2017年08月03日

_SX343_BO1,204,203,200_「1984年のUWF」を読む。プロレス、特にUWFを信奉していた者にとっては衝撃の書といえる。少なく自分にとっては「ミスター高橋本」や「1976年のアントニオ猪木」と同じくらいの驚きだった。これまでUに関するこの手の本を読んだことがなかったというのもあるし、何より、自分が80年代のある時期、前田日明に憧れ、新生UWFを熱く支持していたからにほかならない。
わたしが最初にプロレスの魅力にはまったのは74年の猪木v小林戦。以来、猪木と新日を中心にしつつ、一方で全日の外国人闘争も好きでよく見ていた。つまり、猪木の格闘技路線やタイガーマスク、長州力も、馬場やファンクスも差別や区別することなく、それぞれのレスラーが提示するプロレス道をファンとして純粋に楽しんでいた。プロレスそのものが好きだったのだ。時代的には猪木全盛期だったため、馬場を指示する人間はまわりに全くおらず、あまのじゃくな自分はひとりで「馬場は強い」を公言していた。勢いで、「タイガーより大仁田」なんてことも言っていた。
なので、自分にとって、プロレスが八百長であるか否かという問題は考えたことがなかったし、耳に入ってきたとしても、あるいはテレビ中継を見ていて、猪木が必ず時間内に相手をフォールしていたとしても気にならなかった。会場にもよく足を運んだ。しかし、それまで気に留めていなかったことに、意識を向かわせたレスラーが前田日明だった。第一次UWF崩壊後、新日に戻って来たときの前田のスタイルは、それまで自分が観てきたプロレスとは異質なもので、スタイルだけでなく、前田の戦う時の目やオーラに真剣勝負を感じさせた。それ以前のプロレスが真剣ではないというわけではないが、前田の繰り出す蹴りや、それを受けて痛がるレスラーの表情から、リアルな何かを感じたのだった。
その象徴的な試合が、大阪城ホールでの藤波辰巳戦。猪木が避け続けた前田の本気を正面から受け止め、前田の良さを引き立てた藤波も見事だったが、終始前田のヤバさが際立った試合で、当時何度も録画したビデオを見返した。結果的にこの試合で藤波に大けがを負わせてしまうのだが、藤波の額から流れる大量の血に、いままでのプロレスではないリアルを感じた。自分も若かったし、また毎週購読していた週刊プロレスの影響もあり、一気に前田にのめり込んでいった。その後、前田は長州の顔面襲撃事件がきっかけで新日を解雇されてしまうのだが、この時の事の動きや流れは、毎週ドキドキしながら週プロを読んでいた。
そして、新生UWF設立。この時後楽園ホールで行われた旗揚げ興行ほど、心から行きたいと思った興行は、コンサートを含めて他になかった。それくらい見たかったのにチケットは取れず。テレビ中継もなければ、ネットもない時代、翌日の東スポを読み、前田v山崎の一戦を頭の中で妄想するしかなかった。初めて生で観たUはその年夏の有明コロシアムの前田vボルドー戦。試合自体大したことはないのに、Uは本気であると思い込みと、前田のカリスマ性、そしてその場の雰囲気にすっかり魅了された。しかし、その後、武道館や横浜アリーナでUを観たが、この時の有明が頂点だった気がする。自分の気持ちも徐々にUから離れていき、プロレスからも遠ざかっていった。
「1984年のUWF」には、自分が真剣に見ていたリング上の戦いの裏側の事情が生々しく書かれている。つまり、Uは真剣勝負ではなかったと言うことなのだが、今になって冷静に文章で読まされると、結構な衝撃だ。前田vゴルドー戦も最初から勝負が決まっていたなんて……。あの時の自分は一体なんだったのだろう、と同時に、早々にUから離れてよかったとも思ったり、複雑な気持ちはぬぐえない。騙していたUが悪いのか、騙されていた自分が馬鹿なのか……。Uがあったから総合格闘技ブームが起こったと言う側面は評価しつつも、全体に内幕暴露で、何もそこまで知らなくてもというところもあるが、面白いので読んでしまう。最初のU設立の経緯は知っていたものの、そこに佐山が加わって離れて行った理由や団体の経済事情、とりまく人間関係、そして前田の人間性への言及は興味深かった。これを読んだ前田はどんな気持ちになるのだろう。ちょっと怖い。
今となっては、プロレスにはなんの思い入れもないが、あの頃を思い出すと、好きなレスラーの名前はたくさん浮かぶし、名勝負も思い出すことはできるが、前田はけして自分の中で上位ではない。名勝負も藤波戦のみだ。時代の空気とメディアの操作により、一時的にUにのめり込んだだけだったのだということを読後に確認した。






(23:17)

2017年07月15日

Wayne-Rooney-signs-for-Manchester-Unitedルーニー、エバートン移籍。昨シーズン後半の使われ方やルーニーの動きを見ていて、来期ユナイテッドでの活躍は厳しく難しいと思っていたので、ある程度覚悟はしていたけどやっぱり残念。心の準備が出来ていたからショックは軽減されたけど、長年ユナイテッドを見てきた身としては、ベッカムやロナウドの移籍やファーガソン勇退の時以上に悲しい。ユナイテッドのルーニーがもう見れないなんて、まだちょっと実感がわかない。
この20年超のプレミア・ライフのなかで、いちばん思い入れのある選手はルーニーであることは間違いない。このブログで最も登場回数の多いのはルーニーである。2004年に移籍した時どんなに嬉しかったことか。以来、CL優勝、プレミア優勝ほか、多くのビューティフル・ゴールで感動をくれた選手はルーニーのほかにいないし、ユナイテッドでの250ゴールのほぼすべてを見て、いろいろなポジションで献身的にプレーするルーニーに何度も心が熱くなった。自分にとってのミスター・ユナイテッドは、ベッカムでもギグスでもなくルーニーである。もう自分にとって、ルーニー以上の選手は出てこない気がする。
感動したゴールは数限りなくあるが、移籍間もないころのニューカッスル戦でのダイレクト・シュートやシティ戦での芸術的なバイシクルシュートやCLミラン戦の勝負を決めたゴール、そして昨年の記録樹立のゴールも忘れられない。振り返ってみると、2000年代、ロナウドと一緒だった背番号8の時代がいちばん輝いていた気がする。ルーニーを生で観たのは2005年の来日(国立の鹿島戦とさいスタの浦和戦)と2006年のオールドトラフォード(ブラックバーン戦)の二度だけだけど、とくにさいスタの浦和戦は最前列の席だったので、ルーニーの練習を近くで見ることができて、しかもしかも2ゴールの活躍だったので大感激した記憶がある。
といっても、ルーニーは引退するわけではない。まだ32歳で、エバートンでもう一花咲かせそう。エバートンでのデビュー戦、アーセナル戦のゴールは本当に凄かった。当時16歳だから、あれから16年も経った。




(19:21)

2017年07月09日

fig_release_limited7月2日、横浜アリーナでYUKIのライブを観る。YUKIのライブは2015年11月の武道館以来、横浜アリーナで観るのは2011年のMEGAPHONIC以来。
自分にとって、2011年のMEGAPHONICのライブは特別なものだ。ライブの構成、ファンの盛り上がり、バンドの完成度、YUKIの状態から見て、いちばんよかったライブが2011年のMEGAPHONICであり、震災からそんなに時間の経ってない中で、気持ちを前向きさせてくれたのがあの日のYUKIのステージだった。ライブDVDも出色の出来だ。
ファンとはいいつつも、ニューアルバム「まばたき」は買ったもののそんなに真剣に聴いていないし(ジャケからオノ・ヨーコを想起)、最近はライブそのものにも興味が薄れている。ドームのポールも武道館のローゼズもいまいち楽しめなかった自分が、ちゃんとYUKIのライブで盛り上がれるのか、不安を抱きつつ横浜アリーナへ向かった。日曜なので、16時開演ということで、ファンの出足は早く、15時に会場に着いたもののグッズは長蛇の列で諦める。タオルが欲しかった。その列を横目で見つつ、席に向かうと、スタンド1Fながらステージには近く、わりと見やすい席。センターステージに来てくれたら肉眼でもよく見えそうと、気持ちが高鳴る。
1曲目はニューアルバムの「暴れたがっている」で2曲目は「うれしくって抱きあうよ」から「プレゼント」。この曲を歌うのは久しぶりのような気がする。私が最初に見たYUKIが「うれしくって抱きあうよ」ツアーの国際フォーラムだった。続いて、「ドラマチック」「ハローグッバイ」の名曲シングル2連発で、昇天。やはり、YUKIは最高だ。「四の五の言ってんじゃないよ!とにかく私を見て、楽しんで!」という歌から発せられるメッセージに気持ちが自然と前向きになる。中盤はニューアルバムからの曲をメインに構成しているが、良い曲が多く、ちゃんと聴かねばと言う気にさせられる。
とくによかったのはセンターステージでアコースティック編成で歌った「Hello!」。2011の横浜でも印象的だったので、今日も歌ってくれないかなとひそかに期待していたら、歌ってくれた。「くだらない じょうだんで わらいあおうだきしめて あたためて わかちあおう」というこの曲歌詞は、YUKIの曲の中でも特に好き。もう1曲は「2人のストーリー」。ライブでこの曲を完璧に歌うYUKIを見たことがなかったので、もうライブで歌うことはないのではないかと思っていたから、驚きつつ、大好きな曲なので、歌ってくれたことに心の中で歓喜した。この日のYUKIは声の状態がよく、不安定な部分がなかった。この日が横浜アリーナ2目出会ったことを考えれば、このツアーの好調ぶりがわかる。
それにしても、充実したセトリだ。「歓びの種」が聞きたかったけど、そんなことが気にならないほどの満足感。前のツアーの方程式を捨てて、最後を新曲で締めるなんてことも、自信がないとできないこと。2時間半、ほぼ休みなしで全力投球で乗り切った、スタミナ、姿勢、歌への愛情、プロ根性に改めて感服。また観たい!追加公演の発表を待ちたい。




(16:59)

2017年06月01日

519_1920x1080マンチェスターユナイテッドがELファイナルでアヤックスを下し、ELカップを制した。様々な大会で優勝を飾ってきたユナイテッドだが、ELは初の栄冠だという。久々に早起きしてのテレビでの生観戦。アヤックスとの実力の差がありすぎて、好試合ではなかったが、優勝の瞬間は久々に歓喜し、興奮してしまった。どんな大会であってもサポートしているクラブの優勝は嬉しい。
しかし、今年のユナイテッドは不思議なチームだった。強いのか弱いのか、評価が定まらないままシーズンが終わってしまった印象が強い。プレミアリーグは18勝5敗15引き分けで勝ち点69の6位。15引き分けという数字に表れているように、ここ一番の詰めが甘く、格下相手の勝てる試合を何度も引き分けにされてしまった。最後も4位の可能性があったのに、簡単に連敗して脱落してしまった。いくらELとの兼ね合いがあったとしても、以前のユナイテッドにはない消極的な試合にがっかりだった。強豪相手の試合でも最初から引き分け狙いのような戦いが多く、積極的に勝ち点を取りに行ったのはホームのチェルシー戦くらい、全体的に面白みと迫力に欠ける試合が多かった。名試合も少なかった。
そもそも戦力不足なのだろうか。モウリーニョが連れてきたイブラヒモビッチとポグバはとてもよくやっていたと思うが、他では、マタ、ラシュフォードとデヘアくらいしかコンスタントに活躍した選手が思い当たらない。皆、実力を持っているのだろうが、小さくまとまった選手が多い。その象徴的存在がエレーラのような気がするが。モウリーニョ就任一年目で戦術が浸透していなかったのだろうか。モウリーニョの存在感もかつてのような凄味や威光が薄れていたのも気になるところではあった。ELに優勝したことで来季は久々にCLに参加するユナイテッド。どういう補強をするのだろうか。誰が残り、誰が出ていくのだろうか。余剰人員気味ゆえ、気になるところだ。
そんなことを書いている自分の中のユナイテッド熱は以前から比べるとかなり低くなっているのは否めない。全盛期だった02年〜05年くらいが100とすると今は30くらいだと思う。Jスポーツで生で見られなくなったことで、いまひとつ関心が薄れてしまった。試合があったことを忘れていて、あとで気づいたことも多数あった。来期はCLにも出るし、サポーターとしても気持ちを入れ替えねばならない。と言う意味で、そろそろJスポーツに見切りをつける時期なのかもしれない。




(23:11)

2017年05月27日

6829563725月14日のイングランド・プレミア・リーグ、スパーズvユナイテッド戦をもって、ノース・ロンドンの由緒あるフットボールスタジアム、ホワイトハートレーンの歴史に幕が下ろされた。スパーズ・サポータではないものの、過去三度、最近では4年前に行ったスタジアムだったので、愛着があり、一抹の寂しさを覚える。
最初にWHLを訪れたのは1997年暮れのアーセナル戦。ロンドン・ダービーというのに当日券を買うことができた。席はゴール裏。この時大掛かりな改修工事をしていたため、吹きさらし状態で試合を観戦した。スパーズにはクリンスマン、ジノラ、キャンベル、アーセナルにはベルカンプ、プティ、アダムスなどがいた。次は2003年くらいの1月、対戦相手はチェルシー、確かリーグカップの準々決勝だった。チェルシーにはハッセルバインク、スパーズにはロイ・キーンがいた。そして、2013年は12月のリバプール戦で、スアレスがハットトリックを記録し、0-5でスパーズを粉砕、この試合限りで監督が解雇された。
私がこのスタジアムを気に入っている点は、まず場内の雰囲気が特段素晴らしいこと。イングランドのスタジアムはどこに行っても感動するが、ここはそれほど多くないキャパも関係しているのか、サポーターの声援の成り方がまるでロックコンサートのように聞こえ、その臨場感が半端ない。いろいろなスタジアムでそのホームチームのサポータのチャントを聴いたが、ここでの「聖者の行進」が一番だったと断言できる。邪魔だと評判の悪い大きな柱も昔ながらの伝統を感じさせるし、場内に漂う芝と土の匂いにフットボールを見に来たことを五感で気づかせる。さらにはスタジアム周辺のいかがわしい雰囲気にイングランド・フットボールのリアルを見ることが出来る。地下鉄の駅から徒歩30分という不便さもまた良い。駅からスタジアムに向かう途中にあるパブや多国籍料理屋で時間を潰したことが懐かしい。
そんなWHLでの個人的なベストマッチは、2001年に行われたスパーズvユナイテッド戦。ユナイテッドは前半だけで3点を失うも、後半5点入れて大逆転というスリリングな試合があった。ベッカム、ギグスがメインでやっていた頃の話。テレビの前で大興奮した記憶がある。WHLで活躍した好きなスパーズ選手はクリンスマン、ジノラ、キーンといったところ。
思えば、ここ数年で親しみのあったスタジアムが軒並み姿を消している。メインロード、アプトンパーク、ハイバリー、そしてWHL。もう一度行きたかったと思うと同時に4年前に行っておいてよかったと、心から思う。





(02:45)

2017年05月04日

PM_OneOnOne_Programme_Interior_F-2生涯のマイ・アイドル、ポール来日。普通なら大手を振って上を下への大騒ぎなのだが、今回はまったく気持ちが上がらず、盛り上がってる人たちを冷めた目で見るだけだった。普通なら今までのように東京公演全制覇するのだが、今回はドーム最終公演のみ。念のため、自分の気持ちを確認するため、初日の武道館へ様子見に行ってみたものの、当日券を買うまでには至らず、1曲だけ外で聴いてみようと思ったものの、寒さに耐えきれず、開演前に退散。完全にやる気がない。
この気持ちの変化は何なのだろう。2013年から2年おきに来日していることもあって、貴重さやありがたみはひとつもない。セトリも大きな変化がなく、新鮮味や驚きもない。ステージでポールがビートルズやウイングスやソロ曲を歌うというだけ。それが重要なことは分かっているが、それだけならば1日だけ見れば十分という判断だったわけだ。案の定、最終日の公演を観た後、それは間違っていなかったことを確認した。「ハード・デイズ・ナイト」「ジュニアズ・ファーム」「ラブ・ミー・ドゥ」「ユー・ウォント・シー・ミー」を初めて聞けたことは嬉しく、部分部分で楽しめたことは事実だが、アンコールでやっていたファンをステージに上げての欽ちゃん顔負けの素人いじりがライブの流れをぶった切ってしまっていたことは否めず、そしてなにより全体にこなしている感が強く、定番の「アビーロード・メドレー」にも感動はなかった。感動したのは声のでなくなった「メイビアイム」や「レット・イット・ビー」を一生懸命歌おうと言うとするところ。ここばかりはさすがにグッと来たが、楽しみにしていた「ヒア・ゼア」のピアノ・バージョンは聴けなかった。
あれだけポールのことが好きだったのに、なかなか良いところが見つけられない。90年の来日の際、伊藤銀次がFM雑誌で書いていたような酷評を自分が書くとは……。あの記事を読んだときすごく憤慨したのに……。でもそれはきっと、ポールが75歳になろうとしているのに元気でステージに上がっているから言えること。まだポールに何かを期待していると言う証拠。「See You Next Time!」と言っていたけど、また来るのか。来そうな気もするし、来ないような気もする。けど、来たらまたとりあえず1日は行くのだろう。とりあえず、「フラワーズ」のデラックス盤は買わねば。



(00:54)

2017年03月11日

Teenage Fanclub - Everything Flows EPティーンエイジ・ファンクラブ公演から早1週間、iPodで彼らの音楽を聴きながら、改めて幸せな二日間だったなと振り返る。いま思い返しても、胸がキュンとするくらい、素晴らしいライブだった。
初日は横浜ベイホール。ここを訪れるのは2年前のポール・ウェラー以来、本当は去年モリシーで来るはずだったのだけど、無念のドタキャン。そして今年はTFC。あのキャパゆえ、即完だと踏んでいたのに、思いのほか出足が遅かった。平日の横浜、駅から徒歩20分は相当なハンデだったよう。開場前に会場付近にいた人の数はわずかで、ちょっとさびしい感じ。最終的に満員にはなっていたが、ポール・ウェラーの時に比べるとさすがに少なかった。ここでモリシーがやったらホントに騒動になっていただろうなと想像してしまった。
定刻19時半きっかりに公演がスタート。ステージに登場したフロントの3人はすでに50代、さすがに年をとった。95年の2回目の来日からすべてのツアーを見ているが、いつからああいう風貌になったのだろうか。95年の時はきっとグランジ・ロック・バンドのような見た目だったのだろうが、それも思い出すことができない。いや、その時から今のような雰囲気だったような気もする。不思議なバンドだ。ただ、モッシュ&ダイブが繰り広げられていたライブだったことだけは覚えている。22年前はそういうバンドだったのだ。
運よくほぼ最前で見ることができたが、逆に近すぎて全体像がつかめず、音のバランスもよろしくない。演奏のクオリティがリハ・レベルと言うのではないが、まるでグラスゴーにある彼らのリハスタにお邪魔しているかのような距離感。おもてなしの紅茶が出てきそうな親近感だ。ノーマンの服装もまるで普段着。それはそれで楽しい。今までの来日では見られなかった貴重な体験だ。曲は新譜の「Here」を中心に進めるのかと思ったが、それほど多くはなく、全キャリアから万遍なく選曲されていて、思わず歌詞が口を突く。自然と口ずさんでしまう、ロックなのにシャウトすることなく朴訥と謳う3人のボーカルに味わいがあり、けして派手なプレイではないのに、心を鷲掴みしてしまうレイモンドのギターソロもまた彼らのサウンドの肝。これみよがしではなく、的確にハモッているコーラスにも心が揺さぶられてしまう。だいぶスローになった「Everything Flows」に彼らの今が感じられ、思わず涙。大満足のライブだった。
翌日の会場は、前日とは打って変わって最新型のクラブ、六本木のEXシアター。この日はチケット完売ということで、雰囲気も良好。開場待つ間、皆TFCのことが好きなんだと思うと嬉しくなった。前日同様最前のほうからステージを見たが、サウンドもクリアで迫力あり、ボーカル、ギターフレーズ、ハーモニーもよく聴こえた。特にドラムの音が全体に迫力を与えていたように思う。セットリストは2曲目が「RADIO」になり、アンコールで1曲増えたほか、前日とほぼ変わらず。前日と「ほぼ同じライブなのに、全く違った印象。「Don't Look Back」「Sparky's Dream」「The Concept」はダイブ&モッシュこそないものの、皆、大きな声を出して一緒に歌い、20年前のような盛り上がり。この幸せな雰囲気こそが彼らのライブの真骨頂だ。
この日も「Everything Flows」のスロー・バージョンでお開き。なんなのだろう。この曲の魅力は。心を中をかきむしられるような感動が襲う。最後のレイモンドとノーマンのギターソロで涙が頬をつたう。改めてこの日に思った。「Everything Flows」は私の人生最後に聴きたい曲であると。TFCのように年を取っていきたいと。そして、TFCは不動の心のベストテン第1位バンドであると。



(00:52)

2017年02月26日

小沢健二新譜中古問わず、CDを買うこと自体が少なくなっているなか、小沢健二のシングルCD「流動体について」を発売日に買った。シングルCDを発売日に買ったのはいつ以来だろうか?と、思い出せないくらい久しぶりのことだった。
小沢健二に関して、私は遅れてきたファンだ。王子様全盛期をリアルタイムで知ってはいるが、当時は恥ずかしくて聴くことができず、隠遁生活に入る少し前、『球体』のアルバムやシングルを細かくリリースしていく辺りから気になり出し、後追いでそれ以前のCDを集めた。聴けば聴くほど、彼の音楽性や言葉にはまりファンとなり、全盛期のライブを体験できなかったことを悔やむばかりだった。
それゆえ、2000年のツアー再開の報は歓喜し、入手困難のチケットは意地でゲット、横浜とNHKホールのライブを見ることができた。いまだに自分の見た日本人アーティスト最高ライブはNHKホールで見た小沢健二だ。その後も初台で一度、昨年のZEPPも抽選でチケットを当ててみることができた。
今回リリースされた新曲は昨年のツアーでも披露されていた曲。でもほぼ記憶になく、CDで聞いても思い出すことができなかった。ほかにいい曲があったんじゃなかったかと思うほど。しかし、この曲は聴けば聴くほどにいろいろなことを考えさせられる。「流動体について」というタイトルがまず不明だし、歌詞は言葉だらけで、その数に圧倒される。同じフレーズが二度出てくることはほぼなく、ありがちな、というかヒット曲のセオリーである言葉のリフレインが一切ない、フォークではあるかもしれないけど、ポップ音楽では珍しい。これじゃ、シンガロングできないし、カラオケでも歌いづらそう。独自の表現方法に驚かされた。
その内容は、男性が妻と思わしき女性、その子供を連れてかつて自分が住んでいた東京に戻り、自宅へ車で向かう途中、元カノが住んでいたマンションの近くを車で通るとき、「もしも間違いに気が付く事が無かったのなら」と自分に問いかけ、今の心情を吐き出していく。あれ、この元カノは「ぼくらが旅に出る理由」に出てくるニューヨークに行ってしまった彼女なのではないか。いつの間にか立場が逆転した二人、「ぼくらが旅に出る理由」から20年後の歌なのか、なんてことを妄想していたら、Mステで新曲と一緒に歌ったのは「ぼく旅」だった。妄想こそポップスの醍醐味。久々に素敵な曲を聴いた。
今夏、フジロックに出て、去年のツアーでやらなかった「ブギーバック」もやるとのことで、非常に気になるけど、もはやフジに行く体力はなし。また都内でライブをやってもらえないものか。



(22:46)

2017年01月28日

nintchdbpict000296048319-e1485019497443先日のプレミア・リーグストーク戦でウェイン・ルーニーの決めたゴールがユナイテッド通算250ゴールとなり、ボビー・チャールトンの数字を抜いて歴代最多得点となった。100年を超える歴史をもつクラブの記録を更新した、と言う意味で大変な偉業である。そのゴールをリアルタイムで見ることができたことに感謝したい。そして、ルーニーにおめでとうと心から祝したい。
記念すべきゴールは、試合終了間際に生まれた。負け試合をドローにした価値あるゴールは、ルーニーここにあり!を証明する実にドラマティックかつファンテステックで、昨今指摘されるプレイの衰えをまったく感じさせない見事なものであった。ルーニーというフットボーラーを象徴し、代表するゴールの一つだったといっても過言ではない。思わずテレビの前で歓喜してしまった。同時に、ルーニーが自分にとっていかに重要で特別な選手であることを改めて再認識した。なぜなら、その250という数のゴールのほぼすべてをリアルタイムでテレビを通して見てきたから。足かけ13年、そんな選手はルーニーが初めてである。ベッカムやロナウドもデビュー時から見ているが、その数はルーニーに遠く及ばない。自分のユナイテッド・サポーター歴はルーニーとともにあると言っても嘘ではない。
最初にルーニーの存在を認知したのは、ユナイテッド移籍前のエバートン時代、彼がまだ16歳くらいの時。いきなり当時無敵のアーセナル戦に先発して、強烈なゴールを叩きこみ、鮮烈なデビューを果たした。早く、上手く、強く、気持ちが入ったプレーは、まさに神童と呼ぶにふさわしく、その後すぐに代表に招集され、ユーロでも活躍を見せ、一躍プレミア・リーグのブライテスト・ホープとして注目を集めることになった。彼の才能はユナイテッドでこそ花開く、と勝手に信じこんでいた04年夏、噂通りユナイテッドにやってきた。移籍期限ぎりぎりでの契約だったものだから、その数日間は、ネットを見ながら、いまかいまかとやきもきしていたことを思い出す。あれから早13年、多くの感動を見せてくれたルーニーの年齢も30を超えた。限界説も流れ、いまや先発を外れることも多くなり、起用されたときのポジションもFWであることは少ない。それでも、ユナイテッドの中心はルーニーであると信じたい。イングランド代表もしかり。繰り返すが、記録更新の記念すべき250ゴール目はトップ10に入るくらいのビューティフル・ゴールだった。



(00:16)

2016年12月31日

xlda790-radiohead2016年も残すところわずか1日。総じて良き一年だった今年をベストアルバムとベストライブで振り返ってみる。もう何年も前から数えられる程度の枚数しかCDは買わないし、ダウンロードはまったくしないし、サブスクリプションで音楽を楽しむこともしない。ただ数年かけて貯め込んだ膨大のデータからiPodClassicに入れて音楽を聴くのみとなっている。なので、ベストアルバムといっても、イコール買ったCDにすぎないのだが、10年続けていることなので、考えてみる。
今年のベストアルバムはレディオヘッド「ア・ムーン・シェイプト・プール」に尽きる。やはりこのバンドは自分にとって最も重要な存在だ。今回も期待以上のアルバムを届けてくれた。陰影をもった内省的なボーカルが心に沁み、繊細に作り込まれた密度の濃いサウンドが五感を刺激する。とくにアルバム1曲目の「バーン・ザ・ウィッチ」は、もし、いまビートルズが存在していたなら、こういう曲をやっていてほしいと妄想させた、文句なしの今年のベストソング。ベストライブも、8月のサマソニで見たレディオヘッドで決まり。ライブバンドとしての全盛期だった2004年のサマソニには及ばないものの、あんな地味なアルバムをスタジアム・ロックとして5万人以上の観客に聴かせた力量に感服、音のクオリティもものすごかった。他のバンドの追従を許さない表現の高みを見せつけられた。誰も付き合ってくれる人がおらず、ひとりで参加したサマソニだったけど、そんな退屈も心配も彼らがステージに出てきた瞬間にすべて吹っ飛んだ。
今年聴いたアルバムは、ほかにティーンエイジ・ファンクラブの「ヒア」。彼らも20年以上にわたって支持しつづけている信じられるバンド。解散せず、活動を続けていると聞くだけで得をした気持ちになる。7年ぶりのアルバムは前作以上に地味だったが、聴くたびに味が出て、気分をほっこりさせてくれた。来年3月の来日が今から楽しみ。邦楽では堀込泰行の「One」。シンガーソングライターとしての方向性を多種なアレンジで聴かせてくれたが、根本にあるメロディメイカーとしての資質とナイーブな作家性に改めて好感をもった。12月のライブも素晴らしかった。
CDは買わずとも、行きたいライブへは多少無理をしてでも出かけた中で、印象に残ったのは4月のブライアン・ウィルソン。「ペット・サウンズ」完全再現よりも、最後に歌った「ラブ・アンド・マーシー」に涙が出た。また6月の小沢健二も、懐かしい曲だけでなく、新曲も心を打ち、この人のポテンシャルの高さを実感。あの新曲は音源化しないのだろうか。来年、出るのか期待したい。一方、ともにマンチェスター勢のストーン・ローゼズとモリッシーの公演キャンセルにがっかり。残念だけど、もうモリッシーのライブを見ることはないような気がする。
映画、書籍は該当なし。仕事ばかりしているのではなく、スマホばかりいじっているのではなく、もっとそういうことに目配りをしなければと自分を戒めるこの年末。最後に、長年にわたるマイ・ヒーロー、ボウイとプリンスの急逝に心が痛んだ。




(00:21)