2010年08月06日

理研のNECに対する損害賠償調停申立

 2010年7月27日、理研は、次世代日の丸スパコンからのNECの撤退に対し「(NEC分の)スパコンの収容施設の建設を進めたため、無駄な投資をさせられた」(2010年7月27日22時37分 読売新聞)として損害賠償の民事調停申立を行ったと報道がなされている。
 翌29日の日経新聞には、文科省の副大臣が「国として資本を投じてきた。(撤退について)ああ、そうですかとはならない」と述べたと伝えている
 理研は公式発表を行っていないようなので、あくまで、新聞報道を基にしたものではあるが、上述の副大臣発言の報道もあり、大筋はこのとおりと考えて良いであろう。

<文科省中間評価作業部会の機密ヴェクタ部不要論、訴訟は困難>

 この件のおさらいをすると、事の起こりは、2009年4月の次世代スパコンに対する文科省の中間評価作業部会が行った中間評価で、今考えると、これがこの件の始まりであった訳である。当時、作業部会の評価内容は意図的に機密名目で国民には公表されることはなかったので経緯がハッキリしていなかったのであるが、裏でこれがトリガーとなっていたようである。
 そして同5月に、突然、NECが次世代スパコンの製造段階には参加しないという形での撤退表明があり、撤退理由は「同社の経営状況の悪化」であった。
 NECの撤退を受け、作業部会は理研にシステム構成の変更を求め、理研はそれまでのヴェクタ・スカラ両輪論を捨て、スカラ単一システムでの開発継続を決め、同7月に評価作業部会はシステム構成変更を含めた中間評価報告を公表した。
 そして、同8月の総選挙の結果、政権交代が起こり、それに関連して政府事業の事業仕分けが行われることになった。
 次世代スパコンも事業仕分けの対象になり、同11月に行われた事業仕分けのなかで、理研は、NECの撤退に対し、損害賠償を請求すると発言した。と同時に、一般公開の事業仕分けにおいては、法的に正統な理由のない機密指定などは維持できない状況に追い込まれていったのである。
 その結果、2010年1月に到り、これも唐突感が否めないものであったが、文科省は、2009年7月に発表した中間評価報告には、米国との競争状況(法的正当性は無い)を理由にした、非公表の機密部分があったことを認め、その上で、仕分けに於いて、世界1位を獲得するための予算措置が否定され、機密保持の必要性がなくなったとして、その機密部分の指定を解除した形の報告書を公表した。
 その中には、2009年4月の中間評価作業部会において、「現状では複合システムとしての性能は不十分」「プロジェクト目標を念頭に置いた最適なシステム構成を再検討すること」(報告書添付資料1)などとされ、暗に「ヴェクタ部はプロジェクト目標に貢献しておらず、資金面から、ヴェクタ部は捨て、スカラ単一システムに集中することが必要」との評価がなされていた事が記述されていた。

 この事実は、NEC撤退の真の理由が、公式な「経営悪化」ではなく、この中間評価作業部会の意思をNECが斟酌した結果なのではないか、という疑問を惹起する事になった。
 要するに、「作業部会が不要といったので、NECは撤退した」というのが本旨で、「経営悪化」という公式理由は、経営環境超悪化の中、「不要」と評価されたものに、国家プロジェクトだからといて、身銭を切って経営資源を割くことは出来ないし、余裕もないという、極めて普通の経営判断ということで、トリガーを引いたのは「作業部会のシステム構成再検討決定」と判断するのが妥当であろう。

 となると、事業仕分けでの賠償請求実施発言は、この4月の作業部会での経緯を理解していないのか、知ってはいても機密で隠しとおせると思っていたのか、とにかく無責任な発言ということであり、そもそも理研がNECを訴えることなど出来ないのではないか、ということになるのである。

<法的賠償請求ではなく、調停>

 そして、事業仕分けでの賠償請求発言から8ヶ月の紆余曲説を経て、2010年7月にやっと賠償請求の申立を行った訳であるが、この申立はキーになる以下の2点で、どちらも激しいピントズレを起こしているのである。
(1)この賠償請求は「民事調停」であって「民事訴訟」ではないこと
(2)賠償が「開発契約」に対するものではなく、「無駄な施設投資」に対するものであること

(1)の「民事調停」に関しては、契約違反があったのなら単純に「民事訴訟」を起こせばよいわけで、訴訟を起こせずに「調停」でしか賠償請求出来ないということは、「契約違反はなかった」ということの裏返しと考えてよいであろう。これは、前述の2009年4月の作業部会での結論がNECの撤退の真の理由であったということを、認めたようなものと考えられる。
 また、開発契約的に考えても、このプロジェクトは「設計段階」「製造段階」などとなっているので、契約は[段階]ごとのものであろうから、通常は、設計段階の成果物を納入し、検収を受けていれば、この段階は完了で、次段階に参加せずとも、法的に賠償請求を受けることなど考えられない。
 しかし、文科省・理研側は、事業仕分けで公式に賠償請求を行うと発言した手前、賠償請求せざるを得ず、その結果が、「賠償請求の調停申立」という「アングラでのクリンチ作戦」だったのである。
 政府公共調達という巨大ビジネス・ヴォリュームを背景とした、暗黙のビジネス圧力の下で、NECから何某かの賠償を得て、事業仕分けでの発言に色をつけようといった、小賢しい公務員の目論みであろうし、(2)の、全く訳の判らない「無駄な施設投資に対する損害賠償の調停申立」の実態であろう。
 まあ、ハッキリいって、この申立ては「いちゃもん」の類としか思えない。法的に正面から「支払った設計費の奪還」を主張できないため、「調停」の俎上に上げるための、なりふり構わぬ「言いがかり」で、例の老害氏の大好きな「歴史の法廷」に堪え得るようなものとは、とても、思えない。

<巨額税金無駄使いの責任は文科省・理研>

 文科省・理研側としては、「国として資本を投じてきた。(撤退について)ああ、そうですかとはならない」という前述の副大臣発言のとおり、国民に向けて、正義の副大臣様が不届き者を懲らしめ、「少しでも払った血税を取り戻した」という実績つくりなのであろうけれど、この奪還作戦は筋が悪い。実態は「悪者は副大臣様のお身内のもので、NECは関係ない」という構図だからである。
 というのは、事の起こりは、始めに「ヴェクタ部不要論」を指示したのは文科省の作業部会であり、これは、プロジェクト・マネジメント視点で見れば、「発注仕様の変更」という事で、発注側、つまり、文科省・理研、の責任であり、受注側のNECに責任はないからである。
 初期発注仕様に基づいて仕事をしてきたNECは、それまで掛かった作業代金を返還する必要など「さらさら」ないし、また、「発注仕様変更」で生じた「施設投資の無駄」も、文科省・理研側が負わねばならない「無駄」なのである。
 副大臣は、NECが身勝手に撤退したと誤認しての発言と思えるが、仕分け時には機密として公表されていなかった4月の作業部会での決定は、ヴェクタ部開発を縮小廃止し、予算をスカラ部に集中させる指示であったわけで、この変更指示に伴う責任は、全て文科省・理研が負うべき筋のものなのである。当該副大臣にどれほどの認識があるのか定かでないが、文科省の担当者に丸め込まれた副大臣殿は、哀れにも、「天に唾をはいている」という構図になっているのである。
 従って、勿論、施設に関しては、NECが賠償しなければならない理由は何もないと思うので、賠償など拒否すればよいと思うが、どっこい、法的黒白を求める「表」での訴訟ではなく、何でもありの「絡めて」からの「お話合い」の調停であるから、長い将来にわたって続くであろう公共調達視点の暗黙の圧力は、NECにかなりな重圧になると思うので、結果の予測は難しいということになる。

<蛇足>

 筆者は3年前に、「次世代日の丸スパコンは大丈夫か?」でこの次世代スパコン・プロジェクトのプロジェクト・マネジメントのいい加減さを指摘し、今回のような事態が起き得る事を指摘していたし、同様に、「日本のスパコン戦略はボロボロ」で述べたように、戦略そのものが今日の世界のコンピュータ・テクノロジのトレンドからは浮き上がった、おかしなもので、税金が意味なく浪費される構造になってしまっていることを、3年前に指摘した。
 原因は、勿論、この戦略を立案した人達の、能力・知力が極めて劣っていたということで、世界のコンピュータ・テクノロジのトレンドを全く理解できていなかったという事に尽きるわけである。

 この件の本質的問題は、日本国の国家基幹科学技術としての文科省の次世代スパコンのヴェクタ・スカラ両輪論という戦略は、完璧に崩壊してしまったのに、この戦略立案に対する責任の追及と反省が全くなされていないという事が大問題なのであり、文科省および理研の責任こそが追及されねばならないのである。
 残骸として残ったスカラ単一機も、異常なラック数による時代錯誤の水増しシステムで、維持経費も膨大で、現在、世界中で受注販売されている市販スパコンより性能が劣り、本来のプロジェクト目標達成は困難とされている代物で、こんなシステムに1200億円もの税金を投入した、文科省こそ責任を追及され、処分が行われなければならないはずである。

 筆者は、今日、アーキテクチャ的にCray-1やSXのようなヴェクタ機は不要と判断して、文科省のヴェクタ・スカラ両輪論に異議を唱えてきているのであるが、歴史的にはアーキテクチャの議論はアーキテクチャそのものに対する議論では結論が出ないことが多く、結局、売れた方が勝という経緯をたどってきているので、今回も、コスト面での議論を、前面に押し出して、SX不要論を展開してきたのである。
 ただし、この不要論は、SXを悪者扱いする意図は全くないし、民間企業として世界で商売が成り立つのであれば立派なものと考えているし、過去のSXの業績の素晴らしさを否定するものでもない。
 こうしたヴェクタ機不要論とは全く関係なく、今回の文科省・理研側のNEC撤退の賠償請求騒動は、筆者の目からは、文科省・理研側が、自己の責任をほお被りして、自分だけ「良い子」になり、NECに全責任を押し付けているような、極めて悪質な、「いけにえ」作戦のようにしか見えないのである。
 文科省・理研は「言い逃れ」でなく、自己の下した判断に責任を負うべきであり、副大臣は、省内取り巻きの身びいきな意見だけに基づくことなく、広く外部の意見も聴取の上、公平な判断をするべきである。
 

  

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2010年05月01日

次世代スパコン、ヴェクタ部の開発費は国庫へ戻すべし

公開日時: 2009/12/18 09:59
著者: 能澤 徹


 2009年12月9日、来年度予算に関連し、総合科学技術会議は、次世代スパコンを「必要な改善を行いつつ推進する」と決めたようである。11月13日の行政刷新会議の事業仕分けでは「限りなく凍結に近い見送り」との判定であったので、首相が議長を務める2つの会議が別々の結論を出した事になる。  そこへ、実施部門である文科省の政務三役会議は「第1位には拘らず事業費を圧縮して継続」とし、12月17日の報道では、関係閣僚との折衝で「完成時期を遅らせることで事業費を圧縮」という事で、総事業費は110億円減の1120億円とし、来年度予算は40億円削減の228億円とすることで財務省と合意とのことである。

 大雑把に言うと、来年度以降の約700億といわれていた分を600億にするという程度の圧縮でしかない。大山鳴動鼠1匹といったところであろう。

 これまでの次世代スパコンの議論は、事業の「継続」か「見直し」か、という大枠での議論が中心であったが、今回、政治判断による「足して2で割る式」の中途半端な「継続」が決まったようなので、今度は予算の中身についての議論をしてみたいと思う。

 

 仕分けのときと同じで、予算に関しても、(Ⅰ)NEC撤退に伴う不明朗な予算処理の問題と、(Ⅱ)基本的な総額1154/1230/1120億円が国際感覚で妥当なのかという予算総額の妥当性の問題の、2つの視点がある。

 今回は(Ⅰ)を中心に述べてみる。(Ⅱ)に関しては次回以降に述べることにする。

(Ⅰ) NEC撤退に伴う不明朗な予算処理の怪

 現在まず文科省・理研に求めねばならないのは「NECの撤退により生じたNECへの支払予定分の国庫への返納」である。

 とりあえずは、今年度(2009年度)支払い不要になったはずのNECへの支払い予定分(推定50億円程度、後述)は全額国庫に返納すべきであり、そして、来年度(2010年度)以降の予算要求額はNECへの支払予定であった額(推定総額で300億円程度、後述)を削除して計上すべきなのである。


 * <12/19 追記1>
 コメントに 事業仕分けの中(11:00のセクション)で文科省より以下の内容が示されているとのご指摘がありましたので、以下を追加いたします。

文科省による、NEC撤退に伴う見直しの内訳(2009年11月13日)
  NECへの支払予定分 -124億円 減
 ネットワーク増強   +90億円 増
 製造増強分      +110億円 増
 差し引き合計     +76億円 増
以上

 これらの数値に関しては、以下のような疑問がある。
(1)システム開発の総額907億円(H21以降でも731億円)に比してNECへの支払予定額は少なすぎること。
(2)ネットワークの仕様は本来的にLinpack10Pflopsをサポートする必要のあるもので、NECの撤退は関係ないはず。
(3)数値目標は「2011年6月Linpack10Pflops、Top500第1位」であり、ヴェクタ部とスカラー部は別物であるから、もともと、この時期までに10Pflopsが作動していなければならないわけで、製造増強はNECの撤退とは関係ないはず。
 したがって、(1)はその額を精査の上、国庫に戻したり、あるいは予算計上を中止すべきものであり、(2)(3)はNECの撤退とは関係ないので、別途査定を受けるべきものである。しかし、ヴェクタ部本体の開発製造に124億円なのに対し、ネットワーク増強が90億円、スカラ部の製造増強だけで110億円とは、とても、一般の常識では考えられないバランスである。しかも増強分は合計でピッタリ200億円というもの歯切れが良すぎる。

 * <追記1終>

 


  文科省・理研が行っている「NECの撤退の後処理」は、技術的にも、予算管理的にも、極めていい加減である。

 つまり、そもそも何を作る予定であったのかということと、NECの撤退で、それがどの様なものに変更せざるを得なくなったのか、といった開発対象の具体的変更を国民に全く説明しておらず、その開発対象の変更により、どのような予算の変更が必要になったのかも、国民に全く説明していないのである。  説明があったのは「NECの撤退を受けた見直しで、追加予算として76億円必要になった」といったことだけである。

 このプロジェクトは文科省が国家機密に指定しているため、納税者にとっては極めてわかり難いプロジェクトであるが、開発対象については、ヴェクタ・スカラ両輪論といってきて、ヴェクタ部とスカラ部を作り、そのブリッジ部を考えていたのであろうことは確かである。ところが、ヴェクタ部の開発者が撤退してしまったわけで、ヴェクタ部は作らなくなり、したがって、ブリッジ部も不要になり、スカラ部だけが残ったという事であるから、全体の開発・製造量は半分以下になったはずなのである。

 ところが、撤退の見直しにより、予算的には76億円もの追加が必要になったなどということは、信じ難い「焼け太り」で、消滅したヴェクタ部やブリッジ部の開発・製造予算はどこに消えてしまったのかという事になるのである。ヴェクタ部やブリッジ部の開発製造予定額のうちのかなりの部分が余ってしまった筈であり、本来、多額のお釣りが来る筈のものが、逆に、76億円もの追加とは、一体全体、理研は何を考えているのだ、という不信感しか残らない説明なのである。


<撤退で余るはずの予算額>

 次世代スパコンの予算の概略は以下である。(単位億円) (この表は、本来はNEC撤退前の1154億円をベースにすべきなのではあるが、そのデータが無いため、NEC撤退後に76億円増加された総額1230億円の表である。)

      総額  H18 H19 H20  H21  H22  H23 H24

システム 907  12  53  111  110  203  414  4 
アプリ   130  22  32  22   19    16   14   5 
施設   193   1   34   67    61   29   0   0
合計   1230  35  120 200  190  248  428  10 

 

システム開発総額907億円内訳

 メーカ支払い      861億円 (H21まで261億円)
 理研のシステム評価  28億円  (H21まで14億円)
 研究統括         8億円   (H21まで11億円)
 合計           907億円  (H21まで286億円)


 一方、H20年12月の文科省予算主要事項によると、H21年度の次世代スパコンの予算総額は190億円となっている。これはNEC撤退前の総額1154億円ベースのデータであるが、上の表で示した1230億円ベースのH21年度の予算総額と一致しているのである。つまり、NEC撤退前と撤退後見直しとで、H21年の支払い額に変化はないのである。

 これは、実に可笑しな話で、撤退のため支払う必要のなくなったNECへの支払い分が、撤退見直し後に作られた予算額に含まれていることを示しているからである。


 H21年度のNECへの支払い額の詳細は公表されていないが、常識的には、メーカ支払額を富士通と折半であろうから、H21年度のシステム開発予算110億の半分の50億程度ではないかと推定されるのである。


 そして、問題はこのNECへの支払予定額がどうなっているのかである。理研が勝手に支払い先を変更できる類のものではないわけで、当然、H21年度の支払い総額からこの分は差し引かれてなければいけないのであるが、実際には差し引かれていないということなのである。

 

 支払い先のなくなったH21年度分のNECへの支払い予定分(50億円前後)は、どこへ消えてしまったのか?

 文科省・理研には、重大な説明責任があると思うのである。


 なお、次世代スパコンはH20年度の補正予算で約55億円が追加されており、H21年度は合計245億円となっており、この補正55億円も何に使われたのかは興味のあるところである。

 そして、H21年分に限らず、以降のH22、H23、H24についても、本来NECへの支払いに充てる予定であった額は、全て、予算計上してはいけない額であり、当然、予算総額から差し引かれねばならない額である。大雑把にいって、H22、H23、H24のシステム開発の総額621億の半分、300億程度は不要になったはずなのである。  したがって、NECの撤退により、論理的には、H21の推定50億円に加え、H22年以降の推定300億円が加わり、合計で350億円程度の予算削減があってしかるべきなのである。


 スカラ部は順調という事であるので、スカラ部は予定どうりの支出を行えばよいわけで、スカラ部と関係のないヴェクタ部の撤退は次世代スパコンの予算総額の大幅な削減をもたらしたはずであり、いわんや76億円もの増額などというのは常識的に理解不能といわざるを得ないのである。


 文科省・理研はデータに基づく明確な説明を行う責任がある。


 加えて、「世界第1位断念」「完成年度を遅らす」ことによる110億円の縮減が可能だそうであるので、スパコン予算はさらに縮減が可能という事になるのであろう。

 中途半端な政治判断(処理)ではなく、理にかなった処理が望まれる。

 

 

(II)1230億円は妥当か?  次回以降参照

 

 


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このエントリーへのコメント
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2
Toコメント#1
本文に追記を入れました。
ご指摘ありがとうございました。

  能澤 徹 on 2009/12/19

1
NECが撤退した部分の削減額は、仕分けの中で、124億円と
説明されております。勘定していないわけではありません。
ネットワークの増強と、富士通の生産ラインの増強のため、
200億円の増額が必要となり、その差し引き後の金額が、
76億円の予算追加との事です。
http://mercury.dbcls.jp/w/index.php

  タクジ on 2009/12/18

  

  
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次世代スパコン、政治判断での「推進」は軽率

公開日時: 2009/12/05 17:51
著者: 能澤 徹

 

 今回の事業仕分けに関連し、2009年11月19日に総合科学技術会議の有識者議員が出した緊急声明や、11月26日に行われた科技相と有識者議員との会合の議事録(「優先度判定に関して」<議事録課題3>」などが、同会議のHPに載っており、そして、11月30日の内閣府の科学技術担当政務官の記者会見では、優先度判定で、次世代スパコンは推進、として12月9日の本会議に臨む方向らしい。

  こうした政治判断と称するものは、問題の本質を捕らえておらず「軽率」としか思えないのである。

 軽率と判断する理由は3つある。

 第1は、ここ4-5回の投稿で述べてあるとおり、国の科学技術推進というマクロ視点での政策と、事業仕分という個別案件での、ミクロな案件特有の問題を、ゴチャ混ぜにして、論点のすり替えが行われており、仕分けで指摘された問題点の解決も無く、「優先度から推進」などと結論付けるのは「軽率」のそしりを免れない。

 第2は、次世代スパコンに関する政策判断を行うにしては、余りに海外諸メーカの現状認識に欠けており、正常な政策判断が出来ているようには思えないこと。

 第3は、総額1230億円+巨額年間維持経費という巨額税金を投入してまで、この次世代スパコンを開発する「意味」あるいは「価値」があるのか、という点。


 第1の点は既出の拙稿で述べてあるので、そちらを参照頂く事とし、ここでは割愛させていただく。

 第2の点は、次世代スパコンのプロジェクト目標である「2010年に、Linpack10Pflops、Top500で第1位、HPCC主要4項目で第1位」を達成するためには、当然、他国のメーカの動きを詳細に分析した上で「目標達成は可能」と言ってもらわねばならなのであるが、他国のメーカの分析は全く示されておらず、極めて「いい加減に」「達成可能」と結論付けているようにしか見えないのである。

 端的に言うと、次世代スパコンの1ラックの性能(12Tflops)は、現在の世界のTop1であるORLN-Jaguarが使用しているCray-XT5-HE(Opteron6コア)の1ラックの性能(11.98Tflios)と同じであり、ラック単位で見た場合、次世代スパコンは何の優位性も有しないのである。(文末参照)

 さらには、Cray社はこの11月にOpteron12コアを使った次機種XT6を発表し、来年後半出荷予定としており、AMDがOpteron12コアを予定通り出荷できれば、XT6は、ラック性能的に、次世代スパコンの2倍の性能ということになるのである。

 XT6以外にも、2010年には「sustained performanceで数ペタ」を性能目標にしたNSFファンドでのNCSAのBlue Waters(IBM Power7)が設置予定であり、これはラック性能的には、次世代スパコンの4倍以上の性能が推定されているのである。Blue Watersは、従来Peak5ー10Pflopsの機械と考えられていたが、最近の報道では20Pflopsとの見方もあり、2012年にLLNLへ設置予定のBG/P後継の「Sequia」より早く20Pflopsを実現する可能性がある機械である。(文末参照)

 つまり、ラック性能的には、次世代スパコンは、2010年出荷予定の競合他社製品よりかなり遅れているといってよいのであり、目標の世界第1位になれるかどうかは、上記競合他社に10Pflops超の性能を求める顧客があるかどうかで決まるわけで、技術的には遅れてしまっていると考えてよいのである。

 NCSAのBlue Watersが、ORNLのJaguarやKrakenのように補正予算等で補強され、20PFlopsの報道が事実であるとすると、次世代スパコンは完全に負けという事になる。

 従って、こうした状況を理解すれば、政策判断として「目標達成可能」などと能天気に宣言するのは、如何なものかと言わざるを得ないのである。
 

 第3の点は本質的な論点であるが、次世代スパコンを開発する意味、価値である。第2のところで述べたように、次世代スパコンは技術的に決して世界のトップを独走しているわけではない。むしろ2010年後半で予測すると、遅れているといっても過言ではないのである。

 価格的にも、開発総額から建屋建設費(約200億円)を除いた額で大雑把に計算すると、次世代スパコンのTflops単価は1000万円前後であり、他方、Cray機の単価は、今年9月のCrayのKorea気象庁への0.6Pflops機の契約情報から推定すると、Tflops単価は約600万円である。このCray機で次世代スパコンと同じ性能の10Pflops機をプロジェクションしてみると、サイズ的に約17倍にもなるので、単価はもっと安くなるものと考えられ、次世代スパコンの1/2-1/3程度になるのではないかと予測されるのである。

 

 となると、次世代スパコンは、他メーカと比べ、性能的に劣勢で、価格も国際市場価格の2-3倍ということで、とても海外での販売は見込めないし、国内においても、調達が公平であれば、輸入製品の方が割安になってしまうわけで、次世代スパコンを作る意味があるのかということになるのである。

 スパコンの技術安全保障を唱える人達がいるが、これは全く本末転倒な主張である。ご自分が使っているパソコンのCPUが「どこ製」であるか調べてから、スパコンの技術安全保障を唱えるべきである。パソコンやサーバなどの巨大市場の技術安全保障すら確立していないのに、スパコンのような極端に小さな市場の技術安全保障だけを唱えても意味は無く、本末転倒なのである。

 次世代スパコンがなくなると、シミュレーション・ソフトを作動させられず、自分の研究が出来なくなるという人達がいる。まずこの人達に聞きたいのは、何故、日本の次世代スパコンでなくてはならないのか、という事で、CrayやHP、IBM、SGIなどのスパコンでは何がいけないのか、という事である。そして次は、10Pflopsが必須な理由に関してで、パラメータ(たとえばメッシュを少し大きめに取るなど)を変え、モデルを調整すれば、1Pflops機ででも十分使える筈であり、何故10Pflopsが必須なのか理解できないという事である。
 

 マーどれも本質的に意味のある議論とは思えないし、次世代スパコンを作らねばならない意味や価値を説明してくれる議論でもないのである。


 結局、今、政治判断や総合技術会議が求められている事は、スパコンを国の産業政策として育成するつもりがあるのかどうなのかということなのである。

 育成するのであれば、国内はもとより、海外に於いても、自由競争で、海外メーカとの競争を勝ち抜いてゆくための支援施策が必要であろうし、当然それ相応の価格性能比を有する製品と海外営業力の確立も必須である。

 逆にそこまで深入りする気が無いのであれば、国はスパコンのハード、特に半導体工場を含むCPUの製造等に、タッチすべきではないのである。

 今日、文科省が次世代スパコンで行っているような、伝統芸能保存保護のような「技術の保存保護政策」は、グローバル経済下の産業技術政策として意味を成さないもので、このような国の中途半端な介入が、NECの撤退をもたらせた原因なのである。こうした中途半端な政策の継続は、NECの二の舞を誘発するだけで、国にとっても民間企業にとっても意味があるものとは思えないのである。
 

 従って、政治判断や総合科学技術会議が、安易に「次世代スパコンは推進」などと結論付けるのは軽率であり、事業仕分けでの問題点を解決し、その上で、もう少し深い議論をしてから結論を出すべきなのである。

 

参考:

 次世代スパコン(富士通のSPARC64-VIIIfx)は、液冷で、1チップ8コア128Gflops、1ボード4ソケット0.5Tflops、1ラック24ボード12Tflops 目標のLinpack10Pflopsには最低でも1,000ラック程度は必要。

 Cray-XT5-HEは、液冷で、1チップ6コア62.4Gflops、1ボード8ソケット499.2Gflops、1ラック24ボード11.98Tflops (XT5からの推定)

 IBM Blue Waters(Power7)は、液冷で、1チップ8コア256Gflops、1MCM4チップ1Tflops、1ボード8MCM8Tflops、ただしボードのサイズはSPARC64-VIIIfxの2倍程度あり、厚みも2倍程度あると思えるので、ラックには8ボード程度が限度ではないかと思うが、12とか16の可能性もありうるようにも思う。したがってラック性能は64Tflopsから128Tflopsの間ではないかと推定される。

 なお、この次世代スパコンの1000ラックという数は、前代未聞のラック数で、常識的には256ラックが限度である。ラック数を増すと、設置面積、配線距離、発熱処理、ネットワークの複雑化、通信遅延などを増加させ、それに伴う信頼性の低下、建屋建設費、設置費用、維持管理費などの極端な増加を招くからであり、ネットワーク的には、256が1バイトでアドレス可能な限界である事も背景にある。

 今日の並列処理方式では、ラック数を増せば、収斂値はあるものの、それなりの性能増加は見込めるため、「何が何でも10Pflops」ということで1,000ラックにしたものである。これは、単にラック並べただけなので、Interconnectに適切なものを使用すれば、どのメーカでも組み立て可能なものであり、CrayのXT5-HEででも次世代スパコンと同じ1,000ラックで10Pflops機を作ろうとすれば、可能と考えられるわけである。ただし、来年になれば、XT6で半分で済むわけで、馬鹿らしくて誰も1000ラックで作るなどとは言わないだけであろう。

 

 


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このエントリーへのコメント
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2
「スパコン、「世界一」の目標断念し予算折衝へ 文科省」
http://www.asahi.com/politics/update/1211/TKY200912110519.html
とのことです。

  sugibeya on 2009/12/12

1
仰るとうりと私も考えます
今回の決定は誰のためにもならない。富士通のためにも国民の為にも、産業育成にも、民主党の為にもならず、また、国際競争にも何の為にもなりません。
https://asc.llnl.gov/sequoia/rfp/00_RFP_Letter.pdf
こちらの文書をご覧ください
二ページにありますが20pflopsをコミットしているsequoia コンピューターは5年の運用経費込みで$214.5mil$以下で競争入札されています。
此れは落札上限ですから落札金額は公開されていませんがそもそも理研と桁違いです。また落札したsequoiaのfoot printは100m2程度にすぎません

実現している技術は、RoHS指令によるスズハンダによる半田クラックによる故障を最小化する為にsocをベースとして、極力金ボンディングによるsipをメインとしてハンダ付箇所を最小にしてコンパクトで、熱衝撃によるハンダ不良による不安定動作を最小化しただけで、sipにまうんとしているのは通常の民生用のパーツです
技術としてはそれだけなんです。ちゃんと量産技術と特注機器としてのスパコンの折り合いを付けており、理研のものよりはるかに安定して実用的に使えるものです。理研の物は論評にも値しないので敢えて論評しません。

  pengin221 on 2009/12/10


  
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国家機密「次世代スパコン」

公開日時: 2009/12/01 00:54
著者: 能澤 徹


 次世代スパコンは、11月13日の事業仕分け以後、突然、一般の話題になったようであるが、以前は、一般の関心も低く、また正確な情報が乏しく、なかなか、その実態を知る事が出来なかったのである。理由は2007年3月12日に次世代スパコンが「国家機密」に指定されてしまったからである。

 この国家機密指定に関する経緯に関しては、是非、2008年3月28日付けの拙稿「次世代スーパーコンピュータは国家機密 ?を参照いただきたいし、本稿をお読みいただく上での前提とお考え頂いてよいと思う。

 我が国には情報公開法が存在し、外交、安全保障、個人情報等を除いて国家機密は存在しない筈であるが、おっとどっこい、次世代スパコンは文科省により国家機密に指定されているのである。国家機密指定の権限やプロセスがどのようなもので、誰が最終決済したのか全く不明であるが、文科省側は「国家機密」に指定しており、公務員には機密漏えい罪が適用されると宣言しているのである。

 こんな事が有りうるのか甚だ疑問であり、行政法の専門家のご意見を伺ってみたいものである。

 多分今日に到るまで次世代スパコンの機密指定の解除はなされていないはずなので、先日の事業仕分けも、一部情報内容によっては国家公務員法の守秘義務違反で訴追されるケースもありうるのではないかと思っている。なんとも怖い話である。


 さて、この機密指定の結果、この日以降、一般国民目線での、次世代スパコンに対する行政評価は、評価を行うための肝心のデータ類が秘匿されてしまい、行う事は出来なくなってしまったのである。

 行政評価には様々なレベルがあるが、プロジェクト・サイズが大きくなればなるほど、プロジェクトの目標に対する一般国民レベルでの理解と支持は必須であり、国民目線での、プロジェクト目標に関する政策評価は必須で、そのために必要な情報の開示も必須である。

 ところが、この次世代スパコン・プロジェクトは、国民目線での政策評価をシャットアウトするため、国家機密指定という、なんとも時代がかったセピア色の、国家権力を行使し、情報を囲い込んで、国民目線の評価を逃げ回っていたのである。

 文科省の方針は、文科省ご指名の、ほんの一握りの評価委員たちによって、評価検討がなされれば十分で、しかも、その報告も、機密情報は開示する必要が無いということで、開示されない部分が多く、一般国民には、どのような評価検討がなされたのか良く判らないというのが実態であったのである。


 この判らないことの例を思いつくままに書き出すと以下のような点である。

・性能目標はLinpack10Pflopsとしているが、ヴェクタ部が何ペタで、スカラ部が何ペタなの、全く不明なこと、
・各部にどれくらいの予算を配分しているのかといった予算の概略内訳が不明な事
・各部の電力消費がどのくらいなのか不明な事
・年間維持費の概算総額と内訳が不明な事
・諸外国における調達費用や維持管理経費と費用対効果の比較データが示されない事

等々、「これが国家機密なの?」と言いたくなるような、何でもないデータである。

 こうした、当たり前のデータを機密にする意味は、明らかに、国民から政策評価などを行わせないためのものとしか考えようが無く、批判封じの手段なのであろう。馬鹿な国民共にデータを出して、メディアに騒がれると面倒だなどと言ったところではないかと思う。


 要するに、次世代スパコン・プロジェクトというのは、まともな、国民目線での政策評価を、一度も受けてたことが無かったというのが実態なのである。

 だから、「なぜ1230億円も必要なのか」「なぜ世界第1位でなくてはいけないのか、第2位ではいけないのか」などといった、国民目線での、素朴な疑問が、想定外の問答になってしまい、理路整然とは答えられないわけである。

 まあ、とにかく、次世代スパコンに関して、文科省・理研側のプロジェクト運用は、はじめから可笑しなものであったと断定せざるを得ないのである。

 

 


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 このエントリーへのコメント
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能澤氏の言う『国民目線での政策評価』って何なのでしょうね、重要なのはプロセスでしょうか、結果でしょうか。
まるで鬼の首を取ったかのよう口ぶりですが、よく読めば表面的な揚げ足取りに過ぎませんね。
私も議論を喚起した事業仕分け自体は評価しますが、あなたの言う『国民目線』という言葉はエセジャーナリストの発する『知る権利・表現の自由』と同じように聞こえます。
  ヒジカタ on 2009/12/02

 

  
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ノーベル賞受賞者等の緊急声明もお門違い

公開日時: 2009/11/26 12:01
著者: 能澤 徹 
 

 2009年11月25日、日本のノーベル賞受賞者4名と数学のフィールズ賞受賞者1名による事業仕分けに対する緊急声明なるものが発表された。

  この声明も、基本的に、前回述べた例のコンソーシアムの声明と同種のもので、事業仕分けの実態とはかけ離れた観念論で、毎年予算編成時期恒例の「金よこせ運動」の一変種に過ぎないものである。農業団体、漁業団体、林業団体、あるいは、経団連、日本医師会、等々各種団体が、補助金を求め、あるいは診療報酬の引き上げを求め、省庁に日参した陳情騒動の変形に過ぎない。
 
 声明文の骨子は、我が国は「科学技術創造立国」「知的存在感ある国」を目指さねばならず、財政難であっても、将来に禍根を残さないためには、学術、科学技術には優先的に予算を配分しろ、という強要であり、長期的視点で考えねばならない学術や科学技術に対し事業仕分けなどで評価するのは「けしからん」といった内容である。

 
 端的に言うと、この声明も、前回同様、各個別事業の実態を無視した観念的「総論」で、抽象的で一方的な「金よこせ」運動で、ある意味では、「江戸の敵を長崎で」式の超論理の「後出しじゃんけん」のようなものである。

 つまり、ある特定の政策の実施評価で落第点を突き付けられると、突然切れて、横丁のご隠居連などの助っ人を集めてきて、日本国の進むべき道はこれこれだ、だから長期的視点で、個別で無く総体として考えるべきで、仕分けには馴染まない、などと事業仕分けを逃げ回る超論理を展開し、マスメディアを扇動しているのである。実に巧妙な政治的駆け引きで、裏で元法学部教授が仕組んでいたわけで、受賞者達は、バラエティ番組に出演したタレントということである。

 ただし、出演タレントの中には、仕分けで「限りなく見送りに近い縮減」との落第点を付けられた,国策某スーパーコンピュータ・プロジェクトの実施本部長がいたわけで、プロジェクト運営の不備失態が白日の下にさらされれば、責任問題は不可避ではないかと思われるヤバイ立場の人で、「金よこせ」運動の超論理にハーモナイズさせて、仕分けはけしからんといきまいているわけである。

 
 ところで全体的背景理解のため、政策評価、行政評価について若干述べてみる。この政策評価は米国のクリントン-ゴア政権下で大規模に行われた財政赤字削減の手法である。レーガン-ブッシュ父政権が垂れ流した財政赤字を解消するため、ゴアが陣頭指揮を執ったNPR(National Performance Review)がその始まりで、複数年にまたがる予算方式の導入などの方式改善や全省庁が対象の予算削減が行われた。とりわけ、削減効果が大きく、かつ、廃止しやすい、いわゆるプロジェクト予算を沢山抱えていた、国防省、エネルギー省、NASAなどが注目されることになった。

 国防省は次期戦闘機開発の中止などのほか、調達規格も軍用規格を廃止し、民生規格に統一して廉価な民生品の調達を可能にしたりした。

 エネ省は核実験停止条約が絡み、核実験予算が大規模に縮減された。エネ省が立ち直ったのは、その後、核爆弾の維持管理をスパコンを使ってシミュレーションで行うという手法が承認され、核実験の代わりにスパコン導入が始まってからである。

 NASAも組織の存続自体が不要との意見が出されるなどして、全米に散らばっていたオフィスやスパコンの整理統合が行われ、厳しく開発運用プロセスの改善が指摘され、全般的にかなり厳しい削減が行われた。

 このNPRの活動と、インターネット関連のITバブルによる経済の拡大により、政権第1期の4年で財政赤字はかなりの改善を見た、

 そして、米国では、法律で、各省は政策評価を行う事が義務つけられ、各省庁はOMB(大統領府予算局)の指導と、GAO(議会会計検査院)の評価を受けることになっているのである。
 

 日本でも米国を手本に2002年に行政評価法が施行されおり、行政評価は当たり前のものになっているのである。省庁が政策を始める場合、アカウンタブルな政策目標や評価項目を定め、長期短期に関わらず、中間評価を含めて、評価項目にしたがって、税金投下の効果を測定しなければならない決まりなのである。、事業仕分けは広い意味での行政評価であり、税金投下、政策実施においては当たり前なプロセスなのである。
 

 従って、今回の声明のような、行政評価法による行政評価のプロセスや結果が気に入らないと言って、学術や科学技術は政策評価外であるなどといい出すのは、極めて身勝手な超論理で、税金を使うということの意味がわかっていない「駄々っ子」としか言い様が無いのである。政策評価は税金使用に於いて例外なく必要な基本的アカウンタビリティの問題で、避けては通れないと言う事を認識すべきなのである。いやなら、税金を使うべきではないということだけである。


 そして評価・仕分けの実態として、次世代スパコン・プロジェクトのような技術的失態を含むプロジェクト運営の失態の問題、GXロケットのような政策目標に関する不透明さ、あるいは毛利さんのところや科学振興会のような天下りの問題、等々仕分けは極めて有効に機能しており、声明が主張する「学術、科学技術には馴染まない」などというのは的外れとしかいいようが無いのである。

 結局、この「ノーベル賞受賞者等の声明」は、行政評価と言う税金投入に必要なプロセスの意味を理解できず、また仕分けの実態を正しく認識していない、横柄な「金よこせ運動」、陳情に過ぎず、その一部に、プロジェクトの失態隠蔽が見え隠れする、といったお門違いな声明にしか見えないのである。


 なお、その他いくつもこの種の声明が出されているようであるが、どれも、仕分けの具体的内容を精査したものではなく、抽象的な総論的主張で、各論としての具体性に欠け、「お門違い」としか判断のしようの無いものである。

 

 

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このエントリーへのコメント
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「この計画は効率が悪いので中止する。しかし、同じ金額を出して、安価なスパコンを大量かつ迅速に導入し、より多くの計算リソースを研究者に供することにする」
ということなら、誰も文句は言わないでしょう。

計画中止の前に(あるいは同時に)代替施策が提示されるべきでしょう(ブログで提唱されるという意味でなく、政策として出されるべきという意味)。

  tomo3 on 2009/12/03

13
一見立派な文章を書き連ねてるようですが...単なるゴタクですね
意固地であり偏った見識に過ぎない。
ついでにGood!の数ですが、朝日の傘下になったと思ったらこの有様だ。また某掲示板のようにアクセス解析したら朝日系列の固定IPばっかじゃないんですか?

  ヒジカタ on 2009/12/02

12
先週出席した某省会議内でこんなやりとりマジでありました。
『実証実験の費用対効果が見えなかったので見送った』→『実証実験を行わなければ費用対効果などわかるはずないでしょう』
で、面白かったのが彼も自担当の仕分け作業が終わっていたので反論はしませんでした。(実は彼もそんな事理解している)
ディベート合戦で『煽って』全てを詳らかにする"イベント"自体は評価できます。この後の見直しもアリで決定事項ではないですしね。

  sugibeya on 2009/11/30

11
研究者は、いわゆる、”確実に成功する→すぐに結果に結び付く”プロジェクトしか実行してはいけないのでしょうか?

ちなみにそれを判断するのは誰ですか?

  naoki_s on 2009/11/30

10
行政評価が必要なのはわかります。
しかし、自分の研究が不当に評価されているとして、事業仕分けの見直しを主張するのは、実際に研究をする側としては当然のことだと思いますが・・・。

  Mr. Hone Norm on 2009/11/27

9
能澤さんの言うように税金投入する以上、行政評価は必要でしょう。しかし、スパコンやSpring-8含め各事業はこれまで評価に晒されていなかったわけではなく、実際に専門家による度重なる評価を受けて今に至るのでしょう?
それらの積み重ねを無視したたった1時間にも満たないような議論を適切な「政策評価」と言えるのでしょうか?
素人目に見てもこれは明らかなルール違反だと思います。

また、この記事の声明内容の引用はだいぶ捩じ曲げられていますね。どこに「学術や科学技術は政策評価外である」などと書いてるんですか?知の蓄積・育成される人材が無視されている。評価の方法に問題があるから専門家達でもっとよく考えてやってくれと書いてるんでしょ。
会見では日本の研究者が十分な説明責任を果たしてこなかった問題点。日本に科学振興が根付いていない事の問題点等を指摘しています。また、日本の科学技術関連予算のGDP比が他先進国に比べ低いなど具体的な事実も述べています。
ブログで自分を考えをどのように述べようとそれは自由ですが、他人の発言に関しては正しく引用しなければならないのは常識でしょう?

  backedge on 2009/11/27

8
(1) 日本のスーパーコンピュータ開発の方向性が誤っており、ビジネスのみならず技術的に波及効果の少ない(ROIが計れない)領域の旧来の開発に固執している所に問題があります。 技術の未来を語るのであれば、将来的な波及性を論じることができないことは大問題と思います。 (2) 嘗て米国の基礎領域研究者(宇宙物理学、素粒子領域)が研究費を自分の副業で稼いでいる事実を見たことがあり(複数の例があります)、驚いたことがあります。ROIが直接計れないが、(当面の間にせよ、個人的)興味の追求を貫徹したいのであれば、自分で研究費を稼ぐか、スポンサーを見つけてくる位工夫が必要でしょう。 (映画コンタクトのジョディ・フォスターが演じていた天文学者の資金集めの努力は米国では普通のことの様です。) 設立初期の理研も、その様な気概を持って研究をしていたと思いますが。

  zarathustra on 2009/11/27

7
でも、あの仕分けの論調でいくと、小柴さんのカミオカンデに予算がついていたかはわからんなあ。

  めんへら on 2009/11/27

6
ノーベル賞をとる人たちは スパコンを作る立場の人ではなく 使う人です。 使う人ならば どこの だれが作ったスパコンでもよいから 早いスパコンを いつでも使える様にしてほしい というのが本来の要求では?

この面に関して 熊沢氏は日本のスパコンは高いのが問題だと言われていて 高いものはたくさん買えないので 研究者が自由につかえず 日本の科学技術発展の為にもならないと言われているのですから エンジニアリングレベルの課題である作る事をやめて 安くいスパコンをたくさん買って日本の科学技術発展させる という事は何も矛盾していないと思います。

私としては 今回の緊急提言は 提言されている方が理化学研究所 か 大学の先生なので その統括部署である文部科学省から ”お家の一大事なので何かパフォーマンスせい” という圧力があったのでは? と疑っています。

  doc on 2009/11/26

5
漫遊日記、同感するところ多々あります。
会社だと、「やるやらない」を判断する経営部門、いくらまでなら出せるかをレポートする部門、やることに対して値切りを行う部門とがあるかと思いますが、今回の騒動は、経営部門と交渉すべき技術者が値切り部門に文句を言い、値切り部門がやるやらないに口を出しているようで残念に見ておりました。

  OYAJI on 2009/11/26

4
z

  mumazawa on 2009/11/26

3
それで能澤さんはどのような構成でどれくらいの規模のものにいくらくらいなら妥当と思っておられるんでしょうか?

  nitanic on 2009/11/26

2
少なくとも、意見表明を行うことは、言論の自由の範囲。その意見に世論の賛同を取り付ければ予算を分捕ってこれるだろうし、世論が「お門違い」と判断すれば潰されるだろうし。
自分のやりたいことを実現するために、有名になったり賞をとったりすることでネームバリューを上げ、意見を通りやすくしたりお金を集めやすくするのは真っ当な手段です。科学者の利益を守るためにネームバリューのあるノーベル賞受賞者を担ぎ出してくるのは、戦術としては間違っちゃいないでしょう。

  いぶ on 2009/11/26

1
それで能澤さんはどのような構成でどれくらいの規模のものにいくらくらいなら妥当と思っておられるんでしょうか?

  tsasaki on 2009/11/26

   

 

  
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