778aa3be.JPG今日のおはなし会は、恒松さんが書き下ろした、人間と猫のコント、今回おばちゃんが書いたガリガリ君のはなし、好評だったリュネットのはなし、前回来場者が少なかったのでユウちゃんのはなし、という構成でした。
なぜならーっ!!みんながエピソードを送ってくれないから〜
寄付に回させて頂いた収益は、来場者10名様分のチャージ¥5,000とポストカード売り上げ¥3,000の合計¥8,000です。
さっそく募金箱に入れさせていただき、mignon保護犬猫の食費、医療費に充てさせていただきます。

「ガリガリ君のはなし」

私はとある下町の一軒家で生まれました。
父猫、母猫と4姉妹、人間より猫のほうが多いので猫の家に人間が同居しているような環境でした。
年齢が1歳弱になり、初めての発情期に妊娠しました。
妊娠してから日に日に具合が悪くなり、赤ちゃんができたからかしら?と思っていたら流産してしまいました。
他の姉妹は順調にお腹が大きくなっていくので、自分の子はダメだったけれど、妹や姉さんの赤ちゃんの誕生を楽しみに暮らしていました。
そこへ、飼い主家族の様子がおかしくなり、どうやら引越しが決まったようです。
新しい家はもっと広いのかしら?生まれてくる赤ちゃんたちも充分に遊べるかしら?不安もあったけれど、もしかしたら赤ちゃんたちのために広い家に移るのかもしれない、と姉妹で思うようにしていました。
ところが・・・
父猫、母猫を飼い主の知人が貰いに来ました。
なぜ?
一緒に引っ越すんじゃなかったの?
驚きと恐怖で、別れを惜しむ余裕もありませんでした。
そして、お前たちは人にあまり馴れていないから誰も貰ってくれない、という飼い主のつぶやき。
だって見知らぬ人が家に来て、いきなりゴロゴロできないじゃない、来客は父さん母さんに任せて隠れるのが子供たちの習慣でした。
飼い主は私たちを容れ物に入れ、車で施設に運びました。

冷たいステンレスのケージ、たちこめる他の犬猫の恐怖の、絶望の、悲しみの臭い。
恐怖のあまり身動きもできず、小さく、小さくなって固まっていました。
私たちはどうなるの?
施設に入って何日目かに見学に来た女性。
全部1歳の♀なんですか〜?参ったな・・選べないな。うわ〜全部キジ系でそっくりじゃないですか。
何度も私たちのケージや、他のケージを交互に覗き込む。
あ、こっちは避妊手術してあるんですね?
そうです、2匹とも。
じゃ、いきなり成猫4匹はキツイから、こっちの手術済み2匹がサバけたら他のを迎えに来ますよ。
と他の猫たちを連れて行きました。
ほっとしたような、損したような、、よく分らない。
何日かして他の3姉妹は空腹に負け、少し動くようになりました。
職員さんに貰った食餌を食べ、あとはジッとしています。
私は怖くて何も咽喉を通りませんでした。
そのまま日時が経過し、空腹と恐怖で意識が朦朧としている中、明け方に妹が出産しました。 
ネズミのように小さいけれど、少し私に似ているような・・・叔母バカでしょうか?とても可愛い仔猫が3匹生まれたのでした。
その日の朝、出勤した職員さんたちはとても驚き、まさか妊娠しているとは思っていなかったようです。
そこへ少し遅れて先日の女性が私たちを引き取りに来ました。
参ったな〜、生むなよー、どーすんだよー、とボヤキながら妹や姉さんを職員さんと一緒にキャリーに入れています。
私は怖くてパニックを起こし、皮手袋をした職員さんが必死で捕まえ、この子難しそうですよ、と女性に聞いている。
いいです、とりあえず全部連れて行きます。
無理に妹達の入っているケージに押し込められ、車で移動しました。

犬の吠え声がする中、白い木のケージに妹や姉さんとまとめて入れられました。
私は人も犬も怖いのでシャーシャー威嚇しながら猫トイレに隠れました。
シャーじゃないでしょ、あんた痩せてるね〜、ガリガリじゃん。
勝手にガリガリ君と変な呼び名で呼びかけられるようになってしまいました。
姉妹はケージが二階建てなのに気がつき、上に行ってみて落ち着かないから下に降りて固まったり、と居場所を探していました。
出産した妹は、子供たちと一緒に違うところに隔離されたようで、臭いだけ漂ってきます。
私はひたすら人を威嚇しながら、小さく、小さくなっていました。
痩せ方が普通ではない、とすぐに動物病院に連れて行かれました。
検便でコクシジウムという寄生虫が見つかり、血液検査で白血病ウィルスに感染している事が分りました。
とにかく駆虫し、太らせましょう、とシロップの薬を朝晩飲ませられました。
怖くて逃げようとしても一瞬で捕まり、押さえ込まれてマズいシロップを無理に流し込まれます。
威嚇しても無駄なのが分り、シャーシャー言わずに、ご飯も食べることにしました。
ご飯を食べていると、おっ、ガリガリ君しっかり食べろよ〜と、声をかけられるのが嬉しくて、ンニャ〜ッ、と返事をしました。
返事をすると喜ばれるので、それからは人に話しかけられると、必ず返事をして会話を楽しむようになりました。

妊娠していた姉と、妊娠はしていなかったけれど太っていた妹が、すぐに避妊手術をされることになりました。
白血病の猫をこれ以上増やせない、と話しているのを聞いて、悲しくなりました。
でも、もしも私のように流産をして姉さんが痩せてしまったら心配だから、手術してもらったほうがいいのかしら。
翌日、手術から無事に帰ってきた妹と姉さんがとても元気だったので、3人で重なり合ってベッドで寝て、とても安心し、幸せでした。
出産した妹は、犬がいる環境がストレスで育児に差し障る、というので違う場所に移動していきました。
このまま3人で幸せにここで暮らすのかしら?と思っていたら、譲渡会という日にたくさんの人達が私たちを見に来ました。
私に目をかけた希望者さんに、この子は痩せていて調子が悪いので、元気になって避妊手術するまで譲渡はできないんです、と説明している女性。
確かに、私は日に日に身体がだるくなり、食べる量も少しずつ減っていました。
堕胎した姉さんと、最初から太っていた妹が貰われていく事になりました。
いつも食餌を彼女たちに横取りされていたので、私を世話している人達は喜んでいました。
私も少し寂しいけれど、彼女たちは犬のいない一軒家で自由に楽しく新しい家族に大切に可愛がられるんだ、と聞いて幸せな気分になりました。

日に日に食欲が落ちた私は、様子がおかしい、と病院へ連れて行かれました。
お腹の中に腫瘍ができ、胸に水が溜まり、リンパ腫と診断されました。
治療が難しいようで、苦しませないために安楽死という選択肢もある、と話し合われましたが、苦痛が継続するようになったら考えます、それまでは苦痛を緩和する治療を、と女性は答えていました。
点滴と投薬の治療が始まり、癌によいとされるサプリメントを大量に貰うようになりました。
女性が話しかけてくる時間が多くなり、いま尊厳死の本を読んでるんだけど、正直どうしたい?とか、私が人の言葉を喋れないので悩んでいるようです。
いつも通り、ンニャーッ、と答えると、そーだよな、ま、苦しくなさそうだし、好きなもの食べなさい、ホレ、食べろ、と食べ物を口元に持ってこられました。
たくさん食べると誉められるので苦しくなるまで食べ、人に声をかけられると、また食べれば誉められるかも、と何口かだけでも食べました。
缶詰をあまり食べなくなるとマグロのお刺身を貰いました。
冷凍もんじゃないの、今朝市場で買ってきたんだから旨いだろー、と言われて、本当に美味しかったのでたくさん食べました。
お刺身に飽きたら、シラスとカツオ節で猫まんまを作ってもらいました。
ガツガツ食べていると、塩分濃いから旨いんだろー?と言われ、確かにそうだわ、と思いながらたくさん食べました。
シラスの部分だけ食べてご飯を残すと、替え玉ですか?お客さん?とシラスを追加で入れてくれました。
シラスを食べなくなったら、鯨の皮だという臭いの強烈な物を貰い、臭いに誘われてそれは食欲がなくても口にしました。
その頃には、連日通院して皮下点滴していたのが、体力の消耗を防ぐため、と女性の店で皮下点滴されるようになっていました。
お店のスタッフ達に動かないように押さえられ、輸液剤が沁みて鳴くと、ヨシヨシがんばって〜となだめられ、少しは嫌な事も気がまぎれて我慢できました。
ある日、女性が倒れて救急病院に行った、とスタッフが騒いでいて私のことをどうするか、みんなが心配していました。
夕方になってやってきた女性がいつも通り首の後ろに皮下点滴をしたら、腰の注射痕の皮膚に穴が開いていて、そこからダーッと流れ出てしまいました。
ステロイドの投与で少しずつ皮膚が脆くなり簡単に破けるようになっていたのです。
女性は、皮膚が紙みたいになっちゃったから、しょーがないねぇ、ボンドでくっつけてもらいなさい、と軽く言いました。
残された時間がとても短いことを悟りながら。
そのまま病院に行き、皮膚の処置と注射を受け、戻ってから疲れてしまい、ずっと横になっていました。
夜、帰りがけに女性が、大丈夫か?寒くないか?ゆっくり寝なさい、と布団を直し、じゃあな、と言われたので、ンニャーッと長く鳴いて答えました。
別れの言葉を。

翌朝、出勤してきた女性は、何も言わずに私の亡骸を見つめました。
悲しまず、涙も流しませんでした。
私の命が最後まで幸せであったから。
太っていた妹と、堕胎した姉さんはハチコとナナエと名づけられ、新しい家族と幸せに暮らしています。
私の可愛い甥っ子、姪っ子は生後2ヶ月になり、母親から離れてついこの間、新しい家族に貰われていきました。
そして母猫である私の妹は、奇跡的に4姉妹の中で唯一白血病が陰性で、無事に仔猫を育て上げ新しい家族を探しています。
うちの4姉妹は美人で評判だったので、育児を終えた妹も、きっと誰かが家族に迎えてくれるでしょう。


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