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昨年、女性週刊誌『an・an』に取り上げられことで若い女性の間でピンク映画ブームが起きているのはご存知でしたでしょうか? 上野にある老舗ピンク映画館『上野オークラ劇場』のリニューアルに伴い、女性限定のレセプションイベントを開催したところ、長蛇の列ができるほどの大盛況に。半年以上過ぎた現在でも、劇場に脚を運ぶ熱烈な女性がいるほどなんです。
 ピンク映画の第一の魅力はAVとは違いストーリー重視のドラマ仕立てであること。お色気要素が強いのは当然ですが、実は映画としての魅力を十分に兼ね備えた重厚な作品も数多く、サブカルの一種として今、改めて注目を浴びているジャンルなのです。
 そこで今回は、ピンク映画界きっての女性監督・吉行由実さんをお迎えして、その魅力と裏話をたっぷり伺いました。女性にもファンが多い吉行監督の代表作・ゲイポルノや、お薦めの官能ドラマ作品の見どころを紹介していただきましたので、じっくりお楽しみ下さい!!
 


──吉行さんは、人気女優さんでありながら監督もはじめられたとか。そのきっかけは?
「ピンク映画で女優デビューする前から役者修行を積んでいたので、一般映画にも出させてもらっていたんですね。その時には制作のスタッフさんは遠い存在だったのですが、ピンク映画をやっていくうちに近い存在になって飲み仲間もできたんです。飲みながら自主映画を撮ってみたいなんて話をしましたら、みなさん気さくに手伝ってやるよ~と声をかけて下さって。それがきっかけですね」

──男ばかりの業界で女性監督は珍しい存在ですよね?
「そうですね。でも職業意識が低いから続けてこられたんでしょうね。女優デビューが93年で監督デビューが96年。その3年間で貯めたお金で恋愛ものを撮りたいなって思っていたのがはじまりでしたから。ノルウェーの森みたいなね(笑)。映画撮影は、自分へのご褒美のつもりでもあったんですよ。それが、大蔵映画さんに声をかけていただいて、監督デビュー当初はもうけものだなって感じでしたね」

──プレッシャーはなかった?
「それはないですね。1本限りのつもりでしたし。女優が撮った映画と言うことで注目していただきましたし、関係者の方も温かい目で見守って下さってましたし。でも、助監督から修業を積んでも監督になれない人も多いですからね。その事情は知っているので真摯な気持ちでやってきましたよ」

──ゲイ作品も多いですよね。撮ってみようと思った理由は?
「ゲイ作品に関しては監督同士の持ち回り制なんですよ。私は、女優としてゲイ作品に出演した経験がありましたし、内情はわかっていましたから抵抗はなかったですよ。それどころか、やっぱり男の子の裸を撮るのは女性としてテンションが上がりますよね(笑)」



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乙男たちの素顔/(C)OP



──ゲイに興味があった?
「のめり込むほどではないですけど、ピンク映画の監督の中では興味がある方だと思います。持ち回りなので興味が全くない方も多いんです。その点、私は女性として男性のビジュアルには拘りましたし、セクシーに見える仕草と言うもの解っていたし、適正はあったと思います。たとえば、時計をはずすさりげない仕草が魅力的に見えたりするわけじゃないですか、女性って。そういう細かいこだわりはどんどん取り入れていきましたね」

──では、女性目線で描かれているんですね。思った以上にボーイズラブに近いと感じたのですが?
「そうなんですよね。ゲイの友人によると、私の映画はゲイポルノというよりは、ヤオイに近いと言われました。実際のゲイはここまで綺麗ではないよって。でも、ナチュラルな男の子たちを見て欲しいんですよね、私は。手あかがついていないような男の子やノンケっぽい男の子が、悩みながら成長していく姿に共感していただければなと思っています」




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僕は恋に夢中/(C)OP



──男性監督の作品と一番大きく違う点は?
「男性の作品だとエッチをやってるばかりの作品が多くて、私の作品のように会社で働いている姿とかまで描いていないですね。私生活まで描かれているのが貴重だと言われてこともあります」

──ゲイ作品の初心者にもお奨めですね?
「そうですね。そもそも、私のテーマは男の子と男の子の恋愛を描いた『月9ドラマ』ですから。ゲイとゲイが出会ったら簡単にエッチしてしまう作品が多い中で、私はゲイでもきちんと恋愛して悩みながらエッチするということをしっかり描きたかったんです」



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恋心の風景~キャンプでLOVE/(C)OP




──BL好きな女性向きに造られているのではないかと思うほど、繊細なお話ばかりですよね?
「そう言って頂くと嬉しいですね。実はこれまで女性向きに発表する機会があまりなかったので、今回はいい機会だなって期待してるんです。ゲイ&レズ映画祭に出品したことはあるのですが、一般の女性にもぜひ楽しんで頂きたいと思っていたものですから」

──BL漫画の影響は受けているのですか?
「いいえ~。でも、ラブコメは好きですね。だから、娯楽テイストが強いんです。男性と女性と取り換えても、成り立つくらいのラブコメ恋愛ドラマを撮りたいと思っているんですよ。今度、女性のためのボーイズラブをきちんと撮りたいとも考えています」



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恋心の風景~キャンプでLOVE/(C)OP




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僕は恋に夢中/(C)OP





──今でも十分、BLファンの期待を裏切らない内容だと思いますよ?
「そうですか? 実は最近、女性向きのイケメン作品を撮ったばかりなんです。化粧品と一緒に発売されていて5人のイケメンがでてくるんですけど、これが受けているんですって。女性でもセクシーな作品が観たいと思っている方が増えている証ですよね。ですから、改めて女性のためのゲイ作品を撮ってみたいと考えるようになったんです」

──何と言ってもセリフがいいですよね。『乙男たちの素顔』の中での「今どうしたいのか? 何をしたいのか考えなさい!」という一言にはドキリとしました。こういった台詞はどんなときに思いつくのですか?
「この話は実際のゲイの男の子が脚本を担当してくれたんです。ビビッドな台詞は私には思いつかないと思ったので。だから、まず日常の会話を書いてちょうだいと注文したんです。それを私が校正しました。意味のある言葉もそうでない言葉もリアリティを感じて欲しかったから」




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乙男たちの素顔/(C)OP



──ぜひ、女性に観て欲しいポイントは?
「『せつないかもしれない』の中の男の子が泣いたり、鼻をかんでるシーンは、実は私の趣味が入ってます。可愛い男の子が泣いてる姿にキュンとしてしまうので。あとは鼻をかんでるもの好きなんです(笑)」

──そういった女性ならではのフェティッシュな楽しみも十分含まれているんですね?
「そうですね。エッチのシーンも本当はサイレントで撮影しているのですが、臨場感を出すためにウェットにならない程度で喘ぎ声を後から乗せているんですよ。繊細な声なので、そこも女性が感じやすいポイントじゃないかと思います」





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せつないかもしれない/(C)OP



──ゲイ作品以外でもコメディタッチの作品が多いのですが、ピンク映画にはつきものなのですか?
「いいえ、他の監督さんの作品ではあまりないでしょうね。オヤジギャグとかダジャレで笑わせるものはあっても『ミスピーチ』みたいなラブコメは私だけかも。この作品は大好きなサンドラブロックの『デンジャラスビュティー』という映画にリスペクトされた作品なんです。他にも裏話をすると、エキストラさんはミクシーで集めた一般の方なんですよ」





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ミスピーチ 巨乳は桃の甘み/(C)OP



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ミスピーチ 巨乳は桃の甘み/(C)OP




──女性がピンク映画を楽しむことについての率直な感想は?
「実は去年、山形で女性限定の上映会をしたことがあったのですが、そこで言われたのが『エロと笑いが一緒に楽しめるなんて知らなかったです』という感想なんです。だから女性でも十分楽しめる要素はあると思っています。やはり映画ですからね。物語をじっくり楽しめると言う意味でピンク映画はAVよりも受け入れやすいのではないかと思います」

──ピンク映画界という男性社会の中でここまで活躍できた原動力は?
「私自身がこの世界で救われたこと…でしょうか。役者修行中は小劇団にも出ていたし、レッスンにも通っていましたけど、自分自身をどう磨いていけばいいのか分からなかったです。それがピンク映画に出会って、役者としても監督としても育てて貰ったという実感が持てたんです」



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裸身の裏顔 ふしだらな愛/(C)OP




──そこで周りに迎合されない吉行さんならではの作風というのが生まれていったんですね?
「そうですね。キャラというのは出ちゃうんですよね。私自身は見て下さる方、少し年上の男性になりますが、そういった方々のニーズに応えて作っているつもりなんです。私って我が強いのでしょうか? どうしても自分の色がでちゃうんです。私が撮る意味がある作品を撮らせてくれた大蔵映画さんのお陰と言うものありますが」

──女性が性に目を向ける時代が来ましたが、それに関してメッセージをいただけますか?
「自分がどういう欲求をもっているのか把握していると、ベストパートナーを見つけやすくなると思うんです。女性は男性より性的な快感は何倍も感じられるものなんですから、それを知らないままでいるのは損ですよね。むしろ知っておくべきではないかと。ですから、もっと女性向けアダルト業界は盛り上がっていただきたいなと思っています。機会があったら、女性ファンの方々との座談会もやってみたいですね。どうぞ難しいことは考えずアダルト作品をどんどん楽しんで下さいね!」


 最後に、役者には徹底的にこだわっているというお話を聞かせて下さった吉行監督。ゲイやBLには縁がなかったという方ほど、きっと吉行監督の繊細な作風と、魅力溢れるキャスティングに感銘を受けるのではないかと思います。また、一般ピンク作品も、これまで抱いていたイメージとは正反対のものばかり。映画としての重厚感ある物語性と、吉行監督ならではのコミカルな展開。一度知ってしまうと、絶対にハマってしまうものばかり。これを男性のためだけの娯楽にしておくなんてもったいないと、改めて感じました!

(取材/文:風俗ライター・文月みほ)


吉行由実プロフィール yumi-1miu1
大学卒業後OLを経て役者を志す。
小劇団に参加するが肌に合わず辿り着いた先が成人映画。
‘93に女優デビュー。
成人映画や一般作も含め出演作は100本を超え、「D坂の殺人事件」(実相寺昭雄監督)で第20回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。
’96から監督業も開始し、「姉妹どんぶり抜かずに中で(イノセント・キス)」「僕は恋に夢中」「ミスピーチ」など男女を問わず楽しめる成人映画を作り出している。