#大企業(非上場) 
#関連ネタ:【075】

先日参加した会合で、近年の知財判例ということで紹介されていた事案。
越後製菓株式会社(wiki)vs佐藤食品工業株式会社(=サトウ食品)(wiki)の争い。

一般的にも大々的にニュースになった、切り餅事件。
この事件はその後も争いがあったようだ。



切り餅事件については、特許請求の範囲の請求項の文言解釈について解説する記事も多いが、一番わかりやすい解説はこの記事ではないかと思う。

飯村裁判長は、ばっさりと「F証言は不自然である」と断定しました。地裁判断と最も異なる所です。F氏が、平成15年9月以降に発売された「パリッとスリット」を、「こんがりうまカット」の袋に入れて封をし、偽の賞味期限を印刷し、あたかも平成14年10月に、「側面にスリットが入った餅」が世の中に出ていたかのように装ったのです。

判決は、その事件の全体像をみて下されます。構成要件Bの判断にすこし違和感があるとしても、司法の正義感に照らせば、飯村裁判長の判断は、正しい判断であると、小生は強く思います。


これだけ見るとサトウ食品がとんでもなく不誠実な奴だと思えてくる。
でも、サトウ食品にも言い分がある。

「証拠の偽造は天地神明に誓ってやっていない。汚名は何としてもそそぎたい。上告の目的はそれに尽きる」


●判決文
 
○第1訴訟

 原告(=越後製菓)の請求を棄却
 (14億8500万円を請求)

 被告製品は,本件発明の構成要件Bを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。


 原判決を取り消す。
 控訴人(=越後製菓)に、8億0275万9264円を支払え
 (59億4000万円を請求)

  ↓
・2012/9/19 上告棄却


○第2訴訟
 原告(=越後製菓)に、7億8277万8332円を支払え
 (19億1595万円を請求)

  ↓
・2015/4/27 控訴せず プレスリリース

当社は控訴を行わないことといたしました。

(追記)
本特許に関する審判事件等。ここで着目したいのは「判定2009-600006」。
判定は、「特許庁が、判定対象の権利侵害の可能性について、厳正・中立的な立場から判断を示す制度」のことで、特許庁の公式見解を示したものだ。一見して、特許庁が「非侵害」と判断した理由には納得できると思う。そして、サトウ食品からすれば、特許庁が非侵害と判断するなら堂々と自社製品を販売できる、と思うだろう。

事件の番号 確定日 請求人 被請求人 結論
無効2012-800213 20150609 佐藤食品工業 株式会社 越後製菓 株式会社 本件審判の請求は、成り立たない。(→特許権維持)
無効2012-800072 20140513 佐藤食品工業 株式会社 越後製菓 株式会社 本件審判の請求は、成り立たない。(→特許権維持)
無効2012-800039 20131126 たいまつ食品 株式会社

マルシン食品 株式会社

株式会社 丸一オザワ
越後製菓 株式会社 本件審判の請求は、成り立たない。(→特許権維持)
無効2009-800168 20120323 佐藤食品工業 株式会社 越後製菓 株式会社 本件審判の請求は、成り立たない。(→特許権維持)
判定2009-600006 20090522 佐藤食品工業株式会社 越後製菓株式会社 イ号図面及びイ号物件の説明書に示す「餅」は、特許第4111382号発明の技術的範囲に属しない。


→特許庁の判断では、佐藤食品の製品は「非侵害」となる
不服2006-003586 20080403 越後製菓株式会社 ナシ 原査定を取り消す。(→特許権成立)


(追記2)
本件の審査経緯は以下の通り。
2005/8/1に越後は、側周表面のみにスリットを入れる限定する補正をしている。少なくとも越後も「載置底面又は平坦上面」にスリットを入れたものまで権利主張したいとは思っていなかったと思う。やはり腑に落ちない事件だ。

審査経緯(特許第4111382号)
2002/10/31 出願
2005/6/2 拒絶理由通知
2005/8/1 ★意見書 「側周表面のみ」に限定
2005/9/26 拒絶理由通知(最後)
2005/11/25 ★補正 「側周表面のみ」を削除
2006/1/26 拒絶査定
2006/3/29 補正
2006/5/19 前置報告書
2008/2/29 補正書
2008/4/18 ★登録

訴訟等の経緯
2009/1/27 判定請求
2009/3/11 訴訟提起(一次訴訟) 一審
2009/5/12 判定
2010/11/30 請求棄却(一次訴訟) 一審
2011/9/7 中間判決
2012/3/22 判決言渡(一次訴訟) 二審
2012/4/27 訴訟提起(二次訴訟) 一審
2012/9/19 上告棄却(一次訴訟) 確定
2015/4/10 判決言渡(二次訴訟) 一審
2015/4/27 控訴せず 確定


(追記3)判決文の再確認
・2010/11/30 平成21年(ワ)第7718号 特許権侵害差止等請求事件

 (構成要件Bの解釈:原告(越後)の主張)
(48頁)
(ア) 請求項1の文言解釈に関する主張について
a 原告は,
構成要件Bにおいては,「小片餅体である切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に」の文言が読点を挟まずに連続して記載されるとともに,この記載の後に読点が付されていること
②切餅は直方体であるために,単に「この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面」と述べても,別紙参考図面の図1ないし3の3パターンが考えられ,直方体の6面のどの部分が側周表面であるのかを特定することができないこと,
③仮に切餅の「載置底面又は平坦上面」に切り込み部を設けた構成を除外するのであれば,「切餅の載置底面又は平坦上面には切り込み部を設けずに,切餅の側周表面に切り込み部を設ける」又は「切餅の側周表面のみに切り込み部を設ける」などと記載されるべきであるのにそのような記載にはなっていないことを根拠に挙げ,
構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載は,切り込み部等を設ける切餅の部位が,「側周表面」であることを明確に特定するために「側周表面」を修飾する記載であって,切餅の「載置底面又は平坦上面」に切り込み部等を設けた構成を除外する趣旨の記載ではない旨主張する。
 (構成要件Bの解釈:地裁の判断)
(50頁)
(イ) 本件明細書記載の作用効果に関する主張について
 原告は,本件発明の作用効果に関する本件明細書の記載を参酌しても,構成要件Bにおいて,「載置底面又は平坦上面」に切り込み部等を設けた構成の餅を除外していると解釈することはできない旨主張し,その具体的根拠として,本件明細書の段落【0032】,【0033】等の記載事項を挙げるほか,本件明細書には,載置底面に切り込み部を設けるか否かについては何ら言及がないから,構成要件Bの「載置底面・・・ではなく」の意味を「載置底面に切り込み部又は溝部を設けない」と解釈することはできず,そうである以上,同一の文言を用いた「平坦上面ではなく」との記載についても,「平坦上面に切り込み部又は溝部を設けない」と解釈することはできない旨主張する。

(51頁)
段落【0032】を含む本件明細書の記載によれば,本件発明においては,切餅の切り込み部等(切り込み部又は溝部)の設定部位を,従来考えられていた餅の平坦上面(平坦頂面)ではなく,「上側表面部の立直側面である側周表面に周方向に形成」する構成を採用したことにより,「切り込みの設定によって焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化でき」ることなどの作用効果を奏するものであり,この「焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化でき」る作用効果は,具体的には,「切り込み部位が焼き上がり時に平坦頂面に形成する場合に比べて見えにくい部位にあるというだけでなく,オーブン天火による火力が弱い位置にあるため忌避すべき焼き形状とならない場合が多く,膨化によってこの切り込みの上側が下側に対して持ち上がり,この切り込み部位はこの持ち上がりによって忌避すべき焼き上がり状態とならないという」作用効果を意味するのであるから(前記ア(イ)④及び⑤),載置底面又は平坦上面に切り込みが存在するか否かは,本件明細書に記載された本件発明の上記効果と密接に関係することであって,これと無関係であるなどといえないことは明らかである。

(66頁)
上記認定事実によれば,原告は,本件特許の出願過程において,積極的に「(切餅の上下面である)載置底面又は平坦上面ではなく,切餅の側周表面のみ」に切り込みが設けられることを主張していたが,その主張が,平成17年9月21日付け拒絶理由通知(甲9)に係る拒絶理由によって認められなかったため,これを撤回し,主張を改めたものというべきであるから,本件発明では切餅の上下面である載置底面及び平坦上面に切り込みがあってもなくてもよいことを積極的に主張し,その結果,本件発明について特許すべき旨の審決がされたとの原告の主張は,その前提において失当である。
このように,原告が主張する前記a①の点は,本件特許の出願人である原告が,特許庁に提出した意見書等の中で,本件発明の構成要件Bに関して原告主張の解釈に沿う内容の意見を述べていたということ以上の意味を有するものではなく,このような事情が,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の解釈に直ちに結びつくものとはいえない。

(67頁)
(エ) 小括
以上の次第であるから,構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,・・・切り込み部又は溝部を設け」るとの文言は,切餅の「載置底面又は平坦上面」には切り込み部等を設けず,「上側表面部の立直側面である側周表面」に切り込み部等を設けることを意味するものと解釈するのが相当であり,これに反する原告の主張は,いずれも採用することができない。

 ↓

・2011/9/7 平成23年(ネ)第10002号 特許権侵害差止等請求控訴事件 中間判決

 (構成要件Bの解釈:高裁の判断)
(9頁)
 (1) 構成要件Bの充足性について
 ア 「載置底面又は平坦上面ではなく」の意義について
(ア) 特許請求の範囲の記載
 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,」(構成要件B)と記載されている。
 上記特許請求の範囲の記載によれば,「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載部分の直後に,「この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に」との記載部分が,読点が付されることなく続いているのであって,そのような構文に照らすならば,「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載部分は,その直後の「この小片餅体の上側表面部の立直側面である」との記載部分とともに,「側周表面」を修飾しているものと理解するのが自然である。

(14頁)
 (イ) 発明の詳細な説明の記載
c これに対し,被告は,本件発明は,切餅について,切り込みの設定によって,焼き途中での膨化による噴き出しを制御できるという効果(効果①)と,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるという効果(効果②)を共に奏するものであるが(本件明細書段落【0032】),切餅の平坦上面又は載置底面に切り込みが存在する場合には,焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなるため,忌避すべき状態になることから(本件明細書段落【0007】),本件発明における効果②を奏することはないと主張する。
 しかし,被告の主張は,採用の限りでない。
 すなわち,本件発明は,上記のとおり,切餅の側周表面の周方向の切り込みによって,膨化による噴き出しを抑制する効果があるということを利用した発明であり,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるという効果は,これに伴う当然の結果であるといえる。載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けたために,美観を損なう場合が生じ得るからといって,そのことから直ちに,構成要件Bにおいて,載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けることが,排除されると解することは相当でない

(21頁)
 (ウ) 出願過程について
以上のとおりであり,本件特許に係る出願過程において,原告は,拒絶理由を解消しようとして,一度は,手続補正書を提出し,同補正に係る発明の内容に即して,切餅の上下面である載置底面又は平坦上面ではなく,切餅の側周表面のみに切り込みが設けられる発明である旨の意見を述べたが,審査官から,新規事項の追加に当たるとの判断が示されたため,再度補正書を提出して,前記の意見も撤回するに至った。したがって,本件発明の構成要件Bの文言を解釈するに当たって,出願過程において,撤回した手続補正書に記載された発明に係る「特許請求の範囲」の記載の意義に関して,原告が述べた意見内容に拘束される筋合いはない。むしろ,本件特許の出願過程全体をみれば,原告は,撤回した補正に関連した意見陳述を除いて,切餅の上下面である載置底面及び平坦上面には切り込みがあってもなくてもよい旨を主張していたのであって,そのような経緯に照らすならば,被告の上記主張は,採用することができない。
   +

 (事実実験公正証書:高裁の判断)
(31頁)
しかし,上記F証言等は,以下のとおりの理由から,到底採用することはできない。すなわち,
①Bは,上記2回にわたる口頭での了解について強く否定していること,
②食品業界大手である被告が,外袋及び個包装に示された商品の図柄と商品の形状とが齟齬する点について,全く配慮を欠いたまま,市場に置いているのは不自然であること,
③側面に切り込みを入れるか否かという,切餅としての重要な特徴的構成を突然変更したにもかかわらず,いずれもBとの間の口頭でのやりとりのみで処理することも,不自然であること,
④一度,販売を開始した商品について,安全面,衛生面で問題が発生する可能性があるという事情によって,その特徴的な構成を変更したにもかかわらず,その経緯を示す記録が何ら残されておらず,公表もしていないのは不自然であること,
⑤特徴的な構成である側面の切り込みを短期間で変更せざるを得ない,他の合理的な理由及び説明は何らされていないこと
などの諸事情を総合すると,上記F証言等の内容は,到底採用することはできない。
以上のとおりの経緯に照らすと,本件餅が平成14年10月18日に製造され,同月21日以降,イトーヨーカ堂において販売された「こんがりうまカット」であるとの事実を認めることはできない。

(追記4)補正の経緯
○出願当初(平成14年10月31日出願)
【請求項1】
 角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の
 載置底面ではなく上側表面部に,周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けた
 ことを特徴とする餅。

 ↓
○手続補正(平成17年8月1日)
【請求項1】
 角形の切餅や丸形の丸餅などの焼き網に載置して焼き上げて食する小片餅体の
 載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の側周表面のみに,周辺縁あるいは輪郭縁に沿う周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,
 前記周方向に連続して形成若しくは周方向に沿って複数形成した切り込み部又は溝部は,少なくとも前記小片餅体の側周表面の互いに対向する位置には存するように構成して,
 焼き上げるに際しての膨化による外部への噴出力を抑制するための前記切り込み部又は溝部を,前記小片餅体の載置底面又は平坦上面には形成せず,且つ前記切込み部又は溝部が前記小片餅体の側周表面の対向位置に何ら形成されていないことのないように構成した
 ことを特徴とする餅。

 ↓
○手続補正(平成17年11月25日)
【請求項4】
 焼き網に載置して焼き上げて食する切餅などの輪郭形状が方形の小片餅体の
 載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,
 この切り込み部又は溝部は,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは周方向に沿って複数配置してほぼ角環状に配置した若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として,
 焼き上げるに際しての膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成した
 ことを特徴とする餅。

 ↓
○手続補正(平成18年3月29日)
【請求項4】
 焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅
 載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,
 この切り込み部又は溝部は,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として,
 焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成した
 ことを特徴とする餅。

 ↓
○手続補正(平成20年2月29日)
※請求項4,5をそのまま新たな請求項1,2とした



【発明の名称】餅
【出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【特許権者】越後製菓株式会社

#外国出願ナシ
First page clipping of JP2004147598 (A)

【請求項1】
A:焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の
B:載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け、
C:この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として、
D:焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成した
E:ことを特徴とする餅。

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