2010年05月26日

TSUBAME2.0(2.4Pflops) NEC+HP連合が落札

http://www.gsic.titech.ac.jp/node/313

 2010年5月25日 東工大のTSUBAME2.0(理論性能2.4Pflops)は、NECとHPの企業連合が落札した。稼動は今年2010年の11月とのこと。
 東工大の松岡氏のTwitterによれば、落札額は本体が4年で約31億円、付帯工事、電気代、SE費用等を含めると4年で総額約40億円弱だそうである。
 近々、詳細が発表されると思われるが、概略速報は以下のとおり。

・ システム全体のイメージは東工大の例のTSUBAME”ごった煮”的システムの延長。

・ いわゆる本体と考えられる部分は、IntelのWestmere EPとNehalem EXで、その合計が約2900ソケット、コア数にすると約17,000コア。クロックは不明であるが、概ねこの本体部分の理論性能は、計算してみると、概ね200Tflops程度と考えられる。
・ InterconnectはVoltair社のQDR Infinibandで、TopologyはFull Bisectionで200Tera-bps。
・ メモリの詳細は不明。
・ StorageはSSDとHDDのHybridで、転送速度は0.66TeraByte.

・ これに約4200枚のNVIDIA Tesla(Fermi core) GPGPUが付き、その演算コア(CUDA core)数は約188万コア。

・ 設置面積は200平米程度

・ OSはLinuxとMS Windows HPCの両立、+仮想マシン・クラウド技術 


 理論性能は2.4Pflopsと書かれているが、TSUBAME1.XのClearSpeedの場合からも明らかなように、実行性能との落差が激しすぎ、多分、Linpackでは半分の1.2Pflops出れば上出来のような気がする。
 そもそもアクセラレータとかGPGPUなどを使った場合の理論性能の計算方法は、従来のIn-Core演算器用方式の単純な加算では表せないためで、工夫が必要であろう。

 価格的には”200Tflops機+GPGPU”で40億円程度との事なので、Intelを使った理研の100Tflops機(36億円)や原研の200Tflops機(60億円?)などの国内メーカーのシステムに比べると、かなり割安であることは確かであろう。
 しかし1週間ほど前の5月20日にCrayのXT6/BakerのPetaflops機が$47M(約42億円¥$90)でNOAAに納入が決まったとの発表があり、このNOAAのシステムと値段的には大きな差は無いようなので、TSUBAME2.0がLinpackもHPCC4項目もXT6を上回る性能を発揮すれば、同一Coreで統一するシステムが良いか、複数CoreでさらにGPGPUを加えた複雑なシステムが良いか、は大いに議論を呼ぶ事になるであろう。

 ところで、日本でのシステム価格が米国でのシステム価格と同レベルという事は、殆ど「椿事」といってよいほどの出来事で、筆者としては、色々疑問もあるが、とにかく、TSUBAME2.0には、当初計画してる性能を発揮してほしいし、頑張ってもらいたい。

と同時に、京速はどうしたらよいのか、真面目に、再仕分けすべきなのではないかと思う。

  
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2010年05月05日

CrayのXT6/Baker (続報)

  CrayのXT6に関しては、2010年4月21日に、Korea気象庁やフィンランド気象庁、米国内各所などのほかにも、Brazilの国立宇宙研究所(National Institute for Space ResearchINPEへの納品契約が決まったと、Cray社が発表している

 INPEは、宇宙・環境科学、気象予報、気象研究、地球観測、などといった分野の研究所である。どうやら世界の気象関係の研究所も米国内のORNLやNOAAなどの導入動向をにらみながら、CrayのXTにシフトしだしたように見える。というより、スパコン全般の流れが、再び、Crayに向いてきているということなのかもしれない。
  


 今回のBrazilのXT6は、2010年末までの設置、244Tflopsで、$20M(18億8千万円、¥$94)である。単価は$82K/Tflops(約770万円)という事になり、米国内での1Peta機の場合の$45K/Tflopsの約1.8倍であり、Korea気象庁の0.6Peta機の場合の$67K/Tflopsの1.2倍といったところである。
 まあ、サイズの違い(1.0P vs 0.6P vs 0.24P)や中間業者介在の有無などの要素があり、こんなものかも知れない。


 
 さて、前稿のBakerであるが、構造的にはInterconnectを除いてXT6と同じと考えられており、性能的には、XT6もBakerも、1ラックに192CPU(12コアx192)を収容し、クロックを2.2Ghzないしは2.3Ghzを想定すると、ラック当り概ね20Tflopsを実現する。

 このXT6のラック当り20Tflopsという性能は、XT5や富士通のSPARC64-Ⅷfxなどが約12Tflopsであるので、その1.67倍である。

 現在世界最速のORNLのJaguarはXT5であるが、このXT5の筐体を単純にXT6で置き換えるだけで、ラック数はそのままで、およそ理論性能で4Pflops、実行性能で3Pflopsの機械が出現する。

 

 文科省の次世代スパコンを考えると、理論値での10Pflopsベースででも最低で840台程度は必要とされているので、SPARC64-Ⅷfxの筐体をXT6で置き換えるだけで、総ラック数は、概ね500台程度に収まる事になり、かなりの設置面積の縮減になる。

 Chip性能的には、SPARC64-Ⅷfxは、2010年で、既にPower7ベースのBlue Watersに大幅に劣っていることは明らかになっているが、上述のとおりラック性能の観点からも、Power7に限らず、CrayのXT6にもかなり差をつけられてしまっているのである。

 さらに2012年になると、LLNLが発注中のBlue Gene後継の20Pflops機Sequoiaや、GPGPUを使ったORNLのJaguar follow-onなどが予定されており、さらには、IntelのSandy_bridgeのようなAVX機能搭載CPUも出荷されるので、差はさらに広がってしまうものと思える。


 価格的にも、次世代スパコン(SPARC64-Ⅷfx)は建物を除き概算1000億円で10Pflops であるので、2010年時点で既にXT6/Baker系の2倍強ということになり、次世代が完成する2012年時点での価格差は、SequoiaやGPGPUのHybrid機、さらにはAVX搭載機などの出現により、3~4倍程度にまで広がってしまうような気がするのである。


 他方、SPARC64ではなく、IntelやAMDのCPUを使用したスパコンにおいても、前述のとおり国内メーカーの製品は、前稿での東北大や理研、原研に導入された例からも、単価的には概ね3000万円/Tflops前後と推定されるので、とてもCrayなどの海外メーカーと国際競争できるレベルではない。


 要するに、日本のメーカーのスパコンに関する実力は、国産CPUを使うにしろ、IntelやAMDのCPUを使うにしろ、最早、性能的にも、価格的にも、国際市場では全く競争力がなく、国際市場でビジネスを展開するだけの力は無いといってよい状態なのである。

 


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 コメント
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コメント#2
投稿者  : 能澤徹

k4.fujitsu.co.jpの「ぷぷぷ」さん、コメント#1ありがとうございます。
 
 「どこかに逃げては」との厳しいご指摘ではございますが、
特に当方が夜「逃げ」せねばならないほどの理由はさらさらなく、
通常の移転に過ぎません。
したがって、1ヶ月の移行期間を儲け、細々とではございますが、
CNETの読者の皆様には告知を申し上げております。

 コメント#1の内容からして、「憶測で事実を無理やり捩じ曲げる」という
やり方は「ぷぷぷ」さんの「得意技」のようではございますが、
これほど単純な話をこのように曲解なさるということは、
何かご意図があっての情報活動のようにもお見受けされかねませんね。

 話は変わりますが、k4.fujitsu.co.jpというサーバーは
もしかすると、日本を代表するIT企業の一つであられます
かの「富士通様」がお使いになっていらっしゃるサーバーなんで
ございましょうか?
という事は、ひょっとして、「ぷぷぷ」さんは、「富士通様」のご家臣様で
いらっしゃるのでしょうか?
 もし「ご家臣様」であられますなら、存じ上げぬものとは申せ、
大変御無礼を申し上げました。
 「ぷぷぷ」様の事実曲解の背景が判明致したようにも思えます。

能澤
*2010-5-25 16:39



コメント#1 
投稿者  : ぷぷぷ
ホスト名 : k4.fujitsu.co.jp


どこかに逃げては、また同じように批判
しかも憶測と事実を混同して批判はするけど
解決策の提示はない


これだから…

*2010-05-25 09:19:51

  
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2010年05月03日

スパコン漫遊日記 2008-2009 CNET掲載分 目次(2)

パコン

(03)

 中国の1.2Pflopsのスパコン天河

 Korea気象庁 2010年にCray600Tflops機を導入

 次世代スパコンからのNECの撤退(2/2)<次世代スパコンの行方>&<国家技術戦略への影響>

 次世代スパコンからのNECの撤退(1/2)<ベクタ機SXシリーズの行方>

 北陸先端大のCRAY XT52/2)<税金の価値>&<為替レートと産業空洞化>

 北陸先端大のCRAY XT51/2

 T2K(筑波、東大、京大)のLinpack実行性能

 地球シミュレータ後継機



スパコン仕分

 次世代スパコン、ヴェクタ部の開発費は国庫へ戻すべし

 次世代スパコン、政治判断での「推進」は軽率

 国家機密「次世代スパコン」

 ノーベル賞受賞者等の緊急声明もお門違い

 計算基礎科学コンソーシアムの声明はお門違い

 次世代スパコン、開発の凍結・見直し

 

GRAPE-DR

 GRAPE-DRは失敗作、税金15億円は無駄金

 GRAPE-DRはスパコンではないらしい!(3/3<コメント欄>

 GRAPE-DRはスパコンではないらしい!(2/3)

 GRAPE-DRはスパコンではないらしい!(1/3)

 GRAPE-DRの性能(その2)(2/2)GRAPE-DRチップの公表ピーク性能の変遷>

 GRAPE-DRの性能(その2)(1/2

 Grape-DRの性能

 

TOP500 Report

 スパコンTop500 2009-11、国別シェア

 スパコンTop500 2009-06、国別シェア

 世界のスパコンTop500 2008-06(国別)

 世界のスパコンTop500 2008-06Top10/日本のスパコン)

 Top500: 日本のスパコン能力

 スパコンTop500 2007-11

 

 Bill Gatesの引退に関連して

 雲を掴め 富士通・IBM秘密交渉(2/2)<参考:S/360関連メモ>

 雲を掴め 富士通・IBM秘密交渉(1/2)

 

時々の話題

 帝国海軍と霞ヶ関

 

  
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スパコン漫遊日記 2007-2008 CNET掲載分 目次(1)

スパコン

(02)

 再び、ベクタ・プロセッサは必要か?

 次世代スーパーコンピュータは国家機密 ? (2/2)

 次世代スーパーコンピュータは国家機密 ? (1/2) <次世代スパコンの問題点>

 T2K(筑波、東大、京大)とJAXAのスパコン(2/2) <JAXA

 T2K(筑波、東大、京大)とJAXAのスパコン(1/2) <T2K

 地球シミュレータと阪大のSX-9

 地球シミュレータのリプレース

 2007年度のゴードン・ベル賞とHPCC

 地球シミュレータ停止報道の余波

 Crayの次世代スパコン

 NEC SX-9

 ガートナー・ジャパンの次世代スパコン再点検提唱について

 スパコンの内外価格差、性能格差

 GRAPE-DRと次世代スパコン

 次世代スパコンは2010年に10PFを達成できるのか?

(01)

 日本のスパコン戦略はボロボロ(2) <地球シミュレータは失敗作> 

 日本のスパコン戦略はボロボロ

 米国のスパコン戦略 <マルチコア、メニーコア、TSV

 日々雑感(2/2) <スカラ型とベクトル型を両輪に、理研の説明>&<綜合科学技術会議 評価専  門調査会(第67回)議事次第 平成19年8月6日(月)>

 日々雑感(1/2)<米大統領、「America Competes Act」法に署名--科学技術競争力の維持を支援>&NSF (全米科学財団)>

 Blue Gene/Lの値下げセール

 次世代日の丸スパコン(5) <米国のスパコン戦略>と<スパコン・デバイド>

 次世代日の丸スパコン(4) <ブルージーンと湯川中間子論

 次世代日の丸スパコン(3) <日本のスパコン>

 次世代日の丸スパコン(2) ベクタープロセッサーは必要か?

 次世代日の丸スパコンは大丈夫か? 1-5 <米国のスパコン計画>

 次世代日の丸スパコンは大丈夫か? 1-4 <主要スパコンの状況と今後の見通し>

 次世代日の丸スパコンは大丈夫か? 1-3 <スパコンの現状、20076月のTOP500

 次世代日の丸スパコンは大丈夫か? 1-2 <10ペタフロップの世界>

 次世代日の丸スパコンは大丈夫か? 1-1

 

  
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2010年05月02日

東北大のNEC Express5800 と CrayのBaker

<東北大のExpress5800>

 2010年4月9日、NECはIntelのXeon7520を使用したExpress5800/A1080aサーバーの発表を行い、その中で、Express5800/A1080a-D6ノード、東北大サイバーサイエンスセンターCSCに先行納入したと発表した(一般出荷は5月10日から)。 
 Express5800/A1080a-Dはノードとして7UのdrawerにIntelのXeon 7520(8コア)を4CPU組み込んだHPC用サーバーで、クロックは2.26Ghzで、ノード当りの演算性能は289Gflopsである。従って、今回の東北大CSCの6ノードはTotal 1.735Tflopsの機械ということになる。

 この発表は2つの点で興味深かった。1つ目は、NECの昨年5月の「次世代スパコン」という国プロ撤退後の久々のスパコン納入の発表であったということと、2つ目は、NECの地割である東北大においても、Vector機の撤退を見越したスカラ機の試行導入が始まったらしいということ、の以上2点である。
 

 今回のNECの発表はExpress5800の発表がメインであったため、東北大CSCへの納入の全体像に関しては若干誤解を招きやすい発表になっていた。
 というのは、実際には東北大CSCこのExpress58001.7Tflopsのほかに、VectorSX-92ノード(3.2Tflops)調達している
 文科省の調達情報によるとリース月額はExpress5800 6ノードと、SX-9 2ノードの合計で月額1550.8万円、リース期間は3年となっている。リース料を割り引いた買取推定額は約5億円である。
 従って、Express5800とSX-9を合算して考えた場合、Total 4.9Tflopsなので、Tflops単価は約1億円/Tflopsという事になる。

 一方、NECの発表では、Express5800/A1080a-Dの最小構成は(CPU+4GB)x2で2,569,000円となっている。東北大のノードは(CPU+128GB)x4で、CPU数は2倍、メモリ量も32倍に増強されているので、インターコネクト込みでの価格を、最小構成の約2倍の500万円と想定すると、東北大の1ノードは1千万円程度と考えられ、6ノードで6千万円という事になり、単価は3458万円/Tflops程度と推定される。

 となると、SX-9(3.2Tflops)の価格は約4億4千万円という事になり、SX-9の単価はおよそ1億3750万円/Tflops程度と推定され、これは2年前の16ノード(25.6Tflops)導入時の約2億円/Tflopsからは安めに設定されている事になるが、2008年のES2の場合の推定11500/Tflopsからは若干高めという事になる。これはExpress5800の推定価格を元にしたものであるが、逆に、ES2の推定価格(1億1500万円)を元に推定すると、Express5800の推定単価は7千万円/Tflopsを超えることになり、後述のT2Kより高くなってしまうので、常識的には、前の推定の3458万円/Tflops程度との方が理解しやすい。

 因みに、他の国内メーカーによるIntelやAMDのCPUを使用したスパコンも、NECのExpress5800と五十歩百歩である。若干古いがT2Kに関しては拙稿「T2K(筑波、東大、京大)とJAXAのスパコン(1/2) <T2K」に記述してあるが、日立も富士通も概ね5000万円/Tflops弱程度であった。
 昨年に導入された例としては、理研や原研がある。どちらも富士通のPrimergyというIntel Xeonを使用したスパコンであるが、理研のRICCは108Tflopsでおよそ36億円といわれているので、単価はおよそ3333万円/Tflopsであり、原研の場合は、Primergyが200Tflops、FX1が12Tflops、SPARC Enterprise M9000が1.92Tflopsという構成で合計214Tflopsでおよそ60億円といわれているので、単価は概ね2804万円/Tflopsという事になる。

 従って、国内メーカーがXeonやOpteronでスパコンを組むと、2009年ベースで、単価は2800万円/Tflops~3500万円/Tflopsといったところと推定される。この単価では、とてもCrayなどの海外メーカーの国際価格には太刀打ち出来ない。


 まあ何れにせよ、今回も以前と同様、東北大の導入価格は「極めて高い」としかいいようがない。業者にしてみれば「高くしても買ってくれるのだから」ということであろう。責任は調達側にあることは自明である。そろそろ何らかの規制を考えるべき時期のような気がしている。

 

<CrayのBaker>

 2010年4月1日、Crayエネルギー省のNNASからPetaflops機(Cielo2H/201045Mで設置する契約を受注したと発表した。これはその3日前の329AMDOpteron6000シリーズ(upto12コア)の正式発表正式発表があり、一応12コア版が使えることになったのと若干関連があるかも知れない。4コア版のときはOpteronは出荷遅延でかなり問題を起こしたが、今回は大丈夫のようである。

 このNNSA/DoEのCieloはCrayDARPAHPCSBidした“Cascade”のうちのBaker”であるといわれている。BakerとXT6/XT6m(2009年11月に発表)との違いは、InterconnectがXT6系はSeastar2+であるがBakerはGeminiとなっている点ぐらいではないかと思う。
 Cascadeの契約に関しては2010年年初に、DARPACrayの間で支払額の減額という悶着が発覚した案件で、所謂Cray”Adaptive Computingが上手くいっていないことに起因するものであったようである。

 その後の2010224日にDARPAの上部機関であるDoD(国防省)は改めてBaker$45Mで配下の3門のために、まとめて調達ことにしたようで、これは筆者の目には、契約内容の筋を通し、契約変更による減額を求める一方で、年商300億円程度の中小ヴェンチャー企業であるCrayの倒産を誘発しないようにするための、DoDの苦肉のRecovery Shotのようにも見受けられる。
 違約に対し契約額の減額を要求はするが、これとは別に、市販の適正な価格で、市販品として商品価値のある同社の別の商品を納品させる、というあたりは、見習う必要があるのではないかと思う。

 さて、NNSA/DoE(エネ省)が調達したCieloはLANL(Los Alamos Lab)に設置され、エネ省のNNSA(核安全保障局)の御三家(LLNL,LANL,SNL)が使用するとの事である。
 NNSA傘下には、既にLANLに1Peta機Roadrunnerがあり、LLNL(Livermore研)にも0.5PetaのBlue Geneや、0.1PetaのPurpleなどがあり、また、SNL(Sandia Lab)にはXT3/XT4/XT5/XT6の元になったRed Storm がある。Red Stormは、当初はXT3で40Tflops(Peak)であったが、現在が284Tflops(Peak)に増強されている。
 また3Labsには、それぞれにCapacity MachineとしてのAppro社のXtreamを設置しており、さらにLLNLでは2012年に稼動予定のBlue Gene後継の20Peta機SequoiaをIBMに発注中である。

 こうしてみると、今回の1Peta機Cieloは、癖の強いRoadrunnerの補完ないしは置き換え、つまりプログラムの互換性を考え「普通のアーキテクチャーでの計算力の増強」を目的としたスパコンなのではないかと考えるのが妥当のような気がする。

 価格は1Pflops超で$45M(\$94で42億円程度)との事なので、単価は420万円/Tflop以下となり、昨年9月のKorea気象庁のCray機(多分XT6で、600Tflops$40Mより、さらに4割近く安くなっている。導入時期はどちらも2H/2010で同じであるので、Koreaでの代理店等の経費を含む輸出入コストを考えると、米国内との価格差はこんなものかも知れない。まあとにかく2010年4月現在で、日本以外の世界ではスパコンのTflops単価は日本円で概ね400-500万円程度という辺りにまで下がって来ているということである。

 
東北大の箇所で述べた国内メーカーの単価を考えると、ため息が出てしまう。

 

  
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2010年05月01日

次世代スパコン、ヴェクタ部の開発費は国庫へ戻すべし

公開日時: 2009/12/18 09:59
著者: 能澤 徹


 2009年12月9日、来年度予算に関連し、総合科学技術会議は、次世代スパコンを「必要な改善を行いつつ推進する」と決めたようである。11月13日の行政刷新会議の事業仕分けでは「限りなく凍結に近い見送り」との判定であったので、首相が議長を務める2つの会議が別々の結論を出した事になる。  そこへ、実施部門である文科省の政務三役会議は「第1位には拘らず事業費を圧縮して継続」とし、12月17日の報道では、関係閣僚との折衝で「完成時期を遅らせることで事業費を圧縮」という事で、総事業費は110億円減の1120億円とし、来年度予算は40億円削減の228億円とすることで財務省と合意とのことである。

 大雑把に言うと、来年度以降の約700億といわれていた分を600億にするという程度の圧縮でしかない。大山鳴動鼠1匹といったところであろう。

 これまでの次世代スパコンの議論は、事業の「継続」か「見直し」か、という大枠での議論が中心であったが、今回、政治判断による「足して2で割る式」の中途半端な「継続」が決まったようなので、今度は予算の中身についての議論をしてみたいと思う。

 

 仕分けのときと同じで、予算に関しても、(Ⅰ)NEC撤退に伴う不明朗な予算処理の問題と、(Ⅱ)基本的な総額1154/1230/1120億円が国際感覚で妥当なのかという予算総額の妥当性の問題の、2つの視点がある。

 今回は(Ⅰ)を中心に述べてみる。(Ⅱ)に関しては次回以降に述べることにする。

(Ⅰ) NEC撤退に伴う不明朗な予算処理の怪

 現在まず文科省・理研に求めねばならないのは「NECの撤退により生じたNECへの支払予定分の国庫への返納」である。

 とりあえずは、今年度(2009年度)支払い不要になったはずのNECへの支払い予定分(推定50億円程度、後述)は全額国庫に返納すべきであり、そして、来年度(2010年度)以降の予算要求額はNECへの支払予定であった額(推定総額で300億円程度、後述)を削除して計上すべきなのである。


 * <12/19 追記1>
 コメントに 事業仕分けの中(11:00のセクション)で文科省より以下の内容が示されているとのご指摘がありましたので、以下を追加いたします。

文科省による、NEC撤退に伴う見直しの内訳(2009年11月13日)
  NECへの支払予定分 -124億円 減
 ネットワーク増強   +90億円 増
 製造増強分      +110億円 増
 差し引き合計     +76億円 増
以上

 これらの数値に関しては、以下のような疑問がある。
(1)システム開発の総額907億円(H21以降でも731億円)に比してNECへの支払予定額は少なすぎること。
(2)ネットワークの仕様は本来的にLinpack10Pflopsをサポートする必要のあるもので、NECの撤退は関係ないはず。
(3)数値目標は「2011年6月Linpack10Pflops、Top500第1位」であり、ヴェクタ部とスカラー部は別物であるから、もともと、この時期までに10Pflopsが作動していなければならないわけで、製造増強はNECの撤退とは関係ないはず。
 したがって、(1)はその額を精査の上、国庫に戻したり、あるいは予算計上を中止すべきものであり、(2)(3)はNECの撤退とは関係ないので、別途査定を受けるべきものである。しかし、ヴェクタ部本体の開発製造に124億円なのに対し、ネットワーク増強が90億円、スカラ部の製造増強だけで110億円とは、とても、一般の常識では考えられないバランスである。しかも増強分は合計でピッタリ200億円というもの歯切れが良すぎる。

 * <追記1終>

 


  文科省・理研が行っている「NECの撤退の後処理」は、技術的にも、予算管理的にも、極めていい加減である。

 つまり、そもそも何を作る予定であったのかということと、NECの撤退で、それがどの様なものに変更せざるを得なくなったのか、といった開発対象の具体的変更を国民に全く説明しておらず、その開発対象の変更により、どのような予算の変更が必要になったのかも、国民に全く説明していないのである。  説明があったのは「NECの撤退を受けた見直しで、追加予算として76億円必要になった」といったことだけである。

 このプロジェクトは文科省が国家機密に指定しているため、納税者にとっては極めてわかり難いプロジェクトであるが、開発対象については、ヴェクタ・スカラ両輪論といってきて、ヴェクタ部とスカラ部を作り、そのブリッジ部を考えていたのであろうことは確かである。ところが、ヴェクタ部の開発者が撤退してしまったわけで、ヴェクタ部は作らなくなり、したがって、ブリッジ部も不要になり、スカラ部だけが残ったという事であるから、全体の開発・製造量は半分以下になったはずなのである。

 ところが、撤退の見直しにより、予算的には76億円もの追加が必要になったなどということは、信じ難い「焼け太り」で、消滅したヴェクタ部やブリッジ部の開発・製造予算はどこに消えてしまったのかという事になるのである。ヴェクタ部やブリッジ部の開発製造予定額のうちのかなりの部分が余ってしまった筈であり、本来、多額のお釣りが来る筈のものが、逆に、76億円もの追加とは、一体全体、理研は何を考えているのだ、という不信感しか残らない説明なのである。


<撤退で余るはずの予算額>

 次世代スパコンの予算の概略は以下である。(単位億円) (この表は、本来はNEC撤退前の1154億円をベースにすべきなのではあるが、そのデータが無いため、NEC撤退後に76億円増加された総額1230億円の表である。)

      総額  H18 H19 H20  H21  H22  H23 H24

システム 907  12  53  111  110  203  414  4 
アプリ   130  22  32  22   19    16   14   5 
施設   193   1   34   67    61   29   0   0
合計   1230  35  120 200  190  248  428  10 

 

システム開発総額907億円内訳

 メーカ支払い      861億円 (H21まで261億円)
 理研のシステム評価  28億円  (H21まで14億円)
 研究統括         8億円   (H21まで11億円)
 合計           907億円  (H21まで286億円)


 一方、H20年12月の文科省予算主要事項によると、H21年度の次世代スパコンの予算総額は190億円となっている。これはNEC撤退前の総額1154億円ベースのデータであるが、上の表で示した1230億円ベースのH21年度の予算総額と一致しているのである。つまり、NEC撤退前と撤退後見直しとで、H21年の支払い額に変化はないのである。

 これは、実に可笑しな話で、撤退のため支払う必要のなくなったNECへの支払い分が、撤退見直し後に作られた予算額に含まれていることを示しているからである。


 H21年度のNECへの支払い額の詳細は公表されていないが、常識的には、メーカ支払額を富士通と折半であろうから、H21年度のシステム開発予算110億の半分の50億程度ではないかと推定されるのである。


 そして、問題はこのNECへの支払予定額がどうなっているのかである。理研が勝手に支払い先を変更できる類のものではないわけで、当然、H21年度の支払い総額からこの分は差し引かれてなければいけないのであるが、実際には差し引かれていないということなのである。

 

 支払い先のなくなったH21年度分のNECへの支払い予定分(50億円前後)は、どこへ消えてしまったのか?

 文科省・理研には、重大な説明責任があると思うのである。


 なお、次世代スパコンはH20年度の補正予算で約55億円が追加されており、H21年度は合計245億円となっており、この補正55億円も何に使われたのかは興味のあるところである。

 そして、H21年分に限らず、以降のH22、H23、H24についても、本来NECへの支払いに充てる予定であった額は、全て、予算計上してはいけない額であり、当然、予算総額から差し引かれねばならない額である。大雑把にいって、H22、H23、H24のシステム開発の総額621億の半分、300億程度は不要になったはずなのである。  したがって、NECの撤退により、論理的には、H21の推定50億円に加え、H22年以降の推定300億円が加わり、合計で350億円程度の予算削減があってしかるべきなのである。


 スカラ部は順調という事であるので、スカラ部は予定どうりの支出を行えばよいわけで、スカラ部と関係のないヴェクタ部の撤退は次世代スパコンの予算総額の大幅な削減をもたらしたはずであり、いわんや76億円もの増額などというのは常識的に理解不能といわざるを得ないのである。


 文科省・理研はデータに基づく明確な説明を行う責任がある。


 加えて、「世界第1位断念」「完成年度を遅らす」ことによる110億円の縮減が可能だそうであるので、スパコン予算はさらに縮減が可能という事になるのであろう。

 中途半端な政治判断(処理)ではなく、理にかなった処理が望まれる。

 

 

(II)1230億円は妥当か?  次回以降参照

 

 


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このエントリーへのコメント
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Toコメント#1
本文に追記を入れました。
ご指摘ありがとうございました。

  能澤 徹 on 2009/12/19

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NECが撤退した部分の削減額は、仕分けの中で、124億円と
説明されております。勘定していないわけではありません。
ネットワークの増強と、富士通の生産ラインの増強のため、
200億円の増額が必要となり、その差し引き後の金額が、
76億円の予算追加との事です。
http://mercury.dbcls.jp/w/index.php

  タクジ on 2009/12/18

  

  
Posted by petaflops at 14:41Comments(0)TrackBack(0) スパコン仕分け 

次世代スパコン、政治判断での「推進」は軽率

公開日時: 2009/12/05 17:51
著者: 能澤 徹

 

 今回の事業仕分けに関連し、2009年11月19日に総合科学技術会議の有識者議員が出した緊急声明や、11月26日に行われた科技相と有識者議員との会合の議事録(「優先度判定に関して」<議事録課題3>」などが、同会議のHPに載っており、そして、11月30日の内閣府の科学技術担当政務官の記者会見では、優先度判定で、次世代スパコンは推進、として12月9日の本会議に臨む方向らしい。

  こうした政治判断と称するものは、問題の本質を捕らえておらず「軽率」としか思えないのである。

 軽率と判断する理由は3つある。

 第1は、ここ4-5回の投稿で述べてあるとおり、国の科学技術推進というマクロ視点での政策と、事業仕分という個別案件での、ミクロな案件特有の問題を、ゴチャ混ぜにして、論点のすり替えが行われており、仕分けで指摘された問題点の解決も無く、「優先度から推進」などと結論付けるのは「軽率」のそしりを免れない。

 第2は、次世代スパコンに関する政策判断を行うにしては、余りに海外諸メーカの現状認識に欠けており、正常な政策判断が出来ているようには思えないこと。

 第3は、総額1230億円+巨額年間維持経費という巨額税金を投入してまで、この次世代スパコンを開発する「意味」あるいは「価値」があるのか、という点。


 第1の点は既出の拙稿で述べてあるので、そちらを参照頂く事とし、ここでは割愛させていただく。

 第2の点は、次世代スパコンのプロジェクト目標である「2010年に、Linpack10Pflops、Top500で第1位、HPCC主要4項目で第1位」を達成するためには、当然、他国のメーカの動きを詳細に分析した上で「目標達成は可能」と言ってもらわねばならなのであるが、他国のメーカの分析は全く示されておらず、極めて「いい加減に」「達成可能」と結論付けているようにしか見えないのである。

 端的に言うと、次世代スパコンの1ラックの性能(12Tflops)は、現在の世界のTop1であるORLN-Jaguarが使用しているCray-XT5-HE(Opteron6コア)の1ラックの性能(11.98Tflios)と同じであり、ラック単位で見た場合、次世代スパコンは何の優位性も有しないのである。(文末参照)

 さらには、Cray社はこの11月にOpteron12コアを使った次機種XT6を発表し、来年後半出荷予定としており、AMDがOpteron12コアを予定通り出荷できれば、XT6は、ラック性能的に、次世代スパコンの2倍の性能ということになるのである。

 XT6以外にも、2010年には「sustained performanceで数ペタ」を性能目標にしたNSFファンドでのNCSAのBlue Waters(IBM Power7)が設置予定であり、これはラック性能的には、次世代スパコンの4倍以上の性能が推定されているのである。Blue Watersは、従来Peak5ー10Pflopsの機械と考えられていたが、最近の報道では20Pflopsとの見方もあり、2012年にLLNLへ設置予定のBG/P後継の「Sequia」より早く20Pflopsを実現する可能性がある機械である。(文末参照)

 つまり、ラック性能的には、次世代スパコンは、2010年出荷予定の競合他社製品よりかなり遅れているといってよいのであり、目標の世界第1位になれるかどうかは、上記競合他社に10Pflops超の性能を求める顧客があるかどうかで決まるわけで、技術的には遅れてしまっていると考えてよいのである。

 NCSAのBlue Watersが、ORNLのJaguarやKrakenのように補正予算等で補強され、20PFlopsの報道が事実であるとすると、次世代スパコンは完全に負けという事になる。

 従って、こうした状況を理解すれば、政策判断として「目標達成可能」などと能天気に宣言するのは、如何なものかと言わざるを得ないのである。
 

 第3の点は本質的な論点であるが、次世代スパコンを開発する意味、価値である。第2のところで述べたように、次世代スパコンは技術的に決して世界のトップを独走しているわけではない。むしろ2010年後半で予測すると、遅れているといっても過言ではないのである。

 価格的にも、開発総額から建屋建設費(約200億円)を除いた額で大雑把に計算すると、次世代スパコンのTflops単価は1000万円前後であり、他方、Cray機の単価は、今年9月のCrayのKorea気象庁への0.6Pflops機の契約情報から推定すると、Tflops単価は約600万円である。このCray機で次世代スパコンと同じ性能の10Pflops機をプロジェクションしてみると、サイズ的に約17倍にもなるので、単価はもっと安くなるものと考えられ、次世代スパコンの1/2-1/3程度になるのではないかと予測されるのである。

 

 となると、次世代スパコンは、他メーカと比べ、性能的に劣勢で、価格も国際市場価格の2-3倍ということで、とても海外での販売は見込めないし、国内においても、調達が公平であれば、輸入製品の方が割安になってしまうわけで、次世代スパコンを作る意味があるのかということになるのである。

 スパコンの技術安全保障を唱える人達がいるが、これは全く本末転倒な主張である。ご自分が使っているパソコンのCPUが「どこ製」であるか調べてから、スパコンの技術安全保障を唱えるべきである。パソコンやサーバなどの巨大市場の技術安全保障すら確立していないのに、スパコンのような極端に小さな市場の技術安全保障だけを唱えても意味は無く、本末転倒なのである。

 次世代スパコンがなくなると、シミュレーション・ソフトを作動させられず、自分の研究が出来なくなるという人達がいる。まずこの人達に聞きたいのは、何故、日本の次世代スパコンでなくてはならないのか、という事で、CrayやHP、IBM、SGIなどのスパコンでは何がいけないのか、という事である。そして次は、10Pflopsが必須な理由に関してで、パラメータ(たとえばメッシュを少し大きめに取るなど)を変え、モデルを調整すれば、1Pflops機ででも十分使える筈であり、何故10Pflopsが必須なのか理解できないという事である。
 

 マーどれも本質的に意味のある議論とは思えないし、次世代スパコンを作らねばならない意味や価値を説明してくれる議論でもないのである。


 結局、今、政治判断や総合技術会議が求められている事は、スパコンを国の産業政策として育成するつもりがあるのかどうなのかということなのである。

 育成するのであれば、国内はもとより、海外に於いても、自由競争で、海外メーカとの競争を勝ち抜いてゆくための支援施策が必要であろうし、当然それ相応の価格性能比を有する製品と海外営業力の確立も必須である。

 逆にそこまで深入りする気が無いのであれば、国はスパコンのハード、特に半導体工場を含むCPUの製造等に、タッチすべきではないのである。

 今日、文科省が次世代スパコンで行っているような、伝統芸能保存保護のような「技術の保存保護政策」は、グローバル経済下の産業技術政策として意味を成さないもので、このような国の中途半端な介入が、NECの撤退をもたらせた原因なのである。こうした中途半端な政策の継続は、NECの二の舞を誘発するだけで、国にとっても民間企業にとっても意味があるものとは思えないのである。
 

 従って、政治判断や総合科学技術会議が、安易に「次世代スパコンは推進」などと結論付けるのは軽率であり、事業仕分けでの問題点を解決し、その上で、もう少し深い議論をしてから結論を出すべきなのである。

 

参考:

 次世代スパコン(富士通のSPARC64-VIIIfx)は、液冷で、1チップ8コア128Gflops、1ボード4ソケット0.5Tflops、1ラック24ボード12Tflops 目標のLinpack10Pflopsには最低でも1,000ラック程度は必要。

 Cray-XT5-HEは、液冷で、1チップ6コア62.4Gflops、1ボード8ソケット499.2Gflops、1ラック24ボード11.98Tflops (XT5からの推定)

 IBM Blue Waters(Power7)は、液冷で、1チップ8コア256Gflops、1MCM4チップ1Tflops、1ボード8MCM8Tflops、ただしボードのサイズはSPARC64-VIIIfxの2倍程度あり、厚みも2倍程度あると思えるので、ラックには8ボード程度が限度ではないかと思うが、12とか16の可能性もありうるようにも思う。したがってラック性能は64Tflopsから128Tflopsの間ではないかと推定される。

 なお、この次世代スパコンの1000ラックという数は、前代未聞のラック数で、常識的には256ラックが限度である。ラック数を増すと、設置面積、配線距離、発熱処理、ネットワークの複雑化、通信遅延などを増加させ、それに伴う信頼性の低下、建屋建設費、設置費用、維持管理費などの極端な増加を招くからであり、ネットワーク的には、256が1バイトでアドレス可能な限界である事も背景にある。

 今日の並列処理方式では、ラック数を増せば、収斂値はあるものの、それなりの性能増加は見込めるため、「何が何でも10Pflops」ということで1,000ラックにしたものである。これは、単にラック並べただけなので、Interconnectに適切なものを使用すれば、どのメーカでも組み立て可能なものであり、CrayのXT5-HEででも次世代スパコンと同じ1,000ラックで10Pflops機を作ろうとすれば、可能と考えられるわけである。ただし、来年になれば、XT6で半分で済むわけで、馬鹿らしくて誰も1000ラックで作るなどとは言わないだけであろう。

 

 


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「スパコン、「世界一」の目標断念し予算折衝へ 文科省」
http://www.asahi.com/politics/update/1211/TKY200912110519.html
とのことです。

  sugibeya on 2009/12/12

1
仰るとうりと私も考えます
今回の決定は誰のためにもならない。富士通のためにも国民の為にも、産業育成にも、民主党の為にもならず、また、国際競争にも何の為にもなりません。
https://asc.llnl.gov/sequoia/rfp/00_RFP_Letter.pdf
こちらの文書をご覧ください
二ページにありますが20pflopsをコミットしているsequoia コンピューターは5年の運用経費込みで$214.5mil$以下で競争入札されています。
此れは落札上限ですから落札金額は公開されていませんがそもそも理研と桁違いです。また落札したsequoiaのfoot printは100m2程度にすぎません

実現している技術は、RoHS指令によるスズハンダによる半田クラックによる故障を最小化する為にsocをベースとして、極力金ボンディングによるsipをメインとしてハンダ付箇所を最小にしてコンパクトで、熱衝撃によるハンダ不良による不安定動作を最小化しただけで、sipにまうんとしているのは通常の民生用のパーツです
技術としてはそれだけなんです。ちゃんと量産技術と特注機器としてのスパコンの折り合いを付けており、理研のものよりはるかに安定して実用的に使えるものです。理研の物は論評にも値しないので敢えて論評しません。

  pengin221 on 2009/12/10


  
Posted by petaflops at 14:30Comments(0)TrackBack(0) スパコン仕分け 

国家機密「次世代スパコン」

公開日時: 2009/12/01 00:54
著者: 能澤 徹


 次世代スパコンは、11月13日の事業仕分け以後、突然、一般の話題になったようであるが、以前は、一般の関心も低く、また正確な情報が乏しく、なかなか、その実態を知る事が出来なかったのである。理由は2007年3月12日に次世代スパコンが「国家機密」に指定されてしまったからである。

 この国家機密指定に関する経緯に関しては、是非、2008年3月28日付けの拙稿「次世代スーパーコンピュータは国家機密 ?を参照いただきたいし、本稿をお読みいただく上での前提とお考え頂いてよいと思う。

 我が国には情報公開法が存在し、外交、安全保障、個人情報等を除いて国家機密は存在しない筈であるが、おっとどっこい、次世代スパコンは文科省により国家機密に指定されているのである。国家機密指定の権限やプロセスがどのようなもので、誰が最終決済したのか全く不明であるが、文科省側は「国家機密」に指定しており、公務員には機密漏えい罪が適用されると宣言しているのである。

 こんな事が有りうるのか甚だ疑問であり、行政法の専門家のご意見を伺ってみたいものである。

 多分今日に到るまで次世代スパコンの機密指定の解除はなされていないはずなので、先日の事業仕分けも、一部情報内容によっては国家公務員法の守秘義務違反で訴追されるケースもありうるのではないかと思っている。なんとも怖い話である。


 さて、この機密指定の結果、この日以降、一般国民目線での、次世代スパコンに対する行政評価は、評価を行うための肝心のデータ類が秘匿されてしまい、行う事は出来なくなってしまったのである。

 行政評価には様々なレベルがあるが、プロジェクト・サイズが大きくなればなるほど、プロジェクトの目標に対する一般国民レベルでの理解と支持は必須であり、国民目線での、プロジェクト目標に関する政策評価は必須で、そのために必要な情報の開示も必須である。

 ところが、この次世代スパコン・プロジェクトは、国民目線での政策評価をシャットアウトするため、国家機密指定という、なんとも時代がかったセピア色の、国家権力を行使し、情報を囲い込んで、国民目線の評価を逃げ回っていたのである。

 文科省の方針は、文科省ご指名の、ほんの一握りの評価委員たちによって、評価検討がなされれば十分で、しかも、その報告も、機密情報は開示する必要が無いということで、開示されない部分が多く、一般国民には、どのような評価検討がなされたのか良く判らないというのが実態であったのである。


 この判らないことの例を思いつくままに書き出すと以下のような点である。

・性能目標はLinpack10Pflopsとしているが、ヴェクタ部が何ペタで、スカラ部が何ペタなの、全く不明なこと、
・各部にどれくらいの予算を配分しているのかといった予算の概略内訳が不明な事
・各部の電力消費がどのくらいなのか不明な事
・年間維持費の概算総額と内訳が不明な事
・諸外国における調達費用や維持管理経費と費用対効果の比較データが示されない事

等々、「これが国家機密なの?」と言いたくなるような、何でもないデータである。

 こうした、当たり前のデータを機密にする意味は、明らかに、国民から政策評価などを行わせないためのものとしか考えようが無く、批判封じの手段なのであろう。馬鹿な国民共にデータを出して、メディアに騒がれると面倒だなどと言ったところではないかと思う。


 要するに、次世代スパコン・プロジェクトというのは、まともな、国民目線での政策評価を、一度も受けてたことが無かったというのが実態なのである。

 だから、「なぜ1230億円も必要なのか」「なぜ世界第1位でなくてはいけないのか、第2位ではいけないのか」などといった、国民目線での、素朴な疑問が、想定外の問答になってしまい、理路整然とは答えられないわけである。

 まあ、とにかく、次世代スパコンに関して、文科省・理研側のプロジェクト運用は、はじめから可笑しなものであったと断定せざるを得ないのである。

 

 


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能澤氏の言う『国民目線での政策評価』って何なのでしょうね、重要なのはプロセスでしょうか、結果でしょうか。
まるで鬼の首を取ったかのよう口ぶりですが、よく読めば表面的な揚げ足取りに過ぎませんね。
私も議論を喚起した事業仕分け自体は評価しますが、あなたの言う『国民目線』という言葉はエセジャーナリストの発する『知る権利・表現の自由』と同じように聞こえます。
  ヒジカタ on 2009/12/02

 

  
Posted by petaflops at 14:19Comments(0)TrackBack(0) スパコン仕分け 

ノーベル賞受賞者等の緊急声明もお門違い

公開日時: 2009/11/26 12:01
著者: 能澤 徹 
 

 2009年11月25日、日本のノーベル賞受賞者4名と数学のフィールズ賞受賞者1名による事業仕分けに対する緊急声明なるものが発表された。

  この声明も、基本的に、前回述べた例のコンソーシアムの声明と同種のもので、事業仕分けの実態とはかけ離れた観念論で、毎年予算編成時期恒例の「金よこせ運動」の一変種に過ぎないものである。農業団体、漁業団体、林業団体、あるいは、経団連、日本医師会、等々各種団体が、補助金を求め、あるいは診療報酬の引き上げを求め、省庁に日参した陳情騒動の変形に過ぎない。
 
 声明文の骨子は、我が国は「科学技術創造立国」「知的存在感ある国」を目指さねばならず、財政難であっても、将来に禍根を残さないためには、学術、科学技術には優先的に予算を配分しろ、という強要であり、長期的視点で考えねばならない学術や科学技術に対し事業仕分けなどで評価するのは「けしからん」といった内容である。

 
 端的に言うと、この声明も、前回同様、各個別事業の実態を無視した観念的「総論」で、抽象的で一方的な「金よこせ」運動で、ある意味では、「江戸の敵を長崎で」式の超論理の「後出しじゃんけん」のようなものである。

 つまり、ある特定の政策の実施評価で落第点を突き付けられると、突然切れて、横丁のご隠居連などの助っ人を集めてきて、日本国の進むべき道はこれこれだ、だから長期的視点で、個別で無く総体として考えるべきで、仕分けには馴染まない、などと事業仕分けを逃げ回る超論理を展開し、マスメディアを扇動しているのである。実に巧妙な政治的駆け引きで、裏で元法学部教授が仕組んでいたわけで、受賞者達は、バラエティ番組に出演したタレントということである。

 ただし、出演タレントの中には、仕分けで「限りなく見送りに近い縮減」との落第点を付けられた,国策某スーパーコンピュータ・プロジェクトの実施本部長がいたわけで、プロジェクト運営の不備失態が白日の下にさらされれば、責任問題は不可避ではないかと思われるヤバイ立場の人で、「金よこせ」運動の超論理にハーモナイズさせて、仕分けはけしからんといきまいているわけである。

 
 ところで全体的背景理解のため、政策評価、行政評価について若干述べてみる。この政策評価は米国のクリントン-ゴア政権下で大規模に行われた財政赤字削減の手法である。レーガン-ブッシュ父政権が垂れ流した財政赤字を解消するため、ゴアが陣頭指揮を執ったNPR(National Performance Review)がその始まりで、複数年にまたがる予算方式の導入などの方式改善や全省庁が対象の予算削減が行われた。とりわけ、削減効果が大きく、かつ、廃止しやすい、いわゆるプロジェクト予算を沢山抱えていた、国防省、エネルギー省、NASAなどが注目されることになった。

 国防省は次期戦闘機開発の中止などのほか、調達規格も軍用規格を廃止し、民生規格に統一して廉価な民生品の調達を可能にしたりした。

 エネ省は核実験停止条約が絡み、核実験予算が大規模に縮減された。エネ省が立ち直ったのは、その後、核爆弾の維持管理をスパコンを使ってシミュレーションで行うという手法が承認され、核実験の代わりにスパコン導入が始まってからである。

 NASAも組織の存続自体が不要との意見が出されるなどして、全米に散らばっていたオフィスやスパコンの整理統合が行われ、厳しく開発運用プロセスの改善が指摘され、全般的にかなり厳しい削減が行われた。

 このNPRの活動と、インターネット関連のITバブルによる経済の拡大により、政権第1期の4年で財政赤字はかなりの改善を見た、

 そして、米国では、法律で、各省は政策評価を行う事が義務つけられ、各省庁はOMB(大統領府予算局)の指導と、GAO(議会会計検査院)の評価を受けることになっているのである。
 

 日本でも米国を手本に2002年に行政評価法が施行されおり、行政評価は当たり前のものになっているのである。省庁が政策を始める場合、アカウンタブルな政策目標や評価項目を定め、長期短期に関わらず、中間評価を含めて、評価項目にしたがって、税金投下の効果を測定しなければならない決まりなのである。、事業仕分けは広い意味での行政評価であり、税金投下、政策実施においては当たり前なプロセスなのである。
 

 従って、今回の声明のような、行政評価法による行政評価のプロセスや結果が気に入らないと言って、学術や科学技術は政策評価外であるなどといい出すのは、極めて身勝手な超論理で、税金を使うということの意味がわかっていない「駄々っ子」としか言い様が無いのである。政策評価は税金使用に於いて例外なく必要な基本的アカウンタビリティの問題で、避けては通れないと言う事を認識すべきなのである。いやなら、税金を使うべきではないということだけである。


 そして評価・仕分けの実態として、次世代スパコン・プロジェクトのような技術的失態を含むプロジェクト運営の失態の問題、GXロケットのような政策目標に関する不透明さ、あるいは毛利さんのところや科学振興会のような天下りの問題、等々仕分けは極めて有効に機能しており、声明が主張する「学術、科学技術には馴染まない」などというのは的外れとしかいいようが無いのである。

 結局、この「ノーベル賞受賞者等の声明」は、行政評価と言う税金投入に必要なプロセスの意味を理解できず、また仕分けの実態を正しく認識していない、横柄な「金よこせ運動」、陳情に過ぎず、その一部に、プロジェクトの失態隠蔽が見え隠れする、といったお門違いな声明にしか見えないのである。


 なお、その他いくつもこの種の声明が出されているようであるが、どれも、仕分けの具体的内容を精査したものではなく、抽象的な総論的主張で、各論としての具体性に欠け、「お門違い」としか判断のしようの無いものである。

 

 

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「この計画は効率が悪いので中止する。しかし、同じ金額を出して、安価なスパコンを大量かつ迅速に導入し、より多くの計算リソースを研究者に供することにする」
ということなら、誰も文句は言わないでしょう。

計画中止の前に(あるいは同時に)代替施策が提示されるべきでしょう(ブログで提唱されるという意味でなく、政策として出されるべきという意味)。

  tomo3 on 2009/12/03

13
一見立派な文章を書き連ねてるようですが...単なるゴタクですね
意固地であり偏った見識に過ぎない。
ついでにGood!の数ですが、朝日の傘下になったと思ったらこの有様だ。また某掲示板のようにアクセス解析したら朝日系列の固定IPばっかじゃないんですか?

  ヒジカタ on 2009/12/02

12
先週出席した某省会議内でこんなやりとりマジでありました。
『実証実験の費用対効果が見えなかったので見送った』→『実証実験を行わなければ費用対効果などわかるはずないでしょう』
で、面白かったのが彼も自担当の仕分け作業が終わっていたので反論はしませんでした。(実は彼もそんな事理解している)
ディベート合戦で『煽って』全てを詳らかにする"イベント"自体は評価できます。この後の見直しもアリで決定事項ではないですしね。

  sugibeya on 2009/11/30

11
研究者は、いわゆる、”確実に成功する→すぐに結果に結び付く”プロジェクトしか実行してはいけないのでしょうか?

ちなみにそれを判断するのは誰ですか?

  naoki_s on 2009/11/30

10
行政評価が必要なのはわかります。
しかし、自分の研究が不当に評価されているとして、事業仕分けの見直しを主張するのは、実際に研究をする側としては当然のことだと思いますが・・・。

  Mr. Hone Norm on 2009/11/27

9
能澤さんの言うように税金投入する以上、行政評価は必要でしょう。しかし、スパコンやSpring-8含め各事業はこれまで評価に晒されていなかったわけではなく、実際に専門家による度重なる評価を受けて今に至るのでしょう?
それらの積み重ねを無視したたった1時間にも満たないような議論を適切な「政策評価」と言えるのでしょうか?
素人目に見てもこれは明らかなルール違反だと思います。

また、この記事の声明内容の引用はだいぶ捩じ曲げられていますね。どこに「学術や科学技術は政策評価外である」などと書いてるんですか?知の蓄積・育成される人材が無視されている。評価の方法に問題があるから専門家達でもっとよく考えてやってくれと書いてるんでしょ。
会見では日本の研究者が十分な説明責任を果たしてこなかった問題点。日本に科学振興が根付いていない事の問題点等を指摘しています。また、日本の科学技術関連予算のGDP比が他先進国に比べ低いなど具体的な事実も述べています。
ブログで自分を考えをどのように述べようとそれは自由ですが、他人の発言に関しては正しく引用しなければならないのは常識でしょう?

  backedge on 2009/11/27

8
(1) 日本のスーパーコンピュータ開発の方向性が誤っており、ビジネスのみならず技術的に波及効果の少ない(ROIが計れない)領域の旧来の開発に固執している所に問題があります。 技術の未来を語るのであれば、将来的な波及性を論じることができないことは大問題と思います。 (2) 嘗て米国の基礎領域研究者(宇宙物理学、素粒子領域)が研究費を自分の副業で稼いでいる事実を見たことがあり(複数の例があります)、驚いたことがあります。ROIが直接計れないが、(当面の間にせよ、個人的)興味の追求を貫徹したいのであれば、自分で研究費を稼ぐか、スポンサーを見つけてくる位工夫が必要でしょう。 (映画コンタクトのジョディ・フォスターが演じていた天文学者の資金集めの努力は米国では普通のことの様です。) 設立初期の理研も、その様な気概を持って研究をしていたと思いますが。

  zarathustra on 2009/11/27

7
でも、あの仕分けの論調でいくと、小柴さんのカミオカンデに予算がついていたかはわからんなあ。

  めんへら on 2009/11/27

6
ノーベル賞をとる人たちは スパコンを作る立場の人ではなく 使う人です。 使う人ならば どこの だれが作ったスパコンでもよいから 早いスパコンを いつでも使える様にしてほしい というのが本来の要求では?

この面に関して 熊沢氏は日本のスパコンは高いのが問題だと言われていて 高いものはたくさん買えないので 研究者が自由につかえず 日本の科学技術発展の為にもならないと言われているのですから エンジニアリングレベルの課題である作る事をやめて 安くいスパコンをたくさん買って日本の科学技術発展させる という事は何も矛盾していないと思います。

私としては 今回の緊急提言は 提言されている方が理化学研究所 か 大学の先生なので その統括部署である文部科学省から ”お家の一大事なので何かパフォーマンスせい” という圧力があったのでは? と疑っています。

  doc on 2009/11/26

5
漫遊日記、同感するところ多々あります。
会社だと、「やるやらない」を判断する経営部門、いくらまでなら出せるかをレポートする部門、やることに対して値切りを行う部門とがあるかと思いますが、今回の騒動は、経営部門と交渉すべき技術者が値切り部門に文句を言い、値切り部門がやるやらないに口を出しているようで残念に見ておりました。

  OYAJI on 2009/11/26

4
z

  mumazawa on 2009/11/26

3
それで能澤さんはどのような構成でどれくらいの規模のものにいくらくらいなら妥当と思っておられるんでしょうか?

  nitanic on 2009/11/26

2
少なくとも、意見表明を行うことは、言論の自由の範囲。その意見に世論の賛同を取り付ければ予算を分捕ってこれるだろうし、世論が「お門違い」と判断すれば潰されるだろうし。
自分のやりたいことを実現するために、有名になったり賞をとったりすることでネームバリューを上げ、意見を通りやすくしたりお金を集めやすくするのは真っ当な手段です。科学者の利益を守るためにネームバリューのあるノーベル賞受賞者を担ぎ出してくるのは、戦術としては間違っちゃいないでしょう。

  いぶ on 2009/11/26

1
それで能澤さんはどのような構成でどれくらいの規模のものにいくらくらいなら妥当と思っておられるんでしょうか?

  tsasaki on 2009/11/26

   

 

  
Posted by petaflops at 14:08Comments(0)TrackBack(0) スパコン仕分け 

計算基礎科学コンソーシアムの声明はお門違い

公開日時: 2009/11/21 23:01
著者: 能澤 徹

 
 2009年11月18日、今月13日に行われた事業仕分けで次世代スパコンの来年度予算が「限りなく見送りに近い縮減」と仕分けされたことに反発し、計算基礎科学コンソーシアムという団体が「次世代スーパーコンピュータ開発に関する緊急声明なるものを発表した。

 この声明に関しては、近頃流行りのフレーズを借用するなら、「あなた方に言われたくない」という事である。


 前回の拙稿スパコンTop500 2009-11、国別シェアで述べたとおり、現在の日本のスパコンの総計算能力は、欧米中の各国に劣り、世界の6位に甘んじている。この原因を作ったのが、国際相場を無視した法外な値段で、税金を湯水のように垂れ流してスパコンを設置し続けてきた、国立大学や独法の研究機構で、この声明を出した大方の連中が属する組織である。

 自分、乃至は、自分の属する組織が、税金を無駄に使い、世界の第2位から瞬く間に第6位などという体たらくな状況に転落させてしまっておきながら、この転落の原因には目をつぶって、次世代スパコンの見直しは「我が国の科学技術の進歩を阻害し、国益を大きく損なう」などというのは、それこそ「臍で茶が沸く」ほど可笑しないいがかりなのである。いいかえると、そもそも既に「あなた方」によって「我が国の科学技術の進歩は阻害され、国益を大きく損ねてしまっている」のである。

 だからその張本人の「あなた方に言われたくない」のである。

 

 国家基幹科学技術に指定された次世代スパコンのヴェクタ・スカラ両輪論が民間企業の撤退で片輪になってしまっても、「影響は無い」などといってプロジェクトを継続しているほど、メロメロな日本のスパコン戦略である。このいい加減な戦略に基づいて作られる次世代スパコンの完成が1年遅れたからといって、日本の科学技術にインパクトがあるなどということはありえないことである。

 従って、まず最初に、この声明は問題の本質を全く理解していない、短絡的な声明であるとい言ってよいと思う。


 そもそも、この次世代スパコンの仕分け問題は、次世代スパコンのグランドデザインが出鱈目であったことに端を発した問題であることは明らかなのである。

 前々回の拙稿次世代スパコン、開発の凍結・見直しで述べたとおり、財務省の論点は、文科省が国家基幹科学技術に指定した次世代スパコンのグランドデザインであるヴェクタ・スララ両輪論の、片方の車輪であるヴェクタ部が途中で脱落・消滅してしまったにも関わらず、影響はほとんど無いと主張し、ヴェクタ部を無視して、スカラ片輪でプランを強行するといった「いい加減な点」にあるのである。
 この「いい加減な点」に包括される具体的な内訳は、

第1に、無くなっても影響が無いようなヴェクタ部の設計に何故大金を支払わねばならなかったのかという「グランドデザインのいい加減さ」に対する技術的なクレデビィリティの問題、

第2に、そのいい加減な設計のために数百億円もの多額な税金が浪費されてしまったのに、何のペナルティも責任追及もなされないと言う無責任体制の問題、

第3に、その無責任体制による杜撰な片肺の計画のまま、来年以降も総額約700億円という巨額な税金が要求され、完成後も年間80億円超といわれている巨額な維持経費が要求されるといった、費用対効果無視のバブル・プロジェクト運営に対するクレディビリティの問題

などである。


 従って、次世代スパコンの仕分けとは、上記の内訳が示しているように、次世代スパコン・プロジェクトの、基本設計には信用が置けないということと、プロジェクト運営そのものにも信用が置けない、ということで、このままでは、到底、残りの開発費約700億円+年間維持費(80億円程度?)×使用年数、と言った巨額な税金を投入することは出来ないということで、根本的なところの見直しは必須、と言うのが財務省の主張である。

 なお、仕分けのやり取りの報道で有名になった「世界一位、二位」論争は、大枠では、費用対効果の議論で、財政上余裕の無い昨今、必要以上にお金をかける余裕などは無いという主張であろう。

 

 従って
こうした論点に対し、計算基礎科学コンソーシアムの声明は、前述のとおり、財務省の論点を的確に捉えておらず、お門違いで全く的外れな声明なのである。内容的には、仕分けのときに、噛み合わない回答で、失笑をかっていた文科省・理研の担当者達と同じレベルで、言ってることが抽象的で具体性に欠け、説得力が無く、またまた失笑をかうに足る、お粗末な声明なのである。

 もう少し大所高所からのスパコン政策全体を見渡した、データに基づく提言ならまだしも、余りに観念的で、状況認識にも誤りが多く、日本の計算基礎科学の知的レベルってこの程度なの、とため息が出てしまう内容である。

 

 まず声明の始めの部分に、今回の事業仕分けの結論が「我が国の科学技術の進歩を著しく阻害し、国益を大きく損なうものである」との主張があるが、「無くなっても影響が無いようなヴェクタ部を国家基幹科学技術などに指定し、その意味の無いヴェクタ部の設計に巨額な税金を投入した事が」が「我が国の科学技術の<進歩を著しく推進し>、<国益を大きく増進した>」などとは到底思えないし、事実は全くその逆で、NECの撤退で、結局、税金投入が無駄になってしまったわけで、「国民に多大な損害を与えた」事は明白であろう。

 仕分けで問題になっているのは、当該声明の中に書かれているような、能天気な一般論・抽象論ではなく、次世代スパコン・プロジェクトと言う具体的な税金プロジェクトがやってきた具体的内容に関しての仕分けである。抽象的なお題目を述べても意味は無いのである。

 

 そして声明には、半導体技術を指し「その基盤にあるのがスーパーコンピュータなどで用いられる最先端の技術であり、それは数年後に広く社会で応用される」などと主張が続くが、これも「えーっと驚く」程、現実を理解していない迷文である。

 半導体技術で、今日、「スーパーコンピュータが発祥」で、「数年後に広く社会で応用された」技術があるのなら、ぜひとも、列挙してもらいたいものである。

 コンピュータのアーキテクチャならまだしも、ユーザの母集団が極めて小さいスパコンのために特別な半導体技術が開発されたなどといった事例は聞いたことが無い。
 

 ちなみに、1976年のヴェクタの名機Cray-1はメモリを除いてLSIは使っておらず、高速処理のためECLのICで構成され、手作りに近いものであった。しかしこの時期、MainframeではIBMのS/370とかAmdahlのV470などは当然VLSIを使っていたし、Microcomputer分野でもVLSIによるIntelの8080などのCPUが発売されていたわけで、半導体のテクノロジーの流れは「スパコンから民生へ」などではなく、「民生からスパコンへ」という逆の流れである。

 その後、この高額なCrayのVector方式の後継に対し、廉価な民生で対抗したのが、今日のスカラ・クラスタ型スパコンで、1994年頃にNASAの研究員が作ったBeowulfが始まりである。UNIXの走るパソコンをTCP/IPのLANで結合し、並列計算を可能にしたものである。つまり、スカラ型スパコンは、廉価な既存の民生テクノロジを使って組み立てるという哲学で始まったものであり、その思想は今日でも連綿と受け継がれている。

 OpteronやXeonはパソコン用のCPUからのものであり、PowerXcellもゲーム機用のCellからのものである。計算科学に関係の深いBlue Geneの源流は、コロンビア大学のQCDSPで、この機械は廉価な民生用のDSPを演算器として並列に並べて作ったスパコンであり、次のQCDOCとBG/LはIBMの産業組み込み用CPUであるPPC440を用いたものである。どれをとっても、「民生からスパコンへ」の流れである。

 反対にスパコン用だけに開発されたNECのSXなどは、結局、コスト的に立ち行かなくなってしまい、民生に広がることも無く、消えてゆくことになるのである。

 明らかに、半導体技術の流れは、母集団の巨大な民生のマーケットのための技術があって、そのおこぼれを使用させてもらうのがスパコンという構図である。

 

 従って、声明文中の「その基盤にあるのがスーパーコンピュータなどで用いられる最先端の技術であり、それは数年後に広く社会で応用される」などというのは認識不足もはなはだしく、この声明のいい加減さを全国民に示す明確な証明なのである。

 

 個人的な感想ではあるが、まあ一言で言えば、この声明は、いつもの、科学という美名を振りかざした「金よこせ運動」に過ぎないと言う事であり、多分「次世代スパコンが見直されると当該プロジェクトからのオコボレ分が切られてしまう」などといった、極めて次元の低い話を、慌てて、それらしく見せるためにすり替えた抽象的で内容の無い声明にしか見えないのである。





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このエントリーへのコメント
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9
私の様な凡人には、コンソーシアムの中の錚錚たる研究者を
「計算基礎科学の知的レベルってこの程度」
などとさげすむことは出来ませんが、
今回の「スパコン騒動」はマスコミのおかしな取り扱いのせいで、
それぞれ論点がバラバラでめちゃくちゃのまま議論が発散してますよね。
貴殿のように「正確に本件の論点を把握」してコメント(賛否はともかく)
している人が皆無のような気がします。

  10risugari on 2009/11/25

8
テレビでコメントする人間は一方的に擁護するモノばかりですね。反対賛成どちらにしても、夢を追うような奇麗な話ばかりして、なんでスパコンの現実をその中身を少しは調べないのでしょうね。(アゴラで西和彦さんと池田信夫さんの賛成、反対の論議がありました。)

  hago on 2009/11/24

7
NECが降りた時点でスパコン事業が迷走していて、無駄使いしている側が必要とかお前が言うなっていうのはその通りなんだけど、今回の仕分けの問題は、そもそもまったくの(上に書いた状況すら)分かっていない仕分け人が、財務省の切りたい事業に基づいた資料によって、金が掛かるか掛からないかだけの判断で切っているという所なんですよ。
ぐだぐだになっている顛末を見直せという判断の元に下されているならまだマシなんですけど。で、叩かれて二転三転すると。

コストの話に関しては確かにその通りなんですが、じゃぁやらないでいいのかという話には正直微妙。自前でチップが作れるという事にも意味があるので、商用転用で稼げるIBMやIntel、AMDにコストで負けているからという理由だけでやめてしまっていいのか?
実際にスパコンで使用されているCPUを作れるのって今はアメリカと日本だけなんで、金が掛かってもやっている事に意味があるっていうのはあるんです。
あと、すぐに何位って気にしますけど、正直あまり関係がありません。金掛けて最大構成に出来ればある程度まではそれだけで順位が稼げてしまうので。実は日本で順位に入れるほど何台も無いっていう方が深刻です。

  3倍早い赤 on 2009/11/24

6
fermi さんのご意見に賛成です。スパコンで何を計算するかが問題です。NASA が購入して利用してくれるものを創る、それ以外に希望は見出せないのでは?そして、第2・第3の若田さんが宇宙に長期滞在して萎えた筋肉で「無重力しこ」を踏む(!?)

放物線を画像で再現するのに、人間の想像力で簡単に補える部分までスパコンに頼る必要はないし、市販の個人向けPCに頼る必要さえない場合が多いでしょ。畢竟、数値絶対主義でコンマ以下の桁数を増やして長々と「印字」してみせるとか、無理して画素を増やして色の階調を複雑にしたグラフィックスで見るひとを惑わせるとか、科学技術の進歩に用途のヴィジョンが伴っておらず、無意味な成果が想定されるだけ。

計算経過と計算結果を現実に適用するのに誤差や遊びを含めた場合、計算すればするほど、スパコンを使う意義は薄れます。すると、スパコンを作る意義とは「競争(国威発揚)」と「純粋好奇心」かな、やっぱり。

  meniette on 2009/11/23

5
文科省の考えているようなスパコンの研究開発より民生用の計算機をグリッド状に接続した、所謂グリッドコンピューティングの研究開発を考えた方がハード的にも、ソフト的にも将来性がある。現在計画中スパコンでは、肝心の世界的に競争力のソフトができるはずをまったく無く、このようなものに搭載するVLSIの開発に付き合う半導体ベンターは絶対出てこない。富士通はこのようなプロジェクトに参加して税金の無駄使いし、将来性の無いことに投資し交際競争力を失いたいのか理解できない。

  湘南ボーイ on 2009/11/22

4
To コメント#2
 文科省・理研の次世代スーパーコンピュータは量子コンピュータとは関係ありません。
 また、コンピュータ開発はEngineeringですので「売れて何ぼ」の世界です。「売れないコンピュータのすばらしいアーキテクチャ」というのは沢山あるのですが現実には何の意味もありません。逆に、「変だけど売れてるアーキテクチャ」というのもあって、Intelの8086アーキテクチャがその代表です。ですから、「アーキテクチャ開発に遅れる」云々はあまり意味がなく、世界規模で売れる見込みがあるかどうかが重要な問題だと思いますけど。

  能澤 徹 on 2009/11/22

3
To コメント#1
 本件は文科省・理研で行われている「次世代スパコン開発」という具体的プロジェクトでのシステム構成変更と言う具体的問題ですので、抽象的な一般論を持ち込んでも、意味はありません。最終的には、このプロジェクトを承認した総合科学技術会議で、重大変更に関する再審議を行わねばならないでしょう。

  能澤 徹 on 2009/11/22

2
たけしさんが情報番組で、量子コンピューターとか新しいアーキテクチャーの開発、実現に遅れをとってしまうと懸念してましたが、そういう問題と関連はあるのでしょうか?

  hago on 2009/11/22

1
個人的には、スパコンを使ってサイエンスをするという意味での「計算科学」コミュニティからの声明としては、ごく普通の声明なんじゃないかと思いますけど。スパコンは科学の発展に必要だからぜひとも買ってくれという意味です。スパコンを使った研究は、普通に現在の技術や経済には直結するとは限らないけど、サイエンスにはスパコンは必要であって、スパコンに群がる研究に金を出すのは当然だと思いますし、基礎研究の充実は科学立国には必須です。さらに他の基礎研究の分野と異なり、計算科学の分野はかなり応用や実際の技術に直結しているのとも大事です。

問題が訳が分からなくなってきているのは、国産スパコンを独自開発する意義をそれほど見いだせないのに、「スパコンを作る=スパコンでのサイエンス」の図式に話をすり替えて、スパコンを作るということに無駄な投資をしているからです。

おそらく計算機科学コンソーシアムは、よく知りませんが、NECや富士通と言った実際の技術で飯を食って商売をしている連中ではなくて、スパコン開発に携わる人間ではなくて、つまり技術の研究開発をしている人間ではなく、ただ単にスパコンを使ってサイエンスをしている連中なのです。その連中が、よく知らない分野(つまりスパコン開発とそれにまつわるお話)をサイエンス一般の大風呂敷を広げたままで、国産開発にこだわるから、訳が分からなくなる。

スパコンが欲しい、研究所に計算科学の人材を集めて、研究を活発にして、企業ともコラボレーションをたくさんしたいのならばそれはそれでよく分かりますし、価値のある仕事になると思います。スパコンが欲しいという予算、業界に予算が欲しいという本音を隠すために、国産スパコンを作って日本の技術が・・・と問題をすり替えているので、意見が素人臭くなるし、歯切れが悪くなるのだと思います。

実際スパコンを用いた基礎サイエンス(計算機科学)の発展は著しく、企業でもそれらの開発から得られた計算コードを使っての計算も現実に行われてきています。恐るべきことは、中国や韓国の研究組織が全力でこれらに金を放り込んでいることです。無論今現在では、計算コードの開発のレベルからの基礎研究力は日本は世界に並ぶレベルでして、アジア諸国ははっきり言ってレベルがかなり低いですが、ただ計算コードのユーザーとしての活気ある応用研究に関しては凄まじいものがあります。日本はかなり負けています。我々も計算科学には国策として金をかけるべきだとは思います。

たとえば、少なくともトヨタの中央研究所などをはじめとて、日本の中枢企業の基礎研究機関では、計算科学的な手法はすでに現実ですし、特許も多数取っています。計算科学的な手法で計算した結果からの特許戦争にもなりつつあります。製薬会社の現場でも現実に計算科学的な手法はつかわれていまして、スパコンを利用することによる計算科学としての計算コードの発展とその応用という意味ではかなり価値があるプロジェクトだとは注目されています。どこまで現実に直接的に反映されるかは難しいですが、今現在でも特許を取れるレベルで物質の設計開発が出来るレベルで計算機上のシミュレーションは利用されているのは現実であるのは確かです。そういう意味で、これらの研究を育成するのが本来のスパコン計画の意義だと思います。そのための国家予算です。

はっきり言って、スパコンを作ることによる技術的/経済的な意義はあまり関係ないですし、計算科学の人はそういうことは素人ですのでたぶんわかっていません。

そんなわけで、個人的には「国産スパコン」こだわる意味はかけらもないと思いますし、そいう意味ではいまのスパコンプロジェクトは、「本音を建前で隠していたのに建前自体が否定された」という事件だと思いますが、建前が時代にそぐわないのに気がつかないご老体が、スパコンの素人のご老体が、本音を隠したまま縦間を押し進めた計画だから問題なのです。本音の部分の本来予算が必要な意義は、何一つ失っていないと思いますし、むしろもっと金を賭けてもいいくらいだと思いますが・・・

まぁ、正直こそまでは言い過ぎで、サイエンスとして計算科学を純粋にみてしまうと、今の計算科学の業界の金の使い方は間違っているとも思いますが。お山の大将が多すぎて、予算がばらけてしまって、結局国内でバラバラに研究開発をしていてそれほど世界に先駆けたことは何一つやってないのですが。むしろ、世界の計算科学は計算コード開発や理論の開発は拠点が集中して数カ所で恐ろしい予算をかけています。ところが、日本はあらゆる大学の偉い先生が個々に同じようなことを研究開発している。重複が多くてただの無駄だと思います。すくなくとも計算科学では開発力と研究力は集中した方が良い。・・・と議論と話は別の話になってしまうので割愛しますが。

とにかく、スパコンを作る意義と、スパコンを利用する意義をごっちゃにしてはいかんと思います。

  fermi on 2009/11/22

  

  
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スパコンTop500 2009-11、国別シェア

公開日時: 2009/11/17 15:28
著者: 能澤 徹



 2009年11月16日、第34回のSupercomputer Top500が発表になった。以下に第34回の、世界のTop15、日本のランクインしたスパコン、国別計算力、をまとめてみる。


Top15                 実行    理論 
                     (Tflops) (Tflops)
01 ORNL  米 Cray-XT5   1759   2331
02 LANL  米 Roadrunner  1042   1376
03 テネシー大 米 Cray-XT5   832   1029
04 FZJ    独 BG/P         826   1003
05 NUDT 中  Xeon+HD4870  563  1206
06 NASA 米  Nehalem      544    673
07 LLNL  米 BG/L          478    596
08 ANL   米 BG/P          459    557
09 TACC 米 Sun Blade      433    579
10 SNL   米 SunBlade     424    488
11 LLNL  米 BG/P           416    501
12 モスクワ大 露 T-Platform  350     414
13 FZJ   独  Sun Const     275    308
14 KISTI  韓 Sun Const     275    307
15 NERSC 米 Cray XT4      266    356

 

 

日本                  実行   理論
                   (Tflops)  (Tflops)

31  海洋研  ES2 SX-9       122  131
36  JAXA   FX1 SPARC64    111  121
45  東大   Hitachi-Optern    102  139
47  理研   RICC Xeon       98  106
56  東工大   Tsubame Opteron 87  163
62  筑波大  T2K Opteron     77   95
81  核融合研 SR16000 Power6 57   77
84  東大ゲノム SunBlade-Xeon  54    69
92  気象研  SR16000 Power6  51    73
95  京大   HX600 Opteron   51    61
114  物性研  Altix-ICE Xeon   43    46
142  ホンダ  DL4x170h Xeon  37    49
206  数統研  Primergy Xeon   31    34
241  名大   FX1 SPARC64     29    31
429  天文台  Cray-XT4        23    29
445  天文台  Grape-DR        22    84


            


国別計算力

        実行      台数

       (Pflops

01 米   16.42 58.7%   277 55.4%

02 独    2.29 8.2%   27 5.4%

03 英    1.57 5.6%   45 9.0%

04 中    1.38 4.9%   21 4.2%

05 仏    1.21 4.3%   26 5.2%

06 日    0.99 3.6%   16 3.2%

07 露    0.65 2.3%   8 1.6%

08 カナダ  0.44 1.6%   9 1.8%

09 スイス  0.35 1.2%   5 1.0%

10 サウジ  0.31 1.1%   4 0.8%

Total     27.98     500

              

 

 今回の第1位はORNLのJaguar(Cray-XT5)で、CPUをOpteron 6コアにVersionUpし、理論性能を2.33Pflopsに強化し、その結果、実行性能1.759Pflopsを達成し、LANLのRoadrunnerを抜き、第1位となった。  

 第2位のRoadrunnerは前回の数値でなく前々回と同じ数値となっており、前回の追加部分を取り払ったためと言われているが、何処となく奇異な感じを受けた。

 第3位は前回6位のテネシー大のKraken(Cray-XT5)で、理論1.029Pflops,実行が0.832Pflopsである。KrakenもJaguarと同様にCPUをOpteron 6コアにVersionUpしたもので、NSFのTrack2-Sub-PetaFlopsのFund$65Mで設置され、今年の補正予算で性能強化が図られたものである。テネシー大はテネシー州のKnoxvillに所在しJack Dongarraが所属する大学で、ORNLのアドミを請け負っており、Operation的にも地理的にもOak RidgeにあるORNLと非常に近く、Krakenも場所的にはORNLに設置されている。

 第4位はドイツのJulichにあるFZJのBG/Pで、理論1.003Pflops、 実行0.832である。

 第5位は中国 NUDT(国立防衛技術大学)のTianhe(天河)で、理論1.206Pflops、実行0.563Pflopsである。

 注目に値するのが第12位のロシアのT-PlatformのXeonと第14位の韓国KISTI(Korea Institute of Science and Technology Information)のSun Constellation(Xeon)である。T-PlatformはロシアのVentureと思えるが、ロシアにもこの程度のシステムなら組みたてる力があるということである。他方、韓国KISTIのスパコンはSunによるものであるが、来年にはKorea気象庁が600TflopsのCray機を導入する事が決まっており、韓国からの追い上げも激しい。

 

 日本のTopは31位の地球シミュレータ2で、全体で16機がランクインした。

 国別総計算力では6月に比べ中国が躍進し、総計算力では仏、日を抜き4位になり、台数では仏に次いで第5位になっている。日本は総計算力、台数とも中国に抜かれ6位である。その上、ロシアの急速な追い上げにあっており、韓国の足音も聞こえてきているので、日本はかなりヤバゲな状況に追い込まれつつある。


 しかし、だからといって、もっともっと税金をつぎ込め、と言う主張は短絡であり、見当違いである。以前から指摘している通り、国際価格で調達がなされたと仮定すれば、ドイツ、イギリスなどと同等あるいはそれ以上の計算力を手に入れるに足る十分な額の税金を毎年毎年投入してきているのである。問題は調達で、調達の仕方が極めて杜撰なのである。国際価格に比べ数倍以上のベラボウな国内価格で調達しているのである。この杜撰な調達が続く限り、いくら税金を投入しようと無駄である。調達を国際価格で行うようにすれば、すぐにでも中国やイギリス、ドイツなどを追い抜き、ロシアや韓国を振り払う事が出来るのである。


 勿論、各国と総計算力競争を展開するつもりはないが、この総計算力は、コンピュータの利用方法に直接利いてくるものであり、長期的に見ると、国の科学技術力に利いてくるものであるからである。気が付いたときには取り返しが付かない事態に陥ってしまっているという可能性が高いのである。

   日本のスパコン政策の喫緊の課題の一つは、「調達の改善」である事は間違いない。

 

 

 

 

  
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次世代スパコン、開発の凍結・見直し

公開日時: 2009/11/15 18:09
著者: 能澤 徹


 2009年11月13日、政府の事業仕分けで、文科省の次世代スパコン開発は2010年度の予算計上を「限りなく見送りに近い縮減」と仕分けられた。  これは事業仕分けチームの結論で、最終決定は行政刷新会議を経て、来年度予算書として国会で審議・承認されねばならず、まだ始まったばかりであろう。

 財務省のサマリー、文科省・理研の説明、仕分け人達の突っ込みと応答、そして結論に対する事後の関係者や私設応援団の反応、等々は結構面白かった。とりわけ面白かったのは文科省・理研側の対応で、データに裏打ちされた明快な答弁が出来ず、あれでは凍結も止むを得ないであろうと感じた。

 なお、この問題は「次世代スパコンからのNECの撤退で既に述べてあるので参照されたし。
 

 さて仕分けの財務省点は以下である。 

1.次世代スパコンの開発には、これまで545億円の国費を投入。仮に、来年度システムの本格的着手を行えば、完成までに、更に700億円近くもの国費投入が必要と見込まれる。また、完成後も毎年多額の維持費がかかるほか、ソフト開発や研究費など莫大な税金投入が必要となる。 

2.システムの本格的着手の是非の判断に当たっては、こうした莫大な税金投入に見合った効果・利益が得られるか否かについて、入念な検証が必要ではないか。 

3.特に本件は、共同開発民間3社のうち2社が本年5月に撤退を表明し、当初計画から大幅なシステム構成の変更を強いられており、見通しが不透明ではないか。こうした状況の下、プロジェクトを強行しても、当初の目標を達成することは困難ではないか。  

4.重大な事情変更があったにもかかわらず、引き続きプロジェクトを継続し、本格的着手を行うことが妥当と判断したことについて、説得的な説明が必要ではないか。 
 外国との開発競争を急ぐあまり、無理なスケジュールを組んでいるのではないか。

5.一旦、着手してしまえば、多大な国費投入が必要となることから、リスクが少しでも残るのであれば、プロジェクトを凍結し、戦略を練り直すべきではないか。

 以上の財務省の主張を手短に言い換えると、国家基幹科学技術の戦略としてのヴェクタ・スカラ両輪論を大々的に宣伝していた文科省・理研側は、片方の車輪であるヴェクタ部が抜け落ちても何の影響も無いなどとシャーシャーと結論つけているわけで、彼等の頭の構造が良くわからないということで、それなら逆に、あっても無くても関係ないようなヴェクタ部を、何故、国家戦略などと主張し大金をかけて設計しなければならなかったのか、取り込み詐欺のようなもので税金の無駄使いだろう、蟄居謹慎頭を冷やせ、というご尤もな主張である。


 この財務省の論理に対し、文科省・理研側はデータに裏打ちされた明快かつ有効な反論が出来ず、仕分け人の半数が廃止か見送り、残りの半数が縮減、という事で「限りなく見送りに近い縮減」となったわけである。

 この結論に対しては、財務省や仕分け人は科学技術を理解していないなどといった反論・不満があるようであるが、それは的外れで、上記の論点を理解すれば結論は至極当然、判ってないのは文科省・理研側で、自業自得という事である。

 

 国民に対し、国家基幹科学技術に指定した技術(次世代スパコン)の半分の機能が脱落したのに、影響ない、などということが有り得ることなのか? 国家基幹科学技術とは、なくなっても影響のないような、いい加減なものなのか? といったことで、スパコンの問題ではなく、文科省・理研のクレディビリティの問題なのである。

 当初1154億円、近頃1230億円といわれている巨額税金を投入し、今後も投入することになるプロジェクトのアカウンタビィリティの問題であり、そこから導き出されるクレディビリティの問題なのである。

 

 今日、国際市場で1PFlopsのスパコンを調達しようとすると、既に、概ね50-60億円程度で調達可能な段階にきているのである。これを証明するのが2010年設置予定のKorea気象庁のCrayである(ただしこの値段も、米国内で報道されている単価に比べ、かなり割高と考えられる)。このKoreaのデータを使用すると、現時点での単純計算で国際市場で10Peta機を調達すると500-600億円程度必要ということになる。そして2011-2012年となると、チップのコア数が増加するので単価はさらに低下し、その半値の250-300億円程度になるのではないかと推定される。

 次世代スパコンは総額1230億円で、これまで既に545億円使い、来年度は約270億円の概算要求が出ていて、今後は来年度を含め約700億円必要となっている。まあ、これまでの545億円をドブに捨てたものと考えても、残りの額で、国際市場から調達することは可能と考えられるので、ここは頭を冷やしての考え時であろう。(勿論、ドブに捨てた巨額税金の責任は、当然別途追及しなければならないことはいうまでもない。)

 

 また、スパコンのCPUを国産メーカに拘る理由も全く理解できない。パソコンのCPUはIntelとAMDであり、サーバのCPUもIntel、AMD、IBM、Sun(UltraSparc)など国外メーカがほとんどで、携帯もARMのアーキテクチャが多いのではないかと思う。つまり、スパコンだけCPUを国内メーカに執着しなければならない理由が全く理解できないということである。

 欧州各国は自国メーカはなくとも何の不都合もなく科学技術に邁進しているのである。何故日本だけが自国メーカでなければ科学技術が進まないのか全く理解できないのである。

 勿論システムメーカに関しても同じことで、このご時勢に、経済原理を無視して、国内メーカから高い買い物をしなければならない合理的理由はないのである。

 NECの脱落で明らかなように、国内メーカだといっても所詮は民間企業であり、国の戦略だからということで,ただ働きしてくれるようなご時勢でない事は明らかであろう。
 

 国の戦略を民間企業の技術と一体化し、民間企業と心中するような国家戦略を立案することが大きな誤りだということなのである。


 まあ、完成後も年間80億円程度の運営維持経費が掛かるといわれており、次世代スパコンはその戦略そのものがおかしいのではないかということで、今、根本的に検討し直すことは、必須の事であろうと考える。

 

 筆者の感覚では、スパコンなどは市場規模が小さく、分厚いオーバーヘッドで高コスト体質である大手メーカーより、技術力のあるオーバーヘッドの薄いヴェンチャに向いた市場である。政府はスパコン分野をヴェンチャ育成の土俵と捕らえ、ヴェンチャに経験を与えるための場ぐらいに考える柔軟な政策視点が必要であろうと思う。

「オール・ジャパンで」とか可笑しなことを言う前世紀の遺物のような老人連からは決別し、国際市場に打って出る事に焦点を絞った産業政策の一環としてのスパコン政策を考える必要があろうかと思っている。

 とにかく、スパコン政策においては、80-90年代に強いノスタルジを持ち、ヴェクタ一本やり、国産一本やりで脳硬化をおこしている老人連からは直ちに決別すべきであろう。

 

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このエントリーへのコメント
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2
今となっては スパコンもPCと同じで 作る事より いかに使うかが技術の要だと思うので 作る事にはこだわる必要はないと思います。

あと スパコン漫遊記 長い間御苦労さまでした。この連載も 今回の見直しに少なからない影響を与えられたのでは思います。 世の中ブログはたくさんありますが こういう国の決定に影響を与えられる様なブログがふえるといいですね。 現在のマスコミが どこかに鎮座するスパコンとしたら こういうブログは 庶民が買えるGPUベースのPC付属スパコンですね。 だれもが買えるけれど いかに使うかが課題という点も 似ている様な・・・・

今回見直しと決まりました まだまだ反撃がある様なので 熊澤さん最後までガンバッテください 私もコメト書く事で応援させていただきます。
 
  doc on 2009/11/23


1
次世代スパコンに使われる富士通のSPARC64 VIIIfxはたぶんSun Microsystemsが開発して後にオープンソースになったSPARCプロセッサですよね。ということは国産CPUと言う部分も怪しくなるような気がします。オープンソースでは日本で技術を独占できないので日本の技術優位を確保するという理由付けはできないのかなと思います。

  hisaki on 2009/11/17

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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中国の1.2Pflopsのスパコン天河

公開日時: 2009/10/30 21:40
著者: 能澤 徹

 

 2009年10月29日、新華社は国立国防技術大学(NUDT)が1,206Tflops(1.2PetaFlops)の理論性能を有するスーパーコンピュータ、Tianhe(天河)を開発したと報道した。

 詳細は定かではないが、IntelのCPU6,144個とAMDのGPU5,120個 を結合したシステムで、$88.24M(約80億円程度)と報道されている。

 天河の実行性能は、Linpackで、563.1Tflopsと報道されており、理論性能に対する実行性能比は46.7%という事になる。

 この563.1Tflopsは前回報告したKorea気象庁に来年設置予定の600Tflops超のCray機より若干上のLinpack性能である。しかし、天河がGPUで性能をかさ上げしているのに対し、Korea気象庁のCray機は、おそらく、ORLNのJaguarと同様全てCPUのみで性能を維持し、GPUに依存しないものと考えられるので、使用範囲、使い勝手ともに、はるかに勝っているものではないか思える。

 また、価格的にも、天河(80億円)は、実質的(実行性能的)に、KoreaのCrayの600Tflops機(36億円)の2分の1の程度の価格性能比ということになり、価格的にはかなり割高である。Koreaでの価格自体も、実は、米国で報道されている相場よりかなり割高になっているので、中国価格が国際価格的に脅威というわけではない。


 天河の詳細は不明であるが、IntelのCPUはNehalem-EPで、AMDのGPUはFireStream9270Sであろうと推定されている。また、システムの理論性能はFireStreamの性能によるものと推定されており、実行性能比が46.7%といった目を見張るほどの低性能の原因もGPUに依存している事を端的に示しているものと思える。

 広い意味でのGPU方式とはいえ、Cell+OpteronのRoadrunnerは実行比率に於いても75.9%とCPU機に引けを取らない性能を示しており、いわゆる、技術力や知性を感じるが、50%を切るようでは、そもそも、その理論性能の計算方式が誤っているとしか言い様が無いことになる。


 天河の563.1Tflopsは今年6月のTop500で眺めてみると以下の3機に次いで4位であるが、来る11月のリストではTop10には入るであろうけれど、何番かは定かではない。 

 また、筆者に言わせれば、世界のTopNというからには、Roadrunnerにも?をつけているが、HPCCの主要4ベンチマークのデータは提出し、少なくとも4分野全てでかなりな位置を占めることは必須であろう。

2009年6月のTop500から
1.LANL Roadrunner (Cell+Opteron) 1105.0/1456.7  (実行性能/理論性能)
2.ORNL Jaguar (Opteron)       1059.0/1381.4
3.Juelich Jugen (BG/P)         825.5/1002.7

 

 さて、筆者は、技術的には、この天河に対し、何か新規性とか創造性などを感じるかというと、ほとんど何も感じないし、技術的には、脅威といったものは何も感じない。日本に於いて言語問題を解決し、世界に打って出ようという元気の良いヴェンチャーがあれば、もっとはるかに気の利いたシステムをつくることが出来るとおもっているので、脅威などとは思えないし、逆に、へんてこなシステムをよくつくるよ、といった感じである。(まーもっと、日本にも税金で「腐った葡萄」を作っている輩が居るわけではあるが・・・・)


 問題の本質は、中国なりKoreaが技術的脅威といったわけではないのに、日本国内にいると、何故かこれらを脅威と感じるようになってしまうということで、優れて日本自体の局所的内的情況によるのである。

 何故日本が、現在、500Tflops超なり、1Pflops超のスーパーコンピュータを保持できていないのかが問題なのである。

 日本の技術力、財政力を持ってすれば、楽にもてるはずのシステムを、持っていないために生ずる脅威なのである。

 予算規模を考えてみれば、中国の80億円にしろKoreaの36億円にしろ、日本の主だったスパコン導入金額よりはるかに小額である。地球シミュレータ2(SX-9)などは200億円近くであるし、JAXAのFXやT2K(筑波、東大、京大)なども100億円前後である。理研の新システムは36億円といわれている。どうして、こんなに多額の国税を使って、高々200Tflops以下、多くは100Tflops前後の性能しか調達できないのかということである。

 そしてその結果、Koreaの600Tflop機、中国の1.2Pflops(実質0.5Pflops機)の性能を脅威と感じてしまうのである。これは、明らかに技術力の問題ではなく、調達技術の問題である。

 というより、特段、中国やKoreaが調達技術に優れているという事はなさそうで、国際標準価格で導入しているだけであろう。日本だけが勝手に非関税障壁を作りだして、国際価格からかけ離れた高値で導入しているというだけである。

 従って、脅威の原因は、日本国内に於いて、日本が自ら自分自身に撒き散らしているだけの問題で、その意味で、自作自演の狂言なのである。


 筆者は、2年ほど以前から。このことに対し警鐘を鳴らし続けている。このままでは今後益々この脅威は強くなり、ハードウエアの性能の問題だけではなく、もっとも本質的な、スパコン利用技術に於いて、国際レベルから大きな遅れを来たすのではないかと、強く、危惧する次第であり、その原因が日本のスパコン戦略にあるということは、改めて、認識しなおす必要があるであろう。


 日本のスパコン戦略はボロボロである。

 

  
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Korea気象庁 2010年にCrayの600Tflops機を導入

公開日時: 2009/10/02 09:33
著者: 能澤 徹

 Korea気象庁、2010年にCray600Tflop機を導入
2009年9月8日、Cray社は、Korea気象庁から600Tflops超のスパコンを$40M(約36億円程度)で受注したと発表した。設置完了は2010年後半とされている。Cray社は米オークリッジ研にCray XT5 の1Pflops機を設置しており、技術的には600TflopsはXT5で楽々可能であるが、多分、AMDの6coreか、Intelの8coreを使った開発中の新システムを設置するものと考えられている。

 このニュースのポイントは、極東地域で、600Tflops機の出現という事と、複数年総額$40M、つまりTflops単価約600万円というCray社の国際市場向けの価格性能比である。


 今年の5月に北陸先端大学院大のCRAYXT5の話題を述べた、そのXT5のTflops単価は2,000万円前後と推定されるので、Korea気象庁のケースは、その3分の1以下ということである。勿論1年半から2年程度の時間的ずれがあり、テクノロジーが多分1世代進むし、またシステム・サイズもおよそ30倍なので、Tflops単価が2分の1程度というのであればさほど驚きは無いが、「3分の1以下」となると、若干驚きである。Koreaでの価格は、日本における価格より、米国での価格に近くなっているのではないかと思えるのである。

 このKoreaでのCrayのTflops単価は、前回の投稿の中で述べた、米国でのTflops単価(Intel Nehalemで500万円くらい、AMD Istanbulで350万円くらい)に符合するもので、米国内だけでなく、極東地区でも概ねこの単価が該当し、したがって、日本を除く世界各国でのTflops単価の相場はこのくらい、という事である。日本だけが異常に高くなっているということで、日本のしくみにかなり問題のあることは明らかであろう。



 となると問題なのが、日本国内での導入価格や国産メーカの同等品の価格である。

理研 Nehalem版 スパコン(RICC-97.9TF)設置 (36億円?)
国内最速200TFLOPS、原研のLinuxクラスターNehalem,200TFを富士通が受注 

 最近国内で設置されたり発注されたスパコンでは、理研のRICC(108Tflops)や原研の新スパコンなどがあり、どちらもメインに富士通のPrimergyというIntelのNehalem 4coreを使用したもので、JAXAに導入されたFX-1(SPARC64-VII)とは全く異なるシステムである。

 理研のRICCの発注総額は36億円といわれており、大まかなTflops単価は3,300万円である。原研の発注総額は詳らかではないが、RICCから考えて概ね60億円程度ではないかと考えられる。この単価はJAXAのFX-1やT2Kなどの5,000~6,000万円ほどではないが、北陸先端大学院大のCray XT5の2,000万円よりかなり割高である。(勿論、前述のとおり、この先端大学院大のCrayのケースも米国ないしはKoreaでのCrayの単価からは飛び抜けて高い。)

 理研や原研のPrimergyによるスパコンは、Korea気象庁のCrayのケースと比較すると、4~5倍程度になっているので、Koreaの設置が1年後という事や今日の円高($=\90)を考慮しても、率直に言って、今日の国際価格相場からするとかなり割高であり、国際競争力のある製品とは思えない。

 付言すると、富士通のHPCのメニューは、AMD-OpteronのT2K(HX600)、Intel-XeonのPrimergy、SPARC64-VIIのFX-1などがあり、FX-1の後継がSPARC64-VIIIによる文科省の次世代スパコンという事になろうかと思う。大規模ユーザとしては、T2K(HX600)は京大、FX-1はJAXA、新Primergyは理研と原研などで、名大にはT2K(HX600)+FX1+SPARC-Enterpriseといったどれも小振りな複合システムが設置されている。多品種少量国内向けで、海外での設置という話は聞いた事が無い。

 

次世代スパコン 総額1230億円76円増加

 文科省の次世代スパコンは、NECが抜けた後、SPARC64-VIIIだけで10Pflopsを目指すのだそうであるが、何故か76億円もの追加出費が必要だそうで、開発総額1230億円となり、土地建物代を除いても、Tflops単価は 1,000万円/Tflops前後であろう。Korea気象庁のCrayの約2倍である。時期的には2010年後半で同じ頃と考えて良い。

 この文科省の次世代スパコンの根本的問題は、仮に目標性能が達成できたと仮定しても、国際市場で、このSPARC64-VIIIによるスパコンに価格競争力があるのかという点である。普通に考えて2倍もの価格差があるのでは、とても他国では商売にならないであろう。となると、商売は国内での、非関税障壁による過保護政策に頼らざるを得ない事になるのである。という事は、長期的にはNECの二の舞・・・という、いつか来た道になる可能性が高い、という事である。

 つまり、NECの-撤退からも明らかなように、独自技術維持というスローガンの国家戦略を、市場競争力を無視した過保護政策で支えても、長期的には、実世界の荒波は乗り切れず、結局、守るべき独自技術維持という国家戦略を投げ出さざるを得なくなってしまったというヴェクタ機のアイロニーに、全く学んでいないということなのである。


 ハッキリしているのは、国際市場で商売にならないようなコンピュータ技術など、多額の税金を費やして維持しても、何の意味も無い、という事であり、国際市場に打って出られないような過保護で内弁慶なコンピュータ技術など、技術として意味がないといっても過言では無い。

 自主製造技術を維持したいのなら、国際市場で勝ち抜かねばならないし、勝ち抜けないのであれば自主製造はあきらめ、ユーザとして製造者をコントロールするという方向に転換するしかないのである。


 文科省のスパコン戦略の根本的な欠陥は、コスト意識の欠落、国際競争力視点の欠落であり、スパコン戦略とは産業戦略であるという基本認識の欠落なのである。要するに文科省のスパコン戦略は、配下の文化庁の行っている古典芸能の保護伝承での文化保護政策のようなもので、開かれた国際市場に向けた、国際競争力に焦点が置かれた産業政策などでは全くないということなのである。

 その結果、古典芸能保護方式で巨額税金を投入し、市場価格を無視した目が飛び出るような高額で、必死に少量のスパコンを作動させるのであるが、日本以外の世界の諸国では、国際競争力のある廉価で高性能なスパコンを多数導入するので、結局、日本の計算能力は地盤沈下の一途をたどるという事態になってしまっているのである。

  
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2010年04月30日

GRAPE-DRは失敗作、税金15億円は無駄金

公開日時: 2009/07/04 01:02
著者: 能澤 徹



 2009-06のスパコンTop500277位にGRAPE-DRがリストアップされていた。東大は、早急に、GDRプロジェクトの結末を明確にすべきであり、公式な、成果の詳細発表を行うべきである。これは、プロジェクト開始時の大々的発表に対応すべきものであり、税金15億円支出に対する義務であろう。
 
 また、本投稿の目的は、GRAPE-DRプロジェクトの結果が、公式には何も公表されないまま、ウヤムヤに闇に葬られてしまう事に対する警鐘のためであり、また、後年に、結果を明快に参照可能なようにしておくためである。必要なのは、公式な結果発表であり、小賢しい、目くらまし情報操作もどきの、私的メモやブログの類ではない。 結果責任は問われるべきであり、責任回避は許されるものではない。
     
参照;GRAPE-DRはスパコンではないらしい!
     GRAPE-DRの性能 (その2
   Grape-DRの性能
   GRAPE-DRと次世代スパコン
 
 
<性能要点>

 2009年6月度 Top500リストより:

 277位  GRAPE-DR
 理論性能:84.48Tflops
 Linpack :21.96Tflops (実行効率26.0%)
 コア数 :8192 
 クロック:330Mhz

これが、2Pflops(2,000Tflops)実現を公言し、「地球シミュレータを1ラックで」などと言って、5年で15億円の税金を使った、鳴り物入りプロジェクトの成れの果てである。
 
             目標値      実現値      実現率
 規模(理論性能)  2,000Tflops  84.48Tflops  4.22% (1/16)
 実行演算性能   2,000Tflops  21.96Tflops  1.10% (1/100)
 相対実行性能              25.99%  
 Tflops単価    75万円      6,830万円
  
 要するに、5年かけて実現できたのは、目標に対し、規模(理論性能)で4.22%、実行性能で1.10%であり、実現した規模の中での実行性能は25.99%、という、「お粗末な一席」であった。


<コスト・パフォーマンス>

 コスト的には、開発費15億円を目標値で割ると「75万円/Tflops」であったが、実際に実現された実行演算性能ベースでは「6,830万円/Tflops」であった。  今日、米国では、理論性能ベース(実行効率80%前後)で、Intel4コアCPUNehalem-EPを使った場合$50,000500万円)/TflopsAMD6コア、Istanbulを使った場合は$35,000350万円)/Tflopsなどと報じられており国内では、理論性能ベースで、北陸先端大でのCray XT5が「約2,000万円/Tflops」であった。さらに、近々出荷されるであろう8コア版CPUによるコストパフォーマンス向上を考えると、特殊なGDRなどを用いるより、 市販の汎用スパコンを買ったほうが、遥かに性能的にも、設置面積的にも、「お得」ということになるのである。


<プロジェクト存在根拠の崩壊>

 そもそもGDRプロジェクト出自の論理的根拠であった、20045月のGDRプロジェクト開始報道発表2.提案の概要」の中に記されていた

「一方,高い計算能力を低コストで得るための手法としてのクラスタ計算機は,現実的に設置可能なサーバ台数の限界から汎用MPUを用いるだけでは100TFLOPSを越す性能の達成は困難であり,次世代の科学技術研究のための情報基盤として性能面での限界を持つ」

との汎用CPU・100Tflops限界断定は、今日のTop500リストを見れば、全くの出鱈目であることは一目両全であり、従ってGDRプロジェクト出自の正当性は完璧に崩壊してしまっているのである。その上に、アーキテクチャを含めた技術的稚拙さから実行性能は信じ難いほど低く、コストパフォーマンス的に汎用CPUの進化には追いつくことが出来ず、しかも「場所食い」で、結局、5年をかけて、GDRの存在理由が、一般的には、何も存在しないことを証明したということなのである。

  つまり、このGDRプロジェクトは「税金を投入する意味があるロジェクトであったのか」ということであり、単に提案者数人のためだけの「お遊びに過ぎなかったのではないか」ということで、税金の無駄遣いであったという結論にならざるを得ないのである。


<チップ・ボードに関して> 

 さて始めに、クロックに関して述べる。クロックのプラン値は500Mhzで、06年のチップ発表時は正常作動、07年11月のSC07では500Mhzと公表されたが、08年のボード発売時は380Mhz、そして、今回、プロジェクトの最終結果としては330Mhzという事なのである。プラン値の0.66.7%という事であり、当然、目標理論性能も2Pflopsから自動的に33.3%減の1.33Pflopsに低下してしまっているのである。

 クロックを08年の380Mhzから330Mhzへ低下させた理由は、普通に考えれば、380Mhzでは、Linpackの計算で8192コア128ノードの全ノードを、「数時間から数十時間、エラーなく連続作動させる」ことが出来ず、330Mhzに下げざるを得なかったということであろう。こうした度重なるクロックの変更は、如何に信頼性を無視した杜撰な設計が行われていたのかを示す好例であろう。

 と同時に、この結果は、SC07で発表していたPaperのデータは、ほとんど虚偽発表を疑わせるものとなり、倫理的問題を惹起しているように思うのである。



 次に、今回のGDRシステムの構成に関する補足を加えてみる。

 Top500のデータから判断すると、どうやら、1チップは16コアと計算しているようで、1コアは32演算器構成で理論性能は10.31Gflops、実行性能2.6Gflopsということになり、1チップ当りの理論性能は164.96Gflops、実行性能は42.89Gflopsである。 そして、ボード性能は、4チップ構成なので、理論性能654.96Gflops、実行性能171.56Gflopsとなる。

 このGDRチップのLinpack実行性能は、2.93GhzのNehalem-EP(4コア、理論性能46.9Gflops)のLinpack実行性能を90%とした場合の、42.2Gflopsと大差ない数値であるので、性能的に汎用CPUを凌駕するようなものではなく、逆に、近々出荷されるNehalem-EX(8コア)により軽く逆転されてしまうような性能なのである。

 GDRボードの実行性能もNehalem-EPの2ソケットボード2枚と大差ない事になり、また、コスト的にも、K&F社から売り出されているGDR+PCの2筐体セットが184.8万円であるから、Nehalem-EPの2ソケットボード2枚の買った方が安いか、あるいは同じくらいではないかと思う。米国での調達を考えるなら、GDRの約半値で調達できる程度と考えられる。そして、設置面積・体積的にも汎用PCボード2枚の方がはるかに小さくて済む。


 要するに、GDR は、チップ性能も、ボード性能も、ボード価格も、現状の市販の汎用サーバのボードと大差なく、逆に、用途に色々限界がある分マイナスであり、クロックの例からもわかるとおり信頼性にも疑問符が付き、将来プランも全く不明で、さらに、汎用CPUの8コア版が出荷されると、性能的に全く追いつかなくなってしまうということなのである。



<システムに関して>

  これまでGDRに関しては、チップ性能やボード性能に関する若干の情報はあったが、システムに関する情報は皆無で、5月にボードを収容する筐体の写真が出てきたことで、今回初めて推定ではあるが、ラックに組み上げたシステムの議論が可能になったわけである、これも一言でいって「お粗末!」としか表現のしようのないものである。

 K&F社によれば、作動可能なGDRのシステムはGDR1ボード筐体に別筐体のPCをPCIえケーブルで接続したもので、184万円となっている。GDR筐体にはボード2枚まで設置可能らしいが、売り出し中のものは1ボードであるので1ボードを想定すると、GDR+PCの2筐体ユニットで、実行性能171.56Gflopということになり、実質1ボード換算85.78Gflopsということになる。

 これは市販の4コア2チップのサーバ・ボードと大差ない性能で、しかも、GDRボードを収納する筐体は、写真で見ると、厚みが2.5Uから3U程度であるので、これにPCの筐体を加えると、1Uサーバ2枚に比べ、かなり厚く、マイナスである。つまり、設置面積・体積的には市販のボードの方がはるかに小さく済むような代物ということである。

 今回のGDRステムは全体で理論性能が84.48Tflopsという事なので、GDR+PCのペアが128組のシステムということになる。1ラックに8ペア積み上げるとすると、全体で16ラック必要ということになり、ラック当りの理論性能は5.28Tflops、実行性能は1.37Tflopsであり、1ラック4ペアであれば32ラック必要で、ラック理論性能2.64Tflops、実行性能0.686Tflopsということになる。


 このGDR程度の性能で、16ラックとか32ラックとかは設置面積的に「場所喰い過ぎ」で、CrayのXT5なら4ラックで十分お釣りの来る性能であり、BG/Pなら2ラック程度の性能であるので、Packagingに極めて問題があることを示している。


 2004年のプロジェクト開始発表時の2Pflops実現方法は、1ラック128Tflopsのラックを8ラック並べて1Pflopsシステムを作り、この1Pflopsシステム2セット間を高速回線で結合する事で2Pflopsを実現するというものであった。このノリが「地球シミュレータを1ラックで」とか「1ラック5千万円で」とかいった大言壮語を吹き出すベースになったわけである。

 ところが今回出てきた代物は、プロジェクト開始時のオリジナル・プランとは似ても似つかない、ダサくて、大場所喰いのシステムであった。地球シミュレータと同等にするには「1ラック」どころか「32ラックとか、それ以上のラック数が必要」と思えるような代物で、その落差は余りにもひどく、ほとんど詐欺といっても言いすぎでないような代物である。GDRのPackaging は、これも、「お粗末」の一語に尽きるのである。


<電力消費と設置面積>

 電力消費が「Roadrunnerには及ばないがBG/Pより良い」という結果は率直に評価したいとは思うが、どちらも1.1Pflopsとか0.8Pflopsとかで、性能規模が、GDRの22Tflopsに比べ、50倍、40倍といった本格的スパコンであるので、それらと比べられても・・・といった微妙な思いが残る。第一義的目標は性能であったわけで、主目標が駄目なので、他の分野の数値で「勘弁して」という言い訳は「聞きたくない」世界である。

 何れにせよ、PowerXcellにしろGDRにしろ、いわゆる多演算器によるアクセラレータ方式の方が、汎用CPUによるものより電力消費が少ないということは、マクロ視点で考えてみると、汎用化のために必要とされるゲート量を、アクセラレータ方式では、演算器に振り向けることが出来るためと言うことのように思えるが、逆に、アクセラレータ方式では適用分野に制限が発生しているということとも思えるので、一長一短であろう。



 GDRに話を戻すと、消費電力が少ない割には、設置面積(ラック数)が膨大ということは、Packagingがズブズブということで、設計が杜撰としか言いようがない。これでは性能を1Pflopsに上げようとすると、必要ラック数は700ラック以上も必要で、超大型の体育館の準備をしないと設置できないようなシステムである。正直、理解に苦しむ設計であり、杜撰、お粗末、としかいいようのない代物である。

 これはGDRのボード設計が極めて杜撰であったいう事であり、チップの機能集約やボード実装を含めたシステム全体での適切なPackaging設計が欠落していたということである。  設置面積は今日のスパコンの重要な評価関数であることを忘れてはならないことを強く指摘しておきたい。



<まとめ>
 
 エンジニアリングは結果が勝負であり、「屁理屈の議論や逃げ口上」、「責任転嫁」、などの「目くらまし」は、一切通用しない。「一生懸命努力した」などといった甘えも許されるものではない。

 結論的に、Grape-DRは、コストパフォーマンス、信頼性、設置面積、ほとんどの点で、落第点であり、しかもその落第の度合いが甚だ激しい失敗作であった。


 要するに、一握りの「狼少年」たちのお遊びに過ぎなかったわけで、税金の無駄遣い、としか言いようの無い物であったということである。

  
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