Everyday Mathに決まったら算数の家庭教師を調達すべき、Kumonに申込め、Singapore Mathの教材を買ってこい、などという意見がフォーラムで飛び交ったこの数ヶ月間。市の算数教科書選定で議論(その1その2)が盛り上がっていると聞いて、MaxとSarahの家庭教師の先生がおすすめの算数教科書を教えてくれました。

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教科書の名前はSaxon Math An Incremental Development、某アカデミックカリキュラムの私立校で使われている算数教科書です。先生によれば、この教科書があれば算数を教えるのはとても簡単なのだそう。その特徴を見てみると、実によく工夫されているものであることがわかりました。
500ページを越えるこの教科書、かなり分厚く、教科書というより辞典か何かじゃないかと思えます。小学生用にしては無愛想なテキストを開いてみると....
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予想に違わず中身もかなり地味。
これで小学校6年生か5年生の教科書です。(使用学年は学校のカリキュラムによって異なります)
私が子どもの頃に使っていた詰め込み主義と批判された教科書だって、これよりは遥かに可愛らしく出来ていたと思います。この教科書が市の教科書選定委員に不評だった原因の一つは、見た目だったのかもしれませんね。
ところがこの一見無愛想な教科書は、子ども達に確実に算数の力をつけ、算数を好きにさせ、自身をつけさせる効果があるのだそうです。


まず目次を見ると、あることに気がつきます。

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見ての通りチャプターがとても細かく分けられています。この6年生(5年生)用の教科書は何と140章に分けられていました。

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スモールステップで一つ一つを確実に身につけて行くために、とてもわかりやすい工夫だと思います。ただし、見慣れないと目次を見ただけでアレルギーを起こす子(親)もいるかもしれませんね...。私も初めて見た時にはびっくりしました。ちなみに某私立校では2週間で約9チャプターを学習し、隔週で定着度を調べるテストを行っているそうです。


もう一つの工夫は読むだけでわかる構造になっていること。章の名前、学習する内容の説明、例題が明記されています。そして説き方がわかったら練習問題です。

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そして三つ目、最大の工夫が繰り返しの復習です。新しい学習の後で必ず、既習の内容についての復習問題が載っています。その章の復習ではなくて、教科書の最初からの復習問題です。章の練習問題よりもむしろ復習問題の方が多い程、繰り返し徹底して復習させるのがSaxon Mathの特徴です。

例えば下は三桁のかけ算の章です。3桁のかけ算について説明と例題1問の後、練習問題はたったの4問です。その次の復習問題ではそれまでに学習した分数、たし算、引き算、割り算、考え方などの復習に1ページ半以上25問を費やしています。

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3桁のかけ算の練習が足りないのでは?と心配になるのですが、実は3桁のかけ算は2章に分かれています。この他にワークブックで補うことが出来ますし、後の章の復習問題で何度も3桁のかけ算問題が再登場して来ます。

たし算やかけ算も何度も、
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何度も、
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何度も繰り返します。
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退屈そうなこの復習問題の繰り返しが、実は算数学習の鍵になっています。
その時は分かったと思ったけれど不確かだった、その時はわかったけれど時間が経ったら忘れてしまった、そんなことは算数によくありますよね。しかも自分がわからないことに気付くのは期末テストの時だったり、次の学年で発展した内容を学習する時になってからだったりと、すっかり時間が経った後のこともしばしばです。

Saxon Mathの作戦は、このしつこい復習問題の繰り返しによって、忘れることを防ぐこと。
それからわからない箇所を発見すること。もし復習問題で間違うことがあれば、理解があいまいだったり、確実に定着していないことが考えられるので、もう一度前に戻って学習できます。
しかも、何度も繰り返しながら復習問題は少しずつ高度な発展問題になっています。気付かないうちに応用力も身に付くのです。トラディショナルの教育課程でありながら、復習問題に関してはスパイラル方式ですね。


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家庭教師の先生が小学校教師をしていた頃の経験によれば、子ども達はしつこい復習に飽きるかと思えば、逆に大好きなんだそうです。見慣れた問題なので安心して取り組めるし、正解すると自信につながって算数が大好きになるのだとか。

無愛想な教科書なのに算数を好きにさせる。
フルカラーでなくても、挿し絵が無くても、子どもの心を動かすことが出来る。
とても面白い現象です。


こちらは巻末の練習問題コーナー。足りないと思った時に、ここの問題も使えます。
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先生が小学校教師だった時に、教える順番が違うんじゃないかと考えて、章の順番を入れ替えて教えてみたことがあるそうです。その方がわかりやすいと思ったからですが、実際には子ども達は戸惑ってしまい、覚えるのに時間がかかったそうです。何度か試したそうですが、いつも教科書通りの順番に戻した方が理解が早かったそう。この教科書を作った人は、相当研究して章の順番を決めたのだろうと話していました。また、教師用のワークブックなど、教師が言うべき台詞まで全部書かれているので、それを棒読みするだけでも充分、普通レベルの算数教師になれるんじゃないかと笑っていました。

ところで、Math 54についてAmazonのレビューを見ると、はっきりと評価が分かれていました。見た目取っつきにくいこと、繰り返しが単調に思えること、内容が他の教科書に比べて若干高度なことで、地道な算数学習に慣れていない親からは低い評価がつけられることがある様です。Everyday Mathと同じく、好みの分かれる教科書だということなのでしょう。

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(Maxの教室)


詰め込み教育世代だからか、私にとってはこのSaxon Mathはとても安心できる教科書です。夫も気に入っていましたし、ドイツ人の友人も「そう、その復習が大事なのよ!」と教科書の趣旨にとても共感していました。試しに日本の算数教科書も復習問題をスパイラルさせて、このくらい厚い教科書にしてみたらどうでしょう?
算数好きが増えるか、算数嫌いが増えるか、とても興味があります。

しばらく貸してもらえるというこの教科書、副教材にするには値が張るので、自分で買おうかどうかと現在思案中です。そういえばJumpQの店員さんも、Saxonの算数教科書を仕入れようかどうしようか思案中だと話していました。高いものなので仕入れて売れないと困るからだそう。確かにそうですよね。

最新版はもう少し愛想があるように改定されたと聞きましたが、Saxonですからね。やっぱり地味なのではと期待しています。


ー5月22日追記ー
算数教科書のみだと解答集がついていないため、教科書、解答、ワークブックがセットになっているものを買うと良いようです。オンラインならあちこちのサイトで取り扱うそうですので、探してみて下さい。SFベイエリアにお住まいの方は、もしかしたらJumpQでも仕入れてくれるかもしれません。
りぼんさんがhttp://www.learningthings.com/で購入したところ、セットで60ドル前後、送料無料で良かったとのことでした。(情報ありがとうございます!)



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