2006年02月18日

『タブロイド』〜外はねレオノール〜

Cronicas『タブロイド』公式サイト

監督:セバスチャン・コルデロ
出演:ジョン・レグイザモ レオノール・ワトリングほか

 

【あらすじ】(goo映画より)
人気レポーター・マノロは、子供ばかりを狙う連続殺人犯“モンスター”を追って、エクアドルにやってきた。事件を追うTVクルーは偶然、聖書販売員のビニシオが無実の罪で投獄される現場に居合わせる。翌日、追跡取材で留置所を訪れたマノロに、ビニシオが耳打ちする。「番組の力で無実を証明してくれ、そのかわり誰も知らない“モンスター”の情報を教えよう」そうして、マノロはビニシオとたびたび面会するのだが…。


どうも私は、タブロイド紙のノリが受け付けがたいもので……
タブロイド紙の論調は、右寄り左寄りにかかわらず、全国紙に共通している
「社会に向けて自分の正しさ(と思っていること)を発言する」とも違うノリで、
その底にあるのは特定の個人・グループに向けた、ねたみ・やっかみばかり。
「どうせ〜なんだろうよ」という、何を見ても「NO!」と言わずにはいられない、
実在の人で言えば、前々阪神タイガース監督の野村克也の陰湿な口調そのもの、
それがどうしても受け付けません。
仕事帰りのサラリーマンは、日々の憂さをタブロイド紙を読みながら晴らしているのが
現状なのでしょうが。

タブロイド紙を作る側に回ると、ずいぶんと昔に『タブロイド』という、
常盤貴子主演のTVドラマもありました。
スクープをめぐって物語が展開していくというぐらいしか記憶にはないのですが、
そこそこのドラマだったと思います。

さて、映画『タブロイド』でのスクープといえば、どんよりと重いラストではなく、
レオノール・ワトリングの「外はねヘアスタイル」ですから!
上の画像では髪を上げていますが、下ろしたときは、先端が外にはねていました。
肩にかかるほどの長さで、ショートヘアというほど短くはないものの、
レオノール・ワトリングが外はねヘアを見られただけでも、十分値打ちがありました。

レオノール・ワトリング目当てで、作品の出来はあまり気にしていなかったのですが、
これはついつい「惜しいっ!」と言いたくなるものでした。
テーマとしている問題意識は悪くないものの、いかんせん演出力が足りないような……
サスペンスとしての盛り上がりに欠けるというか、引っかかりどころ、
「フック」がないのが惜しいところでしたね。
サスペンスとはその名の通り、物語を「宙吊り」にすること。
それがうまく機能していなかったように思います。さしたる引っかかりもなく、
順調に物語が運んだところが物足りなくもありました。

以下、ネタバレはなしで、ややダメ出しモードの感想が続きます。



刑事もの・マスコミものなど、「事件」を扱う物語においては、
登場人物の「視点」がいかに大切なのか、この作品ではっきりしました。
起こりつつある(起こった)事件を、どの登場人物の視点から見ているのか、
これがぶれると、作品全体がどうしても散漫に見えてしまいます。
サスペンスの傑作『殺人の追憶』も、きっちり刑事二人の視点から物語られていました。
「社会派」の作品だからこそ、逆に個人の視点を定めておかないと辛いようです。
つまるところ、社会と個人は、切っても切り離せないものなのですから。

いずれにせよ、メディア・犯人・刑事の「三すくみ」の関係を正攻法で描くのは
至難の技なのではないでしょうか。
映画職人ジョニー・トー先生の『ブレイキング・ニュース』ですら、
その点はうまく機能していませんでしたから。
もしうまくいくならば、『運命じゃない人』みたいに、物語の「凹み」を利用するか、
2時間半を超える大作にするしかないように思います。

演出上の「踏み込みの甘さ」が、奇しくもこの作品のテーマとかぶっています。
中南米の作品の、最低ラインは一応クリアしているのですが、実に惜しい出来でした。
あと一つ二つテコ入れすれば、秀作・佳作にはなりえたと思います。



トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 「タブロイド」  [ the borderland ]   2006年02月18日 22:09
そんなに多く見たわけではないが、ラテン・アメリカを舞台にした映画はそれだけでインパクトがある。今の日本では、村や町のほとんどの人が下層の生活をしているという状況はまずなく想像できない。エクアドルの生活を切り取ったような映像だけでも、興味をそそられるととも...
2. 「タブロイド」  [ Puff's Cinema Cafe Diary ]   2006年02月19日 21:27
公式サイト VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ、公開4日目初回です。 3-4割程度ですかね、、思ったより人が来ていました。 ・・・いや、ガラガラだと思っていたのです。アセアセ そうそう ade_dela
3. 『タブロイド』  [ かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]   2006年02月19日 21:31
興味深いエクアドルの社会派サスペンス 子供ばかりを狙う連続殺人犯“モンスター”を追いエクアドルにやって来たタブロイド番組の人気レポーターのマノロたちTVクルーは、被害者の子どもの葬儀を取材していた。被害者の双子の兄弟のインタビューを始めようとした時、その...
4. タブロイド  [ いつか深夜特急に乗って ]   2006年08月19日 06:02
「タブロイド」★★★★ (盛岡フォーラム1)2004年メキシ

この記事へのコメント

1. Posted by カヌ   2006年02月18日 22:26
とても考えらせられる作品だとは思うけど、
言われるように、物足りなさを感じます。
ビニシオも確実に逃げれると思ってる訳でも
なさそうだったし、マノロたちも単純ミスに
近い形で逃がしたのは納得できませんでした。
2. Posted by 丞相   2006年02月18日 23:23
>>カヌさん
こんばんは、いつもお世話になっております。
はっきり言って、ビニシオの家族のエピソードはいらないですよね。
これがあるから、ストーリーにまとまりがなくなったのだと思います。
マスコミ、警察、犯人それぞれの詰めの甘さが目立ってしまいました。
言いたいことは分かるものの、それがストーリーにうまく乗せられていないところが
歯がゆくもありました。『ホテル・ルワンダ』を見た後となっては、いっそう
そう思ってしまいます。
メッセージ性の強い作品を作るのも、なかなか難しいことなのでしょうね。
3. Posted by Puff   2006年02月19日 21:38
丞相さん、レオノール・ワトリングのファンだったのですねー
それは知りませんでした!!
今回はあまり彼女の魅力を発揮出来てないような気がしましたが、どう思われましたかー!?

>演出上の「踏み込みの甘さ」
確かにそれはありますね。
サスペンスと社会派ドラマと、それからエクアドルの混沌としたものが混ざり合って・・・
少し焦点がぼやけてしまった感じはありますね。
4. Posted by 丞相   2006年02月21日 00:02
>>Puffさん
こんばんは、こちらにもコメント&TBありがとうございます。
レオノール・ワトリングは、『トーク・トゥ・ハー』で一気にファンになってしまいました。この作品での美しさといったら、ありえないぐらいですね。
『タブロイド』は、たしかに魅力の半分も発揮できていないと思ったのですが、
レオノール・ワトリングが見られただけでも満足しています。
ほかの出演作も、日本で公開されればいいのですが。

『タブロイド』は、かなり惜しい作品でしたね。
それぞれの要素をまんべんなく扱ったせいで、焦点がぼやけてしまったのですが、
マスコミたちの視点に絞って描けば、かなりの作品になったと思います。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔