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2011年劇場公開映画 TOP 40 【第10位〜第1位】

2011年劇場公開映画 TOP 40
長々と続けてきましたが、遂にBEST10 の発表です。

このあたりになると、意外性は少なく
割と無難な作品が並んでいるかなと思います。
皆さんにも納得して頂けるのかな、と。

ちなみに
自分のなかでは、第5位からはランクが別段に上がります。
更に、BEST3 に関しては更に別格の扱いです。
2011年、今年も本当に素晴らしい作品に巡り合えました。

来年も心に残る映画に出逢いたいものです。


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第10位

『ブラック・スワン』




【監督】
ダーレン・アロノフスキー

【出演】
ナタリー・ポートマン
ヴァンサン・カッセル
ミラ・クニス
バーバラ・ハーシー
ウィノナ・ライダー
バンジャマン・ミルピエ

【物語】
ニューヨーク・シティ・バレエ団に所属するバレリーナ・ニナは、踊りは完ぺきで優等生のような女性。芸術監督のトーマスは、花形のベスを降板させ、新しい振り付けで新シーズンの「白鳥の湖」公演を行うことを決定する。そしてニナが次のプリマ・バレリーナに抜てきされるが、気品あふれる白鳥は心配ないものの、狡猾で官能的な黒鳥を演じることに不安が募り始める。

− comment −
母の過保護の元、優等生として生きてきたニナ。
次公演での主役に抜擢された彼女は
純真無垢な白鳥と、官能的で退廃的な黒鳥という
相反する役を演じきらなければならなくなるんですね。

初めての大役を担う重圧、焦燥感に
やがて精神のバランスを崩していくんですが…。

ニナという生真面目なバレリーナの姿に
ナタリー・ポートマン自身、または彼女の女優としてのキャリアをオーバーラップさせて
この映画を観た方も多いんじゃないでしょうか。

彼女の鬼気迫る迫真の演技は
やはり手放しで評価するに値すると思います。
ホント、素晴らしいです!

単なるバレエ映画ではなく
「虚構」と「現実」が交差する第一級のサスペンスとしても
非常に完成度の高い作品です。


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第9位

『監督失格』




【監督】
平野勝之

【音楽】
矢野顕子

【出演】
林由美香
平野勝之
小栗冨美代
カンパニー松尾

【物語】
35歳の誕生日直前に急逝した女優林由美香の日常を、14年間にわたりひたむきにカメラが追い掛ける。林の元恋人でもある『由美香』の平野勝之がメガホンを取り、彼にしか撮り得ない映像を映し出す。身近な人との出会いと別れ、そしてそこからの再生を描いたリアルなドキュメンタリー。

− comment −
カメラは、林由美香の遺体が横たわるマンションの一室にあった。
そこに映し出される一連の映像は
あらゆる人間の感情を飲み込んでも余りある
異様なまでの迫力に満ちている。

ドキュメンタリー映画としては
個人的に『ゆきゆきて神軍』や『ヨコハマメリー』以来の衝撃だった。

愛する人を失った人間の途方もない哀しみ。
愛する人の面影を追いながら生きる日々の苦しみ。
そんな、絶望という深溝からどうにか這い上がろうとする人間の真の姿が
この作品には痛々しい程鮮明に刻み込まれている。

この作品を観て、劇場を後にしながら想った。
死んではいけないと。
せめて与えられた人生は全うしなければならないと。

矢野顕子が書き下ろした曲は
平野勝之監督と林由美香へのラブソングだろう。

あんたら、どうしようもないバカタレだ!
呆れるほどしあわせなバカタレだよ!


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第8位

『塔の上のラプンツェル』




【監督】
バイロン・ハワード
ネイサン・グレノ

【出演】
マンディ・ムーア
ザカリー・リーヴァイ

【物語】
深い森に囲まれた高い塔の上から18年間一度も外に出たことがないラプンツェルは、母親以外の人間に会ったこともなかった。ある日、お尋ね者の大泥棒フリンが、追手を逃れて塔に侵入してくるが、ラプンツェルの魔法の髪に捕らえられてしまう。しかし、この偶然の出会いはラプンツェルの秘密を解き明かす冒険の始まりのきっかけとなる。

− comment −
ディズニーは、なんでこんな素晴らしい映画をつくれるんでしょうか(笑)。
もし自分が女の子の父親になる時が来るなら
子供には、この映画を必ず観せてやりたいですね。

これ以上の褒め言葉は、ないんじゃないですか(笑)。


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第7位

『50/50 フィフティ・フィフティ』




【監督】
ジョナサン・レヴィン

【出演】
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
セス・ローゲン
アナ・ケンドリック
ブライス・ダラス・ハワード
アンジェリカ・ヒューストン

【物語】
酒もタバコもやらない陽気な青年アダムは27歳でガンを患い、5年の生存率は50パーセントと宣告される。職場の同僚や恋人、家族が病気を気遣い神経質になっていく中、悪友カイルだけはいつも通りに接してくれていた。何とかガンを笑い飛ばそうとするアダムだったが、刻々と悪化していく病状に動揺を隠せなくなってしまう。

− comment −
この映画、ざっくり分類するならば
所謂「難病モノ」なんですが、重くないんです。
逆に鑑賞後、希望に満ち溢れた前向きな気持ちにさえ、なれる。

癌に侵された、几帳面で真面目過ぎる青年アダムと悪友カイルの
二人の遣り取りからして、ユーモラス。

「生存率は50%なんだ」
「悪くないじゃないか!カジノじゃボロ儲けだ!」

「オレ、癌患者なんだよ。モテるわけない」
「馬鹿言え、それでナンパすりゃ大成功だよ!」

一歩間違えると、不謹慎にも捉えられる台詞だとは思います。
カイルはアダムをダシにして、ナンパするし
傍から見れば最悪なヤロウなんですけどね。

でも、それは劇中のアダムとカイルの関係性を丁寧に描く事によって
観ている我々も二人の遣り取りを素直に受け入れられるんです。
後に、奔放な言動を続けるカイルの真意が分かる描写もあって
結果「お前、いいヤツじゃあねぇかよ!」って思っちゃうんですよね(笑)。


この作品が伝えるのは
「死」を意識することによって「生」の喜びを知る、って事だと思います。

『最高の人生の見つけ方』って映画も記憶に新しいですが
万人、当たり前だと思っていた人生にも終わりはあるわけです。
普段そんな事意識もしないで生きてますけど
じゃあ、実際「あと半年しか生きられない」って宣告されたら、どうしますかと。

そう考えると
いま生きているこの瞬間が、
変わらず迎える明日という日が
とても貴重な時間に思えるんですよね。

この人生を無駄なく大切に生きなきゃ
家族や友人、恋人を大切に想わなきゃいけないなって。
これって、とっても大切な感情ですよね。

そんな気持ちをそっと思い出させてくれる、
それがこの映画の素晴らしさだと思います。


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第6位

『キッズ・オールライト』




【監督・脚本】
リサ・チョロデンコ

【出演】
アネット・ベニング
ジュリアン・ムーア
マーク・ラファロ
ミア・ワシコウスカ
ジョシュ・ハッチャーソン
ヤヤ・ダコスタ

【物語】
同じ父親を持つジョニと弟レイザーは、それぞれの母親と一緒に仲良く幸せに暮らしていた。そんなある日、自分たちの父親ポールの存在が気になり始めた姉弟は、2人で彼を訪ねる。そのことがそれぞれの母親ニックとジュールスに知れたことから、家族の関係がきしみだす。

− comment −
同性愛の母親二人と精子提供者の男、そしてその子供たち。
いままでありそうでなかった家族の物語と言えるんじゃないでしょうか。

この設定で、しっかりした家族の物語として
纏め上げたリサ・チョロデンコ監督に脱帽です。
更に、アネット・ベニングやジュリアン・ムーアほか
出演者みな、素晴らしい演技だったと思います。

終盤、大学寮の自室で独り佇むジョニが
何気なく振り返る場面からの一連の流れ。
このシークエンスだけで、この映画は今年のBEST10に入るなと
思っていました(笑)。

映画を観て「コレ、単純に面白かったよ」って率直に一言、稀に言うんですが
この作品もまさにそれでしたね。
小粒な作品ながらも、傑作ですよ。


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第5位

『冷たい熱帯魚』




【監督・脚本】
園子温

【出演】
吹越満
でんでん
黒沢あすか
神楽坂恵
梶原ひかり

【物語】
熱帯魚店を営んでいる社本と妻の関係はすでに冷え切っており、家庭は不協和音を奏でていた。ある日、彼は人当たりが良く面倒見のいい同業者の村田と知り合い、やがて親しく付き合うようになる。だが、実は村田こそが周りの人間の命を奪う連続殺人犯だと社本が気付いたときはすでに遅く、取り返しのつかない状況に陥っていた。

− comment −
2011年で最も衝撃な映画、といっても過言ではないのではないでしょうか。
日本映画もここまでやれるんです。
ある意味、一線を越えた園子温監督には拍手を送りたいですね。

余談ですが、確かこの映画の撮影直前に
園子温監督は同棲していた女性と別れて
相当、女性に対する不信感というか、感情の膿が溜まっていたそうです。

それを踏まえて観ると…
女性に対する容赦ないまでの甚振り具合が納得出来る、というか(笑)。
半端ないですね。

『冷たい熱帯魚』に関しては
真夜中独り鑑賞会 第五十一夜もご覧ください。


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第4位

『メアリー&マックス』




【監督・脚本】
アダム・エリオット

【声の出演】
フィリップ・シーモア・ホフマン
トニ・コレット
エリック・バナ
バリー・ハンフリーズ
ベサニー・ウィットモア

【物語】
メルボルンに暮らす8歳の少女メアリーは、ある日アメリカに住む誰かに手紙を送ろうと思い立ち、電話帳から選び出した人物に手紙を書き始める。そしてニューヨーク、人付き合いが苦手で一人孤独な日々を送っていた中年男マックスのもとに、オーストラリアから一通の手紙が届く。それを機に、メアリーとマックスの2つの大陸をまたいだ20年以上にわたる交流がスタートする。

− comment −
昔から『ウォレス&グルミット』が大好きで
だからクレイアニメーションは手放しでも評価してしまう体質ではあるんですが
そんな贔屓目を差し引いても
この映画には賞賛の拍手を送りたいですね。

44歳にして引篭もりの冴えない男と
顔に大きなシミのある地味な女の子。
そんな、決して人生の表舞台には立たないような
日陰に咲く花、いや雑草ともいえる二人の交流の物語なんです。

主人公二人の要素を兼ね備えてる僕なんかは
もうね、終始感情移入しまくりなんですよね(笑)。

何にもない人生に思えていたけど
彼らにも陽の光が差し込む瞬間があったんです。
例え、それがほんの一瞬であったとしても…。


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第3位

『イリュージョニスト』




【監督】
シルヴァン・ショメ

【脚本】
ジャック・タチ

【声の出演】
ジャン=クロード・ドンダ
エルダ・ランキン
ダンカン・マクネイル
レイモンド・マーンズ
ジェイムズ・T・マイヤー
トム・ユーリー
ポール・バンディ

【物語】
1950年代のパリ。場末の劇場やバーで手品を披露していた老手品師のタチシェフは、スコットランドの離島にやって来る。この辺ぴな田舎ではタチシェフの芸もまだまだ歓迎され、バーで出会った少女アリスはタチシェフを“魔法使い”だと信じるように。そして島を離れるタチシェフについてきたアリスに、彼もまた生き別れた娘の面影を見るようになる。

− comment −
フランスの喜劇王ジャック・タチの遺稿を
『ベルヴィル・ランデブー』のシルヴァン・ショメ監督が
上質なアニメーションとして映画化。

主人公の老手品師のタチシェフに、ジャック・タチの面影が重なるんですが
言ってみれば、いまは亡き俳優の新作を観ているようなものなんですよね。
アニメーションとは言え、ファンにとっては心底嬉しいハズですよ。
このやり方って、ありだと思いますね。

作品としても、本当に素晴らしい。
本当に、ホントに素晴らしいです!
アニメーションだからといって侮るなかれ!!!!!!
『ベルヴィル・ランデブー』の独特な世界観が肌に合わなかった方も
この作品の完成度には驚愕するに違いありません。


老手品師のタチシェフと少女アリスが過ごすひととき。
タチシェフの眼差しは透き通るほどの優しさに満ち
アリスの純粋さは、老手品師に仄かな安らぎを与えるんですね。

しかし、アリスとの時間は永遠ではないとわかったとき
タチシェフはある決意をするんですが…。

嗚呼、なんて美しく切ない物語!
実写では描ききれない、アニメーションとしての利点を最大限に活かした
稀に見る傑作、といっても過言ではありません。

是非、何度も観て、細かい部分の演出にも目を配ってください。
涙腺決壊の欠片が、見つかるハズです。


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第2位

『ブルーバレンタイン』




【監督・脚本】
デレク・シアンフランス

【出演】
ライアン・ゴズリング
ミシェル・ウィリアムズ
フェイス・ウラディカ
マイク・ヴォーゲル

【物語】
結婚7年目を迎え、娘と共に3人で暮らすディーンとシンディ夫妻。努力の末に資格を取って忙しく働く妻シンディに対し、夫ディーンの仕事は順調ではない。お互い相手に不満を募らせながらも、平穏な家庭生活を何とか守ろうとする2人だったが、かつては夢中で愛し合った時期があった。

− comment −
映画史に残る作品、いや残すべきだと思います。
これほどまでに真実味のあるラブストーリーは、滅多にありません。
誰もがきっと共感できる物語ではないでしょうか。
心に痛い映画ですが、目を背けず観るべき作品ですね。

今年9月、本作DVD発売に合わせて、
意外と真面目に映画評を書いたものを
BLOG にも掲載したので、是非そちらをご覧ください。
CINEMA HOLIC !! vol.39

原稿を書き、本作の担当者に送ったところ
「色々な解釈が出来る映画なんで、断定するような書き方はちょっと…」と言われましたが
いやいや、これが僕なりの解釈なんで。
頑なにリライトはしておりません(苦笑)。


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第1位

『その街のこども 劇場版』




【監督】
井上剛

【出演】
森山未來
佐藤江梨子
津田寛治

【物語】
阪神・淡路大震災で子どものころに被災するも、現在は東京で暮らす勇治と美夏は、追悼の集いが行われる前日に神戸で偶然知り合う。震災が残した心の傷に向き合うため、今年こそ集いに参加する決意をした美夏に対して、勇治は出張の途中に何となく神戸に降り立っただけだと言い張る。

− comment −
『イリュージョニスト』も『ブルーバレンタイン』も、僕にとっては大切な映画だったので
2011年のベスト1選出は相当に悩みました。
本当に甲乙付け難いんですね。
だけど、今年はやはりこの作品を第1位にすべきなんだろうと想いました。

阪神・淡路大震災15年特集としてNHKで放送されたドラマを
再編集して映画化された作品です。

かつて、「こども」だったころ。
震災を経験した若いふたりが
「その街」に戻り、ただひたすらに歩く。

その道程で浮かび上がる様々な記憶や、想い。
忘れたい過去、いや、決して忘れてはならない過去。
それらを共有しながらも、ふたりは、ただひたすらに歩いてゆく。
追悼の場所へ。

83分という時間に凝縮された
シンプルながらも濃密な、人間ドラマです。

余計なコメントは不要です。
2011年最も優れた映画として、相応しい。
是非とも、多くの方に観てほしい、映画です。

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