2005年10月28日

米国ライセンス Sicom Systems Ltd. v. Agilent Technologies, Inc.5

米国ライセンスに関する判例がでましたのでご照会いたします。この判例は、米国に限定されますので、日本の判例につきましては、日本の弁護士さんにお問い合わせください。

SicomがAgilent Technologies, Inc.に対しデラウエア連邦地裁に提訴していた特許侵害訴訟において、地裁は、特許権の本質的な権利をSicomに与えていなかったため、Sicomには、Standing(原告適格)がないとして、訴訟自体を却下しました。(Vaupel Textilmaschinen KG v. Meccanica Euro Italia SPA, 944 F.2d 870, 875 (Fed. Cir. 1991).)これに対しSicomがCAFCに控訴していたのが本件です。

カナダ政府とSicomとの間で交わされたライセンス同意書の規定は以下の通りです。

カナダ政府は、147特許の法的所有権を維持し、以下の権利を保持する
the rights to:
(1) continue operating under the patented technology;
(2) veto proposed sublicenses;
(3) grant contracts to further develop the ’147 patent;
(4) sublicense any improvements or corrections developed by Sicom; and
(5) sue for infringement of the ’147 patent except for “commercial infringement actions.”
Additionally, Sicom could not assign its rights without Canada’s approval, nor bring suit without first notifying Canada.

カナダ政府は、その訴訟に参加することを拒否していました。

地裁において訴訟を行っている途中で、カナダ政府は、商業的侵害に対し訴訟を行う排他的権利をSicomに与えるようライセンス同意書を修正しました。しかし、地裁は、この権利の拡大はSicomに、ライセンスを譲渡に変更するような、排他的権利(exclusive rights)を与えないとして、Sicomの主張を認めませんでした。つまり、修正後のライセンス同意書においても、カナダ政府は、非商業的侵害に対し訴える権利を有していました。また、Sicomの訴える権利は、カナダ政府の許可を得る必要性等の制限があり、依然として限定的なものでした。

控訴審であるCAFCは、本質的な特許権を譲渡された者は、実質的な特許権を譲渡されたこととなり、Effective Patenteeとして特許訴訟の訴訟適格を有するが、ライセンシーがすべての本質的な権利を有しない限り、ライセンシーには訴訟する権利はないとと判断しています。Calgon Corp. v. Nalco Chem. Co., 726 F. Supp. 983, 985 (D. Del. 1989)

ちなみに、CAFCは排他的ライセンシーは非排他的ライセンス以上しかし譲渡以下の権利を受けるものであると述べています。また、本質的な権利を有さないライセンシーであれば、特許権者とともに訴訟を起こさなければならないと述べています。

本質的な権利とは、以下のように定義されています。

This court has defined “all substantial rights” as those rights sufficient for the licensee or assignee to be “deemed the effective patentee under 35 U.S.C. § 281.” Prima Tek II, 222 F.3d at 1377.

また、本件ではすべての本質的な権利を与えたか否かについては、いくつかの判例を参照しています。以下、判例の一部を引用します。

This court has addressed the issue of whether an agreement transfers all or fewer than all substantial patent rights in five recent cases. See Intellectual Prop. Dev., Inc. v. TCI Cablevision of Cal., Inc., 248 F.3d 1333 (Fed. Cir. 2001); Prima Tek II, 222 F.3d 1372; Textile Prods., 134 F.3d 1481; Abbott Labs. v. Diamedix Corp., 47 F.3d 1128 (Fed. Cir. 1995); Vaupel, 944 F.2d 870; see also H.R. Techs., 275 F.3d 1378; Mentor H/S, Inc. v. Med. Device Alliance, 240 F.3d 1016 (Fed. Cir. 2001); Speedplay, Inc. v. Bebop, Inc., 211 F.3d 1245 (Fed. Cir. 2000).

最終的にCAFCは、「Sicomが商業的侵害については訴訟を起こす権利を受けているが、すべての侵害訴訟を起こす権利を有するわけではなく、又、その他の規定についても、本質的な権利を受けているとはいえないとし訴訟適格を認めませんでした。

このように、ライセンス契約をする場合、将来のことを考え訴訟適格を考えてライセンス契約を結ぶ必要があります。

米国特許弁護士
今泉俊克

Toshikatsu Imaizumi, Esq.
Rader, Fishman & Grauer PLLC
1233 20th Street, N.W., Suite 501
Washington, D.C. 20036
202-955-3750 (代表)
ti@raderfishman.com

なお、ブログにつきましては、私個人の見解であり、私の所属するRader, Fishman & Grauer PLLCの見解ではございませんので、ご留意ください。また、このブログに記載する情報は、一般論であり、事実関係が異なれば結論も変わりますので、具体的事案につきましては、米国弁護士の見解を取る必要がございます。このブログに記載された内容に基づき被った損害につきましては、責任を負いかねますのでご了承ください。また、このブログの内容は著作権法で保護されていますので、コピーはご遠慮ください。

patentblog at 10:22│Comments(0)TrackBack(1) 米国ライセンス | 米国特許法

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 米国ライセンスに関するブログを掲載いたしました。  [ 米国知的財産権(特許、意匠、商標、著作権、トレードシーク、訴訟) ]   2005年10月28日 17:53
米国ライセンスに関するブログを掲載いたしました。 ファンのみご覧いただけます。 なお、同じブログをLivedoorのブログの方に掲載いたしましたのでご覧ください。以下のURLでアクセスできます。 http://blog.livedoor.jp/patentblog/ 米国特許弁護士 今泉俊克 ...

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔