#実務ネタ、PBPクレーム

特許実務上、近年で一番有名な判例ではないかと思う。

テバ ファーマスーティカル インダストリーズ リミティド(wiki) vs 協和発酵キリン株式会社+株式会社東理。

結論から言えば、テバ社が請求を放棄して訴訟が終了したようだ。

この事件では、プロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームの取り扱いついて判決がなされた。これを受けて、特許庁の審査基準にも変更が生じている。これについては、多くの人が解説しているので、ここでは省略。 

化学系の実務者は深く検討しておく必要があるだろう。
一方、電気・機械系の実務者は、以下の点を認識しておくぐらいでよい気がする。
プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査の取扱いについて 2016/3/30
 ※くどい解説だが、下記の例はPBPクレームには該当しないということ。

凹部を備えた孔に凸部を備えたボルトを前記凹部と前記凸部とが係合するように挿入し、
 前記ボルトの端部にナットを螺合してなる固定部を有する機器。」の事例。
類型(1-1)5に掲げていたボルト・ナットに係る事例6においては、事例の記載が物としての「機器」のどのような構造を表しているのかは、技術常識にも照らして明らかですが、製造に関して経時的な要素が記載されているため、形式的には、「その物の製造方法が記載されている場合」に該当することとなります。その点を考慮し、平成 27 年 7 月 6 日公表の「当面の審査の取扱い」では、最高裁判決における明確性要件に関する結論部分7を厳格にとらえる立場から、当該事例は「その物の製造方法が記載されている場合」に該当することとするとともに、物の発明についての請求項であることは維持しつつ、経時的な要素の記載をなくし、製造方法が記載されている場合に該当しないようにする補正例を併せて示し、参考に供していました。
しかしながら、当該事例においては、「機器」の製造方法が当該「機器」のどのような構造を表しているのかが明らかであることから、当該事例は、最高裁判決中、上記結論部分に至る理由の説示8における「一般的には ・・・ 不明であり」との記載には、該当しません。この点にかんがみ、また関係諸方面の識者やユーザーのご意見を勘案して検討した結果、かかる事例は「その物の製造方法が記載されている場合」に該当しないものとして取り扱うこととし、それに伴い当該類型(1-1)の具体例を入れ替えました。

●第1事件
○最高裁
判示事項
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける特許発明の技術的範囲の確定
2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームと明確性要件
裁判要旨
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。
2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる。
(1,2につき補足意見及び意見がある。)
○知財高裁
 ※被行訴人=協和発酵キリン株式会社

○東京地裁
 ※被告=協和発酵キリン株式会社

cf 関連事件
・無効審判:無効2008-800055号
  ↓
 ※原告(=協和発酵キリン株式会社)の請求を棄却


●第2事件
○最高裁
判示事項
  物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける発明の要旨の認定
裁判要旨
  物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される。
(補足意見及び意見がある。)
○知財高裁
 ※被控訴人=株式会社東理

○東京地裁
 ※被告=株式会社東理


(追記)
情報が更新されていた。
○ 出願人の「不可能・非実際的事情」についての主張・立証の内容に、合理的な疑問がない限り(通常、拒絶理由通知時又は拒絶査定時に、審査官が具体的な疑義を示せない限り)、審査官は、「不可能・非実際的事情」が存在するものと判断します。
案の定、結局こうなった。気付かない人も少なくない気はするが、この縛りが重要。この縛りがあると、審査官もなかなか拒絶理由を出せなくなるだろう。電気・機械系では、必要以上に神経質になる必要はないと思われる。ただ、特許後の無効理由の抗弁でどの程度影響が出るのかは気になるところ。


(追記2)
先日「プラバスタチンナトリウム事件」に関するセミナーを受講した。
大学教授が講師だったので、実務家とは違った観点での解説を聞けた。

印象に残るのは、『明確性要件の判断基準を、「不可能・非実際的事情」の存否においた点は、論理的に整合性がない』という説明。要するに、クレームの記載以外の事情で、クレームの記載の明確性を判断している。実務的には影響の出る論点ではない気もするが、確かにその通りだと思う。

この事件は、やはり化学系特有の話のような気がする。
電気・機械系ならそもそも問題が生じるようなPBPクレームを記載することも少ないだろう。
特許庁が、平成27年に公表したガイドラインが不適切(ボルトとナットの事例)だったから混乱を生じただけのような気がする。



●特許3737801
・テバ  ジョジセルジャール  レースベニュタールシャシャーグ
・出願日:2001/10/5
・「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム、並びにそれを含む組成物」
#パテントファミリー26件

【請求項1】
 次の段階:
 a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し、
 b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し、
 c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し、
 d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え、そして
 e)プラバスタチンナトリウム単離すること、
 を含んで成る方法によって製造される、プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり、エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。


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