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今日の古本

『聖☆おにいさん』を読んでたら、なぜか急に読みたくなって古本屋へ。
光瀬龍・萩尾望都『百億の昼と千億の夜』です。
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1978年刊、壮大な仏教的宇宙論を背景に、「世界に予め破滅を内在
させたのは誰か?」という謎を、鬼神阿修羅王が追うSFマンガ。




アトランティスの賢者オリオナエ(プラトンの過去生か)、未だ
ブッダならざる王子シッタータ、13人目の使徒ユダといった
アクの強すぎる面々を率いて世界の謎に迫るヒロインは、
梵天王、帝釈天の天界軍と宇宙を二分して四億年の闘争を
続ける戦の鬼・阿修羅王。しかもそれをまだ成熟しきらない
中性的な少女に設定しちゃってる。もうこのキャラ設定の
時点で面白いに決まってます。
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阿修羅というと日本人はもれなく興福寺の少年のような立像を
思い出すわけですが、これを思い切っておにゃにょこにする!
女体化キャラなんて日本じゃこの時代にもう余裕なのです。

ピラミッドやモヘンジョ・ダロの遺跡が超科学で作られたって
あたりは、世を挙げて宇宙考古学ブームだった執筆当時の
空気が感じられてまたイイですね。天界の命を受けて阿修羅
王たちを追い続け策略を巡らす悪役がナザレのイエス。
この設定はわし個人的なキリスト教観にいささかの影響を
与えている気がしますw つーかここで描かれる野卑なキリストが、
多分『聖☆おにいさん』読んでて思い出されたんでしょうなw

終盤に登場する超未来の管理都市の雰囲気は、典型的な
1970年代のSF的ディストピア像でありまして、今見ると幾分
陳腐な感じもいたします。とはいえ物語の序盤で、婆羅門
たちが冷えきった死の世界と化した刀利天にシッタータを
案内しながら、「熱エントロピーが極めて小さくなっているのです」
と突然物理学用語を使ったり、兜率天の都トバツ市を攻囲する
阿修羅王が、「あれは、トバツ市を囲むバリヤーに炸裂する
我が軍のリチウム原子弾の光だ」とつぶやいたり、宗教哲学的
ファンタジーに、ふいにハードSFチックなスパイスが効かされて
いるあたりはやっぱりカッコイイのです。
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本作と諸星大二郎『孔子暗黒伝』は、アジア哲学とSFの融合を
図った70年代SFマンガ不朽の傑作でありますね。




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