2010年09月29日

国立研究機関のスパコン調達のTflops単価推移

<国立研究機関のスパコン調達のTflops単価推移>
                                    理論 推定Tflops単価
                                   Tflops (@百万円)

2008 京大     T2K  AMD-X86    富士通   70.2   48
2008 東大     T2K  AMD-X86    日立    140    50
2008 筑波     T2K  AMD-X86    Appro   95    20
2008 JAXA          SPARC64-VI  富士通  135.7   69
2008 海洋研機構      SX-9       NEC    131   116

2009 北陸先端大 Cray-XT5 AMD-X86  Cray   19.6   20
2009 理研     Primergy Intel-X86  富士通   97.9   30
2009 原研     Primergy Intel-X86  富士通  200    30 ?


2010 東北大    SX-9+Express5800  NEC         100 合算
             Express5800単体推定         1.7   33   
2010 東大物性研 SX-9+AltixICE-8400EX SGI        114 合算
             AltixICE単体推定            180    8  
2010 東工大    HP+nVIDIA     HP+NEC   2400    1.3 ? 
2010 東大先端研 Primergy B922             39.3  10
2010 京大基物研 SR-16000-XM1 Power7 日立   90.3   6               

参考:
2010 Korea気象庁   Cray-XT6       Cray   600    6  (Y$90)
2010 UT-TACC     Dell-M610     Dell    302    2.5(Y$85)


参照:
地球シミュレータ後継機
地球シミュレータと阪大のSX-9
T2K(筑波、東大、京大)とJAXAのスパコン(2/2) <JAXA>
・T2K(筑波、東大、京大)とJAXAのスパコン(1/2) <T2K>

北陸先端大のCRAY XT51/2
北陸先端大のCRAY XT5 (2/2)<税金の価値>&<為替レートと産業空洞化>
Korea気象庁 2010年にCrayの600Tflops機を導入 (理研、原研)
東北大のNEC Express5800 と CrayのBaker
TSUBAME2.0(2.4Pflops) NEC+HP連合が落札
・京大基礎物理学研の日立SR16000-XM1とTexas大TACCのDell-M610

東大物性研のSGI Altix ICE8400EX
東大先端科学技術研究センターの癌治療薬開発専用スパコン


(注)
 上記リストでのTflops単価は理論性能に対するものです。 以前は理論性能に対し、Linpack等の実行性能が50%以下とか、60%程度といったスパコンが数多くあり、理論性能の信憑性がなかったのですが、最近は多くの大型スパコンは、Interconnectの進化やLinpackのTune-Upが良くなった事もあり、70%以上が普通で、80%、90%などのものも多くなっており、単価計算は理論性能を基にしました。
 ただし、東工大のTsubameのような「GPGPU+CPU」typeのシステムの理論性能に関しては、従来の単純合算法では実行性能との乖離が大き過ぎ、50%以下のものが多いので、注意が必要です。

  

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2010年09月27日

東大先端科学技術研究センターの癌治療薬開発専用スパコン

 2010年8月5日、東大先端科学技術研究センター(先端研)は富士通と共同で、癌の再発・転移治療薬開発専用のスパコンを構築し、8月1日から稼働を開始した旨発表を行った。
 これは、国の最先端研究開発支援プログラムからのFundによるもので、富士通のBlade Server 「Primergy BX922 S22」を 300Blade並べて構成さるシステムで、理論性能は38.3Tflopsで、費用は約4億円と報道されている。


<Primergy BX922 S22>

 Primergy BX922 S22では、CPUはIntel Xeonシリーズの中から選べるようになっているようで、先端研のSystemは以下である。

CPU       Xeon 5650 6core
Clock      2.66GHz
Mem      12MB
Chip Peak  64Gflops

Blade      2socket(Chip)
Blade Peak 128Gflops
node      =Blade=2socket

Interconnect Infiniband QDR 4GB/s
HDD       1PB (Raid6) 

System     300node(Blade)
System Peak  38.3Tflops

<Tflops単価>

 費用の公示データはないが約4億円と報道されている。設置の経緯やFundの形態からして、リースなどといった事は考え難いので、単純にTflops単価を計算すると、約1,000万円/Tflopsという事になる。
 
 この先端研のPrimergy Systemの約1,000万円/Tflopsは、2009年の北陸先端大に設置されたCray-XT5の約2,000万円/Tflopsに比べれば、1年の時間差で半値であるが、2010年5月の東大物性研のSGI Altix ICE8400の約800万円/Tflops、2010年に設置予定のKorea気象庁のCray-XT6の約600万円/Tflops、2010年9月の京大基礎物理学研究所の日立SR16000-XM1の600万円/Tflops、に比べると割高ということになる。

 また、京大基礎物理学研究所の稿で述べた、米国U-Texas TACCのLonestar後継機の300万円以下/Tflopsに比べると遥かに高い。


<汎用実験装置としてのスパコン>

 先端研の「癌治療薬開発専用スパコン」という使い方は、今後のスパコンの使い方として極めて重要な使い方である。

 いわゆる、従来からの、センターに鎮座するスパコンを、多分野の人達が、広く浅く使う、という従来の使い方は、「無いよりは益し」程度の話で、スパコンを道具・実験装置などとして使込むといったレベルの話からは程遠い。

 専用スパコンという考え方は、スパコンというより、「専用の汎用実験装置」と考えるべきで、こうした実験装置を多数保持する組織・国が、今後の科学技術開発において、圧倒的に有利になることは明らかである。1点豪華主義などは基礎体力という観点からは殆ど無意味で、裾野を十分に広げない限り、有意味な、国力は根付いてこない。

 こうした意味で、国内の各研究機関が、従来の高価なヴェクタ機の呪縛を振り払い、実験装置としての廉価な高性能スパコンに目を向けだした事は、ご同慶の至りである。

  
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東大物性研のSGI Altix ICE8400EX

 2010年5月20日、日本SGIは東大物性研から理論性能180TflopsのAltix ICE8400EX システムと理論性能6.6TflopsのNEC SX-9を受注したことを発表した。 公示情報によれば、期間は2010年7月1日から2015年3月31日までの4年9ヶ月で、支払月額は約4,400万円である。

 理論性能の180Tflopsは、同じ東大の情報基盤センターのT2Kの140Tflopsより遥かに高性能で、しかも、価格もかなり安価であり、京大・基礎物理学研究所の日立のSR16000-XM1と同様、国立の研究機関におけるスパコン調達に新たな一石を投入した様に思う。 

<物性研 Altix ICE8400EX System>
 CPU  Xeon 5570  4core
 Clock 2.93GHz
 node  2 socket
 Total 1920 node (3840socket, 15360core)
 Peak   180Tflops
 
   
 Total Mem 46TB
 Storage  91TB 


<Tflops単価>

 支払総額は月額4,400万円で4年9ヶ月なので、約25億600万円ということになり、リース加算分を15%程度と仮定すると、推定価格は約21億3,000万円となる。

 SX-9の単価は東北大のセンターの例から推定すると約1億円/Tflopsteidoなので、物性研の6.6Tflops機は6億6,000万円という事になり、Altix ICEの方は約14億7000万円ということになる。従って、物性研のAltix ICE8400EXのTflops単価は約800万円程度と推定される。

 他方、2010年6月1日付け日本SGIのAltix ICE8400の発表文書の中の参考価格には、Xeon5600、2.66Ghz、192core版の値段が約2,200万円と なっている。このConfigurationでの性能は2Tflopsと計算されるので、この参考価格からは単価は1,100万円/Tflopsと計算され、大量導入とアカパック等のDiscount要素に、InfinibandなどのInterconnectやHDDなどの加算コストを考慮してみると、800万円/Tflopsという推定値は「当らずといえども遠からず」の数値ではないかと思う。

<Cray-XT5、XT6との比較>

 SGIのAltix ICE8200は、米国ではNASAのPlaiadisで使用されているもので、ICE8400はその後継である。NASAはPlaiadisにICE8400を追加導入し、Pflops機に向けた増強を図っていると報道されており、世代的にはICE8200はCrayのXT5に、ICE8400はXT6に対応すると考えてよいと思う。

 価格的には、2009年に北陸先端大に導入されたXT5は約2,000万円/Tflopsであり、2010年導入予定のKorea気象庁のスパコン(XT6?)は、600万円/Tflops程度と推定される。

 物性研のICE8400の800万円/Tflopsという単価は、Korea気象庁のXT6に比べると割高感はあるが、北陸先端大のXT5に比べれば、規模の違いもあるが、前進であろう。ただし、最近の京大・基礎物理学研究所の日立SR16000-XM1の600万円/Tflopsは更に前進しており、更なる国際価格への収斂が期待される。

  
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2010年09月11日

京大基礎物理学研の日立SR16000-XM1とTexas大TACCのDell-M610

<日立SR16000-XM1>

***(訂正情報 2010年9月17日追加)***
 文科省の調達情報に、当該基礎物理学研究所のものと思える落札公示が9月1日で公表されていましたので、本文中の、総額及びTflops単価関連の記述を訂正いたします。
 公示では、5年リースで、月額10,706,325円となっていますので、5年間でのリース総額は642,379,500円という事になり、ノーマライズした価格は約5億5千万円程度と予測されます。これに伴い、Tflops単価も600万円/Tflops程度に下がることになります。
*********************


 2010年9月8日、日立製作所は京大基礎物理学研究所から同社のHPCサーバーSR16000-XM1(90.3Tflops)の受注を受けた旨の発表を行った。基物研は、これまで、NECのSX-8、及びSGIのAltix3700を使用しており、概ね1.6Tflops程度の総合計算能力を有していた。

 日立のXM1は、CPUにIBMのPower7を使用しているスパコンである。概要仕様から判断してIBMのPower755と同等と思えるので、Power755の仕様を参考にしながら、細かく見てみる。

 Power7は1chip=8coreで、XM1はこのPower7 CPU1基を小カードに125GBのメモリ等と一緒に実装し、プロセッサカードとしている。作動クロックは3.3GHz、Chip性能は211Gflopsでり、プロセッサーカードの性能も211Gflopsである。そしてこのプロセッサカード4枚を4UのChassisに挿入したものをNodeとし、Node性能はChassis性能と同じで0.844Tflopsである。

 XM1のChassisは4Uなので、Rackには4chassis程度は収容可能と思えるので、Rack性能的には3.38Tflops程度と考えられ、x86系と同じような性能Levelと判断される。
 基物研のスパコンは、このNodeを107台(Rack数では27台程度)集めたもので、理論性能は90.3Tflopsということになる。5年で約7億円程度と報道されている。
*(訂正)落札公示では月額月額10,706,325円で、5年総額約6億4237万円)

 
<Tflops単価>

 今のところ、落札公示のデータが公開されておらず、メディア報道だけなので、正確な価格情報ではないが、5年リースの総額が7億円と考え、ノーマライズした価格を予測してみると、概ね、6億円前後で、Tflops単価は650万円程度ということになる。
*(訂正)落札公示を元にすると、ノーマライズした価格は約5億5千万、Tflops単価は600万/Tflopsと推定される。

 この650万円/Tflops程度(*訂正後は600万円/Tflops)という単価は、北陸先端大のCray-XT5の推定導入単価(約2000万円)に比べるとかなり安くはなっているが、それでも現在の推定国際相場の2倍ほど、割高である。

 しかし、支払月額は1400万程度(*落札公示では月額約1,070万円)ということで、この程度であると、国内主要大学に所属する研究所単位で調達が可能な額であり、今後、様々な、大学内研究所が100Tflops程度のスパコンを調達することはブームになるのではないかと思う。
 問題は、国内メーカーが、高くてもこの程度の単価、できれば、国際相場の単価で、スパコンを提供できれば、文科省の次世代スパコンなどをあてにせずとも、各研究機関が使い勝手の良い自前のスパコンを保持する事が可能となるわけで、学術・研究の振興には計り知れない効果が期待できるのである。


 <NCSA Blue Watersとの比較>

 HPC業界でPower7はNCSAのBlue Watersに使われていることで注目を集めているわけであるが、同じPower7のChipを使っているが日立のSR16000-XM1とは構成がかなり違っている。

 前述のXM1のBuilding Blockは今年2月に発表されたIBMのPowerサーバーの系列のもので、XM1はPower755と同じ構成と見受けられる。そして1processor-card=1chipという構成はX86系でよく使われる構成であるが、MCMが主流のPower系としては新しい構成で、空冷である点を含めて、コスト的にX86系を意識したものではないかと思う。

 これに対しBlue Watersは、従来からのPower chipの構成を踏襲し、4ChipとMemoryをMCM(Multi Chip Module)に実装し、このMCMを更に大きなMother Boardに8個実装しているもので、この2UのMotherboardは液冷であり、Packagingレベルでの集積度は極めて高いシステムとなっている。

 Blue WatersのPower7は4Ghz駆動なので、chip当り256Gflopsなので、1MCMで1Tflopsとなり、1Motherbordで8Tflopsということになる。Rackには、この2Uの大型Motherboardを12台設置可能なようなので、1Rackで96Tflopsという非常に高い集積度になっている。
 
 XM1の場合、Packagingにおいて、CPUのMCMは採用されておらず、単純に1Chassis(Drawer)に4プロセッサカードであるので、このChassis性能がBluewatersのMCMに対応することになり、BlueWatersのMotherboardはMCMを8基収容するので、packaging密度はmotherbordの大きさと高さ(4Uvs2U)を考慮して8倍程度の差はあるように判断される。勿論、この密度の違いは空冷vs液冷によっていることは明らかであろうけれど、MCMを使わないプロセッサ・カード方式などはX86系の売り方を意識しているであろう事も想像に難くない。


<Texas大TACCのDell-M610>

 2010年8月30日、米Texas大のTACCは、同センターに設置済みのDell社製のスパコンLonestar(理論性能62Tflops、Dell PowerEdge1955)の後継機として理論性能302TflopsのDell PowerEdge Blade Server M610を導入する旨の発表を行った。これはNSFの予算によるもので、$9Mが認められたとしている。

 TACCにはいくつものスパコンが設置されており、有名なものには、2008年設置のNSF HPC FundによるRanger(理論性能579Tflops)があるが、このLonestarはNSFのTeragrid用のためのもので、その置き換えということである。

 Dell M610はIntelのtwo-6core Westmereを使用しているもので、12/2010にLimited Use、early/2011にGereral Useというscheduleとなってる。
 
 Lonestarの302Tflops で$9M(7.65億円/¥$85)という調達額は、かなり魅力的なもので、単価的には、253万円/Tflops(¥$85)である。最近の円高は激しすぎ、過去のTflops単価比較で使用していた110円、100円、90円などとは差が大きすぎるので、¥$100としても、298万円/Tflopsである。 
 このデータを元にすると、安いと思われている前述の京大基物研のXM1の600万円/Tflopsですら、TACCのLonestarの2.2~2.5倍という事になり、未だに、スパコンの内外価格差は、大きく存在するといってよいのではないかと思う。

  
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