2011年02月09日
白夜行
東野圭吾の同名小説を原作に「半分の月がのぼる空」の深川栄洋監督が映画化。幼い頃にある殺人事件に関わった男女の宿命を描く。出演は「大奥」の堀北真希、「おにいちゃんのハナビ」の高良健吾、「ウルルの森の物語」の船越英一郎、「死刑台のエレベーター」の田中哲司、「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」の戸田恵子など。
物語:昭和55年。とある廃ビルの密室で、質屋の店主が殺された。すぐに妻の桐原弥生子(戸田恵子)と従業員で弥生子の愛人、松浦勇(田中哲司)に嫌疑がかかるが、所轄の担当刑事である笹垣潤三(船越英一郎)に10歳になる息子の桐原亮司(今井悠貴)が母親のアリバイを証言する。
一方、捜査本部は、被害者が事件の直前、西本文代(山下容莉枝)という女の家を訪ねていたことを突き止める。だが、笹垣の職務質問に嘘で答えようとした文代を制したのは、10歳の少女・西本雪穂(福本史織)だった。
その後、文代の若い恋人が事故死、質屋殺しの決定的証拠品も発見され、その後を追うかのように文代がガス中毒死、事件は被疑者死亡のまま解決を見る。だが、笹垣はどうしても腑に落ちない。被疑者の息子と容疑者の娘の姿が、いつまでもちらついて去らないのであった……。
数年後。遠戚である唐沢礼子(中村久美)の養女となった唐沢雪穂(堀北真希)は、著名なお嬢様学校、清華女子学園に通う美しく聡明な女子高生になっていた。入学当初は「昔は貧乏で、実の母親が殺人犯」という噂もあって学内でも浮いた存在だったが、噂はすぐに消え、やがて名実ともに学園のスターになっていく。大学に進学してからは、親友の川島江利子(緑友利恵)と社交ダンス部に入部、まもなく周囲を魅了する存在となる。
一方、桐原亮司(高良健吾)は、事件後実家を離れ、自活するようになっていた。以前は欲求不満のオバサン相手に性を売ることで収入を得ていたが、とある乱交パーティーで20歳も年上の典子(粟田麗)と出会い、心通うものを感じて同棲するようになる。不倫に傷つき自暴自棄になっていた典子と亮司は、互いの心の傷をそっと癒し合うようにささやかな生活を営んでいた。そんな中、笹垣は未だ質屋殺しの一件に囚われていた。やがて、自らの命までも狙われるようになった時、遂に笹垣は19年前に結ばれた確かな絆の存在に思い至るのであった……。(作品資料より)
<感想>ミステリー小説が好きで、昔は坂口安吾の「信長」「白痴」「復員殺人事件」、松本清張はその中でも「砂の器」、「顔」、「鬼畜」、「点と線」、「天城超え」、「疑惑」映画化されたのはほとんど読破。横溝正史「金田一耕助シリーズ」、と読み始めると最後まで読み終えて徹夜です。それに洋書でダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチコード」、「天使と悪魔」は良かった。もちろん他にもたくさん読んでおりますが、東野圭吾さんの小説は、映画にもなった「手紙」「容疑者×の献身」「さまよう刃」など、もちろんこの作品の原作も読んでいます。
原作は、雪穂と亮司が主人公で、小学生だった二人が児童館で知り合い仲良くなり、それから亮司の父親が廃墟ビルで殺されていた。その犯人が雪穂の母親と、母親と付き合っていた化粧品販売の男(宮川一郎太)が容疑者として疑われる。もちろん亮司の父親が質屋を営んでおり、その店員の松浦にも嫌疑がかかります。亮司の母親と店員の松浦は肉体関係があり、殺された夜のアリバイがあります。
映画の方も初めは原作と同じように進んで行くのですが、もちろん主人公は雪穂の堀北真希さんなんですが、こちらは刑事の笹垣、船越英一郎さんが事件を執念深く解決するべく目立っているようですね。亮司が切り紙が得意で、捜査をしていく場所に必ずある「切り絵」。
それもヒントの一つだったのですが、最後の方でやっと亮司の母親の口から、殺された夫の幼児愛癖を聞き、亮司の犯行だったと理解するのです。原作では、亮司は笹垣さんを殺そうとはしていませんが、映画では喫茶店のコーヒーの中へ青酸カリを混入させて殺害しようとしています。それに探偵を殺すやり方も、公園で飲み物に青酸カリを入れて殺したように描かれていますが、原作では違います。それに育ての親の雪穂のおばさんも、松浦殺しも、もっと凄いことになっているんですから。
映画の中の雪穂は、悪女そのものですね。自分の貧しい生い立ちと、生活のためとはいえ母親が娘に売春をさせるなんて、これはやはり雪穂が母親殺しを亮司に頼むのは仕方のない事でしょう。幼いころの忌まわしい出来事を、自分の生きるバネとして這い上がる女、自分の手は汚さず自分の地位を確立して行く女。
心を鬼にして男どもを手玉にとる悪女を演じた堀北真希さん、本に書いてあった陶磁器のような肌、能面のような顔立ち、ピッタリのキャスティングじゃないでしょうかね。
亮司役の高良健吾さんも台詞の少ない孤独な役柄を演じていました。笹垣刑事役の船越英一郎は、2時間TVドラマでも刑事役が上手いので違和感がなく、息子を白血病で亡くし、亮司を自分の息子のように思う父親像を演じていましたね。ラストの叫びが良かった。
それに、原作は部厚い本なので亮司が高校生のころお金儲けのために売春をしていたことだけ取り上げていましたが、いつまでもそんな商売をしている訳ではなく、ゲームソフトをPCで作成してネットで売る商売が結構儲かって、もちろん売春で知り合った薬剤師の女と同棲して青酸カリみたいな薬を用立ててもらうのは同じですね。
映画では、幼いころに事件が発生する日に亮司の父親に手を引かれて行く雪穂の後を付けて、幼い亮司の目にもの凄い現場を目撃してしまった。父親をハサミで後ろから刺して殺す映像がスクリーンに映し出され、それからの亮司は、19年間もの間雪穂の幸せのためにひたすら強姦、殺人を繰り返して彼女のために自らの人生を犠牲にしていく。いつもそっと遠くから雪穂を見つめているという、究極の愛なんですよね。昼間のまぶしい太陽を感じられない白夜のように悲しげな人生を送る二人。
二人の接点がどうしても分らない笹垣刑事、どのようにして亮司は雪穂の伝言を受けているのか?・・・それは児童館の人形の首飾りにあったんです、モールス信号ですね。
雪穂が自分の出世や結婚のために亮司を利用したのか?・・・いえ、きっと亮司の心からの謝罪、自分の父親が雪穂に犯した罪の償いと、雪穂を愛してしまったから、彼女のためなら人殺しでもなんでもやるという究極の愛ですよ。確かに間違ってはいます、被害者にとっては許されることではないと思います。亮司にはこういうやり方でしか雪穂に対して愛を示すことができなかったのでしょう。
雪穂がウェディングドレスを着ているシーンでは、亮司はどんな思いで見つめていたのでしょうね、自分が彼女のためにいろんな罪を重ねて行くと同時に、雪穂が形となって幸せになるためなら、正直いってラストは辛かったですね。あういう形でしか亮司の生き様は見せられなかったのでしょうね。
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この記事へのコメント
返事が大変遅くなり申し訳ないです(-_-;)
こちら、仙台は震災で多大な被害を受け、その後のライフラインの復帰もなかなか進まず、毎日の余震の恐怖で心の余裕がなくPCの前に座るのを控えてました。
この映画は、TV版は見てなかったのですが、原作を読んでおり、原作のサスペンスと主人公の雪穂と亮司の二人の関係が余りにも純粋な愛と捉えればいいのか、雪穂の狂気のような悪魔的心が映像であまり描かれてなかったようで残念でした。
以前、ドラマ化されて評判を
聞いていましたが今回の映画で
白夜行を体験しました。
ラストに交錯する各々想いを
考えると未だに答えが見つかりません。
何度も考えてしまいます。
エンディング曲は久しぶり、物語に
マッチしていると思いました。