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6・2判決公判傍聴記

 

裁判官がクロと言ったらクロなんだ!

             竹見智恵子

 

◆大荒れの429号法廷

 開廷時刻が迫った直前、電話をかけなければならない用事を思い出した。まだ五分ある。その間に用件をすませようと大急ぎで強制荷物預かり所から携帯電話を受け出し、廊下に出る。 

 すると、エレベーター前には傍聴券を入手できなかった三十人ほどの支援者が座り込んでいた。椅子など一切用意されていないから、何時間かかるかわからない閉廷までの時間をこうして過ごさなければならない。公共施設にもかかわらず、裁判所というところには市民への配慮がまるで感じられない。

 電話のしやすい場所を探して支援者の間をアタフタと通り抜け、先へと進むと、廊下のあちこちに、二人、三人と黒っぽい服装の男たちがたむろしている。どうやら公安らしい。騒ぎを予測して待機しているのだろうか。「迎賓館・横田事件」を国権にかかわる特別な治安事件と見て、警戒レベルを最高に上げているのだろう。

 公安のするどい視線を浴びながら電話をかける場所を探し、結局、トイレに駆け込む。たいした用事ではないが、公安に聞かせることもない。二言三言で用件を済ませ、法廷に戻ろうとすると、エレベーター前と法廷入口の間に腰くらいの高さの金属フェンスに沿って制服姿の警備官が横一列に並んでいる。街頭でもないのに、金属フェンスまで持ち出すとは! これでは、エレベーター前の支援者は知らない間に公安と警備官に挟み撃ちにされ、拘束状態に置かていることになる。

 このモノモノしい警備からして、さては有罪判決? と、胸が騒ぐ。急いで法廷に入ろうとすると、警備官のひとりが両手を広げ、入廷を阻止された。

「ちょっと待ってください。人が出ます!」と、うわずった声で言う。

 仕方なく脇によけると、法廷のドアが勢いよく開いて、中から「完全無罪をかちとる会」共同代表の桜井善作さんが数人の警備官に押し出される格好で出てきた。憤懣やるかたないという表情の桜井さん。話かけたかったが警備官らの勢いに圧倒され、声をかける暇もない。桜井さんの表情から、もはや三人に有罪判決が出たことは明らかだった。

 

◆最初に有罪ありきの不当判決 

 しょっぱなのこの騒ぎが、この日の判決のすべてを物語っていた。須賀さんに十一年、十亀さん・板垣さんにそれぞれ八年の実刑が言い渡された。

 それにしても、一審の無罪から一転して有罪判決にするには、それ相当の理由がなくてはならないだろう。ところが実刑の根拠とされる内容が不可解だ。一時間半もかけて裁判長が読み上げた作文の中身を要約すると、

 

◎ 1985年秋、某喫茶店に須賀・十亀・板垣が揃っているところが目撃された。

◎ 1986年4月15日 米軍横田基地で爆発物落下事件発生。現場に三人がいなかったことについては争いがない。

◎ 1986年5月4日 赤坂迎賓館で同様の爆発物落下事件発生。現場に三人がいなかったことについては争いがない。

◎ 二つの事件から半年後、三人が岩手の借家で鍋爆弾を製造していた。爆弾製造に関するメモもあった。ゆえに三人は横田・迎賓館両事件の犯人と認定できる。

 

 これがプロの裁判官の下した判断かと愕然としたが、法廷では傍聴人は質問も抗議もできない。治安事件では、民主的な市民参加の道はまだ閉ざされたままだ。怒りが沸騰点に達し、傍聴席からするどい声が飛ぶ。

「ウソをつくな!」

「デッチ上げだ!」

 裁判長は机の上の作文から目を上げて、声を発した人物を探す。警備官が立ち上がって声の主を指差す。退出命令が出され、ひとりが拘束され、裁判所の外に連れ出された。「暗黒裁判」という言葉が脳裏をよぎる。

 

◆被告を奮い立たせたクロ判決

 中身のない裁判は、最後まで大荒れに荒れた。裁判長が閉廷を宣言しても、傍聴人はなかなか席を立たない。そこへ十数人の警備官がドッとなだれ込んできて「閉廷です。出てください」と傍聴人の追い出しにかかった。  

「触らないで! 汚らわしい」と傍聴人の声。裁判長の顔が法廷内の緊張した空気を受けてゆがんでいる。

 明治以来、国家権力は治安維持のために強権を使い、スケープゴートを産み出し続けてきた。今また、「無実」を「有罪」と言い換え、無理やり三人に反逆罪の烙印を押そうとしている。良心も人権意識もかなぐり捨てた裁判官による市民への侵犯行為。特別治安法廷429号室では、日々国家によるテロ行為がくりかえされている。ふたたびキナ臭さが増す時代の、国家の暗い一面があらわになった判決言い渡しだった。