2010年10月27日

ArgonneのCray-XE6 と Stuttgart HLRSのCray-XE6など

<Argonne Beagle>

 2010年10月21日、米Argonne研究所のComputation Institute(CI)はBiomedical分野用のスパコンとして、Cray-XE6(150Tflops,18,000core、ニックネームBeagle)の導入を発表した。設置は1Q/2011である。契約額は公表されていないが、予想としては$5M前後ではないかと思っている。

 Argonne研はイリノイのシカゴ近郊にあり、組織的にはエネルギー省傘下の組織であるが、核開発関連のNNSA傘下の御三家研究所(LANL、LLNL、Sandia)とは別のOffice of Science(OS)傘下の大変大きな研究所で、研究分野も科学全般の多岐にわたっている。
 Argonne研の始まりは、マンハッタン計画に直にリンクしていたシカゴ大の冶金研究所で、核開発の名前を隠すためウランを取り出すような冶金の研究機関としたものである。当時、役に立つのかどうかわからなかった核研究に多額の予算措置を行うことは不可能であり、ドイツや日本への情報漏れを防ぐ意味もあり、別の機関などでは代替エネルギー研究などの名目も使われていた。当時の所長は、Compton効果の発見で、米国で最初にノーベル物理学賞を受けたArthur Comptonで、彼の庇護の下、ノーベル賞授賞式から直接米国へ亡命してきたイタリアのEnrico Fermiが中心となって核分裂の基礎研究を行った由緒のある研究所である。

 ArgonneのCI には幾つかの施設があり、その中の1つはAlgonne Leadership Computing Facility(ALCF)で、2010-June版Top500で第9位の0.5PflopsクラスのBG/P(Intrepit)が設置されている。CIにはBlue Geneコンソーシアムの事務局が置かれており、IBMのソフトには満足せず、自分達でOS等々を開発しているグループがいるなど活発な動きもあり、2012年には10Pflops版のBG/Q(Mira)がLLNLのSequoiaに続いて設置される予定になっている。

 今回、Cray-XE6の導入が決まったのは、Initiative in Biomedical Informatics(iBi)という、Blue GeneのALCFとは別の施設で、ニックネームのBeagleはCharles Darwinが乗っていた船の名前から命名されたものということである。


<Stuttgart HLRS>

 2010年10月26日、Cray社はドイツのStuttgart大のHLRS(The High Performance computing Center, Stuttgart)から複数年複数フェーズで総額$60Mのスパコン設置契約を受注したと発表した。内容的には、2011年にXE6を納入し、2013年後半にCrayの次世代スパコン、開発名Cascade、を設置するということである。性能に関する記述は公表されていない。
 
 Cascadeは、DARPAのHPCS programに於いて ”Adaptive Computing(Heterogenious Computing)" を実現するペタコンとして$250Mで受注したBig Projectであるが、Vector 処理の部分が不調で、昨年暮れ、DARPAとの間で契約見直しの騒動を起こしていたProjectである。

 見直しの具体的内容は承知していないが、今回のHLRSの発表を見ると、2013年にIntelの次世代CPU(多分Sandy-Bridge)を使ってCascadeを納品するとなっているので、機能的には、DARPA向けCrayのAdaptive Computing(Cascade)はIntelの次世代CPU(多分Sandy-Bridge)で実現するということと考えてよいと思う。
 という事は、Adaptive ComputingはCary独自の製品というより、Intelの普通のCPU製品ということなので、特段、Crayに拘ることなく、どのメーカーも製品を提供する事は可能という事になる。

 この見直しによりCrayは、金銭的には、かなりの減額を受けたようで、昨年度の決算は、このDARPAの見直し分が直に決算内容を大きく左右し、結果、小額ではあるが赤字となり、3年連続の赤字決算となってしまった。
 Cray Inc.は、従業員数約850人、年間売上げ約$280M(約220億円Y$80)程度の中小企業であるので、DARPAの契約額は年間売上額に相当し、複数年での売上としても、かなりな比重であったわけで、そのうちの$60M程度が減額された模様で、決算上はかなりな打撃であった訳である。
 多分今年も経営的には厳しい状況にある思えるので、2013年後半での手形を切ってのHLRSとの契約になったのではないかと思う。ここ数年、Crayはかなり綱渡り的経営が続いており、HPC業界は楽ではない。

 HLRSは、数少ないNEC SXのユーザとして、日本に於いては、有名であり、SX-8(1.2Tflops)、SX-9(19.2Tflops)を保持しており、Cluster(Scalar)系も IntelのX5560(Xeon Nehalem、2.8GHz、4core, 2socket)を使った62TflopsのNECのサーバーを導入しており、NEC Favorな研究所であった。
 しかし、同時に、Scalar系としてはCray-XT5m(8.5Tflops)も導入しており、今回のXE6とCascadeの契約につながったものと考えられ、2013年のCascadeを考えると、Vector機能はGPUを内蔵するSandy-Bridge系で置き換え、NECからは離れることになったものと思える。
 まあ、SXの後継の有無やコストを考えると、当面は、TSUBAME2.0のようなCPU+GPGPUタイプで置き換え、その後はSandy-BridgeのようなAVX内蔵系にしてゆくのが流れではないかと思う。



Posted by petaflops at 22:04│Comments(0)TrackBack(0) スパコン 04 

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