路についたフレッチャーは、突然の店の繁盛ぶりに驚く。このまま売り上げが伸びれば、屋根の改装代を工面できるかもしれない!……最後の望みをかけて、ますますハイペースでリメイクに励む3人。だが、希望が見えてきたその瞬間、ハリウッドの映画会社の弁護士(シガーニー・ウィーヴァー)たちが来店し、彼らのやっていることは“著作権違反”だと宣告。町のみんなの夢が詰まった“手作り映画”ビデオは、すべて廃棄処分される運命になってしまう。しかも、取り壊しまでの期限はあと1週間……。
オムニバス「TOKYO!」の1編を手掛けて才気を発揮した異才ミシェル・ゴンドリー監督・脚本のコメディ作品。
奇抜なアイデアをドラマにすることを得意にしている彼が、「ブロック・パーティ」に通じる下町のぬくもりを注入しつつ、ハートウォーミングなドラマを展開させている。
出演は、「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」のジャック・ブラック。相棒マイクには、「16ブロック」のモス・デフ、店長を演じているのは、「ブラインドネス」で黒い眼帯をした男に扮したダニー・グローバー。
それに、「アーサーとミニモイの不思議な国」のミア・ファローなど。(作品資料より)
<感想>これは掛け値なしに面白かった。大作主義、著作権、VHSへの愛・・・“映画を取り巻く今”を、痛烈に皮肉りながらも映画への愛情が、ガンガンに溢れている快作にして怪作である。
今年は、ジャック・ブラックの当たり年なの?・・・私、結構観ているよね。
といっても、一筋縄ではいかない。細かい仕掛けが幾重にも張り巡らされ、ジャックの芝居に笑い転げているうちに、どうでもいいお馬鹿な場面で涙腺が刺激されるなんて、素晴らしすぎる、最後には熱いものが込み上げてホロリとさせられるのだから。
冒頭のモノクロの古い8ミリ映像がいいですね。伝説のジャズ・ピアニストのファッツ・ウォーラ−その人と言うが、どうやら彼の生家は、現在取り壊し寸前のレンタルビデオ店になっているらしく、そこで奇妙な物語が展開する。
強力な電磁波の影響で、突然ビデオの中身が消滅したために、店員とその友人らは同じ名画のビデオを撮影してごまかそうというのだから。
ほとんどハチャメチャな筋立てだが、そこはジャックの驚異的な演技力で何とか収まるのだから、映画は作ってみなければわからない。
「ゴーストバスターズ」に「ロボコップ」、それに「キング・コング」と「ドライビング・Missデイジー」など、登場する映画は学園祭ノリのリメイクビデオ撮影には、爆笑もんです。
あまりに可愛いコメディに、ほのぼのした笑いと懐かしい気分にさせられる。
そして、最後に作る映画が伝説のジャズ・ピアニストのファッツ・ウォーラ−で、ビデオ店の上映会は、地元の映画ファンで黒山の人だかり。
この映画への愛、古き良き映画「ニュー・シネマ・パラダイス」へのオマージュに、ついホロリときて、それは、一瞬でも“みんなで映画を共有する”という夢を見られる点に尽きると思う。
これまでどうも苦手だったゴンドリー監督が、なんだか好きになってきましたね。ほんとに(笑)
主演のジャック・ブラックの役は、マイクの友人ジェリー。レンタルビデオ店に入り浸っているが、トラブルばかり起こすのでフレッチャーに睨まれている。
トレーラー暮らしの無職男、ニセ映画の多くに主演し、一躍近隣の有名人になり、本人もスター気取りだ。大人になれないダメ人間というお得意の役どころをジャックは喜々として熱演している。
マイク役には、知性派ラッパーとして知られるモス・デフだが、俳優としてはお人好しの役が多い。今回も、悪友ジェーリーに振り回されてばかりいる愛すべきキャラに。
レンタルビデオ店のたった一人の店員、店長の窮状をしり、つい“給料はいらない”と言ってしまう人情家である。
レンタルビデオ店の店長、フレッチャーにダニー・グリーバーが扮して、収益の悪化と、店の取り壊し勧告に頭を痛める。現状を打開しようと店を留守にし、大手DVD店に潜伏して売れ筋をチェックする隠密行動をとる。
この俳優さんとくれば「リーサル・ウェポン」でメル・ギブソンの相棒役、人のいい刑事がそのまま年をとったようなグローバーの妙演が光る。
脇の俳優も、良くビデオを借りにくるおばさん役にミア・ファロー、それとハリウッドの映画会社の弁護士にシガニー・ウィーヴァーとくれば言うことないわよね。