2006年11月06日

るちあ 頑張って

これはボツ原稿です。ボツになったのはなったなりの理由があるのですが、自分が『ピッチ』を楽しんでいた気分は出ているなぁと改めて読み直して思いました。

るちあ、頑張って!

 ファンの人たちに今更、『マーメイドメロディぴちぴちピッチ』の魅力を語る必要はないんじゃないかと、何度か思った。でも自分の体験に照らし合わせみると、『ピッチ』を好きな人の中には、『ピッチ』の魅力を人に語ることに苦労した人は少なからずいるような気もする。ならばこの文章は、なかなか理解されない『ピッチ』の魅力を伝えるための、覚え書きのようなつもりで書いてみようと思う。

 『ピッチ』の、魅力を一言でいうならば「頑張って!」という気分にあると思う。
 たとえば、それはまず、るちあを演じた中田あすみちゃんのお芝居についていえる。
 今はあまり流行らなくなって、マイナーな存在になってしまったけれど、かつてはアイドル映画やアイドルTVドラマ(『月曜ドラマランド』含む)といったジャンルが一つの流れをつくっていた。これらアイドルものに共通する一番の魅力は、主演の新人アイドルが演技馴れしていないところにあった。その不馴れなところが、逆にものすごくビビッドで、観客はその様子をハラハラしながら見守っていたのだ。
 『ピッチ』はまさにそうしたアイドルものの後継者とでもいうべき雰囲気が濃厚にある。だから“無印”の第1話「真珠の涙」で、るちあの声を聞いてしまったら、上手いとか下手とかもっともらしく論評をする以前に、「頑張って!」と言うしかないし、そうするのがこの作品に対する正しい態度だと思う。
 さらに劇中の歌がそれに追い打ちをかける。歌手の卵をキャストした(『超時空要塞マクロス』『魔法の天使クリィミーマミ』の方法論)わけでもなく、歌は別の歌手が担当する(『マクロス7』『BECK』の方法論)わけでもなく、やはり本人が一生懸命歌っているのだ。これもやっぱり「頑張って!」なのだ。
 さらにはアニメ本編のストーリーも、ひたすら「るちあ、海斗との恋を頑張って!」という内容だけがあの手この手で展開される。もうこうなると、テレビを見ているこちら側の「頑張って!」と、物語の中の「頑張って!」が渾然となって区別がつかなくなり、もう毎週見るしかない、という中毒に似た気持ちになってしまうのだ。
 この「頑張って!」は、『ピッチ』の魅力の一つである歌そのものについてもいえる。
 『ピッチ』の設定の基本は、人魚の美しい歌が悪者を退けるという部分にある。
 ここで思い出してほしいのは、映画やドラマの中で、芸術系の作品が登場した時、劇中でのその評価を決めるのは、常にリアクションという原則だ。代表的な例は料理マンガだ。どんな奇想天外なレシピでも、料理を口にした人が「ほう、これはまったりとして……」とやれば、たちまち美味しい料理に見えてくる。
 ところが『ピッチ』の歌はこのリアクションに恵まれなかった。なにしろ歌で敵を追い払うシチュエーションがデフォルトなのだ。どんなに「美しい歌」でも、敵のリアクションは「グアー」「ウアー」といった苦悶の表情になってしまう。これはよく考えればヒドいシチュエーションだ。
 こんな考え得るもっとも恵まれないシチュエーションの中で、正々堂々と歌い続けるマーメイドプリンセス(とそのキャスト)たち。これもやっぱり「頑張って!」と思わざるをえない。……とはいえ、一つのギャグだと思って見れば、このシチュエーションはけっこう楽しいものだったりもしたのだけれど)。
 そういう意味では、シェシェとミミの登場以降、“戦い”のシーンが歌合戦の様相を呈したために、結果的に「歌で悪を退ける」というような合理性が後退し、まるでレビューのような様式の世界になったことは、シンプルに「歌」の魅力を引き立てる効果があったんじゃないかなと思う。ちなみに個人的に好きな曲は『SuperLoveSongs』と『闇のBAROQUE』なんですが。

 さてこれまで何度も使ってきた「頑張って!」という気分だけれど、これが伝わらないこともある。これは説明が難しいことなのだけれど、あえていうなら民放の特番でやる100キロマラソンを見ている時の心境と似ている、と思う。素晴らしいランニングを見たければオリンピックなりマラソン中継を見ればいいのだ。でも何故か、ついつい見てしまう。見ながらも「こんなのバラエティ番組に過ぎない」とか「ヤラセじゃないの」なんてひどいことを頭の片隅では思っている。でも、目は離せない。それこどころか、ランナーがリタイアしそうなトラブルに見舞われれば、つい思ってしまうのだ。「頑張って!」と。
 こんなシチュエーションの時に心に浮かぶ「頑張って!」の気持ちを最初から自覚できている人。そういう人こそ間違いなく『ピッチ』を楽しめる人だと思う。
 というわけで、御託はそろそろ終わりにして、番組でも見ましょうか。るちあ、頑張って! と声援を送りながら。

マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ Vol.14


personap21 at 00:47│TrackBack(0)この記事をクリップ!

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