2011年02月28日

NECとLenovoの合弁

 
***<追加:3・08・2011>***
 2011年3月3日、IBMはLenovoの株式約4億3600万株(出資比率で4.3%)を$265M(約217億円、Y$82)で、すべて売却した模様。IBMは2005年にパソコン事業をLenovoに売却した際、キャッシュのほかにLenovoの株15%を取得していたが、IBMは当該株式を少しづつ売却していたようで、今回の4.3%で全て売却という事らしい。
 LenovoはIBMと手がきれたわけで、中国でのサーバー市場でのIBMとの共生棲み分けは必要がなくなったのかも知れず、IBMに代わって新たに2%の株主になるNECにとってはチャンスになったかもしれない。
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 直接的にはHPCと関係は無いが、後年のため業界の動きをメモしておきたい。


<NECの中国シフト>

 2011年2月25日にNECは、NEC液晶テクノロジー社と中国天馬微電子との資本提携の合意と、NEC液晶テクノの70%の株式を天馬の親会社である中国航空技術国際グループに譲渡すること、を発表した。
 一ヶ月前の1月27日には、国内PC事業に関して、Lenovoとの合弁会社設立の発表がなされており、この協業に関連し、2月9日には、同社プラットフォーム事業の成長の戦略説明会の中で、中国のサーバ市場でのLenovoとの協業が言及されていた。

 こうした一連の発表から見えてくるのは、NECの中国シフトであり、中国市場をテコに成長戦略を描いているように思えるのである。従って、先日の日本市場でのLenovoとのPC事業の合弁は、こうしたNECの中国シフトのコンテクストの中で見る必要があるのであろと思うが、どの様に展開してゆくのかに関しては、もう少し時間が必要であろう。


《NECとLenovoの合弁》

<売却のスキーム>

 2011年1月27日、NECはLenovoと新規に合弁持ち株会社を設立し、この持ち株会社の傘下に、NECのPC部門(NECパーソナルプロダクツ社のPC部門)を分離した新会社(NECパーソナルコンピュータ)と、既存のLenovo-Japanを収め、両社はそれぞれ独自に日本におけるPC事業を展開する、といった旨の発表を行った。
 持ち株比率はLenovo51%、NEC49%であるが、LenovoはLenovo本体の新株発行を行い、NECに約2%の株($175M相当、約147億円$Y84)を割当てるとのことである。

 ポイントは合弁会社の持ち株比率の51対49とLenovo本体の新株2%の割当てである。

 持ち株比率からこの合弁会社は明らかにLenovoの子会社ということであり、NECの意図には関わらず、この合弁はオブラートで包んだNECのPC部門の分離売却と見るべきなのであろう。
 
 その売却説を裏付けるのがLenovoが発行する新株で、NECはLenovoから2%($175M)の新株を割当てられるのである。
 NECの報道発表では「新規株$175Mを引き受ける」との表現になっているが、この「引き受ける」ということの実態は「株を入手するためにお金を払い込む」ということではなく、それとは真逆の、ただで「割当てられた株を」「もらう」ということなのである。  
 WSJでは、「Lenovoは$175Mの投資を行う」としており、外目には、LenovoはNECの国内でのPC事業の資産や権利の51%分を買収するために$175M(株で)支払うと見えているわけで、Lenovoの日本国内への投資と考えられているのである。

 更にその後の、香港証券取引所からの契約情報では、5年後の2016年以降、Lenovoは$275Mを上限として持ち株比率を100%に引きあげるオプションを有しているという報道もなされており、NECの意図とは関係なく、売却説が有力なのである。
 
 分離の方法が単純な売却とは異なり、いささか見えづらいが、本質は本体の負担軽減・PC事業の切り離しであり、NECの収益構造上、PC事業はprofitを産まなくなっているということで、長期的にはNEC本体の投資対象分野ではないという経営判断があるのであろう。 もし、今後ともProfitableなマーケットとの認識であれば合弁といったアクションは必要ないからである。
 これは以前、LenovoにPC部門を売却したIBMの経営判断と同じであり、NECのケースが異なるのは「売却の仕方」がソフトランディングであるといった点なのではないかと思う。
 
 IBMのケースは単純売却であったので、Lenovoは購入代金をキャッシュとLenovo株でIBMに支払い、全てを手に入れたわけである。 これに対し今回のNECのケースでは、合弁の持ち株会社に、NEC-PCとLenovo-Japanが現物出資され、それぞれの評価額を予定持ち株比率に割当て、残余の差額調整をLenovoの新株割当で行うというスキームなのではないかと思う。その結果が2%のLenovo株、約$175M、という事で、外目には、NECのPC事業51%分の売却代金がこの$175Mと考えられるわけである。

 このことは資産的に考えても、NECパーソナルプロダクツ社の資本金は188億円であり、Lenovo-Japanの資本金は3億円であるから、資本バランス的にはLenovo-Japanは無視できる程度のもので、逆にNECパーソナルプロダクツ社のかなりな部分であるPC事業部を分離するわけで、その資産価値を$175M(約147億円)程度と評価したと考えると、全体的にバランスするのではないかと思う。

 完全売却で無く合併という方式を選んだ理由の中には、国内顧客に対するブランドの責任、雇用を含む企業の社会的責務の問題等々、いろいろあろうかと思うが、財務・経営的には、PC事業51%分の売却ということになろうかと思う。

 しかし、NEC側から見れば、売却額はLenovo本体に丸々投資するわけであるから、WSJなどが見ている単純なLenovoの投資ではないわけで、結果は今後の事業展開にかかっているということは言うまでも無い。
 

<経営背景>

NECの連結決算の推移(単位百万円)
年度   2008年度   2009年度    2010(4-12)実績 2010年通年見通
売上げ  4,215,603 3,583,148    2,189,884     3,300,000
収益   -296,646   11,428     -53,573       15,000
 
 NECの連結決算の推移を見ると、2008年度は約3000億円の赤で、2009年度は何とか114億円の黒、そして今年度(2010-4~2011-3)は150億円の黒の予測であるが、2010-12月までの実績は535億円の赤字であるので、年度末に頑張って黒に持ち込みたいという予測であろうけれど、かなり、厳しい状況ではないかと思う。

 売上げ規模は、NECエレのルネサスとの合併分離などの影響があるが、以前は4兆を越えていたものが、2009、2010では3兆5千億から3兆3千億であるから、100億前後の黒であったとしても利益率は0.3-0.4%程度ということで、苦しい経営が続いていることは明らかである。

 こうした経営状況が、NECエレのルネサスとの合併分離(持ち株33.9%)、モバイル事業のカシオ日立との合併分離(持ち株70.7%)、海外PC事業の撤退、次世代スパコン開発からの撤退、といった一連の経営資源の選択と集中であったわけで、今回の国内PC事業のLenovoとの合併分離は、ある意味、既定の路線であったということであろう。


<HPC部門>

 先日、SX-10は2013年以降にとの報道があったようであるが、これは現在のSXユーザーへの後継機対応問題へのメッセージなのでは無いかと思える。2013年以降になれば、2012年で京速は終わり、撤退騒動のホトボリも冷め、また、海洋研機構のES2などのSX-9ユーザーのリース切れが2013-2014年頃であったと思うので、とりあえず、これらのユーザーに対するメッセージなのであろう。

 しかし、NECエレクトロニクス、モバイル部門、今回のPC部門などと次々と分離合併独立させている経営環境下では、大幅な収益が期待できないHPC分野への思い切った投資は難しいはずで、2013年以降になれば無条件で発表発売できるといったものではあるまい。経営視点からだけでなく、技術的にも、文科省の次世代スパコン開発での想定から、最低でも、更にもう1世代、つまり実質SX-11に、進めねばならないであろうから、そのギャップを埋めるのは容易ではないであろう。
 
 NECのサーバー事業の海外展開は今後の中国でのLenovoとの協業かにかかっているわけであるが、中国のサーバー市場での外国勢はIBM、HP、DellといったところがMajorで、LenovoはIBMとの棲み分けの問題があり、協業は結構問題山積なのではないかと思う。
 HPC事業がサーバーでの協業に含まれているのかどうかは定かで無いが、中国のHPC市場ではIBMが圧倒的であり、こちらも問題山積であろう。

 まーとにかく、本体の経営体力が早期に回復しなければ「2013年以降の<近いうち>」という話はきわめて難しいのではないかと思っている。

 



Posted by petaflops at 17:27│Comments(0)TrackBack(0) 業界 | 時々の話題

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