須賀手紙（2024.9.30発信 内藤宛 速達 2日着）
心臓に関し専門医による診察と、
慢性心不全について薬物治療を！
横浜刑務所在監 須賀武敏
この間の事実経過（事務局）
須賀さんは、腰部変性すべり症（脊柱管狭窄症との合併）という重度疾患に加えて、心臓疾患もかかえています。
６月19日に、外科医の診察があり、須賀さんは「胸痛」が激しいことを訴えて、しっかりした血液検査を要求したところ、その場で須賀さんの表現では「これまでの最大最高の採血」が行われたということです。
その血液検査の結果、心臓関係の数値が異常値を示したのです。「ＮＴ−ＰｒｏＢＮＰ値３３９」という数値で、獄外の循環器専門医から「慢性心不全ステージ�靴竜燭い△蝓廚箸了愿Δ發覆気譴討い泙靴拭�その結果、9月13日になって、心エコー検査が行われました。その結果、「心臓弁膜症により、僧帽弁に不具合が生じ、弁が閉じられない状況になり、そのため左心房に血液が逆流して、その左心房に対する負荷が通常より高くなり、ＮＴ−ＰｒｏＢＮＰ値が高くなったと思います。しかし、血液の逆流量は大したことはないので、初期症状だと思います」との診断がなされました。
（上記獄外の循環器専門医によれば、「僧帽弁逆流が軽度であるからといって、治療の必要がない軽度の慢性心不全であるとは言えません」とおっしゃっています。また、下記須賀手紙も読んだうえで、慢性心不全にかかわる薬物治療と専門医による診察を要望しておられます）
内藤さん
君からの9/23付発信の手紙が、9月26日（木）に交付されました。医務当局は異例にも矯正指導日の9月27日（金）に再び指導部クラスの常駐医（内科医）の診察を急遽入れてきました。
この診察の目的は、9/25の北川弁護人との面会時に見せられたＨ先生からの回答書の内容を読んで、直感的に予想していた通り、当局は君からの手紙内容を検閲し、危機感を抱き、心臓弁膜症にかかわる専門医の診察を拒否すること、心不全の薬物治療が必要でないことを正当化する医療拒否、医療放棄の方針を私に飲ませようとしてきたのです。横浜刑務所の医務当局の姿勢・医療方針は、徳島刑務所で星野同志を目的意識的に死に追いやる姿勢・医療方針と寸分たがわないのです。
この間、弁護人面会で、何度も訴えてきたように、かの菊田幸一明大名誉教授が「無期懲役の受刑者が毎年50名近く死亡する事実」を突き止め、朝日新聞の「耕論」で公表した内容を深く考える必要があるのです。
私は入舎以来、この6年間、獄中での「赤ひげ先生」となって、重度な疾患にかかり、苦闘する受刑者の聞き取り調査をやり抜いてきました。そして星野同志がなぜ徳島刑務所当局・法務省によって殺されることになったのかの全貌の一端を、心底から把握しぬいて来、実体験したと自負しています。
しかし、政府・権力者が獄中医療体制を戦時医療への大転換を図ろうとしたとき、従来の医療体制が抜本的に行き詰まり、崩壊寸前まで追い込まれてしまっていたのです。その象徴が名古屋刑務所による看守の集団暴行・傷害・殺人事件が再発したことです。獄中医療現場では、それ以上の事件が重度の疾患受刑者に対する医療放棄・誤診・医療虐待などによって、尊い命が奪われてきたのです。菊田さんの「耕論」は、その一端を鋭く暴く渾身の訴えだと思っています。
そして、横浜刑務所の受刑者の１／3以上の者が『救援』の読者になっていることをよくよく考えてほしい。こうした状況が全刑務所に波及しかねない情勢に当局は心底恐れているのです。この診察で、内科医は私の心不全のステージを�兇任△蝓◆峽于甦兒，任茲ぁ廚箸糧獣任鮗┐靴討�たのですが、私のほうは当局の意図を挫折させるために、専門医の診察（横浜栄共済病院の循環器内科の心臓病にかかわる専門医の診察）の必要性と慢性心不全の薬物治療の必要性について、その医療上の理由を詳細に説明しました。「心不全」のレベルの判断の重要な指標である、「息切れ」の症状について、とりわけ、今年の4月以降、起床時、車いすでの行進時、非常にしんどくなっていること、さらに現在では安静時にも息切れがしんどくなっている。また、夕食前後の極度の疲労感、虚脱感もある。さらには、別の指標である体重の増大に関し、ここ3年間は体重が減り続けていたにもかかわらず、4月以降は逆に増大しています。食事の量は半分近くまで減っているにもかかわらずです、などと説明したのです。その結果、最後には常駐医も、私の要請理由をカルテに記載するといって、診察を終了せざるを得なかったのです。
この点を決定的に重視するようお願いします。そのうえで、「かちとる会」も弁護団も、布施先生も、上記2点の私の要請を、早期に実施するよう当局との交渉、折衝、申し入れ行動を強力に、粘り強く進めるようにお願いします。
須賀さんへの医療放棄を追及、
「直ちに専門医の診察を！」
事務局 内藤 雄二
９月27日、警報級大雨予想にもかかわらず、17名の結集で通算18回目となる横浜刑務所への申し入れ行動を行いました。この日の行動は、９・22横須賀基地への反戦闘争の歴史的な勝利を引き継ぎ、11・３全国労働者集会６千名結集へ向けての闘いと一体の闘いとして意気軒高勝ち取られました。
申し入れ行動の冒頭は正面玄関を確保するための攻防が当局との間で展開されるのが通常なのですが、大雨予報の関係で、今回は屋根付き駐車場の方に回るのも仕方ないかと考えていたのですが、予報に反してほとんど雨は降らず、いつものように正面玄関に陣取って申し入れ行動をやりぬきました。
予想に反することといえば、遠目にはこの間私たちに対応してきた庶務課長補佐の女性だと思っていた当局の責任者が近くでよく見ると、女性ですが違う人物だったことです。しかも課長だというのです。初対面の上に、課長となると、これまでは名刺交換に応じた者もおり、そこまでいかなくても名前は名乗っていたので、名刺は？名前は？と働きかけたのですが、「名乗るほどのものではありません」とそっけなく断ってきました。なぜ、今回は課長が登場したのか、と疑問に思い、「いつもの課長補佐さんは、どうしたのですか」と問うたところ、「今日は補佐が不在なので、私が対応させてもらっています」とのことでした。
それはさておき、まず板垣さんが「申入書」を読み上げ、十亀さんが口火を切りました。「『申入書』で、いつも冒頭訴えていますが、須賀さんは無実の政治犯です。にもかかわらず、獄に囚われていることが断じて許せません。しかも、獄中に囚われていることで著しく健康を害しています。袴田巌さんの再審無罪判決が出ました。判決で裁判所は権力犯罪を自認しています。須賀さんも同じです。ただちに専門医による検査と治療を行うべきです。こんなことは普通の要求でしょう、どう考えますか」と課長に迫りました。そこから次々と当局への弾劾と要求が続きました。「作業に支障が出るほど激痛が激しくなっている。須賀さんはせめて、舎房に戻ったら自分の判断で、安静横臥させてほしいと言っているんだ。しかも、医者はそれを認めているのに、当局が認めないというのはどういうことだ。人の健康と命を何だと思っているんだ」「社会的には、セカンドオピニオンは当たり前の要求になっている。サードオピニオンだって、行われている時代だ。須賀さんの専門医による検査・診察・治療の要求なんて、当たり前ではないか」「日本の獄中処遇は本当に遅れている。70歳以上の高齢者は、そもそも収監されないという国さえあるというではないか。しかも、須賀さんなど重大疾患を抱えている人を獄に閉じ込め、懲役労働を強制するなんて許せない。直ちに解放するべきだ」などと追及しました。
「以前対応した課長補佐を名乗る刑務官は『自分たちの使命は受刑者さんが健康で元気に満期を迎えられるようにすること』だときっぱりと表明されているが、あなたは自分の使命をどう考えていますか」と問いただすと、一言「同じです」と答えてきました。「そうだとするなら、須賀さんが自分の足でこの門をくぐって下獄して行ったのに、今は車いすを使わざるを得なくなっている。これは刑務所の責任ではないのか。処遇の現場で使命をもってやっているのなら、この現実をどう考えるのか？」と追及しましたが、「お答えは控えさせていただきます」と開き直ってしまいました。
中国侵略戦争・戦時下の獄中者への処遇は、極めて過酷なものとなっています。
須賀さんは９月初め、「お尻全体にズキンズキンと強い痛みが生じて、工場作業にも支障をきたすほどになった」と医務当局に訴えたところ、急遽９月９日に整形外科医による診察が行われましたが、その診断結果は、「筋弛緩剤を増量して様子を見る」というものでした。筋弛緩剤によって、筋肉の力を制限し、弱めれば、須賀さんの腰椎すべり症・脊柱管狭窄症はより一層悪化し重症化せざるを得ません。
これに対し、須賀さんの下獄以前からの主治医である杉井吉彦整形外科医は、「信じがたい！これが整形外科医のすることかと愕然とせざるを得ない」と激しく弾劾され、横浜刑務所長と法務省矯正局に対し直ちに「要望書」を提出、「直ちに専門医に見せるべき」と強く要求されました。
さらに、９月13日に行われた心エコー検査により、須賀さんには新たに「僧房弁閉鎖心不全症によって血液が左心房に逆流している」ことが判明しました。須賀さんは腰椎すべり症・脊柱管狭窄症に加え、狭心症を含む心臓疾患、腎臓疾患、逆流性食道炎など複数の疾患を抱えており、その苦痛は単独疾患の場合に比べて２倍化、３倍化していることは明白です。もはや、須賀さんに対する刑務作業の強制や激痛時の任意の横臥許可拒否等は拷問・虐待に等しいといえます。
須賀さんの命と健康を守る闘いは待ったなし、ぎりぎりの段階に来ています。反戦闘争の大爆発と一体で、須賀さんへの獄中医療を保障する闘いを必死でやりぬきましょう。
戦時下獄中処遇を許すな！
横浜刑務所申し入れ行動 ふるってご参加ください
11月29日（金） 午後１時30分 横浜市港南区役所１階ロビー集合
畝本直美検事総長の談話に爆発的な怒りを
感じました
十亀弘史
10月9日に、静岡地検が上訴権を放棄し、袴田巌さんの無罪が確定しました。巌さんとひで子さん、支援者たちの58年に及ぶ闘いが、ついに完璧に勝利しました。
NHKのEテレで放送された「巌とひで子」を見ました。９月26日の無罪判決に至るまでの、二人の長い闘いと最近の日常生活を追ったドキュメントです。ひで子さんは、無罪判決の後「一時間涙がとまらなかった」と言っています。いつ果てるともしれない、本当に厳しい闘いを勝ち抜いての、なんという貴重な涙かと、胸を締め付けられました。
けれどもひで子さんは、番組の中では、何度も朗らかに笑い声を上げています。私は一度、袴田さん支援集会で登壇したひで子さんの話を聞いたことがあります。その時も、ひで子さんの明るさに圧倒される思いがしました。集会でもテレビでも、ひで子さんは「権力と闘うには、何年かかろうとあきらめずに闘い抜くことだ」と断言されています。巌さんの正しさと、その最後の勝利を確信して、どんな苦闘も引き受けようという覚悟の深さが、人を引き付けてやまないひで子さんの明るさの真ん中にあるのだと思います。
袴田さんへのでっち上げは、未遂に終わった権力による殺人事件です。実行犯は警察と検察、最も罪深い主犯は裁判所です。そして、マスメディアもまたその共犯をなしています。
無実を知りながら袴田さんを死刑台に送ろうとした、警察・検察による証拠の捏造は、決して許されてはなりません。五点の衣類に血を沁み込ませ、その端切れを実家のタンスから「発見」させた「捜査・捜索」は、狭山事件での万年筆の細工とその発見と同じ手口です。肉体的・精神的苦痛を与えての供述調書の捏造は、星野文昭さん、大坂正明さんをでっち上げるために、少年たちから供述調書をとったやりくちと同じです。それらは権力の卑劣さと暴力性の極致をなしています。だからこそ私は、控訴を断念した際の畝本直美検事総長の談話に爆発的な怒りを感じました。<証拠の捏造というのなら具体的な証拠や根拠を示せ>とは、なんという言い草でしょう。まず自分で当時の捜査や取り調べの事実を客観的に調べてみろよ。警察・検察が証拠を捏造した事例は他にも山ほどあり、それらの経緯も十分に明らかにされてるじゃないか。畝本談話は、これからも何度でもでっち上げをやってやる、という決意表明だとしか読むことができません。
そして、裁判所による、長期にわたる言語道断の権力犯罪があります。袴田さんの無実は、予断のない目で見れば、最初から明白に察知できたはずです。５点の衣類と検察官の証拠主張の突然の変更に限らず、あまりに不自然なことが多すぎます。個々の裁判官については、例えば熊本典道判事のように無罪心証を口にしたり、心中にもったりした判事もいたはずです。しかし、それらの意見は潰され続けました。そして、そこにこそ裁判所の本質（階級的な本質）がはっきりと表現されています。裁判所は、「中立」や「独立」や「三権の分立」を装い、自らも口にしますが、本質は、資本家階級の支配機構の一部でしかありません。しかも、裁判所の判断はそのまま監獄や死刑台に直結します。すなわち、階級支配における暴力の命令者そのものです。そのような裁判所が正しい判断をするとすれば、それは、弾圧を受けたり、冤罪を強いられたり人たちが必死に闘い抜いた成果としてかちとられるものに外なりません。
大坂さんへの「有罪」判決は裁判所のそのような暴力性をむき出しにしています。まさに「警察官と検察官の連携により、肉体的・精神的苦痛を与え」（袴田さん無罪判決）るという強制により捏造された少年たちの供述調書を、そのまま「証拠」だとし、その供述内容に反する法廷証言の全てを無視しました。それは、裁判の自己否定ともいうべき暴挙です。こんなことが許されれば、警察・検察が被疑者の周囲の者に圧力を加えて有罪方向の供述を引き出しさえすれば、裁判など無用で直ちに監獄にぶち込まれてしまいます。大坂さんへの有罪判決を必ず打ち砕かなければなりません。
紙幅がありませんが、マスコミについて一言だけ。無罪判決の日に毎日・東京などが袴田事件報道について謝罪文を出しました。朝日は遅れて無罪確定の日に謝罪文を載せています。検察官の最終判断を待ってから、という朝日の姿勢に、朝日らしい権威主義や主体性の放棄を感じます。ただ元々どんな事件であろうと、警察情報の垂れ流しが許されないのは言うまでもありません。したがって、袴田さんについても無罪が確かになるのを待つまでもなく、各紙はとうの昔に謝罪すべきだったのです。メディアも袴田さんへの殺人未遂の共犯であり、自己断罪は決定的に不足しています。
でっち上げ弾圧や冤罪などを含む全ての権力犯罪は、支配階級の弾圧意思の実現として、形態はどうであれ、根っこが常につながっています。そうであれば、それらと闘う側はもっと強く、もっと広くつながらなければなりません。11・３労働者総決起集会に向け文字通り総決起しましょう！
（10月11日）
十亀弘史さん「朝日歌壇掲載」短歌
探湯に晒されている手のように世界がガザに試されている
（１０月１３日付朝日新聞）
注
「探湯は、熱湯に手を入れて罪があるかどうかを判定する古代の呪式」
（選者の永田和宏氏による評より）
軍事問題レポート（その15）
本の紹介 『ハマスの実像』（中の中）
（川上泰徳（かわかみやすのり）・集英社新書）
板垣 宏
第1次中東戦後のパレスチナの情勢
「第１次中東戦争の後、パレスチナの同胞団はヨルダンの統治下となった東エルサレム・西岸と、エジプト統治下のガザとで分裂することになった。エジプトでは、１９５２年にナセルが率いる自由将校団が王政を倒す革命を起こした。最初の２年間は革命政権と同胞団の関係は良好で、この時にエジプトの同胞団からガザへの支援があり、組織は拡大した。しかし、54年にエジプトでナセル暗殺未遂事件が起こると、ナセル政権は同胞団による犯行として、一転して同胞団を非合法化し、大弾圧に乗り出した。ガザでの同胞団組織も禁止された」（58�蓮法�
「ファタハ」の結成
パレスチナ解放組織「ファタハ」は65年にヤセル・アラファトらが結成しました。著者は同胞団と「ファタハ」の関係について次のように述べています。
「アラファトとともにファタハを始めたガザ出身の元同胞団メンバーたちは、いずれも難民出身で、ガザからカイロなどエジプトの大学に進んだ若者という共通点があった。彼らは『ジハード』として反イスラエル闘争に燃えていたが、エジプト支配化となったガザでナセル体制に徹底的な弾圧を受けて抑え込まれた。そのため、パレスチナ解放のためにナセルが唱えたアラブ民族主義の外見をとって民族主義の『ファタハ』が生まれ、さらにガザの同胞団メンバーを糾合していった。つまり、アラファトが率いて１９６５年から武装闘争を始め、ＰＬＯの主流派となったファタハも、パレスチナのムスリム同胞団から出たという意味ではハマスと同根ということになる」（61�蓮法�
「大きな転機」 イスラエルのシナイ半島・ガザの占領
パレスチナに起きた大きな転機は67年の第３次中東戦争でイスラエルがエジプト、シリア、ヨルダンに圧勝し、シナイ半島とともにガザを占領し、西岸と東エルサレムを占領したことにあります。
ハマスの創始者ヤシーンはこの時期について次のように語っています。「当時の若者たちは、今（の武装闘争）と違って昼間から公然と銃を手にして町の中を動いていた。イスラエル軍は住民の間に協力者（スパイ）をつくって、情報を収集して、夜の間に（活動家の）家に行って、彼らを殺害したり、拘束したりして、抵抗運動を抑えにかかった。（ガザでの）抵抗運動は１９７２年から73年にはほぼ抑え込まれたしまった。同胞団は（武装闘争には）参加しなかった。力が足りなかったし、武器を買う資金もなかった。闘争の重荷を担う組織もなかった。私たちは、私たちの活動をゼロから始めた。モスクで説教をし、コーランを読み、教育から始めた。その活動の中から、２人、３人、５人とウスラ（家族）を作っていった。その頃の抵抗運動はファタハやＰＦＬＰが担っていたが、私たちは占領反対の戦いを始めるための準備を続けてきた」（63〜64�蓮法�
「同胞団はモスクを拠点として草の根的なイスラム社会運動を展開していった。１９６７年にイスラエル占領当局の許可を得て、ガザ市に『イスラム協会』（アル・ジャミーヤ・アル・イスラムヤ）を設立し、モスクに併設して、スポーツ、レクリエーション旅行、ボーイスカウト活動、宗教や社会問題についての公開講義などを行った。占領当局は、協会の活動は宗教活動の一環として認めた」（64〜65�蓮法�
武装闘争に踏み切った２つの要因
パレスチナの同胞団が82年に武装闘争を始めることを決定した背景には２つの要因があったと著者は述べています。
〈第１の要因は、１９７９年に起きたイラン・イスラム革命の影響でアラブ世界にジハード組織が広がった。ガザの同胞団のメンバーが80年にエジプトで『パレスチナ・イスラム聖戦』を発足、しかし、81年10月にサダト大統領暗殺事件の後、エジプトを追放されてガザに戻り、イスラム聖戦の活動を始めた。最初はガザでイスラエル占領軍やユダヤ人入植地を批判する冊子やビラを撒くなどの政治活動だったが、84年に占領軍の車両に手榴弾を投げたのが最初の軍事行動とされる。
第２の要因は、１９７９年にエジプトとイスラエルの間で平和条約がむすばれ、これが、ガザの現実に大きく影響した。エジプトが平和条約を結んだのは右派政党リクルードが率いるペギン政権の時だが、それまでの中道左派の労働党政権下では占領地への入植地建設は限定的で、ガザ周辺にも５か所しかなかったが、シオニズム強硬派のリクードは83年までに入植地をさらに17か所増やした〉（67〜70�呂陵很鵝法�
「入植地はパレスチナ人の土地を強制的に接収して建設するもので、それ自体が住民の反感を買うが、入植地が建設されると、入植地と入植者、入植地をつなぐ道路をイスラエル軍が守ることになり、パレスチナ人は通行を妨げられたり、検問で強圧的な対応をされたりする。そのため、住民との衝突が頻繁に起こることになる。その上、１９８１年に強硬派のアリエル・シャロンが国防相となり、厳しい占領政策をとったことで、ガザの住民の反発は強まった。一貫して非政治的で、イスラエル占領政策の下で従順だったパレスチナのムスリム同胞団が82年に武装闘争に入ることに決めた背景には、そのような状況の変化があった」（70�蓮�
１９８３年の秘密会議
「組織全体が社会宗教組織だったパレスチナの同胞団の中に反占領闘争を担う政治部門が創設され、ヤシーンがその責任者に任命された。しかし、すぐに武装闘争ができるわけではない。軍事部門を作り、武器を調達し、戦闘員を集めて軍事訓練を行わなければならない。それもイスラエル軍の占領下で秘密裏に進める必要がある」（71�蓮法�
〈このために83年にヨルダンの首都アンマンで、西岸とガザの同胞団メンバーと在外メンバーによる秘密会議が開かれました。この会議には在外メンバーとしてヨルダン、クエート、サウジアラビア、その他の湾岸諸国、ヨーロッパ、米国から出席し、イスラエルの占領に対するジハードを遂行するためにパレスチナ同胞団の闘いを財政支援するという全会一致の決定がなされた。この会議は「ハマス結成の礎石を置いた節目」となった出来事とされています。ヤシーンは自ら指揮を執って武器調達を計りますが、軍に拘束され、軍事法廷で「イスラエル国家転覆」罪に問われ、84年に禁錮13年の判決を受けるも、85年にパレスチナ武装組織とイスラエル軍の捕虜交換により釈放された。86年にヤシーンは再び政治・軍事の責任者として活動しはじめ87年11月17日に武装闘争を開始することを機関決定した。その時に２つの軍事部隊ができた。インテファーダが始まる３週間前である〉（以上、71〜74�呂陵很鵝�
つづく
『核燃料サイクルという迷宮』を読んで
山本義隆 みすず書房 ２０２４年５月刊
2024年10月13日 福嶋昌男
『核燃料サイクルという迷宮』(本書という)は、今年の６月、板垣宏氏によって紹介され、９月末に読んだものです。
山本氏の本書への視点は、副題にあるように、日本の�牾縫淵轡腑淵螢坤爿瓠蹴砲旅餡伴腟舛涼導�です。日本は核のゴミをそのままにして当初から突っ走ってきたのです。それは、日本の核武装のためです。
本書の目次は、
序章 本書の概略と問題の提起
第一章 近代日本の科学技術と軍事
第二章 戦後日本の原子力開発
第三章 停滞期そして事故の後
第四章 核燃料サイクルをめぐって
終章 核のゴミ、そして日本の核武装
あとがきにかえて
の構成になっています。
�� 核発電の根本問題
本書は序章で、�牾鉾�電の根本問題�瓩鯆鶺�し、「核燃料サイクル（事業）」は�牾砲離乾澆魏魴茲任�ない�瓩弔泙蝓◆屮汽ぅ�ル」できないのに、原発を推進しているのは、それは「核ナショナリズム」であると提起し、弾劾しています。
核のゴミの後処理は、青森県の六ケ所再処理工場に持ち込まれていますが、１９９３年４月に着工されて以来、今日まで稼働できていません。
日本は本書は、原発の推進とともに、国は高速増殖炉と銘打って実験炉「常陽」―原型炉「もんじゅ」と推進してきました。しかし、「もんじゅ」はナトリウム漏れの火災事故（１９９５年12月）を起こし、それ以来、廃炉決定に追い込まれました。そして、「核燃料サイクル」に追い打ちをかけたのが２０１１年３月の福島原発の爆発です。
�� 核ナショナリズムとは
本書は、日本の核武装・�牾縫淵轡腑淵螢坤爿瓩髻⊂綉�の五つの章で展開し、弾劾しています。�牾縫淵轡腑淵螢坤爿瓩箸蓮�一言でいえば潜在的軍事力としての核技術があってこそ、日本は「一流国」として立つことができるという思想といってよいと思います。
戦前の日本の�牴奮惶蚕僂鳩鎧��瓩叛鏝紂什Ｆ�の�牴奮惶蚕僂鳩鎧��瓩歪鳴譴靴討い董�結局、日本の�牴奮惶蚕僂鳩鎧��瓩蓮�日本のナショナリズム―�牾縫淵轡腑淵螢坤爿瓩膿篆覆気譴討い襪噺世い泙后�戦前は、飛行機であり、戦艦等であったが、今日では核燃料サイクル―高速炉開発であると言います。
戦前も―戦後も日本のナショナリズムは�犹餮讃�国という強迫観念�瓩砲�いつめられています。戦前は石炭、鉄を求めて朝鮮国―中国へと侵略し、そして第２次世界大戦では、石油を強奪するために東南アジアに侵略してきたということです。
【そして、今日、日米両帝国主義は、中国への侵略態勢を構築しています。】
戦後、日本は被爆国であるにもかかわらず、核燃料サイクルと称して、原発を進めてきています。
本書は、原発推進は最初から岸信介等のＡ級戦犯、中曽根康弘等によって日本の潜在的核武装としての核燃料サイクルを進めてきていると弾劾します。
世界的に見て、スリーマイル島原発事故（１９７９年３月）、チェルノブイリ大事故（１９８６年４月）また日本でのJCO臨界事故（１９９９年９月）で原発産業は停滞しました。
ところが、政府、電力会社、原発メーカーは�狠狼紊硫甲伐修鰺�由に、原発はCO2を出さない�畛櫃鬚發辰董�原発を推進します。
本書は、原発の建設、ウラン鉱石の採掘・精錬そして燃料加工等で石油を使いCO2を出していると弾劾しています。
そして、２０１１年３月、福島原発が爆発します。
本書は、福島原発の爆発、「もんじゅ」の廃炉決定などの�牾貿確船汽ぅ�ル�瓩稜肪召涼罎如�
「『福島原発事故後は、発電比率や将来の原子力ビジョンは不明確なまま、原子力産業の維持そのものが目的になっていた』そのために『＜核の平和利用＞には潜在的核兵器製造能力の保持も含まれている』ことがむしろ公然と語られはじめたのであり」と言っています（本書94�蓮法�
�� スーパー級高純度プルトニウムの確保＝核武装へ
それは、高速増殖炉「もんじゅ」廃炉決定（２０１６年12月）の前の10月、「『経産省』が中心になって高速炉開発会議を発足させ、その年の11月には経産相、文部科学相、電事連会長、日本原子力研究開発機構理事長、そして三菱重工業社長よりなる会議で、新しい高速炉開発の工程表を策定する案を決定している」（同２４３��)ことです。
そして、６年後の２０２２年１月、日米は高速炉開発で合意します。「常陽」―「もんじゅ」のデータをもとに、スーパー級高純度プルトニウムの確保が目的です。
【そして日本は今年の７月１日、官民の高速炉研究・開発体制を50人で発足させています。】
本書は、終章、核のゴミ、そして日本の核武装の章で、核燃料サイクルは、最初から核のゴミを解決できずに進めてきた、そして「もんじゅ」は破綻しているにもかかわらず、日本が今なお高速炉開発にしがみついているのは、核武装のためであると結び、弾劾します。
結)
本書を読んで、一読だけでは理解できないことを痛感しています。それにもかかわらず『無罪！』に投稿したのは、一つの感想と今日の世界戦争情勢は核戦争の危機を孕んでいることによります。
スーパー級高純度プルトニウムの確保は原爆使用の敷居を低くするものです。
本書から、高速炉研究・開発体制を弾劾し続けることの重要性と原発は即時廃炉以外にないことを学んでいます。
裁判所が司法の独立を放棄しているとしか思えない
�眦帖｜硫短�
昨年の8月6日、原爆ドーム前で行われた反戦反核集会に参加した5人の青年が、半年も経過した今年２月28日に「暴力行為等処罰法」違反で逮捕・起訴されました。8カ月もたった現在も勾留されたままです。でっち上げ、不当な政治弾圧です。
10月8日、「公判前整理手続き」なるものが密室で行われましたが、その日、５人の家族、友人、支援者が裁判所への抗議の申し入れを行いました。その際、たくさんの諸個人・諸団体が抗議文を読み上げ、提出されました。その中から、�眦超播気気鵑里�母さんの抗議文をご本人の承諾を得て、掲載します。（文責 事務局）
広島地方裁判所への抗議文
先日、保釈請求が却下されたことを知りました。今度こそと期待していたので残念でなりません。裁判所は彼の一面しか見ておらず、危険人物と決めつけているようで、激しい憤りを感じています。
コロナが第５類になってから、暁典は月に１〜２回実家に帰省するようになりました。父が亡くなって荒れてしまった田畑を見て、残念に思ったのでしょう。草刈り機を使って草を刈ったり、竹藪の竹を切ってタケノコが生えるように整備したり、梅の実をとって梅酒や梅干を作ったり、毎回何か農作業をしていました。夏の暑い日も、寒風吹きすさぶ冬の日も、雨の日は合羽を着て山や田畑へ出て行きました。
今年の２月22日に彼はキノコの菌を原木に植えつけました。父が使っていたチェンソーを自分で修理し、自転車でガソリンスタンドまで燃料を買いに行って、一人で山から木を切り出して用意した原木です。シイタケやキクラゲなどは高い木が生えて日の当たらない山へ持っていきました。クリタケは庭の隅において、刈り取った萱をその上に掛けていました。後で地面に埋めなければいけないそうです。「何か手伝うことはない？」と聞いたら、「乾燥したらバケツ一杯の水を掛けてください。2週間したらまた帰ってきます」と彼は言いました。
ところが、2週間たたないうちに彼は暴力の罪で逮捕されました。私たちにとっては、まさに青天の霹靂です。彼が自分から他人に危害を加えることなど絶対にありえません。真実が明らかになれば、すぐに釈放されるはずだと信じて待っていました。しかし、逮捕から半年たっても公判は開かれず、本人と会うことも許されず、しだいに疑問に思うようになりました。日本は民主主義の国だと思っていましたが、実は権力者による不当な弾圧が許される国なのかと…。
そんなときに「�眦槌鏐雕承什瓩蚤疂瓠廚離縫紂璽垢�入ってきました。新幹線を使って帰省し農作業に励む孫に、母が小遣いをやろうとしたとき、彼は丁寧に断って受け取ろうとしませんでした。そんな彼が他人をだましてお金を取ることなど、考えられません。裁判所はどうしても何の検討もせず、許可を出したのでしょう。労働運動をしていることで、色眼鏡で見られ、何か罪状はないかとあら捜しをされているようで、憤りを覚えます。彼は自然を愛し、平和を愛する善良な市民です。裁判所は中立の立場で、彼の本質をしっかりと見てください。
暴力行為等処罰ニ関スル法律を百科辞典で調べたら、このように書いてありました。「第一次世界大戦後から関東大震災前後にかけて、混乱した世相を背景として、しばしば悪質な集団的暴力行為が引き起こされたため、これに対処する応急処置の一環として、刑法典の不備を補うべく制定されたものである。この法律の制定に当たっては、これが労働運動や大衆運動を弾圧する目的を持っているとして反対したものが少なくなかったが、この法律の立案に当たった当時の政府委員は、そういう意図はこの法律には全くないと言明していた。しかし、実際には、このような言明にもかかわらず、小作騒動や労働運動の弾圧の具に供せられることがあったことは、否定できない事実である」
大正時代に制定された法律が、令和の時代の労働者たちの運動を弾圧するために使われようとしているのですね。驚きです。思想や言論の自由は日本国憲法で保障されているのではありませんか？ 「厳粛な式典」を希求するあまり、集会を禁止して力によって押さえつけようとすること自体が、愚かな過ちです。今回の理不尽な弾圧に強く抗議したいと思います。
「証拠隠滅の恐れがある」という理由で、保釈請求が却下されたそうですが、でっち上げによる不当逮捕ですから、有罪になるような証拠など初めから存在せず、隠滅のしようもありません。裁判所が司法の独立を放棄しているとしか思えません。
裁判所は検察側の主張に惑わされることなく、8月6日に起こった真実を慎重に見極めて判断してください。私たち家族は息子が一日も早く保釈されることを、そして第1回公判が早期に開かれることを心から願っています。
令和6年９月26日
最後べ 今生のお別れの記
共同代表 桜井善作
須賀・十亀・板垣さん「差し戻し控訴審」最中の裁判所前での街宣で（2013.4.22）
共同代表の桜井さんから、ほんとに久しぶりのお手紙が届きました。「共同代表として何もできないので、やめさせてください」と告げられたのは、いつだったのか、事務局も定かではありません。桜井さんには、「わかりました。ほんとに長い間、ありがとうございました。でも、一言でもいいですから、けじめをつける�爐海箸亅瓩髻慳戯瓠�』に掲載してください、とお願いしました。その時期は、桜井さんの身の回りで次々と大変な事態が生起し続けていました。そんなこともあり、約束はそのままになり、時間がどんどん流れてきてしまいました。
なんとかしなければ、と思っている折、9月初め、桜井さんから分厚い封書が事務局あてに届きました。開封すると、「最後べ 今生のお別れの記」と題した、日付の違ういくつかの手紙が、まとめて入れられていました。すべての手紙を掲載したいところですが、そうもいきませんので、「九月七日」と記された文と歌のところを抜粋して掲載させていただきます。
手紙へのお礼も含め、桜井さんに連絡し、その際、思い切って「桜井さん、共同代表の件ですが、この際、生涯現役で、共同代表を引き続きお願いしたいのですが」と切り出したところ、「何もできないですが、それでよければやりましょう」と言っていただきました。
桜井さん、ほんとうにありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
（事務局 内藤雄二）
桜井さんからの手紙
払拭できないこの世への危惧を、思い付くままに走り書きすることにいたします。私の九十年の人生に至るあの時、あの場の出会い、縁が続いた皆様への万感の思いに胸を詰まらせつつ記します。
私は何があろうと起ころうと�犖紊虜廚雖瓩砲世韻話任犬討靴討呂覆蕕覆ぁ�反対しただけでは許されない、止めなければならないのだ。何としてでも―という問題事態―即ち�狎鐐茘瓠９垢砲麓�然・環境破壊に対して妥協などあり得よう筈もないことが�猊當未両鐚鵜瓩箸覆襪海箸鮴數召靴討い泙后�
須賀さん（右端桜井さんの隣）の下獄直前、「路上劇団」のメンバーの皆さんと歓談
（2018.2.15 桜井さん住居付属の集会室前にて）
この社会の本質、もう一歩奥の実体は、国会の表舞台や日常のくらしの中からはなかなか見えて来ません。殆ど報道もされない地下や閉ざされた世界にこそ人権侵害の猛威がはびこっている事実を断罪すべきでしょう。
反体制思想・勢力に対する弾圧、入管による排除、暴力行為、拘置所の入所者待遇の人権問題などなど、決して他人事ではないこと、一般社会のあすの姿、として捉える必要があると考えます。
�猴澆糧蕕膨譴覆鍬瓩噺世い泙垢�、目先の欲に支配されて、裏金死守の亡者に成り下がっている自民党・国会議員に反省、改善の可能性はありません。一票の力によって国会から追放。一人の見逃し例外もなく実現したいものだと思います。
今、世界のほとんどの政治リーダーが軌を一にしたように競って魔道へ踏み込み、破滅へ、地獄へとボルテージを上げっ放しです。八月三十一日付新聞（東京）一面に
「防衛費 最大８・５兆円要求 敵基地攻撃能力の強化に巨費」
二面には「５年で43兆円」とありました。
岸田首相は、フクシマなどなかったかの如く、原発推進に興じています。世界戦争が目前に迫っている状況下で、その前提のベラ棒な軍拡。世界もこの国も揃って破滅への道へ歩を進めています。何とかしなければなりません。
�犖紊虜廚雖瓩老茲靴撞�されません。私たち「主権者」が決起する�爐箸��瓩任后２鹽靴梁膸�には、一人ひとりの革命的発想・行動が不可欠であり、それなくして、「美しき青き星」の瞬きが、戻ることはない筈です。
一人ひとりが皆 それぞれの花を 精一杯 咲かせ合える世を！
打てばひびく心 を！
二〇二四年九月七日
願わくばせめてもう一度、路上に立って叫びたい気も残っています
一九三四年九月二六日生 九十歳
編集後記
パレスチナ人民による「１０・７蜂起」1周年の、イスラエル大使館に対する怒りの実力抗議闘争と新宿反戦集会・デモは「８・６ヒロシマ」の勝利を引き継ぎ、さらなる反戦闘争爆発の転機を切り開いた。１０・９解散・総選挙へ向かう石破政権と真っ向対決し、米日による中国侵略戦争ー世界戦争を実力阻止する反戦闘争こそ労働者民衆の進むべき道であることを鮮やかに示した。
総選挙に一切を流し込もうとする、すべての既成勢力が「裏金問題」は言うが、中国侵略戦争、世界戦争＝核戦争には触れず、逆に石破と競い合って中国への排外主義と国防主義をあおり、「挙国一致」の総翼賛体制へと民衆を引きずり込もうとしている。
「戦争を止め、社会を変える力はここにある！」。１１・３日比谷へ！ （ SI ）
