10.02.06 羽田D滑走路工事現場見学会 & 土木技術者と語るトークイベント

D-RUNWAY土木学会企画、羽田空港D滑走路の工事現場見学会と、お台場カルチャーカルチャーでの土木技術者とのトークイベントと言うハイブリッド企画。
(トップ写真は、今回の見学会はあまりにも規模が大きくて、1枚で内容を象徴する写真が無かったので、前にD滑走路見学展望台に行った時のもの)
C滑走路の竣工時には徒歩で入れる一般公開イベントがあったんだけど、D滑走路はその位置関係から徒歩公開はかなり難しそうなので、この企画を逃しては2度とD滑走路を間近に見ることは出来ない可能性が高いのでここぞとばかりに応募。無事参加できて、念願のD滑走路見学。

ええと、参加する前は、飛行機ヲタとして滑走路そのものに興味があったんだけど、実際に間近に見た滑走路の工事現場は想像を遙かに超えていて、目に見えない技術のスゴサに圧倒。
D滑走路は、1年ちょっと前に対岸の見学展望台プレハブ小屋に行ってるんだけど(D滑走路見学展望台のレポ)、そこで説明とかじっくり読んだつもりだったんだけど、説明資料には書かれていない高度な技術がいっぱいあって、これは見学会に参加しなかったら絶対に知らなかったと言う驚きの連続。
てなわけで、広報資料は概要だけで、現場にはそういった資料だけでは伝えられていない技術が満載です。

では時系列にそってレポートを。
今回GPSロガーを持参して、出発からお台場のトーク会場まで移動行程の軌跡を記録していたので、一番下のGPSの軌跡と一緒に見てもらうとイメージがより沸くと思います。

集合出発
1号車
・集合場所。事前にもらった集合場所の地図がイマイチ分からなくて、集合場所の写真が白黒で載ってて、こんなんじゃよく分からないよなぁ、と思いながら集合場所のに向かうと、駅を出たところに案内のスタッフの方が居て不安解消で無事集合場所へ。
・当日、快晴なれど、気温低いのに加えて風が強くて、参加の皆さんもそれを見越してばっちり防寒で参加。
・参加人数約50名。2台のマイクロバスに分乗して一路羽田へ。
・ここでちょっぴりハプニング。自分の乗った1号車が迷子に(赤の軌跡の大井ふ頭に行こうして引き返している部分)。でも、おかげで、新幹線基地やJR貨物基地が見られてちょっとラッキー。

D滑走路工事現場見学(GPS軌跡 青部分)
・そんなハプニングもありつつ、無事、D滑走路見学展望台に到着。見学展望台の2階で説明を受けてからいよいよ現場へ。そうそう、現場見学会のお約束のヘルメットに加えて、今回、なんとライフジャケットの貸し出しが。確かに、場所によっては海への転落の危険があるのでなるほどなぁ、と。
連絡誘導路1連絡誘導路2連絡誘導路3
・再度、マイクロバスに分乗して、1本だけ完成している連絡誘導路の車両通行部を通って直接滑走路工事現場へ(連絡橋が繋がるまでは、作業員はみんな船で渡ってたんだよね)。
現場事務所チャーターバスのべ労働時間
・桟橋部の工事事務所、工事現場見学展望台がある場所にバスを止めて、徒歩で各所を見学。ちなみに、のべ労働時間は去年12月時点で2000万時間を超えて、黒部ダムの建設に匹敵するほどの多くの人員がこのプロジェクトに従事していることを物語っています。

桟橋部分
・驚きの連続でした。
橋脚1橋脚2ピカピカに輝く柱
なんと篠山紀信も撮影に来たそうな
・まず、桟橋部分の底の橋脚部分。なんと橋脚は腐食防止の為にステンレスで巻かれていてピカピカ。(海底部分はステンレス巻きではなく、逆にアルミ加工で積極的に腐食させることで鉄部分を守っているそうです)
・間近に見るまでは、橋脚部分はもっと詰まった鉄骨が入り組んでいる構造を想像していたんだけど、1つのジャケット(桟橋部分を構成している巨大なテーブル状の構造物)には足が6本だけついていて、その間隔は思っていた以上に広くて、実はその間隔は、河川法で川の流れを妨げない間隔として定められているそうで。
チタン加工ジャケット連結部空調パイプ
・そして、もっと驚いたのはテーブル部分の底の部分。ここ、なんとチタン金属で覆われた密閉構造で、その密閉空間の湿度を50%以下になるようにコントロールしてテーブル部分の腐食を防止しているとのこと。一見、チタンとか使ってすごいお金が掛かりそうだけど、100年スパンの長い目で見ると、毎年、腐食防止塗装をし直すとかと比べて低コストなんだそうな。
・トークイベントでの話も含むんだけど、桟橋部分のジャケットの設置工事は、飛行機の離発着の高さ制限から、基本、夜にしか出来ないそうで、さらには通常のクレーン船では高さがありすぎて制限に引っかかるので、専用のクレーン船を製作したそうな。
見学台見学台より1見学台より2
・桟橋部陸上。プレスや視察用と思われる見学台が。本日天気がよくて、非常に景色がよくて、ちょっぴり観光気分。アクアラインの風の塔が思いの外近くてビックリ。
・この桟橋部分、釣り客的には絶好のスポットだよなぁと思いきや、当然ながら立ち入り禁止区域だそうで、近海海域にはレーダーが設置されて、不審船等が近づいてきたら、すぐに海上保安庁や海上警察とかが出動できる体制が取られるそうです。

A滑走路アプローチ政府専用機
・で、飛行機ヲタ的に、政府専用機が居るのを発見。おぉ!っと思っていると、単に止まっているだけではなく、何やら動いている様子。そして、見学終わったあとお台場への移動途中にJALの機体整備工場から出てきて滑走路内の立ち入り制限区域に入る自衛隊の部隊に遭遇。あとで調べてみたら、どうやらハイチ支援にPKO活動で自衛隊が派遣されたらしく、政府専用機でこの日出発したようです。

案内板埋め立て桟橋接続部
・そうそう、桟橋部、埋め立て部共通でビックリしたこと。滑走路、思っていた以上に凸凹している。滑走路と言うと誤解されるのできちんと書くと、滑走路や誘導路を含めた全体構造として凸凹していたこと。C滑走路を歩いた時は真っ平らだった記憶があるんだけど、それは滑走路(RUN WAY)だけのことで、全体的には雨天時の排水とかを考えて高いところ低いところが緻密に計算されているそうです。

埋め立て部
埋め立て部1埋め立て部2
・再びバスに乗って、埋め立て部の一番端まで移動。(ここまで来られるのはみんな期待していなかったようで、見学展望台での事前説明で埋め立て部の端までご案内しますって言われた時は、みんな「おぉ!」って歓声あげてたからね)
・いやぁ、広い。桟橋部の展望台から遠いながらも全体が見えていた気になっていたんだけど、全然見えていなかったと言う(その謎は後述)。
メガダンプ
・バスで移動しながら、色んな建機がいっぱいで、建機マニア的にも大満足。
滑走路端誘導灯
上り坂滑走路端から撮影した桟橋部分川崎方向。
写真では分りにくいけど上り坂になっていて、この坂の上の部分から滑走路が始まる。
・一番端っこに到着してバスを降りると、何やら下り坂になっていて、予想外の高低差。埋め立て部の端っこが滑走路の先端だと思いきや、飛行機の離発着時に船舶にぶつからないように高度を稼ぐために、滑走路そのものの高さは海抜17mになっているそうで、一般的な埋め立て滑走路の海抜5mとは比べものにならない高さ。てなわけで、先端の下り坂は海抜17mを稼ぐためのヘリ部分だったと言う(だから桟橋部の展望台からはヘリ部分は下っていて見えていなかった)。
・でも、この高低差って飛行機マニア的には滑走路高度の設定ミスで危うく着陸時にヘリに激突とかの事故が起こりそうで怖かったり。と言いつつ、ISLが誤作動しなければそんな危険性は皆無なんだけど、逆にVRF(有視界飛行方式)では錯覚による事故が起きそうな滑走路(PAPIをちゃんと見ましょう)。
・ちなみに、D滑走路は川崎方向への離発着はなく、すべて海側の千葉方向のみだそうです。
立ち入り制限ブイ黄色いブイが立入制限水域を表してます
・で、トークイベントで知った事実。D滑走路はてっきり滑走路を造る工事だけだと思っていたんだけど、なんと、東京湾第一航路(西航路)を微妙に千葉側に曲げる浚渫工事もセットだったそうな。

・土木の仕事は「地図に残る仕事」とよく言われますが、GPSログで見るとその仕事が一目瞭然。今回の見学の軌跡は地図にまだ載っていない会場部分をウロウロしている状態だけど、これが、今年の末ぐらいには地図が更新されてD滑走路が地図に表示されると、どこを歩いていたのか、また新たな感じで実感できると思います。

・そんな感じで、朝心配していた強風は、何故か現場では微風で天気よくて絶好の見学日和でした。
・最後、ヘルメット、ライフジャケットを返却して、一路、次の会場のお台場へ。

お台場トークイベント
臨海大橋滑走路工事現場から見た、建設中の臨海大橋
・またもや、微妙に道が不安な感じで(ま、羽田地区の道路はぐるぐる回らされて誰でも不安なんだけどね)お台場へ。おぉ、城南島経由で行くんだ、始めて通った。ここ、一般車はあまり通らないレアな道だからなぁ。でも、臨海大橋が出来ると劇的に便利な道路になることは間違いなし(GPS軌跡 緑部分)。

・現場見学とはまた違った意味でレアなイベント、見学後のトークイベントをお台場カルチャーカルチャーにて開催。ここは、現場見学に参加出来なかった人も、トークイベントだけで参加可能。
お弁当
・いやぁ、何がレアって、まさかカルカルでお弁当を食べられるとは。現場見学から参加していた人はお弁当がもらえるんだけど、カルカルを知っている人的に、まさかの展開。なんか、トークイベントだけの参加者に申し訳ない気分。
・で、午前中からの流れで、羽田再拡張D滑走路建設工事共同企業体(JV)の方達がメインパネラーなイベントだった訳ですが、これは雰囲気的に、他のカルカルでのイベントとは違って、アルコールなんかオーダーしたらいかんでしょ?的な感じ。
・これは、逆の立場でもレアなわけで、トークイベントを経験したことないJVの人達は、BGMの掛かっている飲食可能な会場でトークするの始めてなわけで、双方、始めてづくし。
・今回、見学会からの流れだったんで致し方ないと思うんだけど、プラスワンやカルカルでのトークイベントの楽しさを知っている自分としては、もっとラフにこの場でしか言えないようなオフレコ話が出来る雰囲気に出来なかったかなぁ、ってのが残念。逆に、まじめに討論するなら、カルカルじゃなくてホテルの会議室とかでよかったんじゃないかなぁ、と。どっちかと言うと、JVの人達に、トークイベントの真の楽しさを感じてもらえなかったんじゃないか?って方が心配。

・さて、そんなイベント特有の雰囲気は置いておいて、トークイベントでは、現場見学とはまた違った、おぉ!って思う話が。
・えと、今回のトークイベントで一番ビックリしたのは、D滑走路の建設工事は、発注者の国土交通省が仕切っているのではなく、請負者であるJVが全面的に仕切っていると言うこと。そして、JVは15社からなる各業種の企業体が協力してプロジェクトを進行させていると言うこと。
・複数企業がこれだけの規模で、しかも工区をまたがって担当しているプロジェクトは過去に例が無いそうで、さらに、JVが全面的に仕切っていると言うのは、メインの羽田の航空関係との調整のみならず、東京湾の通行船舶とかの調整もすべてJVがすべて自分たちでやっていると言う事実。
・関係各所の難しい調整はてっきり国交省がやってると思っていただけに、これはすごい驚き。土木の概念を超えてプロジェクトとして凄いなぁ、と。
・あと、10月利用開始予定のD滑走路だけど、なんと5月にはすでにフライトチェックの離発着が開始される予定だそうで。今回見学した時点では、まだ飛行機が離発着出来る気配は皆無だったのに、あと4ヶ月ぐらいで離発着可能な状態になってしまうと言う驚き。
・と言うか、D滑走路の建設は、見学展望台のライブカメラからちょいちょい見ていたんだけど、初期の頃の全然変わってない頃から比べると、後期のみるみる変わって行くスピードには驚くべきものが。
・それと、土木工事は自然との対話だと言っていたのが印象的。今まではてっきり重機やコンクリートでガンガン固めて力で何とかするのが土木工事だと思っていたんだけど、それは大間違いで、自然と対話して自然の力を利用した工事をしないと罰が当たるよと。
・そのせいかどうか、土木工事は自然の変化による予想外の設計変更が常な所、今回のD滑走路工事は、自然の変化を先読みした設計が見事に当たって、予想外の設計変更がほとんどなかったそうです。

・今回のイベント、土木学会が企画してイベント的に開催された見学会でしたが、PR資料では知ることが出来ないことが非常に多いと言うを実感出来たのが、最大の収穫でした。
・で、今回のイベント学会がかなりの費用を負担していると思うんだけど、チャーターバスとかトーク会場の費用とか、もっと実費程度の費用を参加費に含めても良いと思います。これだけの内容で2000円は安すぎます。

・羽田空港D滑走路の建設工事の公式HPはこちらhttp://www.haneda-d.jp/ 見学展望台は無料で入れて詳しい説明があるのでオススメです。

見学の軌跡のGPSログ
(PC専用、RSSには非表示。データが重いので表示されるまでちょっと時間が掛かります)



Posted by RST at 2010年02月08日 10:20│Comments(2)
この記事へのコメント
自分もこの見学会参加してました。2号車の方に乗ってましたが。
最近は高速道路系の見学会なども多く開催されてますが、これだけ未完成の状態且つ完成後に近寄れない所の見学はもの凄く貴重な体験でしたね。GPSのログいいですね。自分はロガー忘れて後悔したクチです。
Posted by tkms110 at 2010年03月02日 23:48
先週、海上から、館山に向かうジェット船でD滑走路を見てきました。
ジェット船は思っていた以上に、D滑走路ギリギリを航行していて、いかにD滑走路が千葉方向に張り出しているかが実感できました。
Posted by RST at 2010年03月03日 10:23
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