記憶の中の叫び声ラストギリシャ 中編

2023年03月15日

ラストギリシャ 前編

ギリシャの出口に来た時雨は殆どやんでた

小さな国境管理だ そういえば入った所もこんな風に寂しい感じがしたな どっちも喫茶店が一軒と商店がチラホラあるホノボノした空間でおよそ犯罪の臭いなんか少しもない所だけど ボクにとって全ての国境はあんまり嬉しい場所ではないんだ

まぁまぁ問題が起こるからだ

第一念入りな荷物検査だけで嬉しくないし出国拒否されたことも犯罪者扱いで別室に閉じ込められた事もあるんでどんなに小さな国境でも通るときは緊張するんだ

国ごとに決まりが違うのはわかるけど気にしない性格のせいでその決まりを自然と破っていたり不足していたり多すぎたり完全アウトなものを時にボクは抱えて国境超えをするからいけない

でも今晩はすでに確保した絶好なキャンプ地で過ごすと決めてる テントも張って一切の荷物を残して財布のみで今晩のご飯の買い物にやって来ていたから今は全く緊張してない そこへ喫茶店でコーヒーを飲んでいた2人のケー官がボクを見つけて手招きしてきた

悪い事は何もしてないからちょっと遊んでやろう

パスポートを見せろと言ってきたから持ってるけど今日はギリシャを出ないから見せないよとからかってみた

屈強な2人の男は難しい顔で足のような腕を組んでそんなの関係あるかお前本当は何人だというから渋顔でパスポートを出すボク

どうやらアルバニア人と怪しまれていた アルバニア人には専用の闇ルートがあるんだぞと心のなかでツッコむもこれが彼らの仕事なのだと沈黙した 二人は予想通り暇を持て余していてボクは終始質問攻めだった 珍しいから暇つぶしには絶好だとは自分でも思う

手前の川辺でキャンプする事を知って野犬が危険だからやめろと諭すケーサツに別れを言って食料を買い込みテントに戻った

国境手前2kmの所に小さな橋がかかっていて下を清流が小川になって注いでる 干上がった川底までは崖を降らないとならないんだ そのゴツゴツの川床を国道から見えなくなるまで歩くんだ だから野犬の心配はない ボクはすでにギリシャから多くを学んでる 殆ど全て他人には役立たない知識ばかりかもしれないけど自分だけの道ってのはそういうもんだ

清流で体を洗いコーヒーを淹れて頭上の冴えた月を眺めながら飲んだ そして頭上から小さな火の揺らめきを見つめていた 聞こえるせせらぎと野犬の遠吠えが子守唄のように優しかった 暖をとるボクがいた ボクはギリシャに暖かく包み込まれていた


つづく

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photon_5d at 22:59│Comments(0)2019 ギリシャ 

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