#実務ネタ(日本) 、高裁判決、東証一部(太陽ホールディングス)

諸事情で判例の復習。まずはソルダーレジスト事件。補正についての最も重要な判例。

◆審査基準
ソルダーレジスト事件であるが、現在の「特許・実用新案審査基準 第IV部 第2章 新規事項を追加する補正」で唯一名称が登場する判例であり、特に「2. 新規事項の判断に係る基本的な考え方」で言及される判例ということで、特許実務上は最も重要な判例の一つであることは間違いないだろう。

◆ソルダーレジスト
そもそもソルダーレジストとは、「プリント配線板(PWB)の表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁膜となるインキ」のことだ。太陽インキ株式会社のホームページで丁寧に説明してくれている。
cf  ソルダーレジスト(SR)とは

1. 不要部分へのはんだの付着防止
2. ほこり、熱、湿気などから回路パターンを保護
3. 回路パターン間の電気絶縁性の維持

◆判例
○知財高判平成20年5月30日(平成18年(行ケ)10563号)「ソルダーレジスト」大合議判決
(原告)タムラ化研株式会社(無効2005-80204号事件の請求人)
(被告)太陽インキ製造株式会社(特許権者)

○論点
本事案では、先願(特開昭63-278052号の実施例2)に同一発明が記載されていた。そこで、特許権者は、特許法29条の2違反で無効されるの回避するために、その同一発明の部分を「除く」訂正をした。また、この際、「登録商標」(TEPIC)を用いて物質を特定した。このような訂正が認められるかというのが主な論点。結論として、認められた。
○ 訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は 「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。
○ いわゆる「除くクレーム」とする訂正が 「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができるとされた事例
○ 訂正における登録商標は,先願明細書に基づく特許出願時において当該登録商標によって特定されるすべての製品を含むものであるということができるから,当該登録商標によって特定された物が技術的に明確でないとはいえないとされた事例
○ いわゆる「除くクレーム」とする訂正において,登録商標の記載を使用して除外部分を表示したことが,特許法施行規則に反するものということはできないとされた事例
○ 本件特許出願に係る発明は当業者が引用例記載の発明に基づいて容易に想到し得たものではないとされた事例
(52頁)
しかしながら,上記アにおいて説示したところに照らすと,「除くクレーム」とする補正が本来認められないものであることを前提とするこのような考え方は適切ではない。すなわち 「除くクレーム」とする補正のように補正事項が消極的な記載となっている場合においても,・・・・・・,補正事項自体が明細書等に記載されていないからといって,当該補正によって新たな技術的事項が導入されることになるという性質のものではない
(55頁)
一般に,明細書の記載における登録商標の使用について,極めて例外的な場合に限定して許容されるものと位置づけることにあるということができる。
 本件各訂正の内容は,上記(2)イのとおり,本件訂正前の各発明から引用発明と同一の部分を除外するために,・・・・・・先願明細書の実施例2の特定の物質又は製品の記載を引用しながら,消極的な表現形式(いわゆる「除くクレーム」の形式)によって特定しているものであり,引用発明と同一の部分を過不足なく除外するためには,このような方法によるほかないと考えられることから,本件各訂正において,引用発明を特定する要素となっている「TEPIC」との商標の記載を使用して除外部分を表示したことが,上記規則24条に反するものということはできない。

○時系列
(昭和62年)1987年11月30日 出願日
(平成 9年)1997年11月14日 登録日 (第2133267号)
(平成17年)2005年6月30日 審判請求日(無効審判)
(平成17年)2005年11月29日 前審決日(無効)
(平成18年)2006年1月6日 前訴提起日
(平成18年)2006年3月30日 訂正審判請求日
(平成18年)2006年4月26日 前訴審決取消決定日
(平成18年)2006年7月5日 本件訂正が請求されたとみなされる日
(平成18年)2006年11月28日 審決日(「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」)
(平成18年)2006年12月8日 審決謄本送達
(平成20年)2008年3月21日 口頭弁論終結
(平成18年)2008年5月30日 判決言渡

登録日から審判請求までの期間が7.5年ある。この間の業界動向が気になるところ。



○特許2133267(特公平07-017737

【発明の名称】感光性熱硬化性樹脂組成物及びソルダーレジストパターン形成方法
【出願日】昭和62年(1987)11月30日
【出願人】太陽インキ製造株式会社

【請求項1】
(A) 1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有し 下記 a ,(b), (c)のうちの1または2以上の群 )から選ばれる1種または2種以上の感光性プレポリマー,
 (a) ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化反応によって生成するエポキシ基の全エステル化物(a-1)の二級水酸基と,フタル酸,テトラヒドロフタル酸,ヘキサヒドロフタル酸,マレイン酸,コハク酸,イタコン酸,クロレンド酸,メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸,メチルテトラヒドロフタル酸,トリメリット酸,ピロメリット酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸のうちの1種または2種以上の飽和又は不飽和多塩基酸無水物との反応生成物(a-1-1),
  ジイソシアネート類と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類との反応生成物と,上記全エステル化物(a-1)の二級水酸基とを反応させて得られる反応生成物(a-1-2),
  ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化反応によって生成するエポキシ基の部分エステル化物(a-2)の二級水酸基と飽和または不飽和多塩基酸無水物との反応生成物(a-2-1),及び
  ジイソシアネート類と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類との反応生成物と,上記部分エステル化物(a-2)の二級水酸基とを反応させて得られる反応生成物(a-2-2),
 (b) ノボラック型エポキシ化合物と不飽和フェノール化合物とのエーテル化反応によって生成するエポキシ基の全エーテル化物(b-1),
  上記全エーテル化物(b-1)の二級水酸基と飽和または不飽和多塩基酸無水物との反応生成物(b-1-1),
  ジイソシアネート類と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類との反応生成物と,上記全エーテル化物(b-1)の二級水酸基とを反応させて得られる反応生成物(b-1-2),
  ノボラック型エポキシ化合物と不飽和フェノール化合物とのエーテル化反応によって生成するエポキシ基の部分エーテル化物(b-2),
  上記部分エーテル化物(b-2)の二級水酸基と飽和または不飽和多塩基酸無水物との反応生成物(b-2-1),及び
  ジイソシアネート類と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類との反応生成物と,上記部分エーテル化物(b-2)の二級水酸基とを反応させて得られる反応生成物(b-2-2),及び
 (c) アリル化合物であるジアリルフタレートプレポリマー(c-1),及びジアリルイソフタレートプレポリマー(c-2),
(B) 光重合開始剤,
(C) 希釈剤としての光重合性ビニル系モノマー及び/又は有機溶剤,及び
(D) 1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有し,かつ使用する上記希釈剤に難溶性の微粒状エポキシ化合物であって,ジグリシジルフタレート樹脂,ヘテロサイクリックエポキシ樹脂,ビキシレノール型エポキシ樹脂,ビフェノール型エポキシ樹脂及びテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の固型状もしくは半固型状のエポキシ化合物,
を含有してなる感光性熱硬化性樹脂組成物。
 
 ただし (A 「クレゾールノボラック系エポキシ樹脂及びアクリル酸を反応させて得られたエポキシアクリレートに無水フタル酸を反応させて得た反応生成物 と」,(B)光重合開始剤に対応する「2-メチルアントラキノン」及び「ジメチルベンジルケタール」と (C) 「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」及び「セロソルブアセテート」と (D) 「1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物 である多官能エポキシ樹脂 」 (TEPIC:日産化学(株)製,登録商標)とを含有してなる感光性熱硬化性樹脂組成物を除く