2005年09月07日
『サマータイムマシン・ブルース』〜もどらない夏〜
監督:本広克行
出演:瑛太 上野樹里 与座嘉秋 川岡大次郎 ムロツヨシ
原作・脚本:上田誠
【あらすじ】(公式サイトより)
マジに暑すぎる夏、とある大学の「SF研究会」部室。SF研究などせずぐったりと夏休みを過ごす5人の男子学生と、2人の女性写真部員。前日にクーラーのリモコンが壊れて猛暑に悩まされるなか、ふと見ると部屋の隅に突然タイムマシンが!!!! 「ためしに昨日に帰って壊れる前のリモコン取ってこよう」と軽い気持ちで乗ってみたら、さぁ大変。想像もつかないような事態が次々と巻き起こって…!?
今でこそ新作映画を見まくっていますが、かつては映画よりも演劇を多く見ていました。
それも小劇場系の演劇を。
有名どころだと、三谷幸喜脚本の『オケピ!』(初演&再演)、『彦馬がゆく』、
東京の劇団だと、ナイロン100℃、遊◎機械/全自動シアターなどです。
サードステージ、大人計画はいまだ見たことがないのですが。
大阪市内には小劇場が充実していたので、気軽に足も運べ、
シアター・ドラマシティ、近鉄アート館、近鉄小劇場、扇町ミュージアムスクエア
などなど、近鉄系の劇場がお気に入りでした。
しかしながら、不況のあおりを食って今残っている劇場は、上の四つのうち、
シアター・ドラマシティのみ。
何より、近鉄のアート館が閉鎖されたのが一番こたえました。
一応今でもあるにはあるのですが、劇場としてでなく、
イベントスペースとしてのみ使われています。
そんなこんなで、ここ数年は関西の演劇事情にとんと疎くなってしまいました。
演劇が盛んになるインフラがなくなっているのだから、新しい劇団が入り込む余地
もないだろうと思っていました。
がしかし、京都では「ヨーロッパ企画」という劇団が台頭していたとはつゆ知らず、
映画『サマータイムマシン・ブルース』を見てはじめて、
ヨーロッパ企画のことを知りました。
映画『サマータイムマシン・ブルース』は、
ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ブルース2003』を見た本広監督が、
これなら映画化しても十分に通じると決意したそうです。
本広監督のこういう系列の作品といえば、『スペーストラベラーズ』を見たことが
ありますが、『サマー〜』はこれより格段に出来が良くなってます。
『スペース〜』は、ただのドタバタ劇に終始していた記憶がありますから。
『サマー〜』も見た目のテイストは同じなものの、
テーマ性をさりげなく埋め込んでいるところ大きいですね。それは後で触れますが。
とにかく、普通に見るだけでも十分楽しめた作品でした。
冒頭はあのテンションに辟易さえしていたのですが、その後の怒濤の展開に
すっかり引き込まれてしまいました。
これこそエンターテイメント映画の王道です!
さて、前置きが長くなりましたが、以下、ネタバレありの感想が続きます。
この作品が好きになるか嫌いになるかは、
あの暑苦しいむさ苦しい野郎臭ただよう雰囲気に慣れるかどうか、
そこにすべてがかかっているのです。
雰囲気だけでいけば、『スウィングガールズ』の野郎版になりますね。
太陽が照りつける風景、雑然とした部室、くどさ爆発の役者演技など、
何から何まで暑苦しいったらありゃしない!
役者の暑苦しい演技は、映画というよりも演劇のそれに近くなっています。
まさに舞台劇のノリが、逆に新鮮に見えました。
それに加え、この作品で注目すべきは、舞台劇でおなじみの要素
「人の出入り」がそこかしこで使われているところです。
普通の映画だったら、ドアから出入りするところなどはほとんどカットされるところを、
『サマー〜』では、意識してるのかしていないのかは定かではないですが、
人の出入りする映像が繰り返し出てくるのです。
ここに舞台劇の名残を感じてしまいますね。
映画ではよく「密室劇」というジャンル分けをしますが、
演劇ではそもそもすべてが密室劇なのです。
この「人の出入り」こそが、物語展開をうながす導火線の役割をはたしていますね。
ついでに、「人の出入り」は、人の出会いと別れをも意味しています。
タイムマシンを使って現在過去(たまに未来)を行ったり来たりのドタバタ劇、
その果てにあるのは「ノスタルジー(=過去の自分との出会い)」よりも、
「大人になること(=過去の自分との別れ)」なのです。
このテーマ性が芯にあるから、ラストにも余韻が残ってくるのです。
もうすこし別の言い方をすれば、主人公たちが気づくのは、
「過去の出来事は絶対に変えられない」けれど「過去の出来事の解釈は変えられる」こと。
愛だの恋だの人生だの戦争だのといった高尚な出来事でなく、
壊れたリモコンを取り戻すという、あたうるかぎりくだらない出来事を通して、
それを自ら学び取るところがミソですね。
たった一つのリモコンでさえ、その周りには多種多様な物語が展開されているわけです。
それくらい、一見何でもないようなことでも、微妙な微妙なバランスの上に
成り立った、未来からは変えようがないことだというのがわかります。
『運命じゃない人』の三池崇史評のもろパクリなのですが、
日本映画は『リンダ リンダ リンダ』と『サマータイムマシン・ブルース』から
始めたほうがいいのじゃないでしょうか。
小説やマンガを映画化したものにはろくなものがないですし、
身の回りの小さな出来事を丹念に描ききる、それこそ小津安二郎の系譜に連なる
ものですから。
下手に黒澤明のマネをしても、見るも無惨な結果になるだけです。
ともあれ、上映後の舞台挨拶も含めて、格別な作品となっていました。
勢い余って、今年のベストテンに入れたいぐらいです。
生で見る上野樹里は、作品の十倍はいいですよ!
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この記事へのコメント
おバカでありながら、何処かテーマの深さ?を
感じさせる素晴らしいドタバタコメディですよねw
主演の瑛太や上野樹里もさることながら、脇を
固める役者たちの濃いキャラにとにかく笑わせて
もらいました。
上野樹里さんは、ホントカワイイですよね♪カ
メハヤの舞台挨拶で拝見した時、「うわぁ、カワ
イイ」と本気で思ってしまいました♪
ってなわけでTB返しですー。
TBありがとうございました。
おバカな面白い映画でしたね♪
最近、日本映画も元気になりつつありますね。
もっともっと頑張って欲しいもんです!
私からもTBさせて下さいね。
舞台挨拶観られたそうで羨ましいです。
私は神戸でしたが、立ち見しか無く別の回を観て
後悔しています。
この作品は樹里っぺの役は物足りなかったので
密かに上野樹里中心の続編を期待してるんですけどw
実は、以前エターナルサンシャインでのTB以来ちょくちょく
覗いてまして、ひそかにLINKもさせていただいています。
これからもよろしくお願いします。
私も今回でヨーロッパ企画知りました。
関西系だと最後に見たのは佐々木蔵之助がいた
惑星ピスタチオ解散公演くらいでしょうか・・・。
ちゃんと若い芽が育っているんですね〜。
そういう意味でもうれしくなりました。
僕は、舞台劇は見ないのですが、「密室劇」系の映画は結構好きです。「十二人の優しい日本人」とか「約三十の嘘」とか。
「サマータイムマシン・ブルース」は屋外のシーンとかありますが、舞台劇だとどんなだったのだろう?とちょっと興味出てきました。
こんにちは、TB&コメントありがとうございました。
おバカ全開のコメディでしたが、ラストはしみじみとさせる
ものでしたね。「もうあのテンションにはついていけない」
というセリフもありましたから。
脇役の方々も舞台挨拶で見たのですが、生だとスクリーン
以上に暑苦しく感じます。これぞ舞台俳優!という暑苦しさでした。
上野樹里も、これからの日本映画をしょって立つ女優さんです。
良い作品を選んで出演してもらいたいものですね。
こんにちは、こちらこそ、コメント・TBありがとうございます。
DVDが出たら必ず買いたい作品ですね。
「升毅をさがせ!」のために、何度も見返すことになりそうです。(噂では14回登場しているそうですね。)
こんにちは、こちらこそはじめまして。
TB、コメントありがとうございました。
アイデアの詰まった脚本さえあれば、絶対に悪い作品にはならないことをひしひしと感じさせる作品でしたね。
こういう作品なら、毎年一本は公開されてもいいぐらいです。
日本映画も、地道なところからコツコツと積み上げていけば、
いまやたらと勢いのある韓国映画にも追いつけることでしょう。
こんにちは、コメント&TBありがとうございました。
シネリーブル梅田でも立ち見のお客さんがいましたが、
段差に座りながらの鑑賞でしたよ。
シネリーブル神戸は大きいスクリーンでも100人足らずなので、
舞台挨拶が見られるなら立ち見でもよかったでしょうね。
私は後ろの列に座っていましたが、メンバーの顔がとてもよく見えました。
『スウィングガールズ』ほどには上野樹里の魅力が爆発
しませんでしたが、それも次回作に期待ですね。
こんにちは、コメント・TBありがとうございました。
こちらからもリンクさせていただきますね。
私も佐々木蔵之助は舞台で見たことがあります。
それは惑星ピスタチオ解散後だったのですが。
山下敦弘監督をはじめとする大阪芸大系列の映画グループや
ヨーロッパ計画など、関西発の作品がこれからも出てきそうですね。
こんにちは、コメント・TBありがとうございました。
『十二人の優しい日本人』は三谷幸喜の戯曲が元になっていましたね。
密室劇で言えば、昔のものだと黒澤明の『天国と地獄』、
最近では『東京原発』がなかなかのものでした。
『サマータイムマシン・ブルース』の舞台劇のほうも気になりますね。
つい最近大阪で公演があったそうで、それも見ておけばよかったかなと、すこし後悔しています。
来年公開の「The有頂天ホテル」にもエキストラで参加した三谷オタです(爆)
舞台版見たかったです。東京は公開前に終わっていたので間に合いませんでした(T.T)
こちらからもさせていただきました。
リモコン一つのほんと、なんでもないことに
全力をささげる時代、仲間そういう想いが
笑いに包まれた映画でしたね。
こんにちは、コメントありがとうございます。
「The有頂天ホテル」のエキストラに参加されたとは!
私もこの作品には大いに期待しています。新春にふさわしい映画になりそうですね。
ヨーロッパ企画はこれから間違いなく人気が出るので、
また東京や大阪での再演があるかもしれません。
こちらも期待してもよさそうですね。
こんにちは、TB&コメントありがとうございました。
くだらないことにここまで懸命になるからこそ、
良い映画になったのでしょうね。
私は「ハリキリスタジアム」でかなり遊んだ記憶もあって、
懐かしく思っていました。
くどさで笑わせる、これこそ関西発の笑いでしょうね。
TBありがとうございました。
お礼の返事が遅くなってスミマセン。
この映画、元ネタが完成されてるのもあるだろうけど
やっぱり、本広監督ありきって感じかな。
どんなけ元が良くても
監督次第で駄作に変わっちゃうからねー。
こんにちは、TB&コメントありがとうございました。
小汚い部室の作りこみや、香川の町の風景といったところは
映画ならではの要素でしょうね。
本広監督も『踊る大捜査線』シリーズとはうって変わって、
したいことやりきったという自信にあふれていました。
こんばんは、いつもお世話になってます。
二回目の鑑賞では、冒頭のイライラするところがツボにはいってきますよ。何しろ不穏な人影がチラチラと映りますから。
舞台版もいずれ再演されることでしょう。それまで演劇情報をこまめにチェックしないといけませんね。
TB&コメントありがとうございました。
全然映画らしくないといえば、映画らしくない作品でしたね。そんなことは全然気になりませんでしたが…。
いくらでも拡げようと思えば拡げられる世界をあえて、そのままにしたのが、ミソでしたね、確かに。
グダグダなのか、ハイテンションなのかよく分からない役者さんたちの演技も良くて、予想以上に面白い作品でした。
私は大阪だと近鉄小劇場しか行ったことがないのですが閉鎖されましね。
もちろん私なのでラーメンズを見に行ってたんですが、閉鎖されてから
大阪公演はなくなりほとんど神戸のオリエンタル劇場になりました。
オリエンタル劇場は好きな劇場なんですが、近鉄小劇場もよかったので
悲しいですね。
映画ですがエンターテイメント映画の王道をここまで突き進んで
くれてうれしかったですね。こういう映画って増えて欲しいんですよね。
それも普通に!『ヨーロッパ企画』が気になります。
未来から来た男の子が「みなさん勇気ありますねぇ〜」が妙にツボ
でした。
こんにちは、こちらにもコメント、TBありがとうございます。
演劇のノリをそのまま映画に持ちこんだのが新鮮でしたね。
暑苦しい雰囲気に慣れてしまえば、あとは入り組んだ物語が
楽しくてしょうがありませんでした。
「タイムマシン無駄遣い」も名コピーだと思います。
こういう、予想を裏切る良い作品に出会うとうれしくなってしまいますね。
近鉄小劇場がまだあったならば、ヨーロッパ企画もここで
公演をしたことでしょう。
私が舞台挨拶を見た頃には、ちょうど大阪で舞台版
「サマータイムマシン・ブルース」を公演していたので
見ておけばよかったと後悔しています。
とりあえず、再々演があるのを心待ちにしています。
映画のほうも、たしかにエンターテイメント映画の王道と
言えるものでしたね。遊び心たっぷりで、何度見ても楽しめそうです。
大阪の舞台挨拶の様子もカメラで撮影していたので、
DVDも買いたいと思います。
私も上野樹里生で見たいです。
この映画たしかにバカっぽいって話だけでなく、テーマもあるんですが、成長するのが甲本だけで、他のSF研の連中はもとのままってのがまた、らしくてよいですよね。
こんにちは。こちらこそ、TB&コメントありがとうございました。
こんなに面白い映画なのに、今週末で軒並み公開終了となってしまうのは本当にもったいないですね。
こういう面白い日本映画は、もっと多くの人に見られてもよいのですが。
上野樹里のズレた演技もなにげに光っていました。
変なことを言った後、ちょっと間を置くのも上手い演出でしたね。
私は気に入ったあまり、携帯ストラップも買ってしまいました。
楽しい作品でしたね。
SF研のおバカぶりと、未来人のふるくささが好きです。
細かいネタが多くて楽しかったです。
コミカルタイムスリップものの傑作ですね。
上野樹里が凄く素敵に見えました。
大好きです。
上野樹里も作品も。
ギンギンDXのドリンク買っちゃいました。
こんにちは、いつもお世話になっております。
私のこの作品がものすごく気に入って、ストラップを買ってしまいました。
今年の作品の中でも、5本の指に入るくらい好きな作品ですね。
DVDも発売されたら必ず買うつもりです。
上野樹里はこれからも期待の女優さんですね。
私も、ヨーロッパ企画は映画「サマータイムマシン・ブルース」で知りました。
映画での演技を見てると、舞台の演技も見てみたくなりますよね。
あと3日もしたら、映画版、舞台版、ともにDVDの発売日です!
早く、あのギラギラと暑い日の昨日と今日を見たいです。
こんにちは、こちらこそはじめまして。コメントありがとうございました。
この作品は、去年のエンターテイメント作品のなかでも、トップレベルの
面白さでしたね。せっかく公開時に舞台版が行われていたのに、
見に行けばよかったと思っています。
ですが、それもDVDで見られますね。私は映画・舞台両方のDVDを予約しました。
早ければ明日手にはいるのを楽しみにしています。
DVDの特典映像もかなりゴージャスなものとなりそうですね。
両方予約されたんですね、さすがですね。
なんか、お芝居も映画も両方面白いって
すごいことでは?と思うのですが。
「サマータイムマシン・ブルース」の世界は
子どもの時に、いろいろ夢見た事を思い出し
懐かしくて、キラキラして、うれしくなります。
DVDの特典は、きっと楽しいでしょうね。
週末は、いっぱい笑う予定です!
こんにちは、ふたたびコメントありがとうございます。
映画版にしろ演劇版にしろ、やはり脚本がものすごく良く出来ているのでしょうね。
タイムマシンのうんちくも、実にわかりやすく説明されていました。
細かい舞台設計も、魅力の一つです。
公開時にはすべて見つけられなかった「升毅をさがせ!」も、
このDVDでコンプリートしたいところです。
ドアの出入りは密室劇の導火線。
ホントこちらは勉強になることばかりです。
以前キム・ギドクの映画の分け方でも大いに学ばせてもらいました。
たしかに役者の演技は舞台出身者が多かったせいかくどかったですねw
こんばんは、TB&コメントありがとうございます。
舞台作品なら、ドアによって人物の出し入れがされますね。
役者陣の暑苦しさを含めて、舞台の熱気が伝わってきます。
まだまだ残暑の厳しい今の時期に見るのがふさわしい作品でもありますね。


