相変わらず世間の状況は変わらない2021年2月現在ですが、皆様元気にお過ごしでしょうか。
今年はまだ雪もちらつく程度しか降っていませんが、やはり毎年この時期の寒さは身に沁みます。外出の際には温かい格好をし、なるべく人混みが多い場所は控えてこの時期をやり過ごしましょう!
【はじめに】
前回、"2021年のIT市場"という掲載で、国内IT市場の鍵となるトレンドで「DX」をあげさせて頂きましたが、実際に「DX」って何?と感じていらっしゃる方が多いと思います。IT産業の概念の一つなのか、それともIT技術そのものなのか、「DX」という単語だけでは少し分かりにくいですね。
今回は、この「DX」についての定義や必要性などを、実際の企業事例を交えながら分かりやすくお伝えできればと思っています。
【DXとは】
■DX(デジタルトランスフォーメーション)
"ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる"という概念です。
「IT」=「DX」ではなく、業務効率化やデジタル化を「目的」としたITに対して、これらを「手段」として利用し変革を進めることが「DX」になります。例えるならば、AIや5Gなどのデジタル技術を活用して商品やビジネスモデル、業務に変革を起こし、競合企業との競争に勝てるようにしていくことです。
■DXの言葉の意味
DX=デジタルトランスフォーメーション「Digital Transformaition」、直訳すると「デジタル変換」。
略すると「DT」となりそうですが、なぜ「DX」なのでしょうか? それは、英語圏では接頭辞「Trans」を省略する際にXと表記することが多いため、「Transformation」が「X」に代わり、「Digital Transformation」⇒「DX」と表記するようです。
【DXの歴史】
実は、DXというものはここ数年で急に出てきた概念ではなく、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授のエリック・ストルターマン氏が述べた概念であり、もとは「進化し続けるテクノロジーが生活をより良くしていく」というものだそうです。そして、DXの前段階としてデジタイゼーションやデジタライゼーションという言葉もあります。
・デジタイゼーション
単なるデジタル化のことで、デジタル技術を活用することで自社のビジネスプロセスをデジタル化し、業務効率やコスト削減を目指すものです。
・デジタライゼーション
デジタル技術を活用し自社のビジネスモデルを変革することで、新たな事業価値や顧客体験を生み出すことです。音楽を例にDXを説明するなら以下のようなイメージになります。
かつてはレコード販売や生演奏だけだった音楽ビジネス。
↓
CDやMDコンポといった物販が主流になり、ビジネスの一部がデジタル化(デジタイゼーション)
↓
スマートフォンやネット回線の発展でダウンロード販売やipodが主流になってビジネスモデル全体がデジタル化(デジタライゼーション)
今では、個人の楽曲がネット上で売買されたり、SNSやサブスクリプションサービス利用もあたり前になったりと、社会全体で音楽のやり取りのデジタル化(DX)が進んでいます。
【DX導入のメリット】
①業務の生産性と利益率が上がる
デジタルレイバー(仮想労働者)と呼ばれるRPAなどからイメージしやすいように、DXを導入すると業務の生産性が向上し、ビジネスの利益率の向上にも期待できます。
※RPA(Robotic Process Automation)→ロボティックプロセスオートメーションと呼ばれ、事務作業を担う労働者がPCなどを用いて行っている一連の作業を自動化できる「ソフトウェアロボット」。
②消費行動の変化に対応したビジネスにつながる
例えば、DXで活用するAIや5Gなどの技術は消費行動を大きく変え、その変わっていく消費行動に対応するには自ずとDXに対応した商品が必要になります。こういったビジネスにつながるのもDXに取り組むメリットだと言えます。
③BCP(事業継続計画)の充実につながる
現在のコロナ禍の真っ只中でも最高益を更新した企業があります。今後もBCPが必要になる災害などは確実にくると思われますので、ライバル企業に差をつけるためにもDXの取り組みは欠かせません。
【導入しないで発生するリスク】
①既存システムの保守費が高額になる(2025年の崖)
既存システムが変化する状況の中で、2025年には古い技術を扱える人材が減っていき、既存システムの保守費が高額になると予想されています。
②市場の変化に対応できなくなる
国内外のあらゆる業界でDXは確実に進み、社会の需要と消費行動に変化が起きています。そういった市場の変化に対応できなくなるリスクが高まります。
③データの喪失やブラックボックス化
旧システムをクラウド化せずに現状維持のままだと、事故や災害時にデータが損失し、古いシステムなためにデータの復旧ができない可能性もあり、データの喪失やブラックボックス化という、自社の財産を失うリスクも出てきます。
【DX事業例】
●Google
Googleは企業のDXを支援する企業であり、自動運転といったDXによる新たなビジネスを多数作ろうとしている企業です。Googleが提供する「Google Duplex」は、飲食店などの電話予約を、スマートフォン経由でAIがやってくれるというものです。
●Amazon
本のオンライン売買というDXそのものが事業のスタートだった企業です。ユーザーファーストを徹底して、本の口コミや楽で素早い注文と納品を実現し、リアル店舗の本屋よりも優れたネット販売ビジネスを作り上げました。その後は、本以外の商材もネットで素早く買えるようにし、電子書籍の普及、AWSといったサービスも多数展開し、世界で最もDXの実現に近いといわれています。
●経済産業省
以前からDXの必要性をうったえており、ペーパーレス化や電子サインの導入に取り組んでDXを進めている組織です。大量の書類の手作業でのやり取りが当たり前になっていたことを、サイトの改善や入力内容の簡素化といった地道な改善を繰り返すことで、組織のトップから現場の人間までが一丸となってDXに取り組み、メンバー全員で組織を変革していった好例の一つです。
【DXへの取り組み】
自社でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるには、まず各部門の業務の変革を目指し、特にメリットが大きい営業部門と総務や経理などの管理部門から取り組むのが良いようです。
■営業部門
=営業部門の代表的な3つのDX=
・Web接客
オンライン会議やチャットを活用して、営業や問い合わせ対応を対面以外でおこなうことができます。
・SFA/CRM
営業パーソンを支援したり、顧客を管理したりする専用システム。勘や個々の営業パーソンのスキル頼りで営業をしているなら、大きな成果を上げる可能性があります。
・チャットボットなどを活用したホームページ
問い合わせを各営業パーソンやコールセンターだけに任せているなら、チャットボットなどを取り入れたホームページを用意する価値があります。よくある対応をページに記載しておけば、チャットボットで誘導でき、顧客満足につながります。
■管理部門
=管理部門の代表的な3つのDX=
・RPA
ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、デスクワークの中でもルーチン化している業務を、AIやロボットに任せてしまう技術です。生産性の向上はもちろん、人材不足への対応やコスト削減といったメリットもあります。
・ペーパーレス化
紙の書類をPDFなどに切り替えていくのがペーパーレス化です。一部の部署や業務からでも始められ、無駄な管理業務が減り、テレワークなどとの相性も良いため生産性が高まります。
・テレワーク
Web会議やセキュリティを施した端末と回線で、場所と時間を問わずに働ける形態です。働き手が減るなか、介護や子育てと仕事を両立でき、移動時間などを節約できるのが大きなメリットです。
【最後に】
テレワークや在宅勤務、人に代わってAIやロボットが主となる業務が増えてきた現在では、いかに人手を減らし正確にかつ効率的で便利なサービスを提供できるかが、今後の企業間での生き残り競争になってくるのではないでしょうか。DXをイメージするなら「温故知新」、「古きを知り新しきを知る」という言葉が個人的には合っていると思いますが、IT技術の融合が未来の生活を便利にしてくれるとともに、管理者や利用者もその技術に遅れないように追いついて活用していくことが、私たちの課題の一つかもしれません。
参考:
・【DX入門編①】今更聞けないデジタルトランスフォーメーションの定義とは? FUJITSU JOURNAL(富士通ジャーナル)
<https://blog.global.fujitsu.com/jp/2019-09-26/01/>(最終アクセス 2021年1月31日)
・DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 言葉の意味を事例を交えてわかりやすく解説 モンスター・ラボ DXブログ
<https://monstar-lab.com/dx/about/digital_transformation/>(最終アクセス 2021年1月31日)
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