2008年06月18日

『イースタン・プロミス』〜遺りモノには悪来る〜

Eastern Promise『イースタン・プロミス』公式サイト

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン ナオミ・ワッツ ヴァンサン・カッセル アーミン・ミューラー=スタールほか


【あらすじ】(goo映画より)
病院で働くアンナの下に、一人の少女が運び込まれる。意識を失くした少女は、女の子を産み落とし、息を引き取る。バッグに入っていた手帳にはロシア語で日記らしいものが書かれており、少女がロシア人であることが分かる。手術に立ち会ったアンナは、少女の身元を確認するため、ロシア料理レストランのオーナーに相談すると、自分が日記の翻訳をしようと申し出る。しかし、その後、謎のロシア人、ニコライがアンナに近付き始め…。


私はなるべく映画を有楽町(・銀座・日比谷)か渋谷で見るようにしているのですが、
映画によって、どうしてもこの地域では見られないものが出てきます。
最近の映画だと、『ブレス』と『シークレット・サンシャイン』が六本木と池袋
のみで公開され、どちらも、何となく足を運ぶのがためらわれる場所ではあるものの、
必見の韓国映画ということもあって、シネマート六本木でこれら2作品を鑑賞しました。

東京に移り住んでそれなりに日が経つのですが、いまだに新宿東口と六本木には、
不穏な空気を感じずにはいられません。
先日も、東口のジュンク堂書店に行くため、西口から大ガード下経由で歌舞伎町の横を
かすめて歩いていると、何やら怪しげな「粉」を売っている露店がありました。
それがどういう「粉」なのか、ただべったりと「粉」の入った小袋が並べられていた
だけなのでわかりません。白い「粉」ではなく、くすんだ緑色をしていたのも
不可思議に思いました。

六本木はそういう「粉」を売っているのを見かけはしないものの、ひとたび路地に入れば、
怪しげな雰囲気がただよい、その路地の奥まったところにシネマート六本木が
あるのも困りものです。
むしろ、シネマート六本木自体がいちばん怪しい建物にすら思えてしまいます。
どう考えても映画館がありそうにない場所にある、まさに「芝居小屋」風の映画館。
それがシネマート六本木なのですが、いったいここは映画館になる前は、
どのような建物だったのか、気になって仕方がありません。
エレベータの階数表示が左右に振れる「針」である上、ドアの「格子」が開け閉めする
様子が見えたり、スクリーンが地下2階にある劇場っていったい……となどと思えます。
これなら、それなりに怪しげなアメ村にあるシネマート心斎橋のほうが、
まだまともに見えます。劇場内部のただずまいも、シネマート心斎橋のほうが
こじんまりとしていますから。

もし『イースタン・プロミス』をシネマート六本木で見て、近くの路地にロシア料理店
を見かけたならば、全速力で地下鉄の入り口に駆け込んだはずです。
実際は、日比谷のシャンテシネで公開されている『イースタン・プロミス』を
見たのが幸いだったと言うほかありません。

シャンテシネの予告編で『イースタン・プロミス』の予告編を見たとき、
ただならぬ雰囲気を感じてぜひ見たい作品となったのですが、その期待どおりの
良い作品でした。
これぞ上質のフィルム・ノワールというべき作品だったと思います。
去年に公開された『あるいは裏切りという名の犬』というフィルム・ノワールよりも、
私は断然『イースタン・プロミス』を推したいほどです。
R18作品ということで、パク・チャヌク監督の『復讐者に憐れみを』と同じほどの
グロさを覚悟して臨んだだけあって、グロい描写にも何とか持ちこたえられました。

それに、R18のグロさを打ち消す力をもつのが、何はなくともナオミ・ワッツの美しさ!
今年で四十歳を迎えるというのはありえない、これぞファム・ファタールと言うべき
美しさ、とはいえ、「男を堕落させる女」というよりも、物語では「母性」をたたえた
存在になっていました。

サスペンスの要素を含んでいるので、ストーリーについてはあまり触れられませんが、
とにもかくにも、奥行きのある脚本だったと思います。
私は展開が読める部分と読めない部分がありました。
一見それがヒントだと気づかれないようにネタを仕込んであったり、
主人公の立ち居振る舞いがミスリーディングを誘うところに、
脚本の「深度」がありました。
先日、同じくシャンテシネで見た『幻影師アイゼンハイム』は私にとっては
バレバレのラストだった分、『イースタン・プロミス』のラストには「けたぐり」を
食らったような気分になりました。
といっても、それはジョニー・トー先生の『PTU』のような、失笑・爆笑を誘う
ラストとはまた別のラストです。

見どころたっぷりのこの作品のなかでも一番の見どころは、ラストの痛々しい
バトルシーンでしょう。
フィルム・ノワールでは、ジョニー・トー先生の『エレクション』ぐらいでしか
使われない「ナタ」で攻撃するのが、痛々しさを倍増させていました。

初見だとどうしてもR18的なグロさにつられたため、物語&ナオミ・ワッツの美しさ
を堪能するには、もう一度見ても構わないほどの良い作品だったと思います。



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『イースタン・プロミス』公式サイト 監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ヴィゴ・モーテンセン 、ナオミ・ワッツ 、ヴァンサン・カッセル    アーミン・ミューラー=スタール 、シニード・キューザック 2007年/イギリス・カナダ・アメリカ/100分 ...
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この記事へのコメント

1. Posted by rabiovsky   2008年09月02日 20:43
TB&コメントありがとうございました。

シネマートに行った事がないのであそこらへんはあまりわからない
のですが、六本木は夜じゃなければ普通の町ですよ。
池袋も全然問題ない街なので悠々と歩いても無問題です。
でも西口から大ガード下経由も問題ないと思うんだけど
「粉」を売っているというのはかなり怪しいですね。
何の粉なんだろう・・・。合法なのでしょうか(笑)

『イースタン・プロミス』は普通なロシア料理店がアジトという
のが怪しげな街の昼の顔と夜の顔の境界線をあやふやにしている
感じが好きでした。
そこでサスペンスフルなフィルム・ノワール的な物語を語って
いくのがなんとも不思議で怪しくて面白かったです。
またナオミ・ワッツの「母性」をたたえた存在が効いてましたね。
コーヒーもブラックじゃ物足りないですから。
ミルクや砂糖を入れたくなるものです。
舞台はロンドンだし! 
だけどグロいですよね〜。未だに克服できずです。

2. Posted by 丞相   2008年09月03日 00:36
>>rabiovskyさん
こちらこそ、いつもTBありがとうございます。

昼間の六本木はヒルズに向かう人が多いので、まだ健全な
雰囲気がしていますね。でも夜は……ここ最近、外国人力士が
六本木でヤヴァい「粉」を手に入れたというニュースを聞くと、
できるかぎり夜の六本木には行かないようにしています。
新宿で露店販売している「粉」も、くだんの外国人力士が手に入れた
のと同じ種類のものという可能性もなきにしもあらずです。

それで『イースタン・プロミス』なのですが、主演のヴィゴ・モーテンセン
があまりにも悪役然としているところが、ラストのサプライズに
活きていますね。フィルム・ノワールとしての演出力は、
ほぼ満点に近い点をあげたいほどです。
最近は2時間半前後の長い作品が多い中で、2時間弱の尺に
ここまで手際よく収めるクローネンバーグの手腕も
評価したいですね。
3. Posted by 健太郎   2008年10月24日 23:44
2 すっかり遅くなってしまいましたが、観てました。

ロンドン・マフィアものかと思ったらロシアン・マフィア。
なのでより重く暗い、重厚な男のドラマが楽しめました。
ロシアン・マフィアの掟やしきたりがきっちりと描かれていて、ロシアン・テイストがとても詰まってましたね。

馬鹿息子に甘いのは万国共通か。
結局、下っ端は使い捨てにされるのね。
とか思ってたら、あんなオチが有るとは意外でした。

渋い役者が揃っていて、見所満載でした。
サウナはガチンコでしたしね。
4. Posted by 丞相   2008年10月30日 21:43
>>健太郎さん
TB&コメントありがとうございました。
あと半月ほどで、この作品のDVDがリリースされる
ようですね。映画館で見たときはグロさのインパクトが
強かったので、改めて見てみたいと思っています。

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