引き続き、特許庁HPの「日中韓特許庁における審査実務に関する比較研究」をチェック。
今回は「開示及び特許請求の範囲の記載要件に関する事例比較研究(2013-2014年)」
事例1-3は化学系で、事例4-6は電気系。事例4-6では日中間で大きな違いは見当たらなかったようだ。確かに、事例5では日中間で判断の相違があるものの、中国の判断が不適切という印象は受けない。ただ、事例4の請求項13は日本でも中国でも明確性が認められるようだ。これについては日中何れの判断に対しても疑問を抱く。(というより、解説に不備があるような気がする。)
事例1 | キマーゼ阻害剤を有効成分として含有する薬剤 | ナシ |
事例2 | 物質の製造法(目的物質がLアミノ酸) | ナシ |
事例3 | スフィンゴシン-1-ホスフェート(SIP)受容体アンタゴニスト生物活性を有するアリール基又はヘテルアリール基を持つインドール-3-カルボン酸アミド、エステル、チオアミド及びチオールエステル化合物 | ナシ |
事例4 | 音声システムのための空間ユーザーインターフェース | WO 2010/118251 A1 |
事例5 | アンテナ制御システム | WO 96/14670 A1 |
事例6 | MをNより小さいとしてNビット語をMビット語にトランスコードする方法及び装置(N>M) | WO 2005/064799 A1 |
以下、気になる点を摘記。
結果の概要及び分析
4. 事例4~6
2014年、JEGPEは、明確性要件とサポート要件に関して、請求項の要件を評価するために、電気技術分野の3件の事例を分析した。
結果は、概ね、三庁の間で評価が同一であることを示している。ただし、明確性要件とサポート要件の両方で、いくつかの相違が見られた。これらの相違については、2014年のJEGPE会合で議論された。
事例4
[請求項13]
ユーザーインターフェースを生成するための方法であって、
ユーザーインターフェース要素に関連付けられた入力データを受信し、ユーザーがユーザーインターフェース要素に対応する音声信号を知覚する空間的場所を定義する出力データを生成するように動作する、空間モデル発生器と、
音声入力を入力として受信し、該音声信号を出力として生成するように動作する、空間音声効果プロセッサであって、該音声信号は、該空間的場所における該ユーザーにより知覚されるような処理済音声入力を表す、空間音声効果プロセッサと、
該音声信号を選択する、または該ユーザーにより知覚される該音声信号の空間的配設を変更するように動作する、ユーザー入力デバイスと
を備える、方法。
(JPO)
・請求項 13 は明確性の要件を満たしている。
・請求項 13 の方法の主題は明らかに、請求項の要素(「ユーザーインターフェース要素に関する情報にアクセスする」又は「位置に音声信号を関連付ける」)、明細書の実施形態などを考慮して、コンピュータなどの情報処理装置として理解される。
(SIPO)
・請求項13は明確性の要件を満たしている。方法請求項の主題は必須ではない。
[作成された請求項15]
コンピュータプログラムであって、
ユーザーインターフェース要素に関する情報にアクセスすることと、
該アクセスされた情報に基づいて該ユーザーインターフェース要素の空間モデルを生成することであって、該空間モデルは、ユーザーの知覚音声空間内の位置への該ユーザーインターフェースのマッピングを表すことと、
音声信号を、該ユーザーの知覚音声空間内の該位置に関連付けることと
を含む、コンピュータプログラム。
(JPO)
・請求項 15 は、明確性の要件を満たしていない。
・プログラム自体には、これらのステップは含まれ(ない)
(SIPO)
・請求項15は、法定主題ではないコンピュータプログラムの保護を求めている。
・請求項の明確性と主題の適格性は、2つの異なる問題である。
・コンピュータプログラム関連の請求項について、ハードウェア主題は必須ではない。
残153(20161128)