Maxの最後の分数バイオリン、3/4サイズのバイオリン探しはこのバイオリンからスタートしました。1969年ドイツ製です。

3_4violin2

Palo Altoバイオリンに電話をした際に「レストアする予定のバイオリンがある、分解して削れば良く鳴る楽器になる筈だから少し待ってくれ」と言われ、仕上がりを待っていたものです。
試し弾きをしてみると音がなかなかよく響き、深みもあります。Maxは弾きやすいし大きな音が出るから気持ち良いと、すっかり気に入ってしまいました。夫も一目惚れならぬ一聴惚れ状態で「これはいい!」と、感性に訴えかける何かを感じた様子。
合格がもらえるかな?と期待を抱いてこのバイオリンを先生に見てもらったところ...
先生は様々な試し弾きをしてみて、どうしても気になる問題点を一つ発見しました。4本の弦のうち高い方からE線A線はよく鳴っている、D線もまぁ良し。しかし一番低音のG線で弾く第5ポジション(低い弦で高い音を出す奏法)の音が、鼻詰まりになった様で、変に響かないのです。
まだ第3ポジションの練習を始めたばかりのMaxなので、3/4の間に第5ポジションのある曲まで行くかどうかわかりません。でも明らかに問題があるんだし、他と比較せずに問題のある楽器を買うのも早計だということになりました。
Maxがっかり。夫がっかり。私もがっかり。
Palo Alto Violinの物よりも良い楽器があるかどうか、急遽KamimotoとHeaneyを訪れてバイオリンを借りて来る話で、第一回目のチェックは終了しました。
(※3軒の弦楽器専門店についてはこちら

★★★



3_4violin15

先生はもちろん、どのショップでも異口同音に言われたことは
「3/4は短い期間しか使わないものだからあまりお金をかけないで、後でフルサイズを買う時の予算に回した方がいい」
ということでした。特に男の子は急に背が伸びることもあるし、2年もあればフルサイズに行くかもしれません。Maxが天才的に上手くて難しい曲をバンバン弾きこなすとか、高レベルなYouthオーケストラのメンバーだとかなら高い楽器も必要でしょうが、凡才が弾く小学校のオーケストラレベルですからstudent modelの一つか二つ上のグレードで充分、ただし今の楽器よりも質の良いものをということに自然と落ち着きました。
そんな訳で、今回の予算は1000ドル。
一瞬「1000ドルってバイオリンにしちゃ、安いよね」と思いそうになりますが、いえいえ、そう簡単にできる買い物ではありません。十分過ぎるくらい高価です。1000ドルを小学生が肩に乗せて顎で挟むんですから、凄いことです。

バイオリンを売るお店にとって、1000ドルのバイオリンなんてものは
安くてどうでもいい物かもしれない。
けれど買う方にとってみれば、普通の生活で簡単に使う金額じゃない。
例えばバイオリンショップのオーナーだって、
500ドルのワインだったらかなり注意して扱う筈。
それが500ドルのバイオリンでも同じでなくちゃいけないと思う。
だから「この辺でいいだろ」なんて適当に勧められて
「はいそうですか」と決めるのは違うと思うんですよ。

これは先生の持論。バイオリンショップへの苦言ともとれますし、私達に「消費者としてちゃんと選んで、賢くいいものを買って下さい」ということでもあるだろうと思います。

3_4violin4

★★★

Heaneyでは2つのバイオリンを選んで借りるために、沢山のバイオリンをさんざん弾き比べました。選ぶのはとても大変!!
二つのバイオリンで同じフレーズを弾き、どちらの音が好きかで絞って行きます。まずがAとBを比べてAが良く、次にAとCでC、CとDでC、CとEでE、EとFでE...と比べて行ってEとAを比べるとAが良く聞こえたりして。5台、6台と聴いて行くうちに耳は麻痺し、10台を過ぎた頃には頭はボーッとして何だかよくわからなくなってしまいました。
私でさえ疲れたのですから、弾いていたMaxはもっと大変だったと思います。
最後は相手をしてくれた店員のお兄さんが助けてくれて、少々高めの深い響きのある古い楽器を1台、安めで新しいけれどMaxが音色を気に入った1台を借りてきました。Max曰くこの1日で「1週間分以上練習した」そうです。

★★★

Kamimotoでは「この辺だろうね」と予算丁度の価格帯のものを1台勧めてもらいました。他の3/4はもっとずっと安いかずっと高いかで、同じ価格帯は2台のみ。やはり勧められたものの方が良い音がしていたので、それを借りることに。弓も色々なレベルものが揃っていた中から200ドル台のものを2本勧めてもらって、それも借りました。
★★★

無料で借りられるんだから楽なものだと思うかもしれませんが、借り物のバイオリンを何台も車に積んで運び、リビングに並べておかなくてはいけなのには困りました。何か起きて楽器が壊れたりしたら、弁償ですからね。
おお怖い!
自動車事故に遭いませんように、火事になりませんように、とお祈りしながら過ごしました。この期間、かなり居心地が悪かったです。

★★★



<今回の候補バイオリン>
3_4violin6

3_4violin93_4violin83_4violin7

1.ドイツ製 1969年 $900(ケース、弓、松脂込み) Palo Alto Violins
2.ルーマニア Dunov製 $913(本体のみ) Kamimoto String Instruments
3.ドイツ製 $1200(本体のみ) Heaney Violins
4. 中国 Chrislin製 $600(本体のみ) Heaney Violins
    ※4番のみ2009年製、他は1900年代後半のもの。

★★★


これらのバイオリンを先生に弾き比べていただいたところ、とても興味深い結果になりました。

1.(先述の通り)E,A,Dの音が良く鳴り深みもあるが、G線の高い音が響かないのが惜しまれる。レストアしたばかりのため、今後G線が鳴ってくる可能性も無くはないが、今の状態は受け入れ難い。音量は4つの中で一番ある。
2. 深みのある音で全ての弦が良く鳴る。ソロでは問題なし。しかしピアノと合わせると音が急に響かなくなる癖がある。
3. 艶と深みのある甘い音。この鼻にかかった甘い音は胴のアーチが高いバイオリンの特徴。好きな人は好きなタイプの音だ。問題点は見当たらない。だが$1200という値段からすると、どうだろうか。もっと鳴っても良さそう。中に音がまだ眠っている印象。
4. 変な癖がなく、素直で良く鳴る。音はまだ若いがこれから変わって行くだろう。値段の割になかなか良い楽器。問題点を言えば、まだ音に深みが足りないこと。

この時点の先生の評価は4.1.3.2.の順番でした。

4.はMaxが気に入り、選ぶ時にもっと値段の高い楽器と比べてもずっと残っていたものです。彼の耳も案外良いのだと感心しました。

★★★


バイオリンを全部借りてきた夜、夫が目隠しをして聴き比べたところ、夫も同じく1.と4.が良いと思ったそうなので、オーディオ好きの面目躍如です。「先生、俺と同じじゃん!」と大喜びしていました。
(夫によれば4.は悪くないけど音がさらっとしていて1.程は感動を覚えなかった、2.は何かピンと来ない、3.に至っては「この音のどこがいいのかわからん」と断言。「買うなら絶対1.。じゃなきゃ、ここにある他のはどれも買わない!」と勝手に決心していました。マニアはこんな時にこだわるのです。)

★★★


2.のバイオリンはソロで聴くと深い音がして良さそうなのですが、ピアノと合わせた途端に不思議に音がくぐもった様になり、ピアノの音に隠れてしまいました。先生によれば、これは音量の問題ではなく、恐らくは波形の特徴でピアノの音と干渉しあって消えてしまうのではないかということでした。たまにそういうバイオリンがあるのだそうです。他の弦楽器と一緒に弾く時も同じ現象が起きる可能性があるということで、2.は残念ながら候補から消えました。お店で弾いた時には全然わからないことでも、こうやって色々な面から見て行くのが大事なのですね。

3.は本体のみ$1200のため、弓とケース、taxを入れたら$1500コースです。ちょっと高過ぎかな...ということでこれも優先順位が下がりました。

結果、この中から買うなら1.か4.かのどちらかということです。

★★★


実は、先生に教えられた通り二つの楽器店で1.のバイオリンを見せ、これよりも良い楽器があるかと聞いてバイオリンを出してもらいました。Kamimotoで「このバイオリンのG線が鳴らなくて」と言ったところJon Jian Min Li氏がバイオリンを見て一瞬で、本当に1秒で原因を見抜きました。
3_4violin3
「あぁ、そりゃ不思議じゃない。G線が高過ぎるんだ。指板が真っすぐじゃない、傾いているからだよ。弾く時に弦を強く引っぱって押さえるから響かないんだ。ここのスペースをみてご覧。E線と指板のスペース、G線と指板のスペース、違うだろ?」
......なーるほど!
指板と弦の幅が狭い低音域では問題が無くても、第5ポジションで問題が出てくる理由もこれで説明がつきます。凄く納得です。
「指板を交換すればこれは直るよ。でもどれだけ音が変わるかはわからない。別のバイオリンを買っても良いし、これを直してもいいし。あなた達次第だ。」とJon Jian Min Li氏。

3_4violin5

この話を先生にしたところ、先生も納得。先生が全部のバイオリンの弦と指板の距離を測ってみると、1.のG線と指板の距離は確かに、他のバイオリンに比べて1mmから1.5mm幅が広かったのです。たった1.5mm、されど1.5mm。

★★★



「もう一度Palo Alto Violinsに行って、この指板を直せるかどうか、G線の音が改善できるか相談して来て下さい。G線の音が良くなれば買うと話してみて、もしラリーが”直さない”と言ったらこの楽器は諦めて下さい。明らかに問題のある楽器を買う訳にはいかないですから」と先生。

最初に先生にこのバイオリンをチェックしてもらった時、相当このバイオリンに自信があったらしいPalo Alto Violinsのラリー氏が、レッスンの後にすぐ「どうだった!?」と電話をかけて来ました。正直に”G線の5thポジションが良く鳴らないからまだ決めるのは早いと先生に言われた”と答えたところ、かなり不満そうで、先生のところにまで「使うかもわからないG線の高音なんて小さいこと気にしてどうする! 高音の良さは聴いただろう!!」と文句の電話がかかってきたそうです。もしかしたらヘソを曲げて指板を直してくれないかもしれません。そうしたら諦めて欲しいという先生の話です。

これが2回目のチェックの顛末です。
MaxはPalo Alto Violinsのを一番に気に入っていたのに、指板が曲がっていると教えられて大ショック。「やっぱり中国の(4.)かな...」と言い出しました。
夫は「他のバイオリンは買わん。Palo Alto Violinsのにしか金出さないぞ!」
...さぁ、困った。

どうなる、Maxのバイオリン探し!
結論は...


3_4violin14
     (今までの1/2バイオリン:1920年のチェコスロバキア製)