2005年12月03日

『ALWAYS 三丁目の夕日』〜現代的な、まことに現代的な〜

3choume『ALWAYS 三丁目の夕日』公式サイト

監督:山崎貴
出演:吉岡秀隆 堤真一 小雪 堀北真希ほか

 

【あらすじ】(goo映画より)
昭和33年の東京。短気だが情の厚い則文が営む鈴木オートに、集団就職で六子がやってきた。小さな町工場にがっかりした六子を、一家のやんちゃ坊主・一平は、「もうすぐテレビがくる」と慰める。鈴木オートの向かいで駄菓子屋をする茶川は、芥川賞の選考に残った経験がありながら、今は少年誌に冒険小説を投稿する日々。ある日茶川は、淡い思いを抱く飲み屋のおかみ、ヒロミに頼まれ、身寄りのない少年、淳之介を預かることに。 


現代ニッポンは悲しい事件ばかり、今年の少年少女の事件をネットで検索していたら
だんだんと気分も憂鬱になって……
少年少女がからんだ事件だけでも、こんなものがありました。

ニュースその1:〔中3が教師を殴る〕1月13日
 東京都府中市の中学校で、3年生が職員室に押し入り、「気に喰わぬ奴だ」と教師の顔を何度も殴った。授業をサボって叱られた復讐。

先生に叱られただけで「復讐」だとは、パク・チャヌク監督作品以上に理不尽な
事件です。ああ、恐ろしや……

ニュースその2:〔22歳ニートがストーカー殺人〕2月9日
 東京都北区の会社員宅で、深夜3時過ぎに埼玉県騎西町の無職(22)が押し入り、包丁で長男(28)を刺して重傷を負わせ、長女(19)を刺殺した。長女と交際していたが、異常な性格からふられて復讐したもの。

これまた「復讐」! この手の事件は毎度毎度テレビ・新聞で見かけるので、
どれがどれだか区別しづらいほどです。最近も同じような事件がありましたから。
「異常な性格」というのも、現代の混沌とした社会情勢に起因するものなのでしょうね。

ニュースその3:〔小6女子がフラフープで卵巣破裂〕11月20日
 奈良県大和郡山市の自宅で、小学6年生女子(13)がフラフープで遊んでいて卵巣破裂の重傷となった。市教育委員会は12.5に小中生のフラフープ全面禁止を通達した。

ん?フラフープとな? 
若いおじいちゃん・おばあちゃんと一緒に『ALWAYS  三丁目の夕日』を見た小学生の孫が、映画に影響されてフラフープを始めたのでしょうか?

……と思いながらこのホームページをよく見れば、なんとこれはみな昭和33年に起こった
事件ではないですか! フラフープ事件もまさにその時代に起こったことです。
これはなんたること、「もぉ〜、そんなのひどいじゃないですかぁ〜」と、
ぽっぺたをぷうっとふくらませ、軽く握った両手の拳を顔の横に持ってくるや、
「プン、プンッ!」と、「さとう珠緒的怒り」を大爆発させたいぐらいです。
ついでに『ALWAYS  三丁目の夕日』も、昭和の匂いが「プン、プンッ!」。


という前置きながらも、『ALWAYS  三丁目の夕日』は、懸念していた懐古趣味的な
要素がなくて、肩すかしを食らったぐらいでした。
そんなことよりも、ただただ面白くない映画、それこそ、
作りこまれた映像以外に何ら見るべきものがないところに「プン、プンッ!」です。
巷では例を見ないほどの絶賛の嵐ですが、私にとっては何が面白いのかまったくもって
理解しがたいところがあります。
こういう世間の評価と個人的評価が大きく違う今年の作品としては、
『海を飛ぶ夢』と『運命じゃない人』と並ぶぐらいですね。

いろいろ言いたいことはあるのですが、とにもかくにも登場人物たちの
「コミュニケーション感度」の低さにあ然としてしまいました。
あれはあれで良いのでしょうか、まるで『渡る世間は鬼ばかり』のように、
心情をすべてセリフで言い切ってしまってます。
このコミュニケーション感度の低さというのは、作品の見た目の古くささとは裏腹に、
まことに「現代的」だと思わずにはいられません。

これ以上突っ込むと道ばたで射殺されそうな恐れがあるので、
以下、この映画を快く思わない「非国民」の方だけお読みください。



まず「コミュニケーション感度の低さ」についてなのですが、
お菓子のショーウインドーをのぞきながら「お腹すいた」というシーンにいかんなく
表れています。こんなベタというか下手な演出を初めて見ました。
お腹がすいている仕草をすれば誰にでもわかることなのに、どうしてこんなに
表現がくどいのでしょうか? 

その他、登場人物のコミュニケーションも、「言葉がすべて」の風潮に満ち満ちています。
「場の空気を読む」なんてもってのほか、何事も言葉で表されないと何も伝わりません。
あくまでも推測に過ぎないのですが、昭和33年という時期はまだ地域のコミュニティが
しっかりしていて、「言わずとも通じる」ところが多々あったのではないのでしょうか。
このコミュニケーション感度の低さは、どう考えても「現代的」なものに
ほかなりません。

さらに「現代的」なことには、この映画にあふれるモノ・モノ・モノ!
「その時代に存在したモノ」が、作品内に超高密度に圧縮されていることといったら、
ありえないぐらいです。
テレビが壊れるやいなや、そっけない態度をするのも、人は気持ちのつながりでなく
モノでつながっていることの表れでもあります。
万年筆だのサンタのプレゼントだの、子供たちもこぞってモノを欲しがっていますから!
ここまでモノを欲しがるのは、現代ニッポンを超えるかもしれません。

今年の日本映画の中では、さすがに『亡国のイージス』や『NANA』ほどに酷い作品
ではないですが、『タッチ』には劣るぐらいでした。



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1. 『ALWAYS 三丁目の夕日』  [ 地球が回ればフィルムも回る ]   2005年12月04日 20:56
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2. [ ALWAYS 三丁目の夕日 ]須賀くんと小清水くん。子役が光っていた  [ アロハ坊主の日がな一日 ]   2005年12月11日 20:56
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3. 「ALWAYS 三丁目の夕日」夢や希望を皆が語った時代  [ soramove ]   2006年01月09日 10:13
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この記事へのコメント

1. Posted by うつうつ   2005年12月04日 15:15
こんにちは、トラックバックをサーフィンしているうちに辿り着いきましたものです。お書きの内容が面白かったので、お邪魔して少しだけコメントさせていただきます。
やたら三丁目の夕日は好評なんで、「(原作知ってるだけに)そんなにいいのか???」と思ってましたが、観ないほうがイイとわかりました。後悔しなくて済みます。ありがとうございました。
デシャバリますが、、、キングコングは止めたほうがいいと思いますよ。(いろんな情報を聞く限りでは、以前のキングコングを超えるほども面白くないようで)
あと北野映画ですが、、、
「キッズリターン」と「あの夏いちばん静かな海」を観てなければそちらが先かと、、、。ソナチネも
悪くはないですが、、、、。あの二作品がより洗練されていると思います。
2. Posted by 丞相   2005年12月04日 20:57
>>うつうつさん
こんばんは、コメント頂きありがとうございます。
どの映画を見るのか、なるべくハズレを引かないようにするのも難しいところですね。
『ALWAYS 三丁目の夕日』も、予告編だけでもご覧になってください。
それで合わなさそうならば、スルーしておくほうがいいですね。

『キングコング』のことなのですが、私はナオミ・ワッツだけが目当てなので、少々内容が悪くても、ナオミ・ワッツが魅力的ならば見ておこうと思います。
これもしばらくは様子見しておくつもりですが。
北野映画は、『キッズリターン』はもう見ています。
となれば、次はおすすめ頂いた『あの夏いちばん静かな海』と、『ソナチネ』を一度にレンタルしてみますね。

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