ジョン・ヴァーリイ「さようなら、ロビンソン・クルーソー」(1978) Good-bye, Robinson Crusoe
ハヤカワ文庫SF『逆行の夏』収録




ピリは二度目の幼年期を過ごしていた。冥王星の地下に、南太平洋を模して造られた巨大ディズニーランド「パシフイカ」で。若いクローンに意識を移し、記憶の一部を抑圧して少年になりきって過ごす長い休暇。ある日ピリはパシフィカにやってきた年上の観光客の女性リーに淡い恋心を抱く。しかし、リーの登場はこの偽りの「楽園」の終焉を告げるものだったのだ…。
 

 身も心も(文字通り)若返って過ごすヴァカンス、自分も大金持ちになったらぜひやってみたいよ。なおここは「ディズニーランド」なので、大半の登場人物はお客様であるピリをおもてなしするための「キャスト」なのである。 かようにこの物語はその環境も登場人物の関係性もほぼすべては偽りでしかないのだが、思春期の少年少女が抱くあこがれや恋心だけは(偽物の記憶に立脚しているとはいえ)本物だったことが、厳しい外界の現実に呼び戻されるラストの喪失感をより濃いものにしているように思う。

 しかし結末はただ苦いだけのものではない。少年はいつか大人にならなくてはいけない。強制的に大人に戻されるピリにもそれはよくわかっているのだ。ピリは覚悟を決めて楽園に別れを告げる。

 連休の最終日の夜に読みたい物語No.1である。