9条をポジティブに押し出していく
改憲派は、護憲派に現実をミヤガレといいますが、現実に対する認識なんぞ改正問題に関心のある人たちの間ではそんなに違いはないでしょう。戦争はなくならないだろうし、威圧外交はそれなりに有効だろうし、アメリカの側につくほうが勝ち組でいられそうなかんじです。しかし、それでいいのか。その路線でものごとを考えていくと、他の案件もどんどん矮小化していくような気がします。
『9条の会』の記者会見で、奥平康弘氏(東大名誉教授)がこんなことを言っています。
「9条をポジティブに押し出していく。世界にむけての意味、外交・経済政策にも活かせる意味を引き出していくことが大切だ。」
舞台となるのが、例えば国連でしょう。対話による紛争解決を基本にかかげる国連と、9条の理念は相性がよいのですが、政府は9条を捨てた上で国連の常任理事国になるつもりのようです。常任理事国になるのだから国連軍を発動する立場上、9条を捨てるべきだという理屈もなりたちます。世界平和にはそのほうが意味があると。
しかし、常任理事国になるのは世界平和のためでしょうか。残念ながら国益重視でしょう。
国連の2004−2005年の予算は、約31億6000万ドル(通常予算+平和維持予算に内訳)。ただし、ユニセフや、国連難民高等弁務官事務所などはそれぞれが別会計で、こちらの方は通常予算の一部からと各国拠出による個別支援でなりたっているようです(97年で、総計45億ドル)。
日本は国連予算の19%+ユニセフなどに自発的拠出金を毎年出しています。と、書くといかにも貢献しているように聞こえますが、実際はそうでもありません。例えば予算の半分弱を占める通常予算は、ちょうど東京消防庁の予算ほどで、ニューヨーク市のわずか4%にすぎません。
31億+45億=76億ドル(8,210億円)。だいたいこの程度が国連全体の基本予算。こんな程度で何ができるのでしょう。官僚的で非効率と言われるも、それは国連に限ったことではありません。先進国といわれる国の官僚組織はどこも同じような批判を受けています。それよりも圧倒的に金がないことが問題ではないでしょうか。8,000億円なんぞ日本なら補正予算。最大の拠出国と胸を張るほどに貢献しているのでしょうか。ちなみに日本の防衛費は5兆円で、いまやイギリスやフランスと変わりません。
国益のための国連常任理事国なんてどうでもいい。9条の精神でもっとお金をだして国連に力を発揮させる方がましな選択だと思います。
九条の会
「九条の会」
http://www.9-jo.jp/
「大江健三郎氏ら9人「九条の会」結成 改憲に危機感表明」
http://www.asahi.com/national/update/0610/042.html
「9条の会アピール」
http://www.jcj.gr.jp/statemnt.html#20040612
「9条の会発足記念講演会」
http://www.kenpoukaigi.gr.jp/9jounokai/20040626hossokukinenkouen.htm
国連
「国連の基礎知識・予算」
http://www.unic.or.jp/know/budget.htm
「国連人権高等弁務官事務所は2004年に5480万ドルを要請」
http://www.code-jp.org/wv/MT/archives/000022.html
「General Assembly adopts new $3.16 billion budget - no growth in real terms」
http://www.un.org/apps/news/storyAr.asp?NewsID=9321&Cr=general&Cr1=assembly
関連リンク
「Article 9 Society」
湾岸戦争直後の91年に、オハイオ大学教授のチャールズ・オーバービー博士(現名誉教授)がオハイオ州で設立。
9条の精神こそが21世紀のモデルになると提唱。九条の会とは別系統。
http://www.article9society.org/
「第9条の会・オーバー東京」
http://www.a9s.org/overt%20index.htm
サイト内リンク
「ピースロードを、ゆるゆるサイクリング」
http://blog.livedoor.jp/peacewordsproject/archives/9302065.html
「イラク派兵違憲訴訟は、名古屋でいっとく?」
http://blog.livedoor.jp/peacewordsproject/archives/3766955.html
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