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2006年02月21日

イラク戦争を考える(イラクの民主化と米軍の撤退について)

イラク戦争がはじまって、あと一ヶ月で3年になります。『ピースワードプロジェクト』では、昨年同様に『EGピース』とともに、イラク戦争を問うイベントなどを紹介するサイトを製作中です。以下は、それ用の説明文として作ったうちのひとつです。

2006年3月20日、イラク戦争がはじまってから3年を迎えようとしている。 アメリカでは国民の厭戦気分が、開戦以来一番の高まりをみせている。 問題はいつ、どのように撤退するかだという話が政権与党の共和党内でも、公然と話されるようになってきた。

退は、ブッシュ大統領が強調するように、民主化プロセス=議会制民主主義の確立が概ね予定どおり進んでいるからではない。
まず、米国内では次のような理由があげられる。 大統領自身がはっきり認めたように、大量破壊兵器がなかったこと。2,000人を超える米 軍の若者が死んでいること。相次ぐ財政投資でもってしても戦況に明るい兆しが見えないこ と。米軍の新規採用者が減る一方であること。政権内のスキャンダルが相次いでいること。 大統領支持率がここ半世紀で最低レベルに近づいていることなど、戦争を続行する足腰が弱って いるのだ。
では、イラクではどうだろう。 民主化プロセスは、たぶん実際には進んでいない。むしろ逆行していると思われる。 進んでいると考えても過渡期のうちの前半だろう。 昨年12月に行われた選挙結果は、アメリカが望んだ結果ではないはずだ。 彼らは世俗政党を中心とした傀儡政権誕生を期待していたが、蓋を開けてみたらまったくの不発に終わった(得票率が10%にもみたなかった)。 予想外に宗教指導者や民族指導者が民衆の支持をえた。 結局、イラクは彼らが主導権争いを繰り広げる戦場になってしまった感がある。 これは、当然の結果というわけではない。 バグダッドを連合軍が占領した直後は、クルド自治区以外でも市民の間でそれを歓迎するムードがあったのだから。 いかに復興が口だけだったかが分る。

ラクは中東の専門家が戦前に予想していたように混乱状態に陥っている。 米軍は、当初テロはアルカイーダ(これはいまもって実態があるのかない のか不明だ。ザルカウイが最近やたらととりあげられるが、いつも不確かなことしかブッシュ政権の報道官は言わないし)や、フセイン残党の仕業だといっていた。しかし、さすがにそればかりはもう言えな い。地元勢力による地元勢力同士の応酬であったり、地元スンニ派勢力による米軍への攻 撃だったりいくつかのパターンが見られる。人質誘拐にしても、本気で米軍と闘うつも りでやっているのか、身代金目的や売名行為でやっているのか、よくわからない者まで入 り混じっているようだ。
果たして米軍がただ出て行くことによってテロは収まるものだろうかとさえ思う。というのは、米軍がでていったあとの治安をイラク 軍やイラク警察が守るということになっているが、自爆テロが警察官詰め所や警察官募集 の列で頻繁に起こっているため人員確保すら難しい状況なのだ。訓練は追いつかず、士気は下 がっている。テロリスト(あるいは、米軍からそう呼ばれているひとたち)からすると、米軍の肩入れをするやつらを懲らしめるというよ り、戦略上有効な攻撃というわけらしい。一体この先、どうなるのだろう。
反戦という立場からみれば、米軍は即刻撤退しろと言うべきだろうが、実際この泥沼状態 で撤退されたら一番困るのはイラクの一般市民かもしれない。だとすれば、どんなに犠牲 がでようが、どんなに金がかかろうが一度はじめた戦争にきっちりケリをつけるのがブッ シュ大統領や彼を支持している人たちの仕事だ。ただし、ケリをつけるのに、 いまのような相手を蹴散らすやり方が得策だとはとても思えない。もし、その方法しかもう残 されていないというのなら、彼らがやっていることは最悪だ。

本のマスコミでも度々とりあげられる『イラクボディーカウント』(欧米の学者らが、 毎日英語で発信される数十のマスコミ報道から、イラク市民の死亡者を集計しネッ ト上で公表している)では、開戦以来3万人前後のイラク市民が亡くなっているとされ る。これは米軍の誤射や誤爆から自爆テロによる死者まで含んだものだが、あくまで報道 された数字だ。ファルージャなど大規模な戦闘があった地域は米軍によって完全に報道規 制されたため実態はいまもってわからない。従って学者による統計学的調査では死亡者数 はぐっとあがる。
人口2,300万のイラクで、3年間で3万人が死ぬということは、人口1億2千万の日本 だと15万人が死ぬということになる。ただし、日本のような過密都市だと、とてもこん な数字で収るとは考えられない。
「爆弾で負傷者2」ときけば、助かってよかったねって思うかもしれな い。でも、ちょっと考えてみたい。この負傷者2は擦り傷だったんだろうか?擦り傷では 日本でだって負傷者にはならないだろう。爆弾は肉体をえぐる。この負傷者2は最低骨折程度ではないか。あるいは、一命をとりとめたというレベルかもしれない。運良く退院できてもそれからが大変だ。手足を失ったり、目や耳を失ったり、脳や脊髄に損傷を受けたりして、あの国でいったいどうやって生きていくのだろう(医療費や社会保障費をケチられているため、一人ひとりの自由と民主主義はないがしろにされている)?ちなみに開戦前のイラクの医療水準 は中東一といわれていた。いまはとてもそんな風には見えないが。イラクにはいま満足な医療施設がないようだ。米軍だって応急処置をした上で、動かせる重症患者はドイツの基地に運ぶのだから。

とは間違いをおかす。ときとして、取り返しのつかない間違いをおこすことだってあ る。だから、万が一の場合に備えて、私たちの社会は罰則や補償を制度化している。しかし、米軍は自由と民主主義のための戦争というわりには、誤爆や誤射を繰り返し、アブグ レイブ刑務所ではジュネーブ条約で禁止されている虐待をしていた(ジュネーブ条約について看守役の兵士はまったく教えられていなかった。現在、ブッシュ政権はキューバのグアンタナモ基地での捕虜取り扱いで国連や人権団体などから激しい追及を受けている)。にもかかわらず、自らに対する罰則や被害者に対する補償や医療はおろか、多くの場合、謝罪すらしない。
情報開示においては、彼らはオープンであるどころか、アルジャジーラテレビを武力でもってイラクから追 い出した(アルジャジーラは、米軍の意図的と思われるミサイル攻撃によって記者を亡くしてる。また、バグダッドのオフィスは閉鎖においこまれている)。
結局のところ、勝てば官軍、負ければ犯罪者なのだろう。ということは、フセイン元大統領が この裁判には正当性がないというのも、一定の正当性があると言わざるをえない(ラム ゼー・クラーク元米司法長官とカタールのナジブ・ヌアイミ元法相がフセインの弁護団に 加わっている。両氏は裁判の正当性について全面的に争うつもりだ)。ブッシュ大統領が 再三いっている自由と民主主義のためにというスローガンは、その中身が問題だ。かつ て、ヨーロッパ列強は野蛮人に文明をといって殺戮を繰り返し、領土を広げ、自国の経済を発展させていっ た歴史がある。当時のヨーロッパ市民もあれこれ理由をつけられそれを後押ししたひとが 多いときく。たくみな情報操作や利害によってひとは動くのだ。現代だって同じだろう。歴史 は繰り返されていないだろうか。そうだ、この戦争で誰か得をしたやつはいないだろうか?
多くの日本人にとっては、直接的にはこの戦争は利益も不利益も生み出さないかもしれない。一方で、アメリカが軍事的戦略拠点であ る日本を利用し、日本が安全保障上のリスク軽減と市場確保においてアメリカを利用しているという蜜月を壊したくないと 思う人は多いだろう。しかし、そのしわ寄せは中東の貧しいひとにいっていることは確か なようだ。彼らにも普通に生活する権利があるはずだ。私たちは意図せず彼らの権利を 奪っていないだろうか。



サイト内リンク
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Posted by peacewordsproject at 14:46│Comments(0)TrackBack(1)イラク戦(3周年)Edit



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