弁理士Tajの発明研究ブログ

『発明にこだわる弁理士』を目指したいと考えています。
※掲載内容についての完全性・正確性は保証しておりません。

2018年04月

#大企業:東証一部、オープンクローズ、エアコン

新年度ということで心機一転。

今の日本で私が一番凄いメーカーだと思っているダイキンの特許事件が公開されていたのでチェックしてみた。単純に比較できるものではないが、ソニーやキヤノンと比較してみても、やはりダイキンはすごい企業だと思う。
cf ソニー:今期営業利益7200億円と過去最高へ-吉田氏にトップ交代
cf 三菱電機との比較は【137】

グローバル企業営業利益

グローバル企業売上高

◆製品アーキテクチャ
まず、エアコンという製品が魅力的だと思う。有名な小川紘一先生の論文をチェックしてみた。なお、この論文が公表された2008年は、ダイキンが格力電気(【097】)と提携した年。

製品アーキテクチャのダイナミズムを前提とした標準化ビジネス・モデルの提案
 ―新・日本型経営としてのビジネス・モデル・イノベーション(2)-
 (2008/3)
善本氏の研究を更に引用させてもらうと、エアコンの世界生産台数は 2005 年の段階で4,000 万台だが中国のローカル企業の生産シェアは 50%以上であり(一説に 60%)、完成品としてのエアコンでは、中国が世界市場で圧倒的な強さをもっている。しかしエアコンの心臓部であって摺り合せ型・匠の技であるコンプレサーを製造できる中国企業は非常に少ない。またインバータ制御のエアコンは省エネで非常に効果的であり、現在の中国政府が最も必要とする技術だが、摺り合わせ型のアーキテクチャを持つためか、中国企業は作ることができない。インバータのデバイス単体を日本から買って組み立てても省エネ・エアコンにならないためである。ここでもはやりコンプレッサーやインバータどの摺り合せ型であれば技術の拡散速度が非常に遅いという共通する現象が観察される12。すなわちインバーター・エアコンは、我が国の技術の摺り合せ型領域を Turn-Key-Solution 型プラットフォームとして外部インタフェースだけを標準化し、これを中国企業が得意とするモジュラー型の技術体系にリンクさせることによってグローバル市場へ大量普及する可能性を秘めている。
 ↓

この後、どんかことが起きたのかをチェックしてみたら、以下のようなコメントをしている人がいた。
 2つ目の疑問は、なぜ格力電器との提携でコア技術であるインバータ技術を提供してしまったのか、である。成熟した技術とはいえ、インバータ技術はダイキンにとってコア技術である。そのコア技術を格力に提供してしまったことで技術を流出させてしまった、という懸念はある。もちろんダイキンもむやみに技術提供したわけではない。より高度な業務用インバータ技術は格力電器との提携内容には含めなかった。また、格力電器に提供したインバータ装置は日本のダイキン工場で生産し、ブラックボックス化したモジュールとして提供したため、もっとも重要な電流制御プログラムの読み取りを防止する、といった策は打っている。


◆マザー工場
また、ダイキンはオペレーションでも秀逸な活動をしてきたようだ。
 こうして新たに定義された本国マザー工場および海外拠点の役割について、中国・蘇州大金の工場長は以下のように述べている。

「極寒のシベリアで動くようなエアコンであるとか、企業戦略と関わり、技術的にも先進的なものを生み出していくことが本国拠点の役割である。既存の技術を活用して、製品設計する、それを量産していくという活動は、もはや中国の方が低コストで大規模に展開できる。オペレーションのコアは海外だ。日本は、技術と戦略の両方を関連付けながら生み出してく場だ」
開発に際しては、専任メンバーを抜てき。さらに生産、調達、販売など多くの社員を巻き込みながら地道に進めていった。これも、部門間の垣根が低い社風だったからこそ実現できた。もう一つ、大きなポイントになったのが開発の初期段階からサプライヤーと協業したことだ。


◆中国展開
近年のダイキンの中国の状況は以下の資料から推測できそうだ。
環境ビジネスを支える“ルール形成”と“オープン戦略”(2017/10/4)

○珠海格力電器とダイキンとの提携(再掲)
ダイキン工業と格力電器がインバータエアコンの生産委託で合意 2008/3/31


◆インバータ技術の歴史
歴史を遡ると、以下の情報誌にこれまでの経緯が簡単に紹介されている。
気になる部分を摘記。
「Challenge Vol.01」(2016/11)
いわば、リラクタンスDC技術のブラッシュアップの時代だが、2011年に商品化した「エコインバータ」が、ダイキンのインバータの歴史に新しい一歩を刻んだ。電解コンデンサをなくすなど、部品を少なくした分安価で、省エネ効果はACインバータより大きいため、大山は「グローバルローコストインバータ」と名付けている。その端緒は2000年にさかのぼる。長岡技術科学大学の高橋勲教授から「世界のスタンダードになるインバータを作ろう」と大山に 声が掛かった。話を聞いた大山は、「当社のリラクタンスDCモータとの相性がいい」と考えた。当初 は、他社も含めた「日本連合」で取り組む考えだった高橋教授だが、一転してダイキン単独で取り組むことに。さらに、高橋教授が03年に急逝するという悲しい出来事もあったが、大山らは「先生の遺志。意地でもやる」と奮闘し、10年をかけてようやく中国向けに商品化した。
なお、この記事と同じページで紹介されているダイキン社員S氏は、下記の技術レポートを公開している。グローバルローコストインバータの開発の中心的人物なのかと思われる。このS氏は後述する特許の発明者の一人でもある。
 ・グローバル低コストエアコン向け単相電解コンデンサレスインバータの開発(2013/7/30)


◆特許情報
前置きが長くなったが、今回の判例。

平成29年(行ケ)第10085号 特許取消決定取消請求事件
 ・取消決定の取消 ⇒ 特許維持
 ・裁判所が、ダイキンの主張を無視しておきながら、ダイキンが主張する以上に有利に判断してくれたような印象を受ける。

○出願からの経緯
2008/1/31 特許願 
2010/12/17 出願審査請求書 
2012/10/16 拒絶理由通知書 
2012/12/14 意見書 
2013/6/18 拒絶理由通知書 
2013/8/19 意見書 
2014/3/4 拒絶査定 
2014/5/29 手続補正書 
2014/8/6 前置報告書 
2014/10/2 上申書 
2015/4/27 意見書・手続補正書
2015/6/3 審決日(特許審決★)
2015/7/3 登録日
2016/2/24 異議申立
2016/5/12 取消理由
2016/6/30 面接
2016/7/12 意見書・訂正書
2016/7/21 通知書
2016/8/18 意見書・意見書
2016/10/20 取消理由
2016/12/20 意見書・訂正所
2017/1/18 訂正拒絶
2017/2/17 意見書
2017/3/24 異議決定(取消決定★)
2017/3/30 送達報告
2017/4/26 出訴日
2018/2/5 口頭弁論終結日
2018/3/26 判決言渡

○判決文の摘記
(P30)
一方,本件周知技術は,寄生ダイオード側に電流を流さず,発熱損失を低減させるというものであるから,引用発明の課題解決手段と正反対の技術思想を有するものである。したがって,当業者は,引用発明におけるモータの回生モードにおいて,正反対の技術思想を有する本件周知技術を適用することはない。
  →納得
(P32)
そして,このような状態の引用発明において,パワートランジスタQH(又はQL)を同期整流によりオンにすることは,貫通電流が流れることになるから,パワートランジスタQH及びQLの破壊につながる。そうすると,引用発明における力行モードにおいて,同期整流によりパワートランジスタをオンにする余地はないから,当業者は,引用発明に,本件周知技術を適用しようと考えるものではない。
  →?
(P32)
しかし,そもそも,当業者は,引用発明の電力変換装置のうち,力行モードにおける動作のみを変更することを容易に想到することはないから,引用発明において,力行モードにおける上記課題の解決のために,回生モードにおける動作の際に採用することが否定される寄生ダイオード側に電流を流さないという技術を採用することを,容易に想到し得ない。
  →?
(P33)
引用発明において,さらに,ボディダイオードの導通による損失の低減を図る課題があったとしても,それは,直列につないだパワートランジスタのいずれもがオフ状態になっていることを前提とする課題であって,パワートランジスタをオンにする本件周知技術は,引用発明の課題を解決するようなものではない。
  →?


○『同期整流』の意味
・明細書【0017】
なお、同期整流とは、図2に示すように、還流ダイオード(131)に逆方向電流が流れる際にSiCMOSFET(130)をオンにし、MOSFET側に逆方向電流を流す制御方法である。これにより逆方向電流が流れた際の導通損失を低減できる。

・2012/12/14 :意見書 
 しかしながら、本願請求項1に記載の発明は、引用文献1の技術のように「同期整流を行うからダイオードを使わない」のではなく、寄生ダイオードを還流ダイオードに使うという構成とすることによって、例えば、デッドタイムなどの制御不能な期間における電流経路の切り替えには寄生ダイオードを使うことができるとともに、オン損失の問題になる連続期間(スイッチング素子を制御できる期間)は同期整流を行うことが可能になります。その結果、還流ダイオード用チップの削減とともに、容易な制御の実現が可能になります。

・2015/04/27 :意見書 
なお、本願発明では、寄生ダイオードを還流ダイオードとして使用するデッドタイムの期間は、寄生ダイオードに電流が流れますが、デッドタイム以外の期間に比べて十分に短いので、寄生ダイオードに電流が流れる期間を十分に短くできます。

(追記)
要旨が公開されていた。



特許5770412
【発明の名称】電力変換装置
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【特許権者】ダイキン工業株式会社

【請求項1】
 スイッチング素子(130)によって同期整流を行うように構成された電力変換装置であって、
 上記スイッチング素子(130)は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたユニポーラ素子によって構成されており、
 上記ユニポーラ素子内の寄生ダイオード(131)を還流ダイオードとして用い、
 上記寄生ダイオード(131)は、該寄生ダイオード(131)の順方向電圧が、該寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧を超えるまでは導通しないものであり、該立ち上がり電圧は、上記ユニポーラ素子本体のオン電圧よりも高く、
 上記ワイドバンドギャップ半導体としてSiCを用いる
ことを特徴とする電力変換装置。

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#AI、PFN、ベンチャー

3月は年度末なのでバタバタして、AIの勉強どころではなかった。

さて、PFNの特許であるが、この会社の一番最初の出願はNTTとの共願だった。
PFNとNTTとでJubatusなるオープンソースプロダクトを共同開発していたようだ。
PFN側のホームページでは2014年12月で更新が止まっているのだが、既に終った話なのだろうか?
Jubatus(PFI) 最新情報2014/2/12
リアルタイム分析×並列分散アーキテクチャ×機械学習という特徴を同時に実現する技術はJubatusが世界初であり,これらを実現するため,MIX処理を採用しています(4)

サーバのログデータに機械学習を適用した例を図 ₂ に示します.主要な特徴を用いた 3 次元で表しており,赤く示したものが普段とは異なる特徴を持ったデータです.このように,通常と異なるパターンのデータを抽出し,詳しく調査することで,未知の異常を発見することが可能となります

今までOSSでのコミットは2000件を超えており,利便性の向上が図られています.さらにJubatusのハッカソン 2 回,ハンズオン 4 回,カジュアルトーク 3 回,カジュアルもくもく会1 回を開催し,参加者延べ約590名を集めるなどコミュニティ活動を活発に行っています.

例えば,「企業」というカテゴリで分類するデモを図1に示します.東証一部上場約1 600社を分類カテゴリとして,毎秒2 000のつぶやきがどの企業に関連するかを高速分類し,分析アプリケーションに情報提供します.この実装にJubatusのclassifier(多値分類)というオンライン機械学習手法を適用しました.信用性が高い公開情報としてWikipediaなどを教師データとして活用し,分類のための学習モデルを自動構築しました.


【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および学習プログラム
【出願日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【特許権者】日本電信電話株式会社
【特許権者】株式会社Preferred  Networks

【請求項1】
 所定のシステムの構成要素の一部である情報処理装置であって、
 当該情報処理装置によって学習された学習の結果である局所モデル情報を記憶する第一の記憶部と、
 外部から入力された入力情報が、前記第一の記憶部に記憶された局所モデル情報を参照し、前記システムにおいて局所的な特徴を含む情報であるか否かを判定する分析部と、
 前記分析部によって入力情報が、前記システムにおいて局所的な特徴を含む情報であると判定された場合には、該入力情報を用いて学習を行い、該学習の結果である局所モデル情報を前記第一の記憶部に記憶させる学習部と、
 前記第一の記憶部に記憶された局所モデル情報との類似度が所定の閾値以上となる局所モデル情報を記憶する他の情報処理装置との間でのみ前記第一の記憶部に記憶された局所モデル情報を共有する共有部と、
 を有することを特徴とする情報処理装置。


◇明細書
※気になる箇所をとりあえず摘記

【0004】
  (略)このため、ノード毎の学習をマージしてシステム全体として一意な学習モデル情報を保持するものであり、ノード毎の局所的な学習モデル情報が活かされず、効率的な機械学習が行えないという課題があった。

【0005】
 例えば、広い範囲のネットワークを流れるトラフィックデータやパターンを学習してアノマリ(いわゆる、ある集合に対する異常値や外れ値)を検知する場合、学習するノードを配置する場所ごとに局所的なデータやパターンの特徴がみられる場合があるが、従来のオンライン機械学習を並列分散処理する技術では、局所的なデータやパターンの特徴を考慮して学習を行うことができなかった。

【0015】
 (略)また、下位ネットワークにおける各処理装置10Aは、ルータ20から通信トラフィックを入力情報として取得し、入力情報が配下の局所性に該当するか否かを判定する。

【0027】
 ここで、分析部12が入力情報を特徴ベクトル化する処理について説明する。具体的には、分析部12は、まず、特徴ベクトルを構成する要素をあらかじめ定義し、各処理装置10間で共有しておく。入力情報が通信パケットである場合、例えば、送信元/宛先IPアドレスやMACアドレス、TCP/UDP、ポート番号、データ部の認証情報(例えば、認証情報有りの場合は1、無しの場合は0とする等)などパケットから取得できるあらゆる情報のうち、分析・学習に必要な要素を予め定義しておき、パケットの入力を受付けた場合、このパケットを解析して定義した必要な要素(IPv4アドレスを例えば8ビットごとの要素とする複数要素で構成してもよい)を抽出し、この要素で構成される特徴ベクトル(要素がn個であればn次元の数値ベクトルとなる)を作成する。

【0032】
  (略)異常検知の学習アルゴリズムとして、例えば、LOF(Local  Outlier  Factor)が適用可能である。

【0047】
 類似度判定部32は、学習モデル情報記憶部33に記憶された局所モデル情報の類似性を判定し、判定の結果を類似情報記憶部34に記憶させる。ここで局所モデル情報間の類似性を判定する処理の一例について説明する。例えば、以下に説明するように、類似度判定部32は、計算した係数「sim」として、ジャッカード係数、ダイス係数、シンプソン係数を求め、計算した係数「sim」が所定の閾値以上であれば、類似すると判定する。なお、ジャッカード係数、ダイス係数、シンプソン係数の3つの係数を求めて類似性を判定しても良いし、いずれか1つまたは2つの係数を求めて類似性を判定しても良い。
【0048】
 例えば、集合XとYの共通要素数を少なくとも一方にある要素の総数で割った「sim=|X∩Y|/|X∪Y|」をジャッカード係数という。X∪Yの要素を、z1、z2・・・znとして、ベクトルx=(x1、x2・・・xn)を、(if  zi∈X)、xi=0(otherwise)として定める。ベクトルYも同様に定めると、ジャッカード係数は、「sim=x・y/(Σxi+Σyi-x×y)」とあらわされる。
【0049】
 また、例えば、集合XとYの共通要素を各集合の要素数の平均で割った「sim=2×|X∩Y|/(|X|+|Y|)」をダイス係数という。X、Yに対応するベクトルx、yを使えば、「sim=2×x・y/(Σxi+Σyi)」とあらわされる。
【0050】
 また、例えば、集合XとYの共通要素数を各集合の要素数の最小値で割ったもの「sim=|X∩Y|/min(|X|,|Y|」をシンプソン係数という。X、Yに対応するベクトルx、yを使えば、「sim=x・y/min(Σxi,Σyi)」とあらわされる。

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