あわてるなといいたい話

2020年07月13日

パニック病

カターブと会うためアルビールに来たのに彼はソラーン県の実家に帰省していることがカフェでWi-Fi接続して連絡した時わかった

おかげでウィリアムがまたやらかしたドホークのジーナの家を出てここまでヒッチハイクもワリカシスムーズだったのに君達も来なさいと軽やかに提案(強制)してきた天才カターブが悪い 
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アルビールに向かって快調にヒッチハイク

現在地を確認してソラーンに向かうためいくつかある分岐点をソラーン方面の一本道になるまで歩く必要があってボク達は高速道路のような広い国道の脇を歩いていて道は全方向に枝分かれしながら輪を描いて橋をかけてアルビール郊外の果てしない一直線上にいる

ウィリアムは車を捕まえようとするボクに向かってあまり車道に出るなとか こんなとこで車を捕まえても意味がないと文句を言った

ヤツの苛立ちのその奥で不安と恐怖が暴れている

人にうるさく注文しておきながら前方で突然車を停めようとして手を挙げているのを50m後ろから見ていて好きにさせてヤツの思う車が停まれやすい場所でヤツの思うようにヒッチハイクすればいいと思って黙って歩いていてた

しかし本流への合流点で車を強引に止めるもんだから後続車両が止まりきれなくて玉突きしてとんでもない渋滞ともみ合いが始まってしまったのだ

追いついたボクは戸惑ってるウィリアムの腕を掴んだ
「何ボーッと立ってる なんでこんな狭い合流点で車を停めようとしたんだ」

ウィリアムは動転して返事ができないでいた
見ると3台ぶつかってたクラクションが響いて運転手同士が言い合ってる でも言葉がわからなかった
「こんな所にいたってお前にできることは何もないだろ」

まだジョージアの田舎を旅していた頃キャンプファイヤーを囲って自分にはパニック障害みたいな持病があることを話してくれたのを思い出していた 悲惨な戦場を目にした兵士が退役しても社会復帰出来なくなるショックの病気に似ているやつらしい 戦争を経験してない奴が受けたショックとは生後すぐに離婚した父親だろうか 片親って事で小学校ではイジメられたりして母ちゃんは一生懸命育てたけど普通と違うって事は子供にとって重たい現実かもしれない そう思ったら何も言えなかった ボクが出来たのはヤツのケツを叩いて足を動かせることだけだった


つづく 

幸せに向かって歩け
 ↓ 

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photon_5d at 12:43|PermalinkComments(0)

2020年06月03日

歯車 第三章 擾乱

冷たい雨が止んだり降ったりする中ジーナの家を出発した

昨日のボク達は10㌔先の人工湖まで歩いて旧市街をブラつき 途中膝を痛めだしたヤツに歩き方ってやつを教えている夜の7時半の所で偶然帰宅するジーナに会ってその足で園芸店に寄ってもらいママに白い花が2つ3つ咲きかけている鉢植えを買うことにしたのはウィリアムの提案であるけどもこの出会いに感謝して旅立つ前に何かしたいという気持ちを一致させていたからだ····

車は水しぶきをあげて一向停まる気配がない 1つの傘を代わりバンコに使って 雨の激しさが増す頃ボク達は豪華なホテルのグランドフロアにいた 千人軽く収容できる結婚式場みたいな立派な建物は2台の車を乗り継いだにもかかわらずジーナの家から3㌔離れてない市街地に建ってあって雨宿りしているうちに辺りは暗くなった

ウィリアムの機嫌が良くないのは分かっている動きたくなくて散歩を嫌がる犬のようなウィリアムの無言の抵抗を破ってここから500m歩いた先のモスクで眠らせてもらえるか聞きにいこうと提案するとこれまで身動きしなかった奴は突然車を捕まえるといって薄暗い土砂降りの雨の中へ傘を掴んで飛び出すと数分後その傘を壊して戻ってきた

ボクは自分の傘が壊されたことで衝動的に汚い言葉で怒鳴ってしまった ウィリアムも溜まっていた不満を吐き出し風が傘をめくり上げて壊したと逆ギレした歯車はガタガタと音たてていた····

アイツは最初から乗り気じゃなかった 次のカウチサーフィンホストも見つかってないし外は冷たい冬の雨 あの家にいれば美人の姉妹と温かい部屋でお茶飲みながらゲームや映画観てくつろげたんだから····

待合室にはボクの他に3人の若者がいて何をして連れてこられたのか知らないがとても凶悪には見えない優しい目に同じ目で合図した お互い不運だったなというあいさつをした 

そんなに嫌なら一言別行動しようと言ってくれたらよかったんだ そういうイヤイヤオーラで付いてくるからこんなことになるんだ ヤッパリあの時スメェル町に留まるべきだったんだ ボクの心は純粋にそれを望んでいたのに何故あの時一言「後で落ち合おう」が言えなかったのだろう(お前ら二人ともおんなじだ)

約15分でウィリアムが戻って来た
「取り調べは終わった オレ達一応解放されたみたいだ」

ウィリアムだけカメラの中の写真全て調べられて質問攻めしてあとは省略ってどーいう事だ そしてキツイ命令であのモスクへは戻れずホテルに泊まれとのこと これから車で街のホテルまで連れて行くと言った

ボクはお金がないからモスクへ来たこと駄目なら外で眠れる場所へ連れて行けと食い下がり ウィリアムは間に入って外は土砂降りだからホテルに泊まろうとなだめるように提案しているがボクはすでに怒っていて(仲間外れの気分で)かなり揉めて最終的に一泊4ドルの安宿へ連れて行くという約束をして降ろされた宿が一泊10ドルなもんだから頭に来て言ってやった 

降ろされた場所の大通りの一角でボクはペシマルガの一人を睨みつけ車の後部で立ち向かい合っている「おい お前安宿連れて行くって言ったよな 一泊4ドルって言ったよな
ペシマルガ「ココが街で1番安いんだ 文句言うな
ボク「お前4ドルって言ったよな なんで10ドルなんだ ふざけてるのか オレは泊まらないからな ウソつきは大嫌いだ」
ペシマルガは何が不満だと声を荒げる
ボク「金が無いって言ってるだろうが
ペシマルガ「そんなに金がないなら俺が払ってやる
と男は財布から札を出して押し付けてきたからもらおうと思ったらウィリアムが横から奪ってそのまま男に返すと馬鹿なことはするなと言ったウィリアムは明らかに怯えていてうろたえていて可愛そうだった 

ペシマルガの男たちはその後ウィリアムに感謝されて気持ちよくなったのか最後は握手を求めてきたがボクはその手を振り払って「このホテルには泊まらないからな」と繰り返した男たちはウィリアムにお前は良いやつだかアイツは頭がおかしいとボクを睨んでブツブツいいながら車に乗るとその場を立ち去った


つづく

押すまで許さないわよ   
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photon_5d at 07:45|PermalinkComments(0)

2020年06月01日

歯車 第一章 悪感

ボクはドーム型のコンクリート壁に囲まれた殺風景な場所で機銃を胸に当ててドア口で見張っている兵士の覆面の中の目に睨まれている····

昨日の夜泊めてくれる家族の姉妹が車でスメェルまで迎えに来てくれて途中イタリアンレストランでピザをご馳走してもらって家に着いたのは夜8時頃だったと思う 新市街の賑やかなメインストリートから少し奥まった所の団地群の最上階の家族の家に入った時親戚が集まって畳にしたら20畳くらいの広さのリビングルームで祈りを捧げていて邪魔しないように案内された壁に沿って並んでるソファーの1つに腰掛けて静かに見学させてもらっていたら何か嫌な気配を感じ取りだした 

絶望的な力で圧倒的な数のなにかが積み上がってこの家を覆い尽くしてその壁が外界を遮断している お母さんの思念で施されてる結界の中に入ってしまってそれが重苦しくボクにのしかかってるとウィリアムに話した
ウィリアム「お前がこの家に良くないエネルギーを感じでいるのはわかったけどせめて明日1日観光して明日の夜家族のみんなが集まった時にキチンと話ししてお礼を行ってから旅立つのが常識人だとオレは思うぜ」

そうだな····

ボク達は土砂降りの雨の中を歩いてモスクに入りペシマルガに爆弾テロリストの容疑でケーサツ署に拘束されている ペシマルガとは警察と結託して活動しているイラククルディスタン自治区の自衛隊のような組織で爆弾テロ対策を専門にしているプロのはずなのに荷物は一切調べられないまま30分が経つ ボクは今すぐ調べたらいいとモスクで言ったのに彼らは一度広げた荷物をしまう事を強要して来たから押し問答になった 今すぐここで調べろと荷物に触ろうとしないボクに苛つき出したケーカンを制してウィリアムが代わりに片付け車に放り込んだ ペシマルガはテロ容疑でボク達を確保したわけじゃない ただあのモスクから追い出したかっただけだ ボク達は最高責任者から許可をもらったのに通報され捕まった····考えられるのは重大な間違いをどこかでやらかしたということだ ボクの知らない間に話をつけたウィリアムなら十分可能性はある

つづく

押しても爆発しませんから
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photon_5d at 10:46|PermalinkComments(0)

2020年03月30日

ギフト

イラクに向かうボク達が一緒に旅する残りの日数は1ヶ月ない

アブハジアからここまでおよそ50日間の2人旅はこれまで殆ど一人旅だったボクにとって大記録でありまた思考にも大きな変化をもたらしたように思う

誰かと一緒に長く居ればストレスになる繊細なボクのガラスの心はなるべく独りを選んできた 例えば寂しさを感じても誰かと一緒で道一つ決めるにも食べ物でも泊まる場所にしても思い通りにいかなくなるより その寂しさを見つけて待ち構えて抱きしめて手放す作業がボクの人生には沁み込んでいて馴染んでいるということだ

他人の意見に従ったあとで事故や事件に巻き込まれたりしたら 或いはボクが決めたことによって相手を巻き込んで辛い思いをさせてしまうとか

あんまり騙されて失って来たから他人と関わらないでいられるならそうしたいと思っているんだろう

しかしそれもこれも全ては自分自身の心の弱さと直結しているボクは弱い心を強くしたくてその道を随分長い間歩いているうち帰り道がわかんなくなっちゃってる

それについては奴にも話してある あいつの「それじゃオレと一緒に旅すると決めた理由はなんだ?」という質問にも答えた

アブハジアの首都のビザセンターで初めて出会った時の奴は自信や勇気のエネルギーを出していてそのエネルギーを行動力に変えてボク会いに来た そういう約束をずっと昔にしていたような気がした タブン奴はボクが受け取らなければならないモノを持っている そしてボクもまた渡すものを持っている気がしたと

それから今日まで揉め事はありながらもわりかし協力してトルコのクルド人地域を旅しながら沢山の人からの親切をもらっていくうち心境の変化に伴って奴が渡そうとしているものが何なのか見えてきたように思う

ウイリアムは間違いなくボクを導いている案内人でそれを意識しているとは思わないがそれを仕事にしようという夢を持っているんだから無意識で案内しているウイリアムは適材だ よっぽどイイ素質が備わっている

奴がボクに渡したかったものは信頼できる人同士の強いつながりや助け合いだったんじゃないだろうか 

確かにこれまでも沢山の人に助けられてきたが信頼や繋がりの強さはトルコのクルド人地域に入ってから学んだ あいつはボクをこの場所に案内するだけでよかったんだ

ボクの心や思考はコトコトじっくり煮込まれながら旨味成分を出すように変化して旅自体が変わり始め新しい経験を通じながら自分と周りを囲っている世界の これまで見ようとしなかった新しい側面が見え始めている所にいる(いいないいな人間て意外とイイな的な側面だ)

だがボクはといえばウイリアムに何をしてやれている?

まぁボクはボクという人間で有り続けるだけ そうして旅の終わりを迎えまたそれぞれに新しい旅を始める 必要な何かはもう手にしてる その時気が付かなくてもお互いなりたい自分に近づいてると願う


つづく

独りの強さはもう卒業
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photon_5d at 18:00|PermalinkComments(0)

2020年01月26日

オトナの振る舞い

目覚めたのは8時頃だったと思う
テントの外に出ると大きな海浜公園の一角にいてすぐ目の前が湖で空も太陽もみんなゆったりで静かな日曜日の のどかな空気が広がっていた ゆうべの月は雲ひとつ無い静かな空の高くにあって 湖の小波は金色で何もかも上手く行っている気がしていた••••

アイツはなんにも分かっちゃいない
確かにボクの27才の時と比べたら随分もしっかりしてはいるよ
それも踏まえての経験値を奴の2倍ほど持つボクが堂々と上から目線で言ってやる大体なんで毎日毎日泊めてくれる人探さなきゃならないんだ? テントも鍋もガスも持ってるじゃないか 
それらは外で寝る人が持つ物だ 
奴がホテルに一泊したいという気持ちがあることは前から聞いている 気疲れしてるからで ホストのカウチサーファーに返事が遅れると印象を悪くすると心配する心で疲れたのかも知れない お前は予定なんかない自由な旅がしたいといつかボクに言ったけどその気持ちは本心だと信じたい そして本心なら出来るはずなんだ今すぐ••••

眠れる場所がなくて食べる機会をのがして逃して不安になるなんて••••
眠れなくても食べれなくても人間はすぐ死んだりしないよ 落ち着けと言っても奴は心に振り回されて我を失う••••若い

テントも鍋も奴が憧れる強さや野性を象徴した飾りなのだ 強くなりたかったのか 強く見せようとしたかったのか••••ワカァイ

昔のボクがピッタリ重なり合わさった

ビックリ

30分遅れて奴がテントから出てきて何を言うのかと思ったら謝ってきた 昨夜は考えて眠るまで時間がかかったそうだ それで確かに数時間寝るだけにお金を払うのも勿体無い話で今まで考えた事なかったと言った
ボクは少しでも長く旅してこの世界を見たいんだと言いながら心の中では謝るとは思わなかったからまたビックリだ 
クソガキと思っていた自分が 恥ずかしくなった

つづく

素直にオス
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photon_5d at 21:40|PermalinkComments(0)