#個人発明家

先日参加したセミナーで紹介されていた事案。面白そうな発明だなと思ってチェックしてみた。昨年の知財判例の中では結構話題になっていた案件のようで、既に多くの人が解説している。

以下の一文だけで特許が認められたのだから驚いてしまう。経緯を見ると、発明者は代理人を使わずに審決取消訴訟まで戦ったようだ。バイタリティが凄いと思う。

【請求項1】
 発泡プラスチック等弾力性のある材料で作られた5角柱体状の首筋周りストレッチ枕


◆類似品
困る人がいないのかと調べてみた。意外と類似品は見当たらないのだが、以下の製品は権利行使される虞があるように思う。日本人の製品ではないが、輸入業者は少し注意した方がよいかもしれない。

Trapezoidal Bolsters are our most popular and versatile bolsters, and when placed under the knees, ankles or neck, help relieve muscle strain.

Positioning Bolster - Peak Style
Provide support under the knees, ankles, or behind the neck


◆判決文
格別な技術的意義について解説している人が少なくないが、私としては、周知技術の証拠不足が問題の本質ではないかという気がする。
『・・・そうであれば,引用例に接した当業者は,具体的に開示された8角形よりも角の数の多い多角形状の外周面を持つ形状とすることを通常試みるとはいえるものの,これよりも角の数の少ない多角形状の外周面を持つ形状とすることは,引用発明の目的から離れていくことであって,これを試みること自体に相応の創意を要する。
 他方,本願発明や円柱体に比べて,人間が仰臥,横臥の姿勢で行う,こすり付けや引っ掛け等のストレッチ運動において,そのし易さ,安定度等の点で非常に優れている…例えば,…,3角柱体は,急斜面過ぎて使い難い。7角以上の柱体では,一辺の長さが5角柱体に比べ小さく,転がり易く不安定」であり,「又,頭との接触幅が小さいので感触も劣る。」(【0011】)と記載されているとおり,5角柱体に格別の技術的意義を見出したものである。
 このように,枕を5角柱体とすることに格別の技術的意義を見出した本願発明に対し,枕の断面形状を5角形とすることが周知技術とはいえず,また,多角形状の枕である引用発明は,「転がり容易」なことを目的とするものである。』

◆考察
さて、このような権利に対し、上述の製品の販売者だったらどうするか。

(1)進歩性を否定する。
まずは、他の周知技術を探して、改めて進歩性を否定する。ただ、一見して容易だと思えるのだが、意外に先行技術を見つけられない。現時点では、以下のものを見つけたが、もう少し近いものがある気がしてならない。
US7469435(出願日2008/1/19)

(2)記載要件を否定する。
次に、記載要件を否定して、権利範囲を限定させる。私としては、「5角柱体」の形状及び効果について確認したい。段落【0011】の効果は正5角柱体では認められるかもしれないが、全ての5角柱体で認められるのかは疑問が残る。もし全ての5角柱体で認められない効果であるならば、特許を取得するための記載要件を満たしていない可能性がある。そこで、この点を追求して、特許権の及ぶ範囲を限定するように訂正等させて、上述した製品に対して権利行使をできなくさせる。


◆教訓
逆に言えば、明細書作成者としては、広く権利行使できるように、5角柱体の形状についてもう少し明細書の記載を充実させておいた方が良かったのかと思う。全ての5角柱体だと広すぎて無効にされる確率が高くなるし、正5角柱体だと権利範囲が狭いすぎて使い勝手が悪くなる。その間の記載を充実できるか否かが弁理士としての力量が問われるところかと思う。
本発明者は、弁理士に高い費用を払わずとも特許を取れると思っていたのだろう。我々としては、こういう人に弁理士の価値を理解してもらえるように対応していく必要があるのかと思う。

・発明者の主張する効果が、正5角柱体以外の5角柱体でも認められるのか?
 ・5角柱体の角部の形状はどうなっているのか?
 ・5角形の各辺の長さの関係はどうなっているのか?


特許5984035
・出願日:2008/10/31
・『5角柱体状の首筋周りストレッチ枕』

【請求項1】
  発泡プラスチック等弾力性のある材料で作られた5角柱体状の首筋周りストレッチ枕


【0011】
  次に 頭の様な球状物体を枕にこすり付ける場合の滑りについて考察する。こすり付け運動は面を押し付けながら摩擦力を引き出す訳だが、ベッド上での押し付け力は、頭や体の自重(鉛直方向)に加えて、首の曲げや回転などによる水平力を加える事で発生させる。従ってその合力は、必ず水平面に対して鉛直斜め方向の力であるから、平面と斜面では、滑りに関して明らかに斜面の方が滑り難い。その様子を図7に示す。即ち、斜面はこすり付け運動をした時、滑りを起こさずにしっかりと強い抗力、強い摩擦力を引き出してくれるのだ。図4に示した正5角柱体枕の斜面3は、正にその機能を果たしてくれる。そして  この正5角柱体枕の形状や傾斜度は、他の角柱体や円筒体に比べて、人間が仰臥、横臥の姿勢で行う、こすり付けや引っ掛け等のストレッチ運動において、そのし易さ、安定度等の点で非常に優れているのだ。例えば、底面を床に置いた時、頂点が真上に来て斜面を作れるのは、奇数角柱体であるが、3角柱体は、急斜面過ぎて使い難い。7角以上の柱体では、一辺の長さが5角柱体に比べ小さく、転がり安く不安定だ。又、頭との接触幅が小さいので感触も劣る。
 

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