2012年02月12日

永遠の僕たち3

eiennno,2「ミルク」のガス・ヴァン・サント監督が、事故で両親を失った孤独な少年とガンで余命いくばくもない少女の交流を繊細なタッチで綴ったラブストーリー。出演は、個性派俳優デニス・ホッパーの息子で本作が商業映画デビューとなるヘンリー・ホッパーと、「キッズ・オールライト」のミア・ワシコウスカ、「東京オアシス」の加瀬亮。

あらすじ:イーノック(ヘンリー・ホッパー)は、自動車事故で両親を亡くして以来、生きることを諦めてしまった少年。見知らぬ人の葬儀に、遺族のふりをして参列することが彼の趣味だった。

ある時、いつものように葬儀に参列していると、係員から問い詰められてしまう。窮地を救ってくれたのは、以前、別の葬儀で出会った少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)。この再会で2人は互いに心を開き始める。イーノックは、事故の際の臨死体験をきっかけに、ヒロシ(加瀬亮)という第二次世界大戦で戦死した特攻隊員の幽霊が見えるようになっていた。

家では、叔母とうまくいかず、ヒロシと遊んで過ごす時間が多かった。ある日、彼は再会したアナベルを両親が眠る墓地に案内する。帰宅後、イーノックのことを姉のエリザベス(シュイラー・フィスク)に嬉しそうに話すアナベル。そんな彼女の明るい表情に、エリザベスは心を軽くする。

eiennno,1実はアナベルは、ガンの闘病中だったのだ。しかも、定期健診によって、一時収まっていたガンが再発していることが明らかになる。自分の余命が3カ月であることをイーノックに打ち明けるアナベル。イーノックは、彼女にヒロシの存在と両親を失った事故の経験を告白する。

やがて、自分の葬儀を自分でプロデュースしたいと告白したアナベルに、イーノックはその準備を手伝うと約束する。それからもデートを重ねて心を通わせる2人だったが、遂にある日、アナベルが倒れてしまう。

そのショックで自棄を起こしたイーノックは、両親の墓を掘り返そうとしてヒロシに殴られ、失神。目覚めたのは病院のベッドの上。イーノックは、同じ病院に入院していたアナベルを見舞う。最期の時が近づいた彼女と言葉を交わしていると、ヒロシが彼女のお伴をしようと現れる。そして迎えたアナベルの葬儀。彼女自身がプロデュースしたセレモニーの最中、イーノックの心には、彼女との思い出が走馬灯のように巡るのだった。(作品資料より)

永遠の僕たち<感想>この作品の主人公はヘンリー・ホッパー扮するイーノックと言う青年。あの癖のある演技の個性派俳優デニス・ホッパーの息子である。お初のデビューにしては主人公の幼すぎる、いつまでも両親の死を乗り越えられない気弱な少年の役をさらりと演じている。

伯母に引き取られ成長したが、学校には馴染めず、趣味と言えば見ず知らずの人の葬儀に参列すること、・・・。そんなイーノックがある葬儀で出会ったのが、同年代のアナベル、ミア・ワシコウスカだ。『アリス・イン・ワンダーランド』のアリス役も良かったが、それとは違う繊細な脳腫瘍で余命3カ月の少女を演じている。

彼女は小児ガンの病棟でボランティアをしている、と自己紹介するアナベルは、実は自分がガンを患っていた。アナベルの死期がそう遠くないことを知ったイーノックは、アナベルに「一緒に準備をしよう」と申し出る。

死を迎える準備。まったく予期しない形で突然両親を失ったイーノックにとっては、いつ、とはっきりわからないまでも、ある程度予測できる死は恐れるに足らずだったのだろう。こうしてイーノックとアナベルは多くの時間を一緒に過ごすようになる。

死を前提に付き合い始めた若い二人の間も、やがてほのかな恋愛感情が芽生え始めるのは当然のこと。葬儀の計画を練ったり、葬儀に出す食べ物のこと、ビーンズだったり、ドーナッツにタコスなど自分たちの好きな物。子供が喜んで食べるもの。死によって結ばれた「ロミオとジュリエット」のお芝居ごっこをしてみたり、道路に寝てチョークで死体の線を描く遊び。二人の感情は激しく振れることもなく、淡々と時は過ぎて行く。

eiennnoこれだけでも不思議な映画なのに、もっと不思議なのは、イーノックの目にだけ見える幽霊がいること。そして不思議なのは、幽霊が見えることではなくて、その幽霊が第二次世界大戦で戦死した日本人青年、ヒロシという名前の特攻隊員だということである。

ヒロシは、アナベルと出会う前の孤独なイーノックと戦艦ゲームに興じたり、話し相手になったりしていた。アナベルと出会ったイーノックの前にも時々現れるけれど、別に邪魔するわけでもなく二人を見守っている様子だ。

何故日本人、何故に特攻隊員なの。脚本を書いたジェースン・リューはアジア系のアメリカ人だけれど、日系ではないらしい。それなのに、アメリカ映画に登場した日本人の中で、本作のヒロシは、初めて日本人の心に違和感なくぴたっとくるものを感じた。

永遠の僕たち、1ヒロシとイーノックの英語のやりとりを観ていても、まったくといって不自然を感じなかった。ヒロシを演じる加瀬亮が上手いのである。ヒロシは空気のようにイーノックの傍にいて、彼に大事な人に素直に愛を伝えることの素晴らしさを説く。映画で話す言葉は英語なのに、心情は間違いなく日本人そのものなのだ。不思議な感じがした。

素晴らしいのはその死の世界を乗り越えて生きようとする意志、死より生への執着を描き切っていることである。ここではそれを恋愛という形をとるわけだから、ラブストーリーには違いないが、その純粋な愛の行く着くところは死ではなく生であることを。ハロウィンの夜に森の小屋で、二人は結ばれたのをきっかけに、二人は残された時間でデートを重ねる。

ささやくような台詞、そしてみずみずしい映像、心に沁み入る音楽、完成した映画はまぎれもないガス監督の映画に仕上がっている。

アメリカ映画に出てくる日本人と言えば、小柄でメガネをかけて、やたらおじぎをする。この作品の中でもおじぎの存在を明らかに現わしているのだが、日の丸のはちまきをして不思議な英語を話す。戦後アメリカに占領されていた日本が、目覚ましい復興を遂げ、逆に日本企業がアメリカ、海外へ進出していったことで、日本人に対するイメージが少しづつ変わってきたのではないかと思う。

脚本と監督の相性が良かったのだろう。それにしても現代アメリカを舞台にした映画で、こんなにしっかりと日本人が描かれたことは、嬉しい驚きでもあります。
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papikosachimama at 09:22│ 2012年劇場公開作品鑑賞 | あ行の映画

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