KAFKA／迷宮の悪夢

1991年製作
監督 スティーブン・ソダーバーグ

カフカが暮らしたプラハで撮られたアメリカ映画
カフカ自身の保険局員としての生活に事件が起こり、「城」に潜入する

開始一時間はモノクロで、城に入って次の扉を開けてからカラーになり、城を出てまたモノクロに戻る
感じ悪すぎる上司、アホな双子の助手、機械に巻き込まれて死ぬとこなど、コミカルで楽しい
カフカの小説を褒める浮浪の友人が城への抜け道を教えてくれる
「もし戻らなければ、原稿をすべて焼いてくれ　友人ならそうする」
城の中では権力が脳をいじくってる
母への手紙、喀血、父への手紙

カフカ役のジェレミー・アイアンズ超イケメン
おもしろかった

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魂のゆくえ

2018年製作
監督 ポール・シュレイダー

息子をイラク戦争で亡くし、妻と別れ、胃を患う牧師
環境破壊を憂い出生を拒絶する男を救えず、残された妊婦を愛してしまう  

呼ばれたらあちこち行かなきゃならないし、出資者には従順でなければならないし、具合は悪くなる一方で、つらいその毎日を日記で顧みる  

ラストシーンは250年記念式典
男の自爆ベストを着て支度するが、妊婦の来場を知って狼狽し、口を押さえて絶叫する
脱ぎ散らかしたあと体に有刺鉄線を巻き付けて白い法衣を被り、パイプユニッシュ的な洗剤を飲もうとする
式典の裏、妊婦と夢みたいに長い口付けをしながらぐるぐる回って、バッサリ終わった  

息の詰まるスタンダードサイズ
牧師と妊婦が重なった時、タルコフスキーみたいに浮いて回って地球を巡った
環境問題を直視し過ぎると生きていられないのはわかる
知っている人の自死は遺された人の中でどこまででも膨らむ

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惑星ソラリス

1972年製作
監督 アンドレイ・タルコフスキー
原作 スタニスワフ・レム

未知の惑星、人間の潜在意識に居る人を実体化する海、三人の研究者、死んだ妻との惑星生活

人間そっくりだけど実は違うってわかっていてもそれでも良くなっちゃう感じは『火の鳥　未来編』のムーピーを思い出すし、
妻が新たに物質化する度に鋏で切らないと脱げない服とショールが増えるのは『進撃の巨人』の硬質化みたいだったし、
本が水でびちゃびちゃになってる実家の窓を覗いて父と視線を交わすとこは『インターステラー』みたいで、
その実家はソラリスの海上にできた島だったというのは『2001年宇宙の旅』みたいだった

知性を持った海の気分を想像できたら多分すごくおもしろい
地球上のシーンのほうが好きだった
カラーと脱色とモノクロを行き来するルールが全然わからない
高速道路が思いっきり東京
『2001年宇宙の旅』はこの4年前の製作

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ローラーとバイオリン

1960年製作／45分
監督 アンドレイ・タルコフスキー

28歳で撮った卒業制作
バイオリンを弾く子どもとローラーを運転する青年
いじめられっ子がお兄さんと仲良くできる優越感
子どもの目で見た、浮かぶ木棚や鏡や濡れた地面の反射
届かなかった紙ひこうきの手紙
ローラーってこの子の名前なのかと思ってたけど重機だった

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タルコフスキー・ファイルin「サクリファイス」

1988年製作
監督　ミハウ・レシチロフスキー
原題　Regi Andrej Tarkovskij

『サクリファイス』制作の舞台裏を捉えたドキュメンタリー
監督は『サクリファイス』の編集・助監督

タルコフスキーは全知全能なのかと思っていたら、力んでいたりちょけたり頭抱えたりして意外と人間臭い
階段と鏡の夢のシーンで黒いものを欲してゴミ袋を散乱させるなど、美術へのこだわり
「魔女」と「犠牲」の2作の脚本を掛け合わせた
タルコフスキーの日記によると、最後に息子が発した言葉は父を守るためのものだったと

スタッフと俳優への信頼が見てとれるが、伝説的炎上ワンカット撮影の失敗で悪態をつき、ショックすぎて妻を呼び寄せる
失敗してグダグダだった1テイク目と、家を建て直して成功した2テイク目の舞台裏を両方見られるのはまじですごい
ベルイマンのカメラマンだった巨匠スヴェン・ニクヴィストも震えるほどの緊張感、でも2回目はカメラ2台に増やしてた

「ショットは現実の時間を保存していて、映画以外の芸術は時間をとどまらせることはできない」
「夢は身体的な現象である」
タルコフスキーの言うことはぜんぶ金言で、引用されたテキストは著書『映像のポエジア』に書いてある
そして「編集は時間に彫刻を施す」

アンドレイ・ルブリョフ

1969年製作
監督 アンドレイ・タルコフスキー
1400〜1423年のモスクワ大公国、イコン画家アンドレイ・ルブリョフの映画

奇形の熱気球の浮上、墜落
旅芸人は悪魔の使い
選ばれなかったキリル、犬を撲殺
森の中、白い足に蟻がいっぱい
雪の日の磔刑
お祭りヌーディストリバー
最後の審判は気分が悪くなるから描きたくない
非礼で目を潰される彫刻家一行  

モンゴル顔のタタール兵の襲撃、教会に逃げ込む
強姦を止めるために兵士を殺し、階段で逆さま
燃えた教会の中に雪が降る
鐘職人生き残りの少年
溶けた銅が流れる光る筋
完成した鐘が鳴り倒れ込む少年、抱えるルブリョフとの会話
最後の炭からルブリョフの絵と雨の馬はカラー

製作は『僕の村は戦場だった』と『惑星ソラリス』の間
183分版だったけど、これは日本版ぽい
186分が原板で、完全版は205分

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サクリファイス

1986年製作
監督 アンドレイ・タルコフスキー
闘病中に撮影し、完成後1986年12月29日に逝去したタルコフスキーの遺作

一時的に喋れなくなった息子とよく喋る父
アンドレイ・ルブリョフの画集
息子からのプレゼント、ミニチュアの家
誕生日の集まりで核戦争が開始される
テレビ放送の終わり、泣き叫ぶ女、冷静な医師、家に帰る郵便配達夫
こちらに向かって、自分のものを犠牲とする神への提案　
魔女マリアと交わり宙に浮く
夜が明けて家に火をつける
錯乱、救急車、マリアは自転車で去る　
木に水をやる息子「はじめに言葉があった、でも何故？」

人、牛乳入りのガラス瓶、家、何かが倒れると場面が大きく変わる
挿入されるモノクロの終末
圧巻のクライマックス火災ワンカット   
日本の松、陰陽の紋付き着物、尺八の音色
室内の陰影はほとんどハマスホイ  

主人公の行いで終末がキャンセルされた説が本流ぽいが、本当にそうだろうか
哲学や美学や言葉に溺れた男の内的な破滅の話のように見えた
そして宗教が本当に効力を発揮するのは終末の予感がした時 


町山智浩解説メモ
ベルイマンの映画のスタッフを集めている
ポール・シュレイダーによる聖なる映画論　瞑想に導く映画
魔女や巫女と交わることで神に通じるキリスト教以前の信仰
町山智浩の映画トーク アンドレイ・タルコフスキー監督『サクリファイス』


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ザ・ホエール

2022年製作
監督 ダーレン・アロノフスキー

宗教は計画を押し付ける 
大麻と盗みをはたらいた若きニセ宣教師は、家族や教会に見捨てられたと思っても信仰を捨てず、娘の悪意を持った行動に救われる
聖書の中に答えがあると信じるタイプの思考停止
アランの遺品である聖書は、ニセ宣教師にくれてやる
少なくともこの映画の中で、彼は誰よりも不特定多数の他人を救いたがったが、落ちたものを拾う以外の徳は積んでない 

部屋のテレビもスタンダード 
窓辺の鳥 
死後そのままになっているパートナーの部屋 
娘の悪口が五七五になってて笑う 
月曜から金曜 
“FUCK the readings. JUST WRITE ME SOMETHING HONEST”  


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ホームワーク

1989年製作
監督 アッバス・キアロスタミ 

「フセインは地獄へ堕ちろ！ イスラムは勝つ！ 西と東を倒せ！」 

冒頭でこれは劇映画にはならず“映像リサーチ”であると語られる
子どもらのインタビューの間、執拗にカメラマン向きのカットが差し込まれる
たまに監督、音声、カメラマンの3ショットも

始めはシンプルに宿題について訊くけど、質問と子どもたちの答えが展開して問題の本質に迫っていく、ように見える編集
結論のようなことは近所に住むおじさんがまとめてくれちゃうが、映画の終わりはモライがいないと泣いちゃうマジッドと、その父と、マジッドが諳んじる宗教詩  

女の子が出てこないけど、イランは今でも大学しか男女共学じゃないらしい
否定の時に「いいえ」と言わず舌を鳴らす 

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幸福なラザロ

2018年製作
監督 アリーチェ・ロルバケル

前半はタバコ農園での搾取、狂言誘拐
後半は都市部での貧困、変わり果てた貴族  

教会から音楽が追いかけてくる奇跡
聖人は無垢だったために一般市民たちに殺されて、自由な狼になる  

前半からおもしろくて、村を出てからの後半も一層すごい
神の奇跡と災害後の心霊体験は同じものなのかもしれない 

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