2006年01月27日

米国特許法第112条第2パラグラフ 「Antedecent Base」がないにもかかわらず特許無効とならなかった事例3

本日は、CAFCの判例を紹介いたします。

アルカリ電池に関する703特許が米国特許法第112条の要件を満たしていないとして特許無効の判断を下したITCに対し、特許権者がその判断を不服としてCAFCに上告してたものです。

具体的には、ITCは、請求項に記載されていた「said zinc anode」の「said」には「antecednet base」を欠くとして、請求項は不明瞭であり、112条により特許は無効であると判断しました。

定冠詞「the」あるいは「said」をある名詞の前に使用する場合(この場合の名詞は「zinc anode」)、その名詞は、そのクレーム(あるいはそのクレームが従属する上位のクレーム)中、かつその名詞より先に述べていなければなりません(先行詞がなければなりません)。つまり、「antecedent base」を欠くとは、その名詞が以前に述べられてい場合(先行詞がないような場合)をいいます。つまり、本件では、zinc anodeが以前に出てきていないのにもかかわらず、saidを使用していたため、無効と判断されました。

問題となった請求項1は以下の通りです。

1. An electrochemical cell comprising an alkaline electrolyte, a cathode
comprising manganese dioxide as an active cathode component, and an
anode gel comprised of zinc as the active anode component, wherein the cell
contains less than 50 parts of mercury per million parts by weight of the cell and said zinc anode has a gel expansion of less than 25% after being
discharged for 161 minutes to 15% depth of discharge at 2.88A.

CAFCは、請求項が明細書の観点で当業者により合理的に理解できるのであれば、「Antecedent Base」により無効となることはないとし、また、「Antedecent Base」は、暗示(Implication)によっても存在するとみなすことができると述べた上、CAFCは、本件の場合、「anode gel」が、「said zinc anode」の先行詞であることは明らかであり、ITCの無効の判断を棄却しました。

このように、「Anticedent Base」を欠くというだけでは、必ずしも無効になるとは限りません。

Yahoo Blogにも投稿していますのでアクセスしてみてください。

http://blogs.yahoo.co.jp/patentblog

米国特許弁護士
今泉俊克

Toshikatsu Imaizumi, Esq.
Rader, Fishman & Grauer PLLC
1233 20th Street, N.W., Suite 501
Washington, D.C. 20036
202-955-3750 (代表)
ti@raderfishman.com


patentblog at 10:35|PermalinkComments(2)TrackBack(0) 米国特許法 

2005年11月14日

米国商標 Stereotaxis, Inc. (Disclaimおよび、記述的「Descriptive」についての判例)3

9c464287.JPG本日は、米国商標手続きをする上で参考になるのではないかと思いまして米国商標の判決をご紹介いたします。

Stereotaxis, Inc(以下出願人という)は、“stereotaxis"というWordとデザインの組み合わせで医療器具(「Magnetic Navigation Systems for Medical Applications」、「Magnetic Medical Devices」、「Magnets and Electromagnets for Medical Applications」 および「Medical Imaging Apparatus」)についての商標出願を米国特許庁に行いました。マークの詳細につきましては、添付画像をご参照ください。

しかしながら、審査官は、出願人が磁気手術器具を製造販売しており、また、「stereotaxis」というWordは医療器具について、記述的(Descriptive)であるとして、その「Stereotaxis」という言葉については、権利を放棄することを条件としました。(She explained that “[a] disclaimer does not remove the disclaimed matter from the mark. It is simply a statement that the applicant does not claim exclusive rights in the disclaimed wording or design apart from the mark as shown in the drawing.”)

出願人は、これを不服として審判部にアピールしましたが、審判部も審査官の決定を支持したため(“stereotaxis” “immediately describes . . . significant information concerning the nature, purpose or function of at least some, if not most, of the applicant’s goods,” and therefore must be disclaimed.)、出願人は、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に控訴いたしました。

ちなみに、その文言をみて、材料、品質、特徴、機能、目的、利用についてのアイデアをもたらすものであるならば、商品、サービスを単に記述するのみである場合、「記述的(Descriptive)であるとみなされます。このように記述的な文言はSecondary Meaningが生じていなければ、米国商標として登録できません。以前のブログをご参照ください。

http://blogs.yahoo.co.jp/patentblog/folder/326691.html?fid=326691&m=lc&sv=descriptive&sk=0

CAFCは、マークが記述的か否かは、事実の問題であるとし、Substantial Evidenceによってサポートされていない場合を除き、審判部の判断を支持するものであるとし、証拠を参照しました。

CAFCは、審判部が、辞書、新聞、サーベイといった、有効なソースからその文言がDescriptiveであると判断しているとし、いくつかの辞書の定義を参照しました。

ある辞書によると、stereotaxisとは、三次元スキャニング技術の利用により、特定イエリアにガイドされたデリケートな器具を挿入するといった、脳手術、神経手術として定義されているとし、また、ある辞書では、この文言は、三次元画像を生成するためのコンピュータおよびスキャナーの利用であると定義されていました。

CAFCは、このような定義は出願の商品、サービスを記述するものであると判断しました。また、CAFCは、本件のような場合、出願人が「関係する公衆(本件では医療のプロフェッショナル)が、そのマークが他の分類を意味するものであると考えれることを示す証拠を示さなければならないが、本件では、そのような証拠はなく、審判部の下した判断を示す十分な証拠(Substantial Evicence)があるため、審判部の判断を支持すると判断しました。

以上のように記述的(Descriptive)であるとして拒絶された場合、関連する公衆がどのようにそのようにその言葉を理解するかを示し、その理解が「商品、サービスを記述するに過ぎない」とする審査官の主張と異なることを示さなければなりません。しかしながら、「記述的」であるとする拒絶に対し、使用に基づくSecondary Meaningを主張することで回避できます。あるいは、今回のように、文字の部分を権利放棄することによっても米国商標を登録することができます。


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今泉俊克

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The Board stated that “[i]t is well settled that a term is considered to be merely descriptive of goods or services . . . if it forthwith conveys an immediate idea of any ingredient, quality, characteristic, feature, function, purpose or use of the goods or services.” In re Stereotaxis, Inc., No. 7810867 (TTAB July 20, 2004) (slip op.). It noted “that registration must be denied if a term is merely descriptive of any of the goods or services for which registration is sought.” It concluded that the term “stereotaxis” “immediately describes . . . significant information concerning the nature, purpose or function of at least some, if not most, of the applicant’s goods,” and therefore must be disclaimed.

patentblog at 08:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 米国商標 

2005年10月28日

米国ライセンス Sicom Systems Ltd. v. Agilent Technologies, Inc.5

米国ライセンスに関する判例がでましたのでご照会いたします。この判例は、米国に限定されますので、日本の判例につきましては、日本の弁護士さんにお問い合わせください。

SicomがAgilent Technologies, Inc.に対しデラウエア連邦地裁に提訴していた特許侵害訴訟において、地裁は、特許権の本質的な権利をSicomに与えていなかったため、Sicomには、Standing(原告適格)がないとして、訴訟自体を却下しました。(Vaupel Textilmaschinen KG v. Meccanica Euro Italia SPA, 944 F.2d 870, 875 (Fed. Cir. 1991).)これに対しSicomがCAFCに控訴していたのが本件です。

カナダ政府とSicomとの間で交わされたライセンス同意書の規定は以下の通りです。

カナダ政府は、147特許の法的所有権を維持し、以下の権利を保持する
the rights to:
(1) continue operating under the patented technology;
(2) veto proposed sublicenses;
(3) grant contracts to further develop the ’147 patent;
(4) sublicense any improvements or corrections developed by Sicom; and
(5) sue for infringement of the ’147 patent except for “commercial infringement actions.”
Additionally, Sicom could not assign its rights without Canada’s approval, nor bring suit without first notifying Canada.

カナダ政府は、その訴訟に参加することを拒否していました。

地裁において訴訟を行っている途中で、カナダ政府は、商業的侵害に対し訴訟を行う排他的権利をSicomに与えるようライセンス同意書を修正しました。しかし、地裁は、この権利の拡大はSicomに、ライセンスを譲渡に変更するような、排他的権利(exclusive rights)を与えないとして、Sicomの主張を認めませんでした。つまり、修正後のライセンス同意書においても、カナダ政府は、非商業的侵害に対し訴える権利を有していました。また、Sicomの訴える権利は、カナダ政府の許可を得る必要性等の制限があり、依然として限定的なものでした。

控訴審であるCAFCは、本質的な特許権を譲渡された者は、実質的な特許権を譲渡されたこととなり、Effective Patenteeとして特許訴訟の訴訟適格を有するが、ライセンシーがすべての本質的な権利を有しない限り、ライセンシーには訴訟する権利はないとと判断しています。Calgon Corp. v. Nalco Chem. Co., 726 F. Supp. 983, 985 (D. Del. 1989)

ちなみに、CAFCは排他的ライセンシーは非排他的ライセンス以上しかし譲渡以下の権利を受けるものであると述べています。また、本質的な権利を有さないライセンシーであれば、特許権者とともに訴訟を起こさなければならないと述べています。

本質的な権利とは、以下のように定義されています。

This court has defined “all substantial rights” as those rights sufficient for the licensee or assignee to be “deemed the effective patentee under 35 U.S.C. § 281.” Prima Tek II, 222 F.3d at 1377.

また、本件ではすべての本質的な権利を与えたか否かについては、いくつかの判例を参照しています。以下、判例の一部を引用します。

This court has addressed the issue of whether an agreement transfers all or fewer than all substantial patent rights in five recent cases. See Intellectual Prop. Dev., Inc. v. TCI Cablevision of Cal., Inc., 248 F.3d 1333 (Fed. Cir. 2001); Prima Tek II, 222 F.3d 1372; Textile Prods., 134 F.3d 1481; Abbott Labs. v. Diamedix Corp., 47 F.3d 1128 (Fed. Cir. 1995); Vaupel, 944 F.2d 870; see also H.R. Techs., 275 F.3d 1378; Mentor H/S, Inc. v. Med. Device Alliance, 240 F.3d 1016 (Fed. Cir. 2001); Speedplay, Inc. v. Bebop, Inc., 211 F.3d 1245 (Fed. Cir. 2000).

最終的にCAFCは、「Sicomが商業的侵害については訴訟を起こす権利を受けているが、すべての侵害訴訟を起こす権利を有するわけではなく、又、その他の規定についても、本質的な権利を受けているとはいえないとし訴訟適格を認めませんでした。

このように、ライセンス契約をする場合、将来のことを考え訴訟適格を考えてライセンス契約を結ぶ必要があります。

米国特許弁護士
今泉俊克

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なお、ブログにつきましては、私個人の見解であり、私の所属するRader, Fishman & Grauer PLLCの見解ではございませんので、ご留意ください。また、このブログに記載する情報は、一般論であり、事実関係が異なれば結論も変わりますので、具体的事案につきましては、米国弁護士の見解を取る必要がございます。このブログに記載された内容に基づき被った損害につきましては、責任を負いかねますのでご了承ください。また、このブログの内容は著作権法で保護されていますので、コピーはご遠慮ください。

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2005年08月05日

Yahooブログから引越ししてきました。5

今まで、Yahooブログにて投稿をしてまいりましたが、特に力を入れて書いたブログをこちらに掲載いたします。なお、Yahooブログと平行して投稿していきます。

Yahooの方を頻繁に更新いたしますのでYahoo Blogもご覧ください。

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