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***1
 
 そういえばもうすぐ誕生日。
 30代も半ばとなれば誕生日だってうれしいこともなく…。それでもつき合っているカレがいるときは楽しいこともあるのだろうけれど、この2年ばかりは誕生日もひとりで過ごすことが続いている。
 別に焦っているわけではないけれど、やはりいまからつき合うとなれば結婚も意識してしまい、相手を見る目も厳しくなってしまっているような気がする。
 もっと気楽に恋愛してみればいいのに、と自分で自分に言ってみたりもするのだけれど、なかなか簡単には変えられないみたいだ。
 周りを見てみると、同年代の友人では結婚しているかカレシもいないかという極端な2種類に分かれているような気がする。もちろん結婚しているから幸せとか、していないから生活がつまらなそうとか、そういうことではないのだけれど。
 わたしは仕事もそれなりに忙しいし、それを楽しんでもいるのでとくにカレシがいないということに寂しさも感じないのだけれど、なんとなく恋愛の仕方を忘れてきてしまっているような、そんな危機感をたまに感じたりもする。
 とくにセックス面ではほんとうにやり方を忘れてしまってはいないだろうかと心の中で苦笑まじりに思ったりもしてしまう。
 適度にセックスをしていた方が健康面でもホルモンバランスが整うというし、精神面でも確かに安定するのではないかと思う。
 だからといって無理にカレシを作る気もないし、好きでもない相手とする気にもなれない。だからわたしはひとりでスルこともいいと思うし、アダルトグッズもそのためにあるのだと思っている。
 とはいえ、いままでアダルトグッズなんて使ってみたことはないのだけれど。
 20代のころつき合った相手が1度、ローターを持ってきて使ったことはある。
 なんだかモーターの動きがすごすぎて、気持ちいいというより痛い感じがしてしまい、それ1度きりになってしまったけれど。
 こんなことを急に考えたりしているのは誕生日が近いから…いやそれだけではなく、たまたまネットのニュースで知った女性向けの情報サイトで30代女性の性について書かれたコラムを読んだせいだろう。
 統計によると本当のエクスタシーを感じている女性は案外少ないらしい。
 そういわれてみればわたし自身、それが本当のエクスタシーなのかと言われれば「わからない」と思う。
 セックスをしていて気持ちいいと思うし、「イク」という感覚もあるにはあるけれど、それはエクスタシーと言っていいのか…。
 そういったことを確かめたり、性感を高めたりするのにもひとりでスルことには意味があるとコラムでは説いていた。
 そして、いくつかのおススメのアダルトグッズと販売サイトの紹介。
 普段ならスルーしてしまう商品紹介を興味深く見てしまったのは、少し欲求不満だったのかもしれない。
 めったに観ることもない販売サイトの画面にはカラフルなカラーのアダルトグッズがたくさん載っていた。一見しただけではどう使うのかわからない、部屋に置いておいてもなにかのオブジェクトにしか見えないようなものもあった。
 グッズの紹介文は多少誇張されているのだろうけれど、感心したりどんなものかなのか想像してみたり…グッズに対する興味をかきたててくれる。
 それにしてもアダルトグッズはこんなにもいろいろなものがあったんだと、いまさらながら思ってしまう。使う用途、ジャンルもいろいろだし、その中でさらにたくさんのグッズが販売されているのには驚かされる。価格も想像していたより安い気がした。
 アダルトグッズ初心者としては卵型のローターくらいがいいのかな、なんて思っていたのだけれど、サイトを見ているうちに「これもよさそう」「これも初心者向けなんだ」と目移りしてしまう。
 そんな中で特に気になったグッズがあった。
 ひとつはディルドーというカテゴリーで「激ピタ ソフティーM」。本物の男性器を忠実に再現しているというもの。いかにもアダルトグッズという形より興味がもてたりする。サイズはMとLがあったのだけれど、標準的と説明のあったMにしてみた。
 もうひとつはGスポットを刺激するというもので「潮吹かき太郎」というもの。快感を底から刺激するという説明文に、ちょっと試してみたくなってしまった。
 勢いというか、いま注文しなかったらまたアダルトグッズを購入する機会もなくなりそうなきがして、そのまま注文ボタンをクリックしていた。
 
 *** 2
 
 数日後、注文したグッズが届いた。
 段ボールを開けてみると、商品の箱と納品書、販売サイトからの挨拶状が入っていた。
 商品の箱を取り出してテーブルの上に置いてみる。透明なケースの中のグッズはサイトの画面でみた写真より大きく見えた。
 挨拶状にはグッズの使い方やお手入れ方法なども書いてあった。
 グッズにもコンドームを着けて使うのがいいみたいだ。
 そういえば前の彼とつき合っているときに買ったものがあったと思い、ドレッサーの引き出しを探してみると、使いかけのものがひと箱出てきた。いまでは使う予定もないのに取っておいても仕方ないのに、とこのあいだも引き出しを開けたときに思ったのだっけ。
 コンドームの箱を持ってテーブルの前に戻り、グッズのケースのわきに置くと、消費期限が記されているのに気がついた。コンドームにもそんな期限があるのだと初めて知った。しかもその期限は来月までとなっている。
 テーブルの上のグッズとコンドームをしばらく眺めていたのだけれど、よく考えてみればまだ夕食もすませていないことに気づいた。やっぱりこういうものは寝る前にするもののような気がして、とりあえず段ボールの箱に戻して夕食の用意をすることにした。
 夕食すませ、録画しておいたドラマを観て、ちょっと早めにお風呂に入ってから、改めてグッズをテーブルに並べてみる。
「激ピタ ソフティーM」は確かに外見は男性器にそっくりだ。標準サイズということだけれど、これは男性の標準サイズということなのだろうか。前の彼ってどうだっただろう。ついそんなことまで考えてしまう。
 ケースから出してみる。
 触った感触も柔らかいようで硬さがあり、ほんもののよう。これで体温のような温かさがあればという感じだ。
 根元というか底には吸盤が付いていて、床やテーブル、壁に固定して好きな体位で楽しめるということらしい。
 ちょっと試してみようかな、という気持ちになったのだけれど、アダルトグッズに対する興味ということだけで、あんまりエッチな気分にはなっていないのも正直なところ。このままでは事務的にアダルトグッズを試してしまうような気もする。やっぱりグッズ以前にエッチな気持ちがないとだめなんじゃないかな、なんて思うのは、初めてのアダルトグッズにどこか緊張した気持ちもあるのかもしれない。
 とにかく、部屋の明かりをスタンドだけにして、普段寝る前に少し飲むブランデーを飲み、jazzのCDを流してみる。そういえばアロマなどで雰囲気を作るのもいいと挨拶状の中に書いてあったっけ。最近使っていなかったアロマポッドを出してアロマオイルの香りを楽しんでみる。
 落ち着いた気分にはなってきたけれど、エッチな気分とは違うような。
 いまさらながら自分が恋愛やセックスから遠ざかった生活をしていたんだなと思う。
 それでもグッズを見ているうちに少しずつそういう気持ちになってきた。お酒のせいなのかスタンドだけの薄暗い雰囲気のせいなのかはわからないけれど。
 改めて、自分で自分の体に触れてみる。耳、首、胸…と手のひらで撫でるように触れていき、胸を自分で揉んでみる。硬くなった乳首を指でつまんでみる。
 なんだか急に忘れていた感覚が戻ってきたようにわたしの中で熱いものがあふれてくるような気がした。
 手をさらに下げていき、下着の上から股間に触れてみる。
 敏感な部分をなぞるように指を上下に動かしてみる。
 下着の中に手を入れて、直接触れてみる。
 敏感な部分に指が触れる。気がつくと口で息をしている。
 さらに指を奥に進めてみると、ヌルヌルしたものがあふれてきた。
「激ピタ ソフティーM」にコンドームを着けると、わたしはベッドに横になり、アソコにグッズの頭を押し当てた。
 ちょっとひんやりした感触。
 ゆっくり挿入してみる。
 最初は入るかなと思ったけれど、頭が入ってしまうとそのあとはわりとスムーズに奥まで挿入することができた。
 そこになにかが入っている感覚はほんとうに久しぶり。今度はゆっくり抜き、頭が抜けきる前にまた挿入する。
 ローターなどは仕込まれてないディルドーだから、こうして手で動かすか、吸盤で固定して自分が動くしかないのだけれど、形が本物そっくりなので感触も似ているような気がする。気持ちが高揚してくればこれで充分気持ちよくなれそうだ。
 でもその前にもうひとつのグッズを試してみたくなった。
「潮吹かき太郎」は先端部分が鉤爪のような形をしているけれど、材質は意外と柔らかく、手で自由に曲げられる。本体の中程にローターが仕込まれていて、スイッチを入れると全体が振動する感じだ。
 そしてこのグッズは「潮吹きのため」なのだそうだ。自分が感じているエクスタシーが本物かどうかわからないわたしにとって、潮を吹くということ自体が未経験。
 コンドームを着けて挿入してみる。「激ピタ」よりも先端が細いので素直に入ってくる。
 Gスポットを刺激するということなのだけれど、自分のGスポットがどこなのかよくわからない。当たる場所を探るように動かしてみると、鉤状に曲がった先端が、なんとなくいい感じに触れる場所があったので、その位置でスイッチを入れてみた。
 ブーンとローターの回転する音がこもって聞こえる。
 振動がわたしの中を刺激する。
 当たっている場所がGスポットかどうかやっぱり確信はないけれど、この刺激はすごくいい感じ。以前ローターでクリトリスを刺激されたときは苦手と思ったけれど、中ならいいみたい。
 はっきりこの場所、という気持ちのい居場所がわかっていたり、その場所に当たっていればそのまま固定しておけばいいのだろうけど、わたしはまだそれがわからないので先端が触れる場所を少しずつ動かしてみる。
 でもローターの振動は当たっている一点だけを刺激するわけではないので、あまり関係はないのかもしれない。
 気持ちはいいのだけれど、なんかトイレに行きたいような感覚になってきた。潮を吹くのってそういう感覚なんだろうか。
 なんか落ち着かない気分になってしまったので、いったんグッズのスイッチを切ってトイレに行くことにした。
 潮吹きはまだ経験できなさそうだ。
 トイレから戻って改めてふたつのグッズを見比べてみる。
 Gスポットはもう少し自分の体のことがわかってからにしよう。
 もう一度「激ピタ」を手にすると、ベッドに横になり挿入した。
 なんとなく前の彼とのセックスを思い出す。
 奥まで、奥の壁にあたるまで挿入する。中がいっぱいになったような充足感。
 そう、この満たされる感覚もセックスの満足感のひとつのような気がする。
 ゆっくり…しだいに早く出し入れを繰り返す。
 ああ…。
 うん、気持ちいい…。
 奥に当たる感じがいいかな。Gスポット、奥にあるのかも…。
 ん…でも…なにか少し足りないかも。
 …そう。いまのわたし、本当にしたいと思っていないのかも。気持ちいいけどイケないのはそのせい。
 無理にイこうと思わなくてもいい。気持ちいいのだから。
 そう思ったらなにか気分が軽くなったような気がした。
 それに、やっぱりセックスって大事なんだなって改めて気がついた。
 結婚とか気負わず、好きなひと、探してみようかな。
 そんなことを思いながらスタンドの明かりを消した。
 
 [終わり]

(猫目ユウ:作)



激ピタ ソフティーM
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潮吹かき太郎
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