2010年04月28日

T2K(筑波、東大、京大)とJAXAのスパコン(1/2) <T2K>

公開日時: 2008/02/23 19:00
著者: 能澤 徹

 昨年末から大型スパコンの調達ニュースが続いている。T2KJAXAである。

 T2K>
T2Kの共通仕様の骨子は、
1ノード16コア以上、メモリ32GB以上(4コア4ソケット)
・ノード内共有メモリ、転送40GB/s以上
・インターコネクト 5-8GB/s以上
 ということで、3大学ともOpteron4コア・4ソケットのボードである。

    Peak File 期間 リース 推定  Tflops   メーカ
   TF  TB 月  総額 買取額  単価
筑波 95   400 60  25.2億 21.4億  2246万 APPRO
東大 140 1000 69  87.4億 69.9億  4989 日立
京大 61   800 46  39.0億 33.9億  4827万 富士通     
  (
70.2

 

 従って、T2Kというオープン・スパコン仕様にそったスパコンのTflops単価は、単純化して言うと、米国が1000万で、輸入すると2000万になり、国産メーカがつくると5000万前後になるということが判明するのである。

 


<内外価格差>

 Top500での日本の存在感は「地に落ちた」と嘆く諸先輩が多い。これには様々な理由が考えられるが、最も直截的で最大の理由を挙げるとするなら、それは、内外の価格差なのである。

 米国が1000万円のところを5000万円とか2億円とか払っていれば、同じ額の税金をかけても、日本は米国の5分の1、10分の1、あるいは20分の1程度の計算能力しか調達できないことは自明であろう。つまり、これが「存在感」をなくす原因なのである。

 少なくとも国際的な科学技術の競争力を維持してゆくには、競争相手と同じ程度の道具は必要である。公共調達に経済原理を働かせ、国際常識に沿ったオープンかつ公平な調達を行えば、同じ予算で、確実に現在の数倍の計算能力が手に入るのである。

 米国での単価とはいわずとも、筑波の調達単価を東大に適用するだけで200Tflopsを越え、ドイツの世界第2位のBGPと同程度のスパコンが手に入るのである。勿論インドの後塵などを拝することもなくなるのである。


 実はこのことは日本のスパコン調達のいたるところで起きることなので、Top500の中で「存在感が増す」などといった単純皮相なランク付けの問題だけではなく、計算力を欲している我が国の科学技術者に、より多くの計算能力と機会を廉価に提供することであり、我が国の科学技術の足腰を鍛えるものなのである。

 したがって、今後のT2Kの課題は、今回のT2K調達が図らずも明らかにしてくれた「内外価格差の問題」であり、(1:2:5)の価格差をどの様にして何処まで解消できるかということが最大かつ焦眉の急の問題と考えられるのである。

 ところで、筆者は、T2Kの本当の目的が何であったのかはよく知らない。端から見ていると、何故、3大学が徒党を組んであの程度の共通仕様で調達をしなければならなかったのか不思議であった。しかし、改めて考えて見ると、国内の各種組織の内に散らばった、狂信的なベクタ教のマインド・コントロール下にある信者とか、偏狭な技術ナショナリスト、あるいは、それらを楯にして闇に隠れた技術利権屋もどき、などからの暗黙の圧力を振り払うには、「赤信号、皆で渡れば怖くない」式のT2Kの仕掛けが必要であったのではないかと思うようになっている。


 東工大のTSUBAMEに始まり、地球シミュレータのリプレース報道やT2K調達などを通し、徐々にマインドコントロールが解け、普通の国際常識が浸透して行くことは、慶賀に堪えない。


(2/2 に続く)

 

 



Posted by petaflops at 08:52│Comments(0)TrackBack(0) スパコン 02 

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