良心による兵役拒否権実現と代替服務制度改善のための連帯会議
民主社会のための弁護士の会
戦争抵抗者インタ−ナショナル(War Resisters' International) :

1.要約

 徴兵制を実施している韓国では良心による兵役拒否がまったく認められておらず兵役拒否者たちのためのどんな制度的処置も存在しない。2004年2月現在、521人の兵役拒否者たちが監獄に収監されており、毎年約700人あまりの兵役拒否者たちが処罰されている。韓国の兵役拒否者たちは大部分エホバの証人の信者たちで、第7安息日イエス再臨教信者なども少数であるが存在する。兵役拒否者たちは例外なしに1年6ケ月から2年の懲役刑に処される。一般服役者たちと異なり、仮釈放審査基準においても、より厳格な基準が適用され、処罰以後にも公務員任用権剥奪、就業制限などの社会的不利益を一生にわたって被る。

 南北朝鮮の軍事対立状況の中で、反共主義と国家安保は韓国社会を支配する核心的な理念として作用してきた。 30年あまりの軍事独裁政権を経て、個人の人権と良心の自由は国家安保という美名の下でいくらでも制限され、これに抵抗する場合、残酷な処罰により命まで失うこともあった。とくに兵役の義務を拒否するということは想像すらできないことであった。軍事政権が終熄した1990年代以後、韓国社会は多くの分野で民主化が進展され、人権意識もかなり成長したが、国家安保優先主義とこれによる絶対的な兵役の義務は依然として人権や人間の安全保障より優先視されている。

 去る50年間、1万人あまりのエホバの証人信徒たちが兵役を拒否してきたが、現在世界で単一事案ではもっとも多い兵役拒否収監者たちが存在する。しかし政府はまだこれに対するどんな努力もしていない。国際人権規約加入国として国連の人権関連決議を尊重する義務とともに、定期的に国内の人権状況を国連に報告する義務があるにもかかわらず、これまで良心による兵役拒否と関わる韓国の実状を国連に報告してこなかった。国防省は特殊な安保環境と兵役制度の公平性のみを強調しながら代替服務制も導入に反対している。エホバの証人を異端として規定している韓国の保守キリスト教教壇も代替服務制度に対して反対している.。

 それにもかかわらず兵役拒否者は毎年絶えることなく現れている。特に最近では反戦平和主義信念による、宗教的理由でない拒否者たちの兵役拒否宣言が相次ぎ、今や兵役拒否問題は人権問題を超えて非暴力的平和運動として新しく浮上している状況だ。
2.韓国の兵役制度

2.1 兵役制度一般

 韓国は国民皆兵制に基づいた徴兵制を実施している。兵役は個人の身体的条件、学歴、資質などによって現役と補充役に区分され、現役服務を終えた者は義務的に予備役として編成される。現役は5種の基本軍事訓練を含めて24?28ケ月間服務し、補充役は兵役法が定める身体、学歴、家庭事情による現役不適格者がなり、特殊な能力や資格保有者たちとして4種の基本軍事訓練を受けた後、28?32ケ月の間代替服務を遂行する。予備役は兵卒の場合、除隊後8年間約160時間の軍事訓練を受けなければならない。兵役の免除は兵役法が定める身体欠陷、学歴未達や家庭事情に限定されており、良心による兵役拒否者に対する免除条項や代替服務規定はない。

 現役兵は韓国の全人口の4800万人の中で約69万人にあたり、補充役はおよそ14万人である。兵務庁の統計によると、2001年上半期徴兵検査を受けた者のなかで2.6%の4,916人が、身体欠陷、学歴未達などにより徴集が免除された。代替服務を遂行する補充役は特殊な資格や機能を有している者に限り、専門研究要員や産業技能要員などとして志願することができ、残りは兵役法で定める身体欠陷や学歴未達基準によって全面的に兵務庁の判定によって決まる。したがって、兵務庁審査の結果、現役兵対象者として判定されれば、特殊な資格や能力がない限り補充役としての代替服務機会が与えられない。また補充役も4週間の基本軍事訓練を前提にしているため、兵役拒否者たちの場合、補充役判定を受けたとか補充役を申し込むことができる資格を取り揃えているといっても受け入れていない。兵役法には兵役の義務不履行に対する処罰条項だけ存在するのみであり、兵役拒否者たちのためのどんな代替規定も存在しない。


2.2 社会的認識

 韓国社会で軍隊と国防の問題は非常に複雑な歴史とイデオロギーを持っている。世界唯一の分断国家である韓国で軍隊と国防は、生存と直結される絶対的な概念として考えられてきたし、歴代政権は権力維持のためのこのような状況を利用し扇動してきた。30年あまりの軍部独裁時期を経て、軍隊は侵犯の許されない聖域となり民間の監視から遠くなった。したがって、軍隊内の人権問題は深刻で、あらゆる不正腐敗が盛んだった。社会が発展して多くの部分で民主化がなされたが、いまだに軍隊は韓国社会で一番その変化速度が遅い所だ。極少数の特権層が権力や財力を利用して息子たちの兵役免除を受けていることは、公然たる秘密のようになっている。一般人たちの間で貧民皆兵制という流行語があるほどに、軍隊はお金がなくて権力のない人々が連れて行かれるところだと認識されており、大きな社会的憤怒と剥奪感が生じるようになった。実際に先の大統領選挙の過程では候補者の息子の兵役忌避疑惑が選挙の当落を決定づけるほどに社会的影響力を及ぼした。

 しかし、一方で軍隊をめぐるこのような平等権の問題は、誤った軍制度を糺すための世論として発展するよりは、兵役拒否者たちを特権層のような部類として認識するようになり、兵役拒否問題に対する合理的な議論を困難にしている。また50年間あまり何ら脅かされることなく持続してきた徴兵制下での軍隊体験は、多くの一般人たちにとって軍隊内である程度の人権侵害は不可欠だという認識さえなされるようになった。

 このような社会的認識の根底には、長年の分断と徴兵制、軍部独裁の経験による社会全体の軍事化がある。また盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の樹立以後には、在韓米軍撤収、再配置問題が議論になりつつ、韓国軍の力で朝鮮半島を守るためには国防費の増額と軍隊の強化が必要だという立場が力を得てきている。


3.良心による兵役拒否

 韓国で良心的兵役拒否はまったく許容されない。したがって兵役拒否者のための代替服務制もやはり存在しない。徴兵制度の実施以後、先の50年あまりの間、兵役拒否者たちに対する処罰は特殊な安保状況などを理由に最近までただ一度も脅かされることはかった。兵役拒否者たちは法的な処罰以外にも残酷な社会的差別を甘受して暮さなければならない。このような状況にもかかわらず良心的兵役拒否者たちは毎年絶えることなく現われてき、今や韓国の主な社会的問題の中の一つとなった。


3.1 現況

 2004年2月現在、521人の良心的兵役拒否者が全国の刑務所で服役中だ。韓国の兵役拒否者は日帝植民地時代だった1939年に最初の処罰記録が見ることができる。以来、今まで処罰された人々は1万人あまりに達する。最近のすう勢を見ても、2000年683人、2001年804人、2002年734人、2003年705人等、毎年約700人以上の兵役拒否者が銃を持つかわりに監獄を選択している。

表3-1. 年度別兵役拒否者発生現況
年度1994199519961997199819992000200120022003
人数233437355403474513683804734705


 韓国で、良心による兵役拒否者は大部分エホバの証人の信者であり、第7安息日イエス再臨教信者なども少数存在する。南北朝鮮の分断状況は兵役義務を神聖視する慣行を存続させてきたし、軍隊内の問題に対して外部からむやみに問題提起ができないようにした。したがって軍隊に関する人権問題は最近まで国民の関心外の領域であったし、宗教的理由などで軍服務を拒否する国内外の事例が一般にはほとんど紹介されることがなかった。このような状況の中で兵役拒否者の大多数を占めているエホバの証人の信者は、兵役拒否による法的処罰だけではなく異端教徒あるいは正常な国民ではないという社会的差別を二重に受けながら暮してきた。一度兵役を拒否した者は一生兵役忌避者としての前科者の烙印を受けて生きなければならないため、公務員任用資格が与えられないだとか、民間企業に就職しようとする時、身元調査で脱落するなどの社会的差別を経験するようになる。韓国の兵役法では、法的に認められた事由以外の理由で兵役の義務を履行しない者に対しては、公務員や官庁許可業種などに携わることにおいて制限を置いている。

 法的処罰もやはり恣意的な場合がしばしばあった。もちろん大多数の市民たちはこれらの存在自体も知らなかった。

韓国の良心的兵役拒否問題は2001年初め、ある週刊誌の報道を通じて驚くべき多くの数の兵役拒否者がこの間処罰を受けてき、現在も監獄に収監されているという事実が知られ、社会的に注目された。とくに2001年末、26歳の仏教信者であり平和活動家である呉太陽(オ・テヤン)の兵役拒否宣言は、兵役拒否が特定宗教人たちの非常識的な行動という社会的先入観を払拭させるきっかけになった。2002年2月には30あまりの市民社会団体で構成された「良心による兵役拒否権実現と代替服務制度改善のための連帯会議」が発足し、兵役拒否者の人権保護のための活動を始めた。呉太陽の兵役拒否宣言以後、他の仏教信者を含めて個人的あるいは政治的動機による非宗教理由の兵役拒否者が公に登場しはじめ、現在まで計11人に至っている(表3-2.参照)。 良心的兵役拒否問題が韓国社会の主要なイシューとなり、2002年9月にはまだ徴集されていない大学生たちを中心に予め兵役拒否を宣言するいわゆる「予備兵役拒否運動」が進行されたりした。

表3-2. 仏教信者および非宗教的兵役拒否者の現況(2004年3月20日現在)
名前職業宣言日拒否理由その他
呉太陽(オ・テヤン)(29) 仏教信者,平和活動家01.12.17仏教の不殺生の教理による平和主義非拘束、裁判中
ユ・ホグン(28)民主労動党02.07.09反戦平和主義保釈状態、裁判中
イム・チユン(26)大学生02.07.30反戦平和主義裁判中
ナ・ドンヒョク(27)大学生02.09.12反戦平和主義保釈状態、裁判中
チェ・ジュンホ(23)プルム農業技術学校専攻学部修了03.03.生態平和主義懲役中
キム・ドヒョン(24)仏教信者、大学生03.04.30宗教的信念による平和主義非拘束,裁判中
イム・ソンファン(28)出版社『アウトサイダー』代表03.07.01反戦平和主義非拘束,裁判中
イム・テフン(29)国際アムネスティ韓国支部性的少数者グループ代表03.07.22反戦平和主義、性的少数者を精神疾患者と判定する徴兵当局の差別反対拘束,裁判中
ヨム・チャングン(28)大学院生、イラク反戦平和チーム活動03.11.13反戦平和主義保釈状態、裁判中
カン・チョルミン(23)現役陸軍二等兵03.11.21韓国軍イラク派兵反対拘束、裁判中
ヨンミン(25)労動文化放送joy3.net04.01.26反戦平和主義警察捜査中


ヨホバの証人の兵役拒否の事例
 チェ・ホンギさんは産業技能要員として京幾道鳥山市にある大光ダイキャスティング株式会社で2000年10月から2002年5月まで勤めた。2002年5月6日、3種の基礎軍事訓練召集に応ぜず、2002年10月31日現役兵に徴集された。これに応ぜず、裁判を受けたが、担当判事は被告人の宗教的信念が変わることがありうるという理由で執行猶予判決を下し、1年6ヶ月未満の実刑の宣告受けたため再徴集の対象になった。これを阻もうと検事に抗訴することを要請したが断れた。結局2003年11月現役兵として再徴集され、これにまた応ぜず拘束された。判事の職権保釈により釈放されたが、審理は係留中だ。



3.2処罰

 韓国の兵役法上、兵役拒否者に対する兵役免除または代替服務条項は存在しない。したがって、兵役拒否者は例外なしに軍刑法第44条の抗命罪または兵役法第88条の入営忌避罪が適用され、3年以下の懲役刑に処される。現役を終えた以後、予備軍に組み合わせされた状態で召集訓練に応ぜず、兵役を拒否する場合にも、郷土予備軍設置法第15条4項に基づいて、500万ウォン以下の罰金や3年以下の懲役刑に処されるようになる。

 2001年中盤以前までは、ほとんど大部分の兵役拒否者が、強制的に軍に入隊するしかなかったため、すべての兵役拒否者たちは軍服務期間中、抗命罪で法廷最高刑である2年あるいは3年の処罰を機械的に宣告された。2001年中盤以後、兵務庁による強制入営慣行がなくなると、現在大部分の兵役拒否者たちは軍入隊自体を拒否して兵役法によって処罰されている。かれらは民間法廷で1年6ケ月から2年の実刑を宣告されている。.兵役法上、1年6ケ月以上の実刑を宣告される場合、兵役が免除されるため、一度処罰された兵役拒否者たちは再度徴集されない。現在大部分の民間法廷では兵役拒否者に対して軍隊に再招集されない最小刑量である1年6ヶ月刑が言い渡されているすう勢である。

 予備軍兵役拒否者の場合、1回目の処罰以後にも予備軍配属期間の間繰り返し訓練召集を受け、同一の事案で繰り返し処罰される問題が深刻で、罰金刑の累積レベルは生計を逼迫するほどに多くの金額だ。最近ではある予備軍兵役拒否者が2回にわたって、それぞれ10ケ月と8ケ月の刑を受けたりした。この予備軍兵役拒否者の場合には結果的に兵役が兔罪される1年6ケ月を受けたわけだが、個別形量がこれに及ばないという理由で予備軍訓練召集はずっと課せられる悪循環が繰り返されている。

予備軍兵役拒否者の事例
 チェ・ホンギさんは1999年除隊後、エホバの証人となって予備軍としての軍事訓練を拒否しはじめた。今まで略式裁判によって350万ウォンの罰金刑に処され、5件の告発件が処理中で、一件の裁判では懲役1年に執行猶予を受けた状態だ。重い罰金刑とひんぱんな裁判によって、生計が成り立ちにくい状況に累積した実刑まで受けなければならない危機に瀕している。


 現在行われている処罰に関して、韓国の良心的兵役拒否者に加えられる人権侵害の実態を分類してみると次の通りである。

1.韓国の憲法は有罪の確定判決を受ける前までは無罪に推定されると規定しているし、逃走や証拠隠滅の憂慮がない被疑者は拘束されない状態で裁判を受けることが形事訴訟法の一般原則でるのに、兵役拒否者はたいてい捜査開始の時から拘束されてきた。2002年兵役拒否者の人権状況改善のための市民団体の活動が本格化された以後、非拘束捜査事例が増加したりしたが、現在は再び大部分の兵役拒否者たちが拘束収監されて調査受けている。

2.一般服役者たちと違い「エホバの証人」の兵役拒否者たちは仮釈放審査基準で特別な類型に分類されて審査されている。かれらは刑務所内で代表的な1級模範囚として評価を受けているが、通常の場合50%以上刑期を服役すれば仮釈放の恵沢が与えられるのに対し、刑期の75%以上服役してやっと仮釈放を申請できるようになっている。また毎年何回ずつ政府が全体収監者たちを対象に行われる赦免・福引きの対象にも含まれていない。

 監獄内収監の実態に関して、2003年中盤以前まではエホバの証人収監者たちに対して「特有の宗教教理を理由に兵役の義務を忌避するなど実定法を違反し、これによって刑執行中である状態にあるので、これらの誤った信念を堅固にしうる宗教集会の許容は校正、教化の目的に背反する」という理由でかれらの監獄内での宗教集会が許容されなかった。2003年中盤に至ってからやっと国家人権委員会の勧告を受けた法務部が、収監中のエホバの証人兵役拒否者たちを含めた少数宗教を信仰する収容者たちの宗教集会を許容することで現在このような差別は是正された。


3.3法的動向

 韓国で1987年に改訂された憲法によって憲法裁判所制度が準備される以前は、大法院が法律が違憲であるかどうかを審査する最高機関だった。兵役拒否者たちは1969年、1985年、1992年にそれぞれ最高裁判所に上告して良心による兵役拒否が宗教と良心の自由に由来する行為のため、良心による兵役拒否は兵役の義務違反ではないという点を主張した。しかし大法院は「宗教の教理を立てて法律が規定した兵役の義務を拒否するような、いわゆる良心上の決定は、憲法で保障した宗教と良心の自由に属するものではない」と一貫して否認した。これによって今まで法院では例外なしに兵役拒否者たちに対して有罪の判決を宣告してきた。

 しかし先の2002年1月29日、ソウル南部地方法院でエホバの証人として兵役拒否をして裁判を受けていたイ・ギョンス氏が、代替服務制度を準備しない状態で兵役拒否者を処罰するように規定している現在の兵役法第88条は、憲法で保障している宗教と良心の自由などを侵害しているという理由で、違憲審判提案をしたが、法院がこれを受け入れ、憲法裁判所に違憲審判の提案をした。この決定以後、司法部では兵役拒否者に対する宣告を憲法裁判所の決定以後に延ばす動向を見せているし、これによって多くの兵役拒否者が釈放された状態で憲法裁判所の判断を待っているところだ。法院によって再徴集を避けることができる最小刑量宣告や保釈決定が増加すると、2000年末現在1,640人だった兵役拒否収監者数は2004年2月現在で521人に減少した。

 2001年の初めには、何人の国会議員が兵役拒否者に対する代替服務制度の立法を推進したりしたが、エホバの証人を異端視する保守キリスト教界の力強い反発で露散した以後、依然として進展がない状態だ。2002年4月、「良心による兵役拒否権実現と代替服務制度改善のための連帯会議」は、より実質的な代案準備のために、弁護士、法学教授、人権活動家などが参加した中で、代替服務制度立法案をつくり全国民を対象に立法推進署名運動を展開した。しかし政府と国会は依然としてこれに対する反応を見せていない。


3.4 社会的動向

 2001年にエホバの証人の兵役拒否者の長年の兵役拒否事例が一般に知られると、仏教信者であり平和活動家である呉太陽さんの兵役拒否が続き、良心による兵役拒否問題に対する社会的な関心は急速に広がった。先の50年あまりの間、1万人あまりののエホバの証人信者が兵役を拒否してきたし、現在でも世界で一番多い兵役拒否収監者が存在するという事実は、この間安保問題に覆われて、無視されてきた人権の価値に対して、新しく警鐘を鳴らすきっかけになった。マスコミ、学界、法曹界、宗教界など多様な分野で兵役拒否と代替服務制度導入に関する各種討論が進行され、2002年2月には学界、政界、法曹界、マスコミ、市民・社会団体などの著名人を含む1,552人が署名した「良心による兵役拒否権の認定及び代替服務制導入を促す1000人宣言」が発表されたりした。

 現在36の市民団体が参加している「良心による兵役拒否権実現と代替服務制度改善のための連帯会議」では、2002年初めの発足以後現在まで兵役拒否者相談および法律支援、各種シンポジウム主催、代替服務制度立法推進など、兵役拒否に対する社会的共感を広げるための各種の努力をしている。2002年4月には「民主社会のための弁護士の集い」など連帯会議代表団が国連人権委員会に参加して韓国の兵役拒否問題を報告し、2003年3月には国連人権高等弁務官室と台湾兵務庁などが参加した兵役拒否国際会議を、アメリカ親友奉仕会議とともにソウルで開催したりした。

 このような状況の中で、代替服務制度導入に対して特定宗教に対する特別待遇、南北分断状況による安保脅威、軍服務に対する公平性などを理由に反対した世論も、現実的な制度補完が必要だという認識の変化を少しずつ見せてきている。兵役法に対する違憲審判提案以後、兵役拒否者に対する保釈決定の増加や1年6ケ月の最小刑量求刑など、司法部で見せている前向きな態度も良心による兵役拒否問題に対する社会的認識の進展を見せてくれる一断面だといえる。

 それにもかかわらず政府と立法府では、良心による兵役拒否問題が社会的に表に出て以後、いまだに代替服務制度導入のためのなんの努力も見せていない。むしろ政府と国防省は良心による兵役拒否に反対するための様々な努力を傾けている。2002年10月には当時の金大中(キム・デジュン)大統領が「兵役義務の忌避はわたしたちの現実において、どんな理由でも容認されることができないし、公平性にもそぐわない」という立場を明らかにし、以後兵役拒否者に対する拘束捜査方針がいっそう強化される様相を見せた。2003年3月には教育部が各大学に兵役拒否拡散を阻みなさいという公文書を下逹して物議を醸した。国防部もやはり2001年10月に発表した「兵役拒否者代替服務に対する国防省の立場」以後あいかわらず反対立場を曲げていない。また現役軍人たちを対象に良心的兵役拒否を絶対に許容してはいけないという内容の教育をさせたりした。

 国会でも兵役拒否問題は主に否定的に取り扱われている。2003年6月には、国家人権委員会が民間団体支援事業の一環として連帯会議の兵役拒否関連ドキュメンタリー製作を支援したことに関して、国会法司委では「良心的兵役拒否ドキュメンタリー製作に人権委が予算を支援したが、若者達の兵役忌避風潮に同調しようというのか」と言いながら一斉に糾弾したりした。これは人権問題を眺める現在の立法府の水準を如実に見せてくれる代表的な事例だと言える。

 このような雰囲気の中で国家人権委員会もその間何回にかけて鎮静された兵役拒否問題に対してまだ明らかな立場を明らかにしていない状況だ。良心による兵役拒否に関して、各国が施行している法と慣行について国家人権委員会でも再検討するように促した先の第58次国連人権委員会の決議案内容を思いだすと、国家人権委員会のより積極的な努力が求められる。エホバの証人を異端として扱っている韓国キリスト教総連合会など保守キリスト教会の代替服務制度反対の立場も、あいかわらず変化の兆しを見せていない。

 一方で兵役拒否は最近高まっている韓国の反戦平和運動において主要な実践方式として広がりを見せている。2002年6月、二人の女子中学生が在韓米軍の装甲車に轢かれ死亡した事件と、北朝鮮核問題をめぐってひきおこった北朝鮮とアメリカ間の軍事的緊張が高まった状況などは、多くの韓国人たちにとって軍事方式に寄り掛かる伝統的な安保政策に疑問を持つようなり、今までのどの時代より反転と平和を祈願する声が高くなるようになった。とくに政府と議会が2003年4月と2004年2月の二度にわたって通過させたイラク派兵決定は、反戦平和運動が大きく広がるきっかけになった。数万人の人々が街頭に集まり、戦争反対、派兵反対の声を上げ、多くの人々が「人間の盾」を自ら志願してイラクに赴いた。しかし政府と議会は、軍事・経済的に対米依存度が高い韓国の状況は国益のためには仕方ないという論理で、アメリカのイラク侵攻と韓国軍派兵を正当化した。それだけでなくテロ防止法、集会とデモに関する法律の改訂など、韓国の人権、平和運動に冷水を浴びせるいくつかの措置を断行したり進行中であり、市民団体の大きな反発を買っている。

 このような状況の中で良心による兵役拒否は軍の入隊を控えた若者達に反戦平和の信念の実践として多くの共感を得てきている。2001年末、エホバの証人の信者以外としては初めて呉太陽さんが兵役拒否をした以後、現在までのべ10人が反戦平和の信念によって兵役を拒否して処罰されたり裁判中にある。 2003年11月には22歳の現役軍人であるカン・チョルミンさんが韓国軍イラク派兵決定に反対して、休暇中、部隊復帰を拒否して兵役拒否を宣言し、軍務離脱罪などで起訴されたりした。自国の国土と国民を保護しなければならない軍隊が侵略戦争に参加するという事実は、単なる軍人だったかれにとって軍隊の役目とその一員である自分の位置に対して真剣に悩むようにさせた。かれは韓国軍イラク派兵決定が侵略戦争を認めない憲法に明らかに違反しているとして、派兵決定が撤回されるまで軍服務を拒否するという宣言をした。韓国社会で軍隊は何のために存在するのかという質問を投げかけたカン・チョルミンさんの兵役拒否は、軍服務中の兵役拒否としては初めての事例だ。兵役遂行中にある人も兵役を拒否することができると明らかにしている1998年の国連人権委員会決議案によると、現在カン・チョルミンさんに加えられている軍当局の処罰は、国際人権規約締結国としての義務にはっきりと違反しているのは明らかだ。2001年にエホバの証人の兵役拒否者の実状が知られ浮き彫りになった兵役拒否は、今や人権に対する尊重と保護の問題であると同時にこれに基づいた平和運動として新しく認識されている状況だ。