獄中からの手紙（抜粋） （２０２４年９月９日付）
脊椎・脊髄の専門医による診察・治療を！
横浜刑務所在監 須賀武敏
内藤さん
９月４日（水）に急遽入った整形外科医の診察状況をＳ先生に知らせ、先生の判断、アドバイスを聞くようにしてください。頼みます。
９月に入って、午前中の作業時から急にお尻全体がズキンズキンと強い痛みが生じて、座位それ自体が非常にしんどい状況になる。時間の経過とともに痛みが強まり、作業に支障が出るくらいになる。初めての経験。
こうした症状のため、医務当局は９月４日に整形外科医の診察を実施する。上記の点を医師に詳しく説明し、治療上の処置を強く要請する。医師が以下の、いろいろな検査を実施したが、お尻全体の痛みの主要な原因が何によって生じているのか、はっきりした判断もせずに、筋弛緩薬の追加服用で対処しています。坐骨神経痛によって生じているかどうかもはっきりしていません。
私としては、腰痛悪化の重要なシグナルであると思っています。医師の判断は、作業に支障が出るまで悪化した症状になれば、病舎で安静治療する以外にないとの判断で、新規のＭＲＩ検査の実施など考えていません。
この点、Ｓ先生に知らせて、先生の判断、処置のアドバイスについて聞いて、大至急知らせてください。頼みます。
医師の検査状況
・医師はお尻全体を手で押さえ、触って、お尻全体のどの部位の痛みが強いかを調べる。左側のほうが右側より強いことが判明する。
・次に、左右の下肢全体の痛みや感覚の状態を調べる検査。左右のかかとがどの程度上がるのかの状況。左はほとんど上がらない。右は普通に上がる。左右のつま先がどの程度上がるのかの状態。左はほとんど上がらない。右は普通に上がる。
・左右の足の感覚状態。左足の左側は右側に比べ、極端に鈍い感覚で、膝から足先のすねの部位がしびれた、マヒしたような状態。しかし、膝から太ももの部位は左側は右側に比べ鈍いが、極端に鈍い感覚ではない。
・左右の足の筋力状態。左足の足裏を医師の掌に載せて、思い切って力を入れて押す筋力は極端に弱い。右足は普通のように筋力があるようである。
・椅子に座ったままで左右の足全体が上がる状態。左足は右足に比べて、足全体を水平に上げる力が極端に弱い。また、左足の場合は上げようとすると、腰に強い痛みが生じるが、右足の場合は弱い痛みがあるという状態。
・立った状態でのお尻の痛みはほとんどない。しかし、座った状態になると強い痛みが生じるようになる。
須賀 （以下、検査の後の医師とのやりとり）私は８月26日から９月５日までの作業時間は午後４時ないし３時半になり、長時間、同じ姿勢で腰に過度な負担をかける作業で、腰痛悪化が通常より進行し、腰と背中の激痛が強めになる傾向になります。
そのため、この６年間、一度も経験したことがない午前中の作業中にお尻全体に強い痛みが生じて、作業するのに支障が出るくらいしんどくなります。こうした腰痛悪化の進行を抑えないと、２０２０年のＭＲＩ検査で手術が必要との判断所見が出たわけですが、そうした状況になりかねません。そうした状況を避けるための治療上の処置の一つとして舎房に帰着して点検前までの間、30分でも、１時間でも横臥許可を治療上の処置としてお願いします。
ＤＲ 痛みがひどくなり、作業に支障が出る状況になる場合は、病舎で安静治療するのがベストです。しかし、現在当局が処遇上、横臥許可を認めない状況では、そうした処遇を私の一存ではできません。その点は当局と相談するようにしてください。
お尻全体に強い痛みが生じる状況になったのは、筋弛緩薬の服用不足によっていることも考えられるので、これまで朝夕２回から、毎食後３回にすることにします。その効果があるかどうか見ることにします。
須賀 お尻全体に強い痛みが生じた原因は、先生としては主要には坐骨神経痛によるものだと考えているのですか。
ＤＲ 腰痛症状の進行によって生じていると思いますが、経過観察して様子を見ることとします。
これで、診察は終了。
以上の診察状況をＳ先生に知らせて、先生の判断、アドバイスの件よろしくお願いします。
９月８日 記
※追記（内藤雄二）
須賀さんの新しい（はじめての）症状報告なので、ただちにＳ先生に報告しました。先生は９月４日の診察と処置について、大変驚いておられました。とりわけ、「筋弛緩剤の追加服用」処置について。これが整形外科医を名乗る医師のすることか、信じられない。ただちに「要望書」を書くとおっしゃっていただきました。
単なる整形外科医ではなく、脊椎・脊髄専門医の診察・診断・治療を実施せよ、あららたなＭＲＩ検査を行え、という「要望書」になるとのことです。すみやかに提出したいと思います。
２度目の友人面会かちとる
事務局 内藤雄二
6月5日に引き続き、８月20日（火）２度目の友人面会をかちとりました。13時20分くらいから、ほぼ30分の面会となりました。
６月５日の面会の際も、申込用紙の「用件」の欄に「納骨問題、自宅マンションの維持・管理問題、身元引受人問題など」と、記載して面会要請したところ面会が実現しました。これらの用件はすべて陽子さんの逝去を受けてはじめて言える用件です。逆に言うと、ここまで具体的でないと面会を認めないということになります。
今回は、そうした現状に踏まえて「自宅マンションの維持・管理問題、健康現状把握、定額減税問題、身元引受人問題など」と少し内容を変えて面会申請をしたところ、今回も許可してきました。前回と同じ処遇係の係官が登場し、「お分かりのように、友人面会ということなので、用紙に記載された、面会用件に限って、話をしていただきたい。ところで用件の最後に「など」という言葉が入っていますが、これはどういうことですか？」と聞いてきたので、「内藤からは記載した用件以外に話すつもりはないが、会話の中で、須賀さんからふと思い出して話題にしなければいけないことも出てくるでしょう。そういう意味で書いている」と答えたら、それ以上は追及してきませんでした。
さて、須賀さんは、この間は車いすで面会室の中まで、入ってきて、車いすに座った状態での面会となっています。以前にはグランドでの運動時間に、車いすに受刑者の人に座ってもらって、その車いすを押すことで、歩行訓練を行っているということは聞いているのですが、現在はどういう状態なのかどうかの確認はしませんでした。今度、あらためて、確認したいと思います。
車いすに座っている関係もあるかと思いますが、少し小さくなったかなという感じはあります。しかし、しゃべりだすと、「ああ、須賀さんだ」と少し安心する、という感じです。
まずは健康現状把握ということで、具体的には、先日（８月１４日付）法務省矯正局と横浜刑務所長宛に提出したS医師の「要望書」についてのやり取りを行いました。「要望書」は、あらかじめの須賀さんの了承を得ないで、提出したのですが、そのあたり、須賀さんの受け止めはどうか、とちょっと心配していましたが、「内容的には全く問題はない。提出してもらって、ほんとによかった」と了解してくれました。
「ただし」と言って、強調してきたのは、「要望書」で要求している中身は、具体的には書いてないが、横浜刑務所の整形外科医の診察ではなく、例えば、医療センターの専門医とか、外部の病院の専門医による、診察・検査・診断・治療をしてくれという要求であり、それはセカンドオピニオンをやれ、という要求であり、それは、そう簡単な話ではない。Ｓ先生だって、１度の「要望書」を書いたら実現できるとは思っていないだろうが、２度、３度と書いてほしい。この闘いは、長期戦として構えないと、とても実現しない。長期というのは１年、２年単位という意味なんだ、分かるか？ と私に大きな声で迫ってきました。
ここで、あいまいな返答をすると話が混乱するばかりなので、こちらも立ち上がって大きな声で、Ｓ先生の「要望書」にこめた思いを力を込めて、訴えました。
そんなことは、Ｓ先生だって、重々承知の上で「要望書」を書いておられる。大変だけど、そこは、須賀さんにさらに腹を固めてもらって、命と健康を守るためには、なんとしてももっと専門的な、つまり、脊椎・脊髄専門医による診察・診断をやってくれと、当局に要求して欲しいと言っておられる。どんなに困難だろうと、獄外も頑張るから、須賀さんにはぜひ頑張ってもらいたい、という気持ちで、今回の「要望書」も書いてもらっている、そこをぜひ分かってもらいたい、と訴えました。須賀さんも「分かった」と納得してくれました。
余談ですが、ここのちょっとした白熱的会話が、よほど大きな声だったようで、係官が、「お二人とも、もっと声を抑えてもらえますか。これじゃあ隣の面会の人が、驚いてしまいますから」と私たちの会話を抑えに入ってきたほどでした。
そのあと、いくつかの用件について、話し合いました。ちゃんと計っていたわけではありませんが、30分はみっちり使ったと思います。それでも、言いたいことはお互い山ほどあり、とても30分では、満足できるコミュニケーションとは言えません。
それでも「また来ますから」と手を振って面会室を後にしました。
戦時下獄中処遇を許すな！ ふるってご参加を！
横浜刑務所申し入れ行動
９月27日（金） 午後1時30分 横浜市港南区役所 1階ロビー集合
（横浜市営地下鉄ブルーライン 港南中央駅下車すぐ）
売上高偏重と仁義なき競争は資本の本質そのもの
比べるのもナンセンスですが、マルクス・ガブリエルより、カール・マルクスを
十亀弘史
企業の腐敗、すなわち資本主義の腐敗はとめどがありません。最近大きく報道されている例では、損保会社大手による契約者情報の漏洩が4社（損保ジャパン・東京海上日動火災保険・三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損保）で２５０万件というのがあります。漏れていたのは、契約者の氏名や証券番号、住所や電話番号など。個人情報の保護もへったくれもありません。情報漏れの経路は二つ。一つは、代理店に出向した損保社員が、他社の契約者情報を、出向元の損保に持ち出すケース。もう一つは、自動車ディーラーなどを通してのもので、こちらのケースが２５０万件の９割を超えています。
損保の売り上げの半分、すなわち収益の柱は、自動車保険なのだそうです。そのため損保各社は自動車ディーラーを、法を犯しても優遇したりします。ビッグモーターと損保会社による保険金の不正請求や企業向け保険のカルテルなど、記憶に新しいところです。ディーラーは、車を買った人に特定の損保会社１社だけの損保商品を推奨することが多く、損保会社は見返りに一般の代理店より高い手数料をディーラーに支払います。また、自動車事故が起きて車の修理をする場合、ディーラーは自社ではなく中小の工場などで安く整備をすませることが多いのですが、その場合にも損保はディーラー自身が修理したことにして、ディーラーに高い工賃を支払います。すなわち修理費の差額の「中抜き」です。そして、その中抜きが中小の整備工場の工賃を抑え、そこで働く労働者に低賃金を強いています。さらに、「こうした慣行は、突き詰めればすべて保険料に跳ね返って」（８月31日・朝日新聞）、広く自動車を買ったり利用する者全てから収奪するということになります。原発の新増設を進めるための費用を電気料金に上乗せしよう、という決定的な犯罪でも同じですが、資本主義体制では資本の不正のツケはいつでも労働者市民が広く支払わされてしまうのです。
直接命に関わる腐敗で、しかもその経緯がとんでもなく卑劣なのが、博多と釜山を結ぶ高速船クイーンビートル号の浸水事件です。JR九州の子会社、JR九州高速船がクイーンビートルの船首への浸水を隠したまま、何カ月も博多・釜山間の運行を続けていたというのです。経過を追うと、今年２月12日に乗務員が船首部分に２〜３リットルの浸水を確認し、上部に報告します。それに対して、田中渉社長は「本来必要な国土交通省九州運輸局への報告をしないで運行を続けるように指示」（引用はいずれも朝日新聞の記事より）します。「これを受け、乗務員らは浸水を確認しても航海日誌や点検記録に『異常なし』と記載し、５月30日まで運行を続けた。一方で、内部向けに別の管理簿もつくり、実際の浸水量を記録していたという」。運航中に水は７００リットルを超えます。すると、「警報センサーの位置を高さ44センチから１メートルに上げ、浸水しても警報が鳴りにくくした」というのです。田中社長はそれら「記録簿の虚偽記載やセンサーの不正」を熟知していた上で不正を命じ続けていたのです。しかも、さらにすさまじいことに、クイーンビートルは、昨年2月にも浸水があり国交省から改善命令を受けていて、そして、それに対して、高速船会社は「『ゆるぎない安全づくり』を約束し」ていた、というのです。
直ちに、同じ船首の浸水によって沈没し、20名を超える死者と行方不明者を出した、知床観光船の事件を思い出しました。また、過積載やバラスト水不足などによって引き起こされた韓国セウォル号の沈没事件も連想させます。セウォル号事件では多くの高校生を含む２９９人が犠牲とされ、行方不明者は５名とされています。クイーンビートルの浸水隠しも大事故につながる可能性は決して否定できなかったはずです。人命にかかわる危険を十分に知りながら、当面の利潤の確保のために、不正を重ねて行くのが資本というものです。
上記の損保会社による不正について、朝日の記事は、「背景には、トップライン（売上高）に偏重した業界のゆがんだ競争がある」とまとめています。しかし、繰り返しますが、売上高の偏重と仁義なき競争は、損保業界に限ったことではなく、資本の本質そのものです。それを嘆いてか、マルクス・ガブリエルは『倫理資本主義の時代』（ハヤカワ新書）という本を出しています。買っても読んでもいませんが、９月８日の朝日新聞による紹介では、次のように主張しているようです。〈資本主義の全体をまるごと取り換える革命は現実には不可能である。新自由主義はいろいろ問題があるが、企業が倫理的な行いによって利益を出すようにすることは可能だ。具体的には、企業の倫理的側面を強化するために、各企業に倫理部門を置いてはどうか〉
同様の主張は、誰もが、どこかで、何度も何度も目にした、資本主義批判の俗説そのものです。一言で言えば、それこそ全く非現実的な構想に外なりません。資本の構造と本質を捉えようとせず、権力と階級支配の問題、戦争の問題にも、いっさい近づこうとしていません。結局は、労働者を永遠に資本の頸木に縛り付けようとするものでしかありません。比べるのもナンセンスですが、マルクス・ガブリエルより、まずカール・マルクスを！ （９月11日）
軍事問題レポート（その14）
本の紹介 『ハマスの実像』（中の上）
（川上泰徳（かわかみやすのり）・集英社新書）
板垣 宏
ハマスの誕生とその意義
ハマスは「インティファーダ」（１９６７年のイスラエルによるパレスチナ占領が開始された後に、エルサレムで占領に抗議するパレスチナ人のデモを指す言葉として使われ始めた。モスクの集団礼拝や職能クラブ、集会所などで集まり、イスラエル軍や占領警察に対して投石をするイメージである・48�蓮砲魴正，箸掘▲爛好螢狷泳γ弔鯤貘里箸靴瞳訐�されました。
本書では、非政治的だったムスリム同胞団が「ハマス」として闘争に参加するに至ったいきさつとその意義について、次のように詳しく述べています。
「（１９８７年）第１次インティファーダは自然発生的に始まり、指導組織は無く、指導者もいなかったが、次第にＰＬＯ系列〔注 パレスチナ解放機構＝イスラエル支配下にあるパレスチナを解放することを目的にした、諸機構の統合機関であり、国連において唯一のパレスチナ人の代表機関として認められている組織。参加組織は、ファタハ（最大派閥）、パレスチナ解放民主戦線（ＤＦＬＰ）、パレスチナ人民党（ＰＰＰ）、パレスチナ解放戦線（ＰＬＦ）、パレスチナ民主連合、パレスチナ人民闘争戦線（ＰＰＳＦ）、パレスチナ解放人民戦線（ＰＦＬＰ、反主流派最大派閥）、アラブ解放戦線（ＡＬＦ）、サーイカ、パレスチナ・アラブ戦線など。（以上、ウイキペディアより引用）〕世俗的政治組織（注＝世俗主義とは一般に政教分離原則、信教の自由、宗教差別の禁止を含む立場を指す）を中心につくられたインティファーダ統一指導部（ＵＮＬ）が指導し、ハマスとも連携する形になった。インティファーダの社会的広がりは占領下の不服従運動である。…草の根の民衆抵抗運動として始まったことで、もともとモスクを拠点とした貧困救済、宗教教育などの社会活動としてパレスチナ社会に浸透していたムスリム同胞団の参入も可能だったといえよう」（50〜51�蓮�
著者は「それまで解放闘争や反占領闘争に関わらず、非政治的な社会活動をしていたパレスチナのムスリム同胞団が、インティファーダを境に『ハマス』として政治闘争に参加し、…それによってインティファーダが、それまでＰＬＯが担ってきた世俗派のパレスチナ解放闘争だけでなく、より幅広く、より深く民衆に広がる契機になった」（51�蓮砲海箸�重要だと述べています。
「ＰＬＯが１９８２年のイスラエルによるレバノン侵攻により、拠点としていたベイルートから排除されてチュニスに移り、それ以降武装闘争が下火になり、ＰＬＯの指導力が低下する中で、パレスチナ占領地で住民の不満が爆発する形で偶発的な占領反対運動としてインティファーダが起きた。…政治闘争では経験が浅かったこともあり、ハマスがインティファーダを主導したとは言えないが、社会的に広い影響力を持つ同胞団が、インティファーダの発生からすぐに行動を起こしたことは大きな意味があった」（51〜52�蓮�
ムスリム同胞団とパレスチナとの関り
では、ハマス誕生の母体となったムスリム同胞団とはどのような組織なのでしょうか。
「ムスリム同胞団は１９２８年に設立された。エジプトで西洋による支配が広がり、イスラム社会の危機が進んでいることを人々に訴え、イスラムに基づいた社会建設を説き、…モスク建設運動、宣教活動などイスラム復興運動を進めるが、英国からの独立を求める民族主義的な訴えもあった」（53�蓮�
このムスリム同胞団とパレスチナの結び付つきを理解するためにはアラブの歴史を知る必要があります。
「アラブ世界の大部分は16世紀以来、オスマントルコ帝国の支配下にあったが、第１次世界大戦でトルコはドイツと同盟を結んで闘って破れ、パレスチナ地域は１９１８年から英国の占領支配となった。占領が始まる直前の１９１７年11月に、英国外相のバルフォアは『英国政府は、パレスチナにユダヤ人のための民族的郷土を建設することを好意的に受け止め、この目的を容易にするために、あらゆる努力をするだろう』という、有名なバルフォア宣言を出した。１９１７年にはパレスチナ人口70万人の６％に過ぎなかったユダヤ人に『民族的郷土』建設への協力を約束したのだ。英国の占領統治と、１９２３年に国連に承認された委任統治の下で、パレスチナへのユダヤ人移民が増え続け、36年には38万人となり、全人口１３７万弱の23％にまで急激に増加した」（53〜54�蓮法�
この移民の急増に反発したパレスチナ人民が決起したのがアラブの大反乱（パレスチナ独立戦争・１９３６〜39年）です。エジプトのムスリム同胞団はアラブ人の反乱に強い関心を向け、パレスチナ支持を表明して初のデモを行った他、エルサレムやシリア、レバノンに使節を送り「アラブの結束」を訴えました。現在、同胞団系の組織がアラブ世界のほとんどすべての国で組織されているのも、このアラブの反乱への支持が契機になっているのです。
イスラエルの建国と「ナクバ（大破局）」、ガザの誕生
「１９４７年国連総会はパレスチナ分割決議を採択。当時のパレスチナのアラブ人人口１３２万人に対して、ユダヤ人は21％にまで増え、さらにユダヤ人に全パレスチナの56・５％の土地が配分された」「ユダヤ人勢力は国連決議を受けいれたが、アラブ人と当時のアラブ連盟は反発。１９４８年５月14日、アラブ連盟５か国（レバノン、シリア、トランスヨルダン、イラク、エジプト）はイスラエルに対し戦争を宣言（第１次中東戦争）。しかし、「戦争の結果、新生イスラエル軍は準備不足で相互の連絡も取れていないアラブ諸国軍を圧倒し、パレスチナ全土の78％を支配した。残る22％については、ガザをエジプトが統治し、西岸と聖地を含む東エルサレムはトランスヨルダンが統治することになった。イスラエル領内にいた約70万人のアラブ人が故郷を失って難民化した。アラブ人は48年の戦争を『ナクバ（大破局）』と呼んでいる」（56〜57�蓮�
「この流れの中で、ムスリム同胞団はガザなどパレスチナ各地で次々と支部を増やして25支部となり、１９４６年にはエルサレムにパレスチナ同胞団の本部を開いた。第１次中東戦争でエジプトの同胞団はエジプト軍と共にガザを中心に戦い、パレスチナ同胞団はパレスチナ国内で戦った。結果的に、パレスチナ南部では現在のガザだけがエジプトの支配地域となって残り、パレスチナ南部地域のアラブ人がガザに難民として集まった。そのような経緯で住民の７割が難民という現在のガザが出来上がった」（57�蓮�
（中東戦争以後の状況については次回に掲載します）
日帝の高速炉開発弾劾!
~米・日による中国侵略戦争−世界戦争情勢下~
福嶋昌男
高速炉・「もんじゅ」は、１９９５年12月ナトリウム漏れ火災事故を起こし、２０１６年12月廃炉決定しています。しかし、決定２カ月前の10月、政府の経産相、文科相らの5人は高速炉会議を行っているのです。
「もんじゅ」はいまだ全面的に解体されておらず、いわば「温存」状態といえると思います。「もんじゅ」のブランケット(炉心の軸と径・外皮)には、高純度プルトニウム(純度98% Puと略)があります。実験炉・「常陽」には、99・５%のスーパー級Puがあります。
「廃炉決定」の６年後の２０２２年１月、日帝・米帝は高速炉研究・開発で合意しています。米帝が高速炉開発から撤退してきている中で、米帝は日帝の「もんじゅ」の研究・成果を取り入れる目的です。
そして、２０２４年７月１日、日帝は官民の高速炉研究・開発体制を50人で発足させました。米帝・日帝の中国侵略戦争態勢下、日帝は本格的な核武装に向かって踏切りました。米帝は中国との核戦争をにらんでいます。
�機 崗鑞曄廖檗屬發鵑犬紂廚箸�
日帝は原発導入の当初から、核兵器の保有を追求してきています。その中心が「常陽」―「もんじゅ」です。米帝の原爆から生まれたのが原発です。原発・その核燃サイクルとは原爆の保有体制なのです。
原子炉が最初に作られたのはシカゴ大学ですが、その目的は長崎原爆のプルトニウムを作ることでした。再びの原子炉は原子力潜水艦「ノーチラス号」に積まれたのです。
日帝は、最初イギリスのコールダーホール型原子炉を導入（１９５９年）したのですが、直ぐにアメリカ製の軽水炉原発に切り替えています。その音頭をとったのは中曽根康弘をはじめ岸信介、正力松太郎(二人はＡ級戦犯)らです。
原発は最初から、Ａ級戦犯によって導入され中曽根らに引き継がれています。「高速増殖炉等の面で、すぐ核武装できるポジションを持ちながら平和利用を進めていく」(外務省第４８０回外交政策企画委員会１９６８年11月20日 『共産主義者』No２１８号 ２０２３年12月 河東耕二論文89��)。
日帝の「常陽」―「もんじゅ」高速炉開発が軍事目的である特徴は「もんじゅ」臨界（１９９４年４月）の後の１９９５年１月に「リサイクル機器試験施設」（ＲＥＴＦ）建設が着工されたことです。
【ＲＥＴＦ : 「常陽」―「もんじゅ」の高純度プルトニウム（Pu）の抽出施設】
この着工にあたり、「ＲＥＴＦの建設が米核兵器開発の研究所からの全面的な支援のもとになされていたことを明らかにした」(『アメリカの核支配と日本の核武装』吉田義久著 編集工房朔 ２００７年３月刊 ２４９��)。
「明らかにした」のは環境保護団体『グリーンピース・レポート』です。そして、今日、米帝・日帝が中国侵略戦争態勢に突入し、米帝・NATO・日帝の第3次世界大戦の緒戦ともいうべき、ウクライナ戦争―中東戦争が火を噴いています。その最中の今日、日帝・米帝は高速炉開発に突入しているのです。
�供々眤�炉の「重要性」
日帝・米帝の高速炉開発は、建前上、電気出力の実証炉を目指すとしていますが、スーパー級高純度Puの確保にあることは明らかです。
茨城県の東海村に１９７０年高速炉の実験炉「常陽」(熱出力７・５万�船錺奪�)が設置されます。この研究・開発の下に福井県・若狭湾の白木海岸に原型炉「もんじゅ」が１９８５年に建設されます(電気出力28万�船錺奪函’�出力84万�船錺奪�)。
スーパー級の高純度Puは高速炉によってできます。兵器級のPuの臨界量は約11kgで、直径にして約10.２cmです。その上に、中性子の反射板、爆縮技術等から弾頭の臨界量は約８kgになるようです。
弾頭は、戦略ミサイルＩＣＢＭ、ＳＬＢＭ等の多弾頭（ＭＩＲＶ）として搭載されています。そして、それら戦略ミサイルの命中精度・半数必中界（ＣＥＰ）は、また準備度、信頼度は、次のとおりと推定します。つまり、戦略核兵器の弾頭は敵国の地下サイロを破壊する精度と思います。
日帝は、直接に核兵器を持っていませんが、動力炉・核燃料開発事業団（１９６７年10月）が発足してからずっと、核弾頭の保有体制を追求してきています。太陽系の小惑星から岩を持ち帰ってきた技術は、再突入弾頭の命中精度を決めるものです。
結語
米帝をはじめ核保有国は、核兵器を保有することでその合理化を核抑止力と平然と言います。核兵器を持っていることで全面戦争を「防げる」などと言います。
資本主義・帝国主義主導の現代世界で、ロシア、中国の核保有は本質的に軍事的対抗です。
米、英、仏、露等は高速炉から撤退していました。しかし、米帝は日帝の”もんじゅ”研究・開発のデータをもとに、高速炉開発に踏み切りました。
スーパー級高純度Puの確保とミサイル技術の確保はその準備度、信頼度、命中精度等を考慮して、核弾頭使用の敷居をますます低くし、核戦争を引き寄せています。
・日帝の核武装を阻止！
・ウクライナ戦争反対、中東戦争を阻止！
・米日による中国侵略戦争阻止！
・世界戦争・核戦争阻止！
全国どこでも�狎簑佝神鎰瓩寮爾鮠紊欧茲Α�
そして11・３へ！
「８・６ヒロシマに続け！ これが合言葉だ」と勝利の高揚感を引き継ぎ、市民との交歓もかちとりデモ（9月1日 練馬）
改憲・戦争阻止！大行進板橋 大石勢津子
東京都知事・小池百合子は、9月1日「首都防衛」を叫び、自衛隊が参加する「防災訓練」＝戦争訓練実施を計画しました。台風で中止となりましたが、この動きに対して、８・６ヒロシマの勝利を引き継ぐ今秋第一弾の反戦デモが、練馬と錦糸町でかちとられました。
関東大震災101年目の今年、8月30日〜9月1日、東京都・板橋区合同防災訓練が行われることが発表されました。しかしながら台風10号が停滞したことにより、訓練前日に東京都は訓練を中止しました。
たとえ小池都知事が訓練を中止したとしても、関東大震災による朝鮮人・中国人犠牲者への追悼を拒否し、「『備えよ、常に』の精神を」と首都からの戦争体制作りを煽ることを絶対に許せない私達は、断固として予定通り集会とデモを貫徹しました。
主催者からの基調報告、朝方の両国〜横網公園での朝鮮人犠牲者追悼式典参加報告、大行進埼玉、大行進板橋、全学連が発言。約１５０名が右翼の妨害をものともせずにデモ行進。練馬駐屯地の向いには川越街道を挟んで自衛隊官舎があり、「自衛官は侵略の銃を取るな」のシュプレヒコールが官舎に響き渡りました。
デモ隊は８・６ヒロシマの闘いをこの地においても表現すべく、デモを貫徹後、駐屯地正門に戻り、申し入れ書の読み上げを行い、自衛官に手渡しました。
重要なことは、帝国主義の利害かけて戦争体制構築に突き進む政権に対して、全国どこでも“絶対反戦”の声を挙げること、そして住民の目に触れ、耳に届く闘いを重ねていくこと、その積み上げの上に11・３集会の成功があるということです。願わくばこの闘いの主体を若い世代に引き継ぐことを！
関東大震災から101年目の９・１
―錦糸町反戦デモ
錦糸町駅そばの錦糸公園から、主要な虐殺現場となった亀戸に向けて、解放的なデモを貫徹（９月１日 江東区）
改憲・戦争阻止！大行進東京東部 小泉義秀
関東大震災時に虐殺された朝鮮人の追悼式典が行われる墨田区都立横網公園の最寄り駅にあたる両国駅前で９月１日、９時30分〜11時まで街宣を行い、13時から「９・１練馬駐屯地デモ」に参加し、17時から錦糸町駅前でリレートーク。18時から錦糸公園から亀戸に向かってデモを行った。リレートーク中に雷雨が豪雨に！ しかし、デモの途中で雨も上がった。蔵前橋通り、亀戸周辺に５千枚ほどのビラを撒いたことと、昨年に続き２回目の９・１デモであったこともあり、デモの様子を見るために路上で待っていた人、マンションの中から手を振る人など注目度は高かった。
今年の９・１は練馬駐屯地の自衛隊が参加して行われる予定だった「都・板橋区総合防災訓練」反対闘争と、錦糸町―亀戸を貫くデモを一体で闘うことを、北部―東部だけでなく、東京の仲間全体で確認して行われた。練馬には東京の仲間が協力して1万枚のビラが撒かれた。台風10号を理由に「訓練」は中止になったが、防災訓練に名を借りた戦争と治安出動の実践訓練として行われようとしていた。小池都知事は「首都防衛」を掲げ、岸田政権と足並みをそろえて差別・排外主義をあおり、首都から中国侵略戦争の動員体制をつくろうとしていたのだ。ヘイト団体の『日本女性の会 そよ風』も台風を理由に集会を中止したとの報があったが、数名は式典の妨害のために現われ「６０００人虐殺は嘘だ。嘘の慰霊碑をわれわれは必ず破壊する」と述べていたという。許しがたい。こういうやからとの激しい闘いはこれからだ。
８・１５に「反戦」を決意する
戦後79年目の８月15日、「８・15労働者市民のつどい」（同実行委員会主催）が東京杉並のセシオン杉並で開催され、３００人を超える人々が集まった。８・６ヒロシマでの胸のすくような歴史的勝利をかちとった高揚感にあふれた発言が次々になされた。改憲・戦争阻止！大行進呼びかけ人で弁護士の高山俊吉さんが集会名称でもある「８・１５に『反戦』を決意する」と題して講演を行われた。抜粋して紹介する。（文責 事務局）
改憲・戦争阻止！大行進呼びかけ人・弁護士 高山俊吉
ヒロシマ反戦反核、そして反戦争式典、暴処法決戦の決定的勝利を確認しよう。松井広島市長と一体となって広島に戦争勢力を引き込んだあの岸田が私たちの力によって昨日打ち倒された。打倒したのは、叩きのめしたのはまさしく私たち。岸田は８・６から昨日までの間にもう消え去るしかないと思い知った。去年５月に「広島ビジョン」なるものを打ち出したのはほかでもない岸田だ。それが今年の８・６のイスラエル招待の源になった。私たちはその岸田の野望を絶対に許さない闘いを展開し、その結果が昨日の岸田の姿になったのだ。
情勢は大きく動いている。激変の中核にあるのは対中国侵略戦争の決定的現実化。そしてその基礎にあるのは米日の経済破綻と政治破綻の決定的深化。その事態が私たちの喫緊の行動を決める大前提になっている。
私たちは戦争をどのように考えるかを問われている。真の反戦とは何か、３つのことを言いたい。ひとつは、反戦を思うというのは何を思うことなのかをはっきりさせること。無残にも戦争で命を落とした人を思い起こし、悲惨な体験を二度と繰り返さないと誓うことか。メディアは多くそのような姿勢に立つ。しかし私は違うと思う。戦争を自動詞や受動態で話してはいけない。戦争は起きるものではなく起こすものであり、だから起きないようにしようではなく起こさせてはならないと言うべきことになる。９条改憲論の中に戦争を災害と並べる手法が登場して久しい。しかし欺されてはいけない。台風が日本に近づいても台風反対とは誰も言わない。戦争は起こしたい、仕掛けたいと欲求する勢力が強い意思を持って起こすものなのだ。
「戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼かれつつデモに加わる」
朝日歌壇賞に選ばれた十亀弘史さんの歌。デモに参加する、行動する、決起する、その対象としての戦争、この理解が第一。
もうひとつはいかなる戦争に反対するのかを明確にしなければいけないということ。反対すべきは侵略戦争、わけても自国の侵略戦争だ。すべての労働者、労働組合、社会主義者に反戦決起を呼びかけた１９１２年のバーゼル反戦宣言を思い起こそう。この宣言は戦争に突き進もうとするヨーロッパ各国の支配者に対するそれこそ宣戦布告。私たちは今こそこの宣言に学ぶことが求められている。
『日本好戦詩集』（古山高麗雄）という本がある。戦争に翼賛した多くの人たちが、戦後ひらりと反戦論者に姿を変えた。この本はその潮流に対する強烈な皮肉をたたきつけたものだ。私も実はかねてから戦争反対論者だったという怪しげな反戦論が今あらためて広がっている。本物とまがい物の違いを明らかにすることが今ほど求められるときはない。それは決して自身の立ち位置を狭めることを意味しない。矛盾の根源を正しく指摘することこそが闘いを本当に広げる。
三番目。それは反戦は権力打倒と切り離せないということ。権力の打倒を抜きにした反戦はあいまい反戦論に直結する。正論が大切。
「なんとはなし平和論」は私が創った言葉だが、これでは戦争は止められないどころか、簡単に戦争翼賛に堕してしまう。私たちはこのような反戦論に与しなかったから私たちの確信が多くの人たちの共感につながり、８・６で勝てたのだ！
「８・１５集会」で講演する高山さん（8月15日 東京杉並）
11月３日。労働者総決起集会そして改憲阻止！１万人大行進、私たちはこれから間もないと言ってよい時期にその闘いに勝利しようとしている。そのことを確信できるのは８・６勝利による。岸田を打倒したことによってその確信はさらに深まった。森川文人さんは、私の17年前の話（パンフ）をあらためて読んで「ワクワクしますね」と言ってくれた。本当にそう思う。私の話がワクワクさせるのではもちろんない。１９４５年８月15日の敗戦はアジアの民衆からすれば勝利の日。この直後に戦後革命と言える闘いが、私たちの父母たちあるいは祖父祖母たちによって闘われたということ、考えられないような短い期間に私たちの先輩たちはあの決起をやり遂げたということだ。
今日はその８月15日。11月３日はすぐ来るように思われるけれど、しかしその短い期間に戦後革命と称すべき歴史的な闘いを私たちの親たちはやった。やりおおせた。それは深いワクワク感です。ようし、やってやろう！ともに肩を組み、腕を組んで11月まで頑張りぬこうじゃないか！
編集後記
アメリカでは、秋の大統領選挙に向け、民主党候補ハリスと共和党候補のトランプが、中国侵略戦争に向けて、どちらが�犇�い指揮官�瓩覆里�を競い合っている。日本もまったく同じ構図で自民党総裁選が繰り広げられている。政治支配の危機にあえぐすべての総裁候補が、中国侵略戦争遂行と改憲を競い合っている。
しかし、アメリカの真の階級関係は民主党大会に「イスラエル支援をやめろ！」と叫んで押し寄せた万余の実力デモにこそはっきりと示されている。かたや、日本では、岸田を最後的に引きずりおろした、８・６広島決戦の歴史的勝利にこそ、日本の階級関係の真実がある。
この真実を力あるものとして世界に指し示そう。それは、１１・３日比谷６千を実現することだ！「８・６に続こう」が合言葉だ！（SI）
