Sarah、英語も日本語も読解力向上の余地が大有りです。まず第一に語彙がかなり少ない。そこで英語の家庭教師の先生とも相談して簡単な絵本から取り組んでみることになりました。
まずは定番、イソップ物語から。....と思ったんですが。
が、です。 さすがSarah姫、一筋縄では行きませんでした。

aesopsfables1
このイソップ物語の絵本「Aesop's Fables」は「キンダーで先生がよく読み聞かせに使ったりするから、一冊あると便利だよ」とお誕生日のプレゼントとしてMaxがキンダーに上がる前に頂いたものです。Aesop's Fablesにも様々なバージョンがある中、これは挿し絵が穏やかな色合いで緻密に描かれており、大人の観賞にも耐える品のある絵本となっています。

イソップ物語くらい聞いたことあるでしょう?と言ったら、Sarah、本当に知らなかったのか、聞き流していたのか、覚えていないだけなのか、それとも読み聞かせを理解できなかったのか...話をあんまり覚えていませんでした。ちょっとショック。
早速短そうな話から選んでSarahに読むように言ってみた所...
aesopsfables2「欲張りな犬」(水に映った自分の影に吠えて肉を失う話)は教訓も合わせて一応納得。でも後味が悪いというか、犬が可哀想という感想でした。
次、アリとキリギリスを読んだ後、Sarahは暗い顔をして私に聞きに来ました。「このアンツとグラスホッパーの話、どこが間違いだったの? だって、どこか間違ったことしてるんでしょう? これ、何が悪い話なのかわかんない」
えっ、アリとキリギリスが理解できない?
理解できないことが理解できなかった私、順を追ってゆっくりSarahに質問してみました。

私「この話に誰が出てくるの?」
Sarah「アンツ...アリと、グラスホッパーは何だっけ、あ、バッタ」
私「最初、何してたの?」
Sarah「バッタは歌うたって遊んで、アリは働いた」
私「それでどうなったの?」
Sarah「寒くなって、食べるものが無くなった」
私「バッタ、っていいうかキリギリスはどうしたの?」
Sarah「アリさんのおうちに来て”食べ物ちょうだい”って言った」
私「アリはどうしたの?」
Sarah「あげられないよって言った」

うーん、話の流れはちゃんと理解しているようです。
どこで躓いているのか?
最後の大事な質問をした時に全ての謎は解けました。

私「アリはどうして”あげられない”って言ったの?」
Sarah「アリも食べる物が無かったから
aesopsfables3

Sarahの主張はこうです。
だってお話に”we have none to spare”って書いてあったよ。
食べ物があったら分けてあげられるのに、アリもいっぱいいて、みんなで食べちゃったから無いの、ごめんねってことでしょ?
食べ物、持ってたらあげるでしょ? だってグラスホッパーが可哀想だから。
無いからあげれない(あげられない)んだと思うよ。



.....思わず目が真ん丸になりましたねー。
そうだよね。困っている友達がいたら優しくしてあげるんだよね。

童話って時々とても残酷なことをさらりと書いている時があります。この間も友達と話していたのですが、「ジャックと豆の木」なんて人食い巨人の宝物をジャックが勝手に盗んで逃げ、人食い巨人は落ちて死んでしまうって、巨人にとってはとんでもない話ではないですか。友人のお子さんはジャックが盗んだもので幸せになる結末がどうにも納得いかなかったそうです。
私が子どもの頃は何の疑問も持たず、ドキドキハラハラのストーリーとして楽しんでいたので、同じ童話一つをとっても様々な感性、視点で感想が違ってくるのだと子ども達に大事なことを教えられました。



でもお話を正確に読み取り、筆者の意図を理解することも大切なことです。
Sarahには「そうだよね、普通は困っている人を助けてあげるものだけど、でもね、この話はこうなのよ」と詳しい解説を試みました。

<一回目> 解説を試みる
夏は遊んでばっかりのキリギリスでしょ。
でもアリは遊ばないで働いているの。アリは偉いよね。
アリはいっぱい食べ物が貯まった。キリギリスは何も無し。
これで寒くなった時、アリは遊んでばっかりのキリギリスに食べ物をあげたいと思う?
Sarah「うん、あげた方がいいと思うよ。でないとキリギリス死んじゃう」

玉砕。


<二回目> 身近な事例に例える
補習校の夏休みの宿題をね、Sarahが毎日毎日頑張って、いっぱいあるのを全部終わらせたとするでしょ。Maxが毎日遊んでばっかりいて、全然やってなくて、夏休みが終わる頃になって「Sarah、宿題手伝ってー」って言われたら、手伝ってあげる?
Sarah「あぁ! それは手伝わない。自分でやってないから悪いんだもん」
アリも毎日食べ物貯めてたのよ。キリギリスは何もしてなくて。だから食べ物持ってるけど、遊んでばっかりの人にはあげたくないよってアリが言ってるのよ。
Sarah「食べ物あるのに? あってもあげないってこと? それでいいの?」


<ダメ押し> ヤケッパチの理論武装
Sarahはさ、手伝ってあげたくてもMaxの宿題なんて難しくて出来ないでしょ?
アリだって虫とか木の実とかフルーツ食べるんであって、木の葉っぱ食べる種類もあるかもしれないけど、普通あんまり食べないでしょ。キリギリスは葉っぱ食べるけど、アリに頼んでも葉っぱなんてそんなに持ってないと思うよ。アリとキリギリスは食べるものが違うのよ!
Sarah「そっか、遊ばないで自分で葉っぱ貯めておけば良かったんだね!」

一応100%理解達成!!

喜んでいいのかどうか。


The ants shrugged in disdain. "We worked hard for our food and we have none to spare," they said. "All summer long you made nothing but music. Now all winter long you can dance!"

恐らく物語の最後の部分、この一節の中でdisdain(軽蔑)の単語を知らなかったために物語の根幹を理解できなかったのだろうと思います。短い話ほど、単語が一つわからないだけでもぐんと理解度が下がりますから。それにSarahは軽蔑の感情からも随分遠くにいる子の様な気がするので、仕方ないのかな...。
アリとキリギリスってこんなに難しい話だったでしょうか。



ー妄想ー
これがミステリーなら「アリはキリギリスの歌を褒め称えてその気にさせ、キリギリスの食料備蓄を邪魔した上で、秋には自滅の道へと追いやる。キリギリスはアリの生きた備蓄食料として狙われていたのだ!」とかいう話になりそう。さすがにSarahにはこんな話はできません。ははは。