迎賓館・横田事件裁判 差戻し上告審

藤沢差戻し控訴審判決批判 ― 上告審に向けて

(その1)

藤沢抱一弁護士(主任弁護人)

1.差戻し控訴審判決批判

(1)共謀共同正犯認定の誤り

判決は、「信管の開発、製造や弾胴部への炸薬の装てんが、いつ、どこで、誰が、どのように行ったのか、明らかにできないことは紛れもない事実である」としながらも、「中核派は、昭和60年の4事件を行い、本件両事件を行ったのであるから、中核派の構成員である被告人が、本件金属製砲弾に実際用いられた信管の開発、製造や弾胴部への炸薬の装てんに携わっている事実からすると、共謀共同正犯者として責任追及が出来る」としている。

しかし、被告人らが、本件金属製砲弾に実際用いられた信管の開発、製造や弾胴部への炸薬の装てんに携わっている根拠は存在しない。

判決は、岩手で押収されたメモ類の記載内容等から前記の認定をしているが、各メモ類には、本件両事件自体に直接触れた記載は全く存在していないのであり、本件金属製砲弾の製造に携わっている証拠は存在しない。

メモ類は、検察官の立証趣旨の通り、それぞれのメモの存在、形状、ないしは岩手アジトにこれらのメモがあったこと及びその内容を立証事項とする非供述証拠として取調べられたものである。これらのメモ自体を、各メモに記載された事柄が実際に存在したという立証に直ちに用いることは許されない。

メモの内容、岩手アジトで押収された物から本件両事件に使われた信管が、被告人らが開発、製造したものであるとの証拠が存在せず、被告人らと関係のない他の中核派の構成員がその信管を製造している余地が存在する以上、被告人らに対する共謀共同正犯による責任は認められない。



(2)メモ類はオリジナルメモとの認定の誤り

判決は、「爆弾製造は喫緊の課題であったのであるから、書き写したというのは、措信し得ない。メモを参照すれば足りることである」としている。

しかし、そう断定は出来るものでない。

メモ作成者と特定させない為、書き写すとのルールがあったとの被告人の説明は、水溶紙メモが存在した事実と合わせ、合理性のあることである。喫緊の課題があったから措信し得ないとの断定は、被告人らの行動パターンを無視したものであり、合理性が存しない。メモを参照すれば足るとの判断も同様の理由から合理性が存しない。

旧一審判決は、「岩手アジトが鍋爆弾製造の為の場所であったことに照らすと、爆弾製造の為に参考となるものを書き写すなどして所持するに至った可能性を否定するまでの証拠はないのである」と認定し無罪としている。その認定論理を否定する認定、論理となり得ない。

つづく