ギターパイロットという職業があります。着陸の際には空港の地形に加えて当日の天候(雨・風・雲)などにも大きく左右され、その操縦には熟達された技術が求められます。今日はそのギターパイロットについてのインタビューの模様をお届けします。
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ギターパイロットの注意点
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Q:「早速ですが、ギターパイロットになろうと思ったきっかけを教えて下さい。」
A:「もともとディープ・パープルのハイウェイスターの速弾きにノックアウトされた組です。1弦を5688fと弾くあのソロです。その最後、いわゆる着陸の時のアーミングに痺れましてギターを手に取りました。お客様を快適にもてなす巡航飛行(バッキング)の奥深さを知ったのはむしろ最近になってからです。」
Q:「操縦時に於いて気を付けるポイントなどはありますか。」
A:「なんといってもランディング(着陸)です。終わり良ければ全て良しという諺が当てはまる最たる職業がギターパイロットだと思いますね。離陸は誰にだってできるのです。」
Q:「ギターパイロットに於いて離陸は比較的簡単とはいうものの、『はいギターソロどうぞ!』といきなり振られて弾き始めたら弦が切れ、しかもそのギターがフローティングトレモロのセッティングになっていて、チューニングがダダ狂い、地面に叩きつけられるという痛ましい失速事故も何度か見ていますが。脱出ボタンがあったら押したくなるというか。」
A:「それは整備不良も考えられますね。空気圧点検などはいうまでもないことですが、特に高音弦のブリッジの溝の角が立っていて、それで弦が切れやすくなっている場合が多いのです。」
Q:「ギターパイロットは操縦技術だけでなく、飛行前の入念な点検が欠かせないということですね。」
A:「その通りです。まあ超一流になってギターテクニシャンを引き連れられるようになると、全て任せて演奏に集中できるわけですが、それはギターパイロットの中でもごく限られた人達です。」
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ギターパイロットのスタイル
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Q:「そろそろ本題に入りたいと思います。ギターパイロットの腕の見せ所といえば、いかに自由かつ華麗に大空を飛び回り、最後に着陸を美しく決められるかだと思いますが、その飛行スタイルについてお話を聞かせて下さい。」
A:「ひと口にギターパイロットと言ってもさまざまな人達が操縦桿を握っておられます。大きく分けてギターパイロットには下記のタイプがあります。
・クラシックギターパイロット
・ロックギターパイロット
・ジャズギターパイロット
なおくれぐれも事前に言っておきますが、何事にも例外がつきものです。ジャズギターパイロットとして普段は操縦桿を握っておきながら、その時の状況次第で歪みモノを踏んでロックモードへ豹変するマイクスターソのような操縦士もいますから、厳密に言えばそもそも仕切ることなど不可能です。このブログは人それぞれと言ってしまうと終わってしまう話を取り上げていますので、各スタイルへの厳密な言及や区分けに関する炎上コメントはお控え下さい。」
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クラシックギターパイロット
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Q:「なるほど。ではまずはクラシックギターパイロットからお聞かせ下さい。」
A:「全ての飛行コースが厳密に決められていて、その通り飛びながらいかに個人的な解釈も乗せられるか、ということがこのスタイルの真骨頂になります。」
Q:「早朝トラックのコンビニルート66配送とかと同じですか。」
A:「数あるルートのなかで66コースだけはブルースコースで例外扱いになりますが、原則的にクラシックスタイルなのでアドリブはありません。書いてある音符をいかに音楽的に弾けるかということがスローガンです。この人達の特徴は驚異的な技術や読譜能力を持ち合わせながらも、その場の雰囲気に合わせてフレーズを変えていくようなアドリブが一切できないということです。これは若干職種が違いますがクラシックピアノパイロットの人に多く見られます」
Q:「ピアノパイロット?」
A:「そうですね、たとえば音楽教室の合同発表会などで、その最後に講師のデモ演奏をやることになり、リハーサルに入ったとします。『ではここの[ C ]のところは、講師の先生方のソロ回しということでお願いします』となった展開の時に懸念された事案が生じます。」
Q:「というと?」
A:「ピアノパイロットがちょっとキレ気味に
『すいません私は即興できませんので、どなたか音符を書いていただくか、あるいは当日までの宿題にさせて下さい』
と答えるわけです。」
Q:「で、講師演奏の本番はどうなったのでしょうか?」
A:「クラシックピアノパイロットのソロは、やはり完璧でした。演奏中の譜面を見たら、推敲の上で作曲されたソロフレーズが書いてあり、それを本番で見ながら演奏されていたようです。」
Q:「つまりアドリブではないということなのですね。でもクラシックパイロット界は、驚異的なスキルのある操縦士が多いと聞きますが、なぜかたくなにアドリブを拒むのですか。」
A:「ロックギターパイロットの人達にはきっとその気持ちが理解できないと思います。ロック界はそもそも航空学校にも通うことなく独学で飛行技術を習得し、何も分からぬまま操縦桿を握っている操縦士が多くいます。いわゆる家に置いてあったギターでLPレコードを擦りきれるくらい聴いて耳コピした系です。そういう人達から見ると、技術があれだけあってなおかつ譜面もむちゃくちゃ読めるのに、なんで適当に弾けないんだ?と不思議でたまりません。」
Q:「そりゃそうですよ、何しろロックギターパイロットの人って、譜面通りに弾ける人を秘かに恐れたり憧れたりしつつも、『やっぱ譜面じゃなくて、気持ちだよね。』とかいう防衛機能を働かせる人がやたらめったら多いし。」
A:「クラシック界の人の多くは、幼少時から譜面を見てから音を出す、という作業を疑わずに繰り返しながら楽器を修得しています。与えられた譜面のフレーズがたとえダサく映ったり変えてみたいと思っても、基本的にはクラシックの譜面は絶対的なものであるとの前提で向き合っているのです。」
Q:「ロックバンドのリハだと、あのタブ譜絶対違うよね、本人はもっとハイポジで弾いてると思うよ。とかいう会話がよく交わされていますね。」
A:「はい、ロックバンドのタブ譜の多くはライターの人が耳コピして掲載したものであり、長い年月を経ず急いで出版されたものも多く、誤植なども普通にあります。それに対して数百年前から引き継がれているクラシックの譜面ではおおよそそれはありません。つまりクラシックの人達にとっての譜面とは、絶対的帰依の対象でもあります。
クラシックギターパイロットにとって
譜面は紙というより、神なのです。」
Q:「なんかシャレを言いたかっただけじゃね? なるほど、神からの啓示に近い尊敬の念を抱きつつ弾くからこそ、絶対的な安心感の中で音を出せるわけですね。だからミスは単なるミスなので許されない、であるからして一生懸命練習すると。」
A:「そうなのです、ロックギターパイロットだったら、指がもつれていて明らかに弾けてないのに、『それがまたいいんだよなぁ』という評価法が存在しますが、それは、正解がそもそも無いところでフレーズを弾いているからなのです。あるとすれば、オレ、ブルースギターの神様なんですけど何か?みたいな。
いわゆる1番エライのオレ様モードですね。
クラシック厨にとっては 譜面は1番 自分は2番。
ロック厨にとっては 自分が1番 譜面は読めん
文明堂にとっては カステラ1番 電話は2番
3時のおやつは、ということになります。
譜面の音符が神で、それを出力する機会を与えられているのが自分だという認識が強いクラシックギターパイロットは、長年に渡ってその心のモードで音を出してきていますから、唐突に『おまえの好きに弾け』と言われても、不安過ぎて弾けないし、ましてやそこに価値を見出すこともできないというトラジディ(=悲劇)に陥るわけです。」
Q:「今の話を聞きながら『ほらみたことか、ちまちまスケールやら読譜の練習ばっかりやってるヒマがあったらペンタの一つでも自由に弾きやがれ』と思っているロック厨の一部が起死回生のチャンスだと息巻いている気配を背後に感じます....」
A:「まあそう思っているコンプレックス(...というバンド名は今回の内容とは100%無関係です)の塊のようなロック厨はごく一部ですが、存在している可能性はありますね。」
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ロックギターパイロット
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Q:「では本日のメイン、クラシックと正反対ともいえるロック派のギターパイロットについて伺います。そもそも彼らの飛行スタイルとはどんなものなのでしょうか?」
A:「その昔、華麗なるギター野郎という映画が一世を風靡していましたが、イメージとしてはそれに近いと思います。」
Q:「〜野郎という邦題の時点で香ばしさ満点ですね。」
A:「華麗なるライトハンド、意表を突くアーミング、感情直結の泣き叫ぶチョーキングやビブラート。これらはロックギターパイロットならではの技と言えますし、エディー藩ヘイレンが代表的なパイロットして有名です。あ、まちがえました、藩じゃなくヴァンです。」
Q:「ギター界に於いては藩とVanは全く違う意味になりますから気を付けてください、今回の場合はアメリカのパイロットのことですね。ロックギターパイロットのソロのイメージはどんな感じなのでしょうか?」
A:「図解してみましょう。ギター・ソロというのは必ずいつか終わります。つまり離陸したら後は着陸に向かうだけです。着陸した瞬間、そのソロがどうだったか評価されるわけです。」
Q:「何やら雲がかかっていて、着陸先の滑走路が全く見えません。おや、方位の標識だけは立っていますね」
A:「ロックギターパイロットは、方位標識によってまずキーを確認し、それに適合するマイナー・ペンタのポジションに指を置きます。その上でフライト時間の間、自由に飛び回るというわけです。はい終わり、チャンチャン。」
Q:「まじですか?滑走路が見えず、高度(=コード)すら把握できていない状況でよくそんなことができますね。」
A:「フライト時間が終わりに近づいて雲を抜ける時に機体が少し揺れるので、それがソロ終わりの合図となります。すると雲が晴れ目の前に滑走路が見えてくるのです。」
Q:「そういえばロックギターパイロットの中には、ソロがもう終わりなのにうまくフレーズが収められなくてヴォーカルの入りとぶつかって、睨まれるという事案があちこちで発生してますね。」
A:「あるいは逆に、まだ2小節あるのに早く着陸しちゃって、バンド全員が気まずい雰囲気のまま、誰がソロを弾くこともなく残り小節を気恥ずかしく演奏している場面もありますね。また、ソロの終わりで滑走路の位置を確認したものの、飛行機の車輪(=脚)を出すのが遅れて歪んだサウンドのままカッティングに突入してしまうような事例も発生しています。」
Q:「ソロ最後に足が出ずに歪みペダルをOFFれないケースですね。ありがちです。そういえば厚い雲に覆われていている時ほど、宙返りや速弾きを羅列してごまかそうとするソロを聴くことが多いような気がします。」
A:「それが、知らぬが仏アプローチです。キーだけ確認したら小節数もカンで、コードに合うかどうかもすべてカン、それでどうにかなるだろうというアプローチです。もちろんそのアプローチで神業的なラインを生み出しているロックギタリストもいたりします。」
Q:「それってジェフ・ベックですよね。ロック界のレジェンド、ポールさんが言ったと伝えられる『ロック・ギタリストは2種類しかいない、ジェフ・ベックか それ以外だ』
という名言を思い出しました。」
A:「ベックの神業的なソロを引き合いに、ざまあジャズ・ギタリストめ的論調が時折交わされることがあるようですが、ジャズ界に於いてもジェフベックは高く評価されています。間違ってはいけないのは、彼は飛行機の操縦士ではなくあくまでも車のドライバーです、というか車の整備士。」
Q:「ツアーとレコーディング以外は常に車のメンテに夢中という話がありますね。」
A:「はい、ベックの場合はジャズのいわゆる伝統的なイデオム、たとえばツーファイブフレーズの類は全くといっていいほど登場しません。その代わりアーミングやトーンコントロールを駆使した、まさしく神業的なニュアンスで、信じられないフレーズがこれでもかといわんばかりに出てくるのです。」
Q:「ということは、理論や練習で追い込んで出てきたフレーズではないということでしょうか。」
A:「恐らくジェフベックほど耳の良いギタリストなら、たとえば嵐の中でのテンジン・ヒラリー空港への着陸も完璧だと思います。」
Q:「あらゆる理論よりも上にあるのが耳である、とはよく言われますがその通りですよね。しかしそんな言葉を鵜呑みにして、カンだけでいいやと思っちゃった、さして耳の良くないパイロット達の運命は悲惨ですね。」
A:「そうなんです。それにジェフベックは超一流ジャズミュージシャンと数多く共演し、対等どころか完全に凌駕するような凄まじいプレイを残してきています。それに案外部分転調などにもきれいに対応していたり。「実は、、ベックは理論詳しいんじゃね?でも、譜面とかバリバリ読めるよ、なんて言わないでおくれよベック!」と疑心暗鬼に陥っているロックギタリストは一人ではないと思います。
ロックは特に人間の反骨精神や怒り・喜びといった、魂の表現、あるいはその瞬間の思いをどう出せるかを重要視していますから、空港周辺の地図を詳細に調べ上げて合法的に作りましたよ的なソロに対しては、親指を下に向ける傾向にありますね。でもそのことを言い訳にして何ら努力もせぬままステージに立って失速しているロック・ギタリストが多いのもこれまた事実です。」
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ジャズギターパイロット
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Q:「ジャズギターパイロットは、残念ながら深いベールに包まれていて一般的な人への認知度は低いといえます。超有名なジャズ・ギタリストのライブでも乗客が2人でスッカスッカというのは日常茶飯事だと聞いています。どういうイメージか教えていただきたいです。」
A:「雲1つない晴天時に羽田空港から離陸すると、海沿いの倉庫や工場群がリアルに見えて感動することはありませんか?」
Q:「ありますあります。何か今日は超ラッキー!とか思ってしまいます。」
A:「それがジャズギターパイロットの目指すところです。」
Q:「は?すいません意味が分かりませんが。」
A:「つまりジャズ厨の人もロック厨の人も自由に飛びたいこと、それは同じなわけです。ただそこでロック厨は、地形があーでこうで気流がどうでとか考えることが感情表現の瞬発力を低下させてしまうと感じ、そこはキーだけ合わせてエイヤッ!と宙返りを試みるアプローチなんですよ。」
Q:「炎上覚悟のえらいザックリした解説ですね。でジャズ厨は?」
A:「まず、地形とか滑走路を見えなくする雲を取り除くために必死で音楽理論を勉強することから始めます。それでどの滑空角度から入ればキレイに着地できるかとか、いろんなツーファイブリックをさんざん練習していきます。また高度についてもしっかり学んでいくので、激しく高度が変わる、言い換えればスケール・チェンジ混じりのコード進行についてもしっかり対応できるトレーニングを積んでいるのです。しかしそのことは他人にはあまり言いません。例の......」
Q:「出たっ、適当だよセリフ吐きながら実は感覚的で弾けてますとステマ主張する類ですね(笑)」
A:「そうそう、それです。さてここでロック厨の人の多くは致命的な推測ミスを犯します。ジャズ・ギタリストという人種は、徹底的に転調とかに対応する練習を積んで本番でそのバリエーションを披露することを目標に掲げていると誤解してしまうのです。」
Q:「え、でもジャズ厨の人はよく、あそこは裏コードできてるから、リディアンセブンスで対処して、とかよく言うじゃないですか。対処してとか。」
A:「確かに対処した演奏なんて別に聴きたくもない気持ちは分かります(笑)。だからといってそんな志の低いジャズ厨しかいなかったら、全便が霧のため欠航という事態になりますよ。
ジャズパイロットの皆さんは、雲をどけて地形が露わになったところで、さあ、自由に飛ぼか!というスタイルなんです。さんざんスケールやらなんちゃら勉強して着陸のパターンも勉強したので、むしろそういう手垢にまみれたフレーズは弾きたくないくらいの気持ちなんです。時にはわざと乱気流を起こしたりとか....」
Q:「わざと乱気流??? ジャズ厨ってマッチポンプなんですかΣ(゚д゚lll)?」
A:「いくらなんでもそれは言い過ぎですが、まあ、あえて刺激を求めて不協和音の嵐を起こしまくって着陸しにくくする人もいるかも、ということです。風速2m/sのところで普通に着陸してもおもしろくないから、半音上のコードをいきなり弾いて、わざと気流の乱れを作るとか、そんなことをガンガンやろうとします。あるいは着陸時にわざと脚を出さずに胴体着陸を試みるとか。」
Q:「ちょw それじゃまるで風の又三郎じゃないですか。」
A:「そうですね、小学校の頃に近所の小さい用水路を飛び越えようとしたあの思いですよね。危ないとか死にそうとか、そういうギリギリのところに身を置くことで“オレは生きてる!”感を得て存在を確認するという。改造バイクで真夜中に暴走していて派出所の前に来たところでわざわざエンジンを吹かせてポリ公キタァ!逃げるぜ!みたいな。
第二次性徴期後の特に男子が普通に通過する儀式みたいなところですね。ほとんどの人は十代のうちにそれを済ませ、あとの人生は、時折くすぶって残存している自分の風の又三郎を、007のダニエルクレイグを観ながら自分と重ねて処理するとか。まあミッションインポッシブルでもいいんですが。」
Q:「そういえばポップスのサポートをしているパイロット達はどんなスタイルなんでしょうか?」
A:「彼らはまさにANAやJALの737クラスのパイロットと同等であると言えます。プレイの個性で雇用されている場合を除いては、ヴォーカルをいかにうまくサポートしてくれるかが重要なポイントです。またホールでのライティングやカメラ切り替えなどのタイミングもあるので、勝手に宙返りとかしたら酸素マスクが下りてきて機内はパニック状態になります。時刻通りに目的地に着陸できるよう、そして最も揺れないようなフライトを心がけることが1番大事です。譜面が読めるジャズ・ギタリストなら、空港周辺が厚い雲に覆われていても時間通りに着陸することができます。でも物足りなくて耐えられなくなり、♯11thなどのテンション音を入れようと常にスキを狙っています(という人もごく稀にいます)。ロック・ギタリストなら譜面が読めない分、がんばって暗記しているので、音資料として渡されたCD通りに弾きつつ視点が自由になる分だけお客をあおったりして盛り上げることができます。総じていうと基本はロック系好きで、途中からジャズ・ギターの入口くらいまでは弾けるようになった、くらいのパイロットが多いような気がします。」
Q:「ではそろそろまとめをお願いいたします。」
A:「離陸から着陸まで、どんなスタイルで飛行しようとも、そこに優劣はありません。厚い雲がかかっているからこそできる大胆な技もあります。また操る飛行機がボーイング767かセスナかパイパーチェロキーかテレキャスターかによってもソロの印象は変わります。同じ機体でも、エンジンが単発(=シングルコイル)か双発(=ハムバッキング)によって音色は大きく異なります。というわけでそれぞれの飛行スタイルで大空を舞っていただければと思います。」
Q:「以上、アドリブもフライトも人それぞれ、という話でした」
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【補足資料】
【リアル・ロック・ギター・パイロット】
スティーブ・モーズ(ディープ・パープル ディキシー・ドレッグス)
一時期国内線のパイロットとして勤務していたと言われています。巡航飛行モードになると運指練習をしていた。
【リアル・ロック・ヴォーカル・パイロット】
ブルース・ディッキンソン(アイアン・メイデン)
アイアンメイデンのツアーで使用される747の操縦桿を自ら握っている。
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ギターパイロットの注意点
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Q:「早速ですが、ギターパイロットになろうと思ったきっかけを教えて下さい。」
A:「もともとディープ・パープルのハイウェイスターの速弾きにノックアウトされた組です。1弦を5688fと弾くあのソロです。その最後、いわゆる着陸の時のアーミングに痺れましてギターを手に取りました。お客様を快適にもてなす巡航飛行(バッキング)の奥深さを知ったのはむしろ最近になってからです。」
Q:「操縦時に於いて気を付けるポイントなどはありますか。」
A:「なんといってもランディング(着陸)です。終わり良ければ全て良しという諺が当てはまる最たる職業がギターパイロットだと思いますね。離陸は誰にだってできるのです。」
Q:「ギターパイロットに於いて離陸は比較的簡単とはいうものの、『はいギターソロどうぞ!』といきなり振られて弾き始めたら弦が切れ、しかもそのギターがフローティングトレモロのセッティングになっていて、チューニングがダダ狂い、地面に叩きつけられるという痛ましい失速事故も何度か見ていますが。脱出ボタンがあったら押したくなるというか。」
A:「それは整備不良も考えられますね。空気圧点検などはいうまでもないことですが、特に高音弦のブリッジの溝の角が立っていて、それで弦が切れやすくなっている場合が多いのです。」
Q:「ギターパイロットは操縦技術だけでなく、飛行前の入念な点検が欠かせないということですね。」
A:「その通りです。まあ超一流になってギターテクニシャンを引き連れられるようになると、全て任せて演奏に集中できるわけですが、それはギターパイロットの中でもごく限られた人達です。」
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ギターパイロットのスタイル
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Q:「そろそろ本題に入りたいと思います。ギターパイロットの腕の見せ所といえば、いかに自由かつ華麗に大空を飛び回り、最後に着陸を美しく決められるかだと思いますが、その飛行スタイルについてお話を聞かせて下さい。」
A:「ひと口にギターパイロットと言ってもさまざまな人達が操縦桿を握っておられます。大きく分けてギターパイロットには下記のタイプがあります。
・クラシックギターパイロット
・ロックギターパイロット
・ジャズギターパイロット
なおくれぐれも事前に言っておきますが、何事にも例外がつきものです。ジャズギターパイロットとして普段は操縦桿を握っておきながら、その時の状況次第で歪みモノを踏んでロックモードへ豹変するマイクスターソのような操縦士もいますから、厳密に言えばそもそも仕切ることなど不可能です。このブログは人それぞれと言ってしまうと終わってしまう話を取り上げていますので、各スタイルへの厳密な言及や区分けに関する炎上コメントはお控え下さい。」
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クラシックギターパイロット
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Q:「なるほど。ではまずはクラシックギターパイロットからお聞かせ下さい。」
A:「全ての飛行コースが厳密に決められていて、その通り飛びながらいかに個人的な解釈も乗せられるか、ということがこのスタイルの真骨頂になります。」
Q:「早朝トラックのコンビニルート66配送とかと同じですか。」
A:「数あるルートのなかで66コースだけはブルースコースで例外扱いになりますが、原則的にクラシックスタイルなのでアドリブはありません。書いてある音符をいかに音楽的に弾けるかということがスローガンです。この人達の特徴は驚異的な技術や読譜能力を持ち合わせながらも、その場の雰囲気に合わせてフレーズを変えていくようなアドリブが一切できないということです。これは若干職種が違いますがクラシックピアノパイロットの人に多く見られます」
Q:「ピアノパイロット?」
A:「そうですね、たとえば音楽教室の合同発表会などで、その最後に講師のデモ演奏をやることになり、リハーサルに入ったとします。『ではここの[ C ]のところは、講師の先生方のソロ回しということでお願いします』となった展開の時に懸念された事案が生じます。」
Q:「というと?」
A:「ピアノパイロットがちょっとキレ気味に
『すいません私は即興できませんので、どなたか音符を書いていただくか、あるいは当日までの宿題にさせて下さい』
と答えるわけです。」
Q:「で、講師演奏の本番はどうなったのでしょうか?」
A:「クラシックピアノパイロットのソロは、やはり完璧でした。演奏中の譜面を見たら、推敲の上で作曲されたソロフレーズが書いてあり、それを本番で見ながら演奏されていたようです。」
Q:「つまりアドリブではないということなのですね。でもクラシックパイロット界は、驚異的なスキルのある操縦士が多いと聞きますが、なぜかたくなにアドリブを拒むのですか。」
A:「ロックギターパイロットの人達にはきっとその気持ちが理解できないと思います。ロック界はそもそも航空学校にも通うことなく独学で飛行技術を習得し、何も分からぬまま操縦桿を握っている操縦士が多くいます。いわゆる家に置いてあったギターでLPレコードを擦りきれるくらい聴いて耳コピした系です。そういう人達から見ると、技術があれだけあってなおかつ譜面もむちゃくちゃ読めるのに、なんで適当に弾けないんだ?と不思議でたまりません。」
Q:「そりゃそうですよ、何しろロックギターパイロットの人って、譜面通りに弾ける人を秘かに恐れたり憧れたりしつつも、『やっぱ譜面じゃなくて、気持ちだよね。』とかいう防衛機能を働かせる人がやたらめったら多いし。」
A:「クラシック界の人の多くは、幼少時から譜面を見てから音を出す、という作業を疑わずに繰り返しながら楽器を修得しています。与えられた譜面のフレーズがたとえダサく映ったり変えてみたいと思っても、基本的にはクラシックの譜面は絶対的なものであるとの前提で向き合っているのです。」
Q:「ロックバンドのリハだと、あのタブ譜絶対違うよね、本人はもっとハイポジで弾いてると思うよ。とかいう会話がよく交わされていますね。」
A:「はい、ロックバンドのタブ譜の多くはライターの人が耳コピして掲載したものであり、長い年月を経ず急いで出版されたものも多く、誤植なども普通にあります。それに対して数百年前から引き継がれているクラシックの譜面ではおおよそそれはありません。つまりクラシックの人達にとっての譜面とは、絶対的帰依の対象でもあります。
クラシックギターパイロットにとって
譜面は紙というより、神なのです。」
Q:「なんかシャレを言いたかっただけじゃね? なるほど、神からの啓示に近い尊敬の念を抱きつつ弾くからこそ、絶対的な安心感の中で音を出せるわけですね。だからミスは単なるミスなので許されない、であるからして一生懸命練習すると。」
A:「そうなのです、ロックギターパイロットだったら、指がもつれていて明らかに弾けてないのに、『それがまたいいんだよなぁ』という評価法が存在しますが、それは、正解がそもそも無いところでフレーズを弾いているからなのです。あるとすれば、オレ、ブルースギターの神様なんですけど何か?みたいな。
いわゆる1番エライのオレ様モードですね。
クラシック厨にとっては 譜面は1番 自分は2番。
ロック厨にとっては 自分が1番 譜面は読めん
文明堂にとっては カステラ1番 電話は2番
3時のおやつは、ということになります。
譜面の音符が神で、それを出力する機会を与えられているのが自分だという認識が強いクラシックギターパイロットは、長年に渡ってその心のモードで音を出してきていますから、唐突に『おまえの好きに弾け』と言われても、不安過ぎて弾けないし、ましてやそこに価値を見出すこともできないというトラジディ(=悲劇)に陥るわけです。」
Q:「今の話を聞きながら『ほらみたことか、ちまちまスケールやら読譜の練習ばっかりやってるヒマがあったらペンタの一つでも自由に弾きやがれ』と思っているロック厨の一部が起死回生のチャンスだと息巻いている気配を背後に感じます....」
A:「まあそう思っているコンプレックス(...というバンド名は今回の内容とは100%無関係です)の塊のようなロック厨はごく一部ですが、存在している可能性はありますね。」
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ロックギターパイロット
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Q:「では本日のメイン、クラシックと正反対ともいえるロック派のギターパイロットについて伺います。そもそも彼らの飛行スタイルとはどんなものなのでしょうか?」
A:「その昔、華麗なるギター野郎という映画が一世を風靡していましたが、イメージとしてはそれに近いと思います。」
Q:「〜野郎という邦題の時点で香ばしさ満点ですね。」
A:「華麗なるライトハンド、意表を突くアーミング、感情直結の泣き叫ぶチョーキングやビブラート。これらはロックギターパイロットならではの技と言えますし、エディー藩ヘイレンが代表的なパイロットして有名です。あ、まちがえました、藩じゃなくヴァンです。」
Q:「ギター界に於いては藩とVanは全く違う意味になりますから気を付けてください、今回の場合はアメリカのパイロットのことですね。ロックギターパイロットのソロのイメージはどんな感じなのでしょうか?」
A:「図解してみましょう。ギター・ソロというのは必ずいつか終わります。つまり離陸したら後は着陸に向かうだけです。着陸した瞬間、そのソロがどうだったか評価されるわけです。」
Q:「何やら雲がかかっていて、着陸先の滑走路が全く見えません。おや、方位の標識だけは立っていますね」
A:「ロックギターパイロットは、方位標識によってまずキーを確認し、それに適合するマイナー・ペンタのポジションに指を置きます。その上でフライト時間の間、自由に飛び回るというわけです。はい終わり、チャンチャン。」
Q:「まじですか?滑走路が見えず、高度(=コード)すら把握できていない状況でよくそんなことができますね。」
A:「フライト時間が終わりに近づいて雲を抜ける時に機体が少し揺れるので、それがソロ終わりの合図となります。すると雲が晴れ目の前に滑走路が見えてくるのです。」
Q:「そういえばロックギターパイロットの中には、ソロがもう終わりなのにうまくフレーズが収められなくてヴォーカルの入りとぶつかって、睨まれるという事案があちこちで発生してますね。」
A:「あるいは逆に、まだ2小節あるのに早く着陸しちゃって、バンド全員が気まずい雰囲気のまま、誰がソロを弾くこともなく残り小節を気恥ずかしく演奏している場面もありますね。また、ソロの終わりで滑走路の位置を確認したものの、飛行機の車輪(=脚)を出すのが遅れて歪んだサウンドのままカッティングに突入してしまうような事例も発生しています。」
Q:「ソロ最後に足が出ずに歪みペダルをOFFれないケースですね。ありがちです。そういえば厚い雲に覆われていている時ほど、宙返りや速弾きを羅列してごまかそうとするソロを聴くことが多いような気がします。」
A:「それが、知らぬが仏アプローチです。キーだけ確認したら小節数もカンで、コードに合うかどうかもすべてカン、それでどうにかなるだろうというアプローチです。もちろんそのアプローチで神業的なラインを生み出しているロックギタリストもいたりします。」
Q:「それってジェフ・ベックですよね。ロック界のレジェンド、ポールさんが言ったと伝えられる『ロック・ギタリストは2種類しかいない、ジェフ・ベックか それ以外だ』
という名言を思い出しました。」
A:「ベックの神業的なソロを引き合いに、ざまあジャズ・ギタリストめ的論調が時折交わされることがあるようですが、ジャズ界に於いてもジェフベックは高く評価されています。間違ってはいけないのは、彼は飛行機の操縦士ではなくあくまでも車のドライバーです、というか車の整備士。」
Q:「ツアーとレコーディング以外は常に車のメンテに夢中という話がありますね。」
A:「はい、ベックの場合はジャズのいわゆる伝統的なイデオム、たとえばツーファイブフレーズの類は全くといっていいほど登場しません。その代わりアーミングやトーンコントロールを駆使した、まさしく神業的なニュアンスで、信じられないフレーズがこれでもかといわんばかりに出てくるのです。」
Q:「ということは、理論や練習で追い込んで出てきたフレーズではないということでしょうか。」
A:「恐らくジェフベックほど耳の良いギタリストなら、たとえば嵐の中でのテンジン・ヒラリー空港への着陸も完璧だと思います。」
Q:「あらゆる理論よりも上にあるのが耳である、とはよく言われますがその通りですよね。しかしそんな言葉を鵜呑みにして、カンだけでいいやと思っちゃった、さして耳の良くないパイロット達の運命は悲惨ですね。」
A:「そうなんです。それにジェフベックは超一流ジャズミュージシャンと数多く共演し、対等どころか完全に凌駕するような凄まじいプレイを残してきています。それに案外部分転調などにもきれいに対応していたり。「実は、、ベックは理論詳しいんじゃね?でも、譜面とかバリバリ読めるよ、なんて言わないでおくれよベック!」と疑心暗鬼に陥っているロックギタリストは一人ではないと思います。
ロックは特に人間の反骨精神や怒り・喜びといった、魂の表現、あるいはその瞬間の思いをどう出せるかを重要視していますから、空港周辺の地図を詳細に調べ上げて合法的に作りましたよ的なソロに対しては、親指を下に向ける傾向にありますね。でもそのことを言い訳にして何ら努力もせぬままステージに立って失速しているロック・ギタリストが多いのもこれまた事実です。」
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ジャズギターパイロット
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Q:「ジャズギターパイロットは、残念ながら深いベールに包まれていて一般的な人への認知度は低いといえます。超有名なジャズ・ギタリストのライブでも乗客が2人でスッカスッカというのは日常茶飯事だと聞いています。どういうイメージか教えていただきたいです。」
A:「雲1つない晴天時に羽田空港から離陸すると、海沿いの倉庫や工場群がリアルに見えて感動することはありませんか?」
Q:「ありますあります。何か今日は超ラッキー!とか思ってしまいます。」
A:「それがジャズギターパイロットの目指すところです。」
Q:「は?すいません意味が分かりませんが。」
A:「つまりジャズ厨の人もロック厨の人も自由に飛びたいこと、それは同じなわけです。ただそこでロック厨は、地形があーでこうで気流がどうでとか考えることが感情表現の瞬発力を低下させてしまうと感じ、そこはキーだけ合わせてエイヤッ!と宙返りを試みるアプローチなんですよ。」
Q:「炎上覚悟のえらいザックリした解説ですね。でジャズ厨は?」
A:「まず、地形とか滑走路を見えなくする雲を取り除くために必死で音楽理論を勉強することから始めます。それでどの滑空角度から入ればキレイに着地できるかとか、いろんなツーファイブリックをさんざん練習していきます。また高度についてもしっかり学んでいくので、激しく高度が変わる、言い換えればスケール・チェンジ混じりのコード進行についてもしっかり対応できるトレーニングを積んでいるのです。しかしそのことは他人にはあまり言いません。例の......」
Q:「出たっ、適当だよセリフ吐きながら実は感覚的で弾けてますとステマ主張する類ですね(笑)」
A:「そうそう、それです。さてここでロック厨の人の多くは致命的な推測ミスを犯します。ジャズ・ギタリストという人種は、徹底的に転調とかに対応する練習を積んで本番でそのバリエーションを披露することを目標に掲げていると誤解してしまうのです。」
Q:「え、でもジャズ厨の人はよく、あそこは裏コードできてるから、リディアンセブンスで対処して、とかよく言うじゃないですか。対処してとか。」
A:「確かに対処した演奏なんて別に聴きたくもない気持ちは分かります(笑)。だからといってそんな志の低いジャズ厨しかいなかったら、全便が霧のため欠航という事態になりますよ。
ジャズパイロットの皆さんは、雲をどけて地形が露わになったところで、さあ、自由に飛ぼか!というスタイルなんです。さんざんスケールやらなんちゃら勉強して着陸のパターンも勉強したので、むしろそういう手垢にまみれたフレーズは弾きたくないくらいの気持ちなんです。時にはわざと乱気流を起こしたりとか....」
Q:「わざと乱気流??? ジャズ厨ってマッチポンプなんですかΣ(゚д゚lll)?」
A:「いくらなんでもそれは言い過ぎですが、まあ、あえて刺激を求めて不協和音の嵐を起こしまくって着陸しにくくする人もいるかも、ということです。風速2m/sのところで普通に着陸してもおもしろくないから、半音上のコードをいきなり弾いて、わざと気流の乱れを作るとか、そんなことをガンガンやろうとします。あるいは着陸時にわざと脚を出さずに胴体着陸を試みるとか。」
Q:「ちょw それじゃまるで風の又三郎じゃないですか。」
A:「そうですね、小学校の頃に近所の小さい用水路を飛び越えようとしたあの思いですよね。危ないとか死にそうとか、そういうギリギリのところに身を置くことで“オレは生きてる!”感を得て存在を確認するという。改造バイクで真夜中に暴走していて派出所の前に来たところでわざわざエンジンを吹かせてポリ公キタァ!逃げるぜ!みたいな。
第二次性徴期後の特に男子が普通に通過する儀式みたいなところですね。ほとんどの人は十代のうちにそれを済ませ、あとの人生は、時折くすぶって残存している自分の風の又三郎を、007のダニエルクレイグを観ながら自分と重ねて処理するとか。まあミッションインポッシブルでもいいんですが。」
Q:「そういえばポップスのサポートをしているパイロット達はどんなスタイルなんでしょうか?」
A:「彼らはまさにANAやJALの737クラスのパイロットと同等であると言えます。プレイの個性で雇用されている場合を除いては、ヴォーカルをいかにうまくサポートしてくれるかが重要なポイントです。またホールでのライティングやカメラ切り替えなどのタイミングもあるので、勝手に宙返りとかしたら酸素マスクが下りてきて機内はパニック状態になります。時刻通りに目的地に着陸できるよう、そして最も揺れないようなフライトを心がけることが1番大事です。譜面が読めるジャズ・ギタリストなら、空港周辺が厚い雲に覆われていても時間通りに着陸することができます。でも物足りなくて耐えられなくなり、♯11thなどのテンション音を入れようと常にスキを狙っています(という人もごく稀にいます)。ロック・ギタリストなら譜面が読めない分、がんばって暗記しているので、音資料として渡されたCD通りに弾きつつ視点が自由になる分だけお客をあおったりして盛り上げることができます。総じていうと基本はロック系好きで、途中からジャズ・ギターの入口くらいまでは弾けるようになった、くらいのパイロットが多いような気がします。」
Q:「ではそろそろまとめをお願いいたします。」
A:「離陸から着陸まで、どんなスタイルで飛行しようとも、そこに優劣はありません。厚い雲がかかっているからこそできる大胆な技もあります。また操る飛行機がボーイング767かセスナかパイパーチェロキーかテレキャスターかによってもソロの印象は変わります。同じ機体でも、エンジンが単発(=シングルコイル)か双発(=ハムバッキング)によって音色は大きく異なります。というわけでそれぞれの飛行スタイルで大空を舞っていただければと思います。」
Q:「以上、アドリブもフライトも人それぞれ、という話でした」
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【補足資料】
【リアル・ロック・ギター・パイロット】
スティーブ・モーズ(ディープ・パープル ディキシー・ドレッグス)
一時期国内線のパイロットとして勤務していたと言われています。巡航飛行モードになると運指練習をしていた。
【リアル・ロック・ヴォーカル・パイロット】
ブルース・ディッキンソン(アイアン・メイデン)
アイアンメイデンのツアーで使用される747の操縦桿を自ら握っている。